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Spangle call Lilli lineの美学 20年消費されなかった秘密を探る

Spangle call Lilli lineの美学 20年消費されなかった秘密を探る

Spangle call Lilli line『Dreams Never End』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:高橋一生(sui sui duck) 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

DIYっぽい感覚でPro Toolsを使っていたんです。工作のための道具みたいな感覚。

—2000年前後の国内のシーンに対する意識はどの程度ありましたか?

藤枝:自分としては、特定のシーンには属せずに来た感じなんですよね。たとえば、『nanae』は肉体的なアルバムにしたいと思ったときに、ROVOの1トラックアルバム(2000年発表の『PYRAMID』)を聴いて、益子さんにお願いしたんです。

そしたら、彼がスーパーカーの『HIGHVISION』(2002年)を手がけている時期だったり、そういうときどきに近しい音を出している人はいた気がするんですけど……20年間シーンに属したことはないというか(笑)。

藤枝憲
ナカコー(ex.スーパーカー)がゲストボーカルで参加した楽曲。『Dreams Never End』にはボーナストラックとして収録

—たとえば、Corneliusはどんな存在でしたか?

藤枝:Corneliusは雲の上の存在なので、シーンも何もないというか(笑)。当時のディレクターから「小山田さんが“IRIE”(『Spangle call Lilli line』収録曲)をいいって言ってる」って聞いて、「マジっすか?」ってなったんですけど、おこがましいです。海外のものと同じような感覚で聴いていますから。

—Pro Tools時代にいち早く反応したという意味では、近しいものはあるかなと感じるのですが。

藤枝:Pro Toolsの導入に関しては、僕らにとって結果的にそれがよかったからなんですね。もともとネオアコとかギターポップが好きな部分もあるので、「下手でもOK」みたいな文化に馴染みがあって、工作のための道具みたいな感覚でPro Toolsを使っていたんです。「DTMをやる」「打ち込みをやる」じゃなくて、「録った音を切り貼りできるってすごくない?」っていう、もうちょっと図工っぽい感じ。

肉体で反復するのと、コピペで反復するのはやっぱり違って、コピペで反復するチャーミングさとか、そういうものを求めていたんですよね。そうやってDIYで、工作的な感覚でやってきた集大成が『or』だったんです。

Spangle call Lilli lineの3rdアルバム『or』(2003年)を聴く(Apple Musicはこちら

僕らは作品至上主義というか、作りたい作品があるっていうことが大前提。

—『or』リリース後のドラムの椛沢(信之)さんの脱退までが第1期だった、とのことですが、そこでメンバーを新たに入れずに、3人で進んだからこそ、「バンド」というよりも、「音楽集団」と言えるような今があるのかなと思います。

藤枝:メンバーを入れる選択肢はなかったんですよね。「メンバー」って、音楽をやる以外の人間性とかフィーリングの摺り合わせも必要なんですよ。だから、それに時間を使うよりも、サポートを入れて作りたいものを作ることを選んだ。4枚目の『TRACE』(2005年)は、自分たちなりの新しいグルーヴを求めて、「リズム隊が変わるとこんなに違うんだ」って思いましたね。

Spangle call Lilli lineの4thアルバム『TRACE』(2005年)を聴く(Apple Musicはこちら

—くるりやceroもドラムの脱退が転機になっていると思うんですけど、その感じにも近いなと。

藤枝:ドラマーって大事ですからね。椛沢くんはかなり癖が強いというか、もともとハードコアバンドをやっていたから、手数が多いタイプで。彼が抜けてドラムが変わったことで、新たな武器を手に入れた感覚があったんですよ。だから、「メンバーは3人」っていうことにしてよかったなって、今はそう思います。

藤枝憲

—ドラマーが脱退して、活動的にはますます音源重視になりますよね。2010年代は「フェスの時代」とも言われていて、「ライブで盛り上がる曲」を意識する人たちも増えた一方、2010年代中頃にはその反動とも言える動きがあって、作品性を大事にする若いアーティストが増えた。そこもスパングルとのリンクを感じる部分で。

藤枝:なるほど。僕らはライブのために曲を作るっていう発想は基本ないですからね。ライブでの盛り上がりを求めて、音楽がスポーツみたいになるのは自分たちとしては違うと思うんです。僕らは作品至上主義というか、作りたい作品があるっていうことが大前提。だから、3人になってから、ひたすら曲を作って、録音して、同時期に2枚アルバムを出す、みたいな活動になっていくんです。

Spangle call Lilli line(左から:笹原清明、大坪加奈、藤枝憲)
Spangle call Lilli line(左から:笹原清明、大坪加奈、藤枝憲) /これまでのリリースタイトルを聴く(Spotifyを開く

—2006年のベスト盤『SINCE』を挟んで、2008年(『ISOLATION』『PURPLE』)、2010年(『VIEW』『forest at the head of a river』)、2011年(『New Season』『Piano Lesson』)と、実際に同時期に2枚作品を出していますよね。

藤枝:『SINCE』の前に出した『FOR INSTALLATION』(2005年)が、スタジオで鳴らしたアウトセッションというか、タイトルどおり、設計図がないなか作った作品だったので、その次の『ISOLATION』はピアノを入れてがっちり作り込んだんです。そうなると、自分たちらしいアルバムも必要だってことで、同時期に『PURPLE』を作って。

—『PURPLE』はここまでの集大成的なイメージがあります。

藤枝:『ISOLATION』から今のサポートメンバーになって、そこから10年続いているんですけど、『PURPLE』は未だに自分でもよく聴くし、いいアルバムだなって思います。自分たちなりのトーンマナーというか、心地よさがあるというか。この頃になるとライブもほとんどやらなくなり、いよいよ誰ともつるんでない時期に突入します(笑)。

Spangle call Lilli lineの6thアルバム『PURPLE』収録曲

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リリース情報

Spangle call Lilli line『Dreams Never End』(CD)
Spangle call Lilli line
『Dreams Never End』(CD)

2019年1月9日(水)発売
価格:2,916円(税込)
PECF-1166 / felicity cap-301

1. red
2. lay low
3. so as not to
4. still three
5. touei
6. sai
7. toss out it
8. give each other space
9. mio
10. tesla
11. therefore(ボーナストラック)

イベント情報

Spangle call Lilli line
『This time of night ~SCLL LIVE 20th Anniversary~』

2019年4月20日(土)
会場:大阪府 umeda TRAD
料金:前売4,500円(ドリンク別)

2019年4月27日(土)
会場:東京都 EX THEATER ROPPONGI
料金:1階スタンディング4,500円 2階座席指定5,000円(全てドリンク別)

プロフィール

Spangle call Lilli line
Spangle call Lilli line(すぱんぐる こーる りり らいん)

1998年結成。メンバーは大坪加奈、藤枝憲、笹原清明の3人。今までに10枚のアルバム、2枚のシングル、3枚のライブアルバムと、ベストアルバム2枚をリリース。数々のコンピレーションアルバムなどにも参加。ボーカル大坪加奈による「NINI TOUNUMA」名義のソロや、藤枝&笹原による「点と線」名義でのリリース、国内外のアーティストの作品への参加など、サイドプロジェクト等も精力的に活動。

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