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いとうせいこう×石川直樹 偶然に身を任せる人生こそ面白い

いとうせいこう×石川直樹 偶然に身を任せる人生こそ面白い

東京オペラシティ アートギャラリー『石川直樹 この星の光の地図を写す』
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:鈴木渉 編集:宮原朋之

ふざけてばっかりいるから気づかれないけど、みうらさんと俺はじつは真面目に研究してるんだよ(笑)。(いとう)

次の部屋の入口をくぐり抜けると、そこは一面青の世界。ハワイ、ニュージーランド、イースター島を繋ぐポリネシア・トライアングル=太平洋の島々で撮られた写真や映像が展示されています。

石川:この映像に出てくる森は、ニュージーランド北島の先住民マオリの聖地です。屋久杉以上にぶっとい大木がたくさんあって、マオリはそれを大切にしています。

いとう:命の大先輩だからね。これもみうらさんと一緒に気づいたことなんだけど、言ってみれば仏像って聖なる木を残しているだけなんだよ。だから我々はむしろ木を見なきゃいけないんだ、って結論にたどり着いたの。

石川:見た目じゃなく、木そのものを見る……。それはすごい視点だ。

いとう:ふざけてばっかりいるから気づかれないけど、みうらさんと俺はじつは真面目に研究してるんだよ(笑)。木や植物って面白いよ。家でも鉢植えでずっと育ててるから思うんだけど、死と生の境目がよくわからない。枯れたと思っても、根っこさえ残っていればまた芽吹くでしょう。

石川:循環してるんですよね。まさに環としての世界。

いとう:そうそう! 人間と違うシステムの生き物なんだよ。

すごいね! 超ガビってる!(いとう)

富士山の内部に広がる鍾乳洞や、ふもとで行われる奇祭といった知られざる富士の姿を追った『Mt.Fuji』を経て、標高8611メートルの世界第2位の高峰K2に迫った『K2』のスペースへと移動する石川さんたち。いとうさんは、雄大な雪山に目を見張ります。

いとう:すごいね! 超ガビってる!

石川:「ガビってる」ってなんですか(笑)。

いとう:聖地級のいい山のことを峨眉山に敬意を表してそう呼ぶの。みうらさんと俺の間ではね。

石川:ははは。この山はなかなか人が行ける場所じゃなくて、2週間くらい氷河の上を野宿しながら歩いてやっとたどり着くんです。めちゃくちゃガビってるけど、たくさんの人が行ける場所ではないから聖地化していない。

いとう:孤絶した聖地だね。それってもう神様そのものだと思う。ありがたいよね。写真があるから、ここに行けない俺も追体験できるわけでさ。これがK2?

石川:はい。難しくて登頂率も低い、かなり厳しい山です。僕らもだいぶ上まで登ったんですが、頻発する雪崩でロープとか装備を流されてしまって登頂できなかった。この写真はベースキャンプあたりから、山頂をとらえたものです。

『K2』(2015年)
『K2』(2015年)

いとう:「登れなかった」っていう自分の経験を物語っている写真なんだ。

石川:そうなんです。展示スペースの中央に設えられたテントのなかでは、K2に向かうパキスタンの旅の映像作品も上映しています。

映像に挿入されている楽曲を提供しているのは、共通の友人でもある建築家の坂口恭平さん。馴染みのある歌声に耳をすませた2人は、次のコーナーでトカラ列島や奄美・沖縄などの島々の写真や、石川さん本人の部屋を再現したインスタレーションなどを鑑賞しました。ひと通り展示を見終え、2人は連れ立って別室へ。

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イベント情報

『石川直樹 この星の光の地図を写す』

2019年1月12日(土)~3月24日(日)
会場:東京都 初台 東京オペラシティアートギャラリー

時間:11:00~19:00(金、土曜は20:00まで、入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜(祝日の場合は翌火曜)、2月10日(全館休館日)
料金:一般1,200円、大高生800円
※中学生以下無料
※障害者手帳をお持ちの方と付き添いの方1名は無料

プロフィール

いとうせいこう

俳優、小説家、ラッパー、タレントとさまざまな顔を持つクリエーター。雑誌『ホットドッグ・プレス』の編集者を経て、1980年代にはラッパーとして藤原ヒロシらとともに最初期の日本語ヒップホップのシーンを牽引する。その後は小説『ノーライフキング』で小説家としてデビュー。独特の文体で注目され、ルポタージュやエッセイなど多くの著書を発表。執筆活動の一方で宮沢章夫やシティボーイズらと数多くの舞台・ライブをこなすなど、マルチな活躍を見せている。近年では音楽活動も再開しており、口口口やレキシ、dubforceなどにも参加している。

石川直樹(いしかわ なおき)

1977年東京生まれ。東京芸術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。『NEW DIMENSION』(赤々舎)、『POLAR』(リトルモア)により、日本写真協会新人賞、講談社出版文化賞を、『CORONA』(青土社)により第30回土門拳賞を受賞。著書に、開高健ノンフィクション賞を受賞した『最後の冒険家』(集英社)ほか多数。最新刊に、エッセイ『極北へ』(毎日新聞出版社)、都道府県47冊の写真集刊行プロジェクト『日本列島』(スーパーラボ×BEAMS)、本展のカタログでもある大冊の写真集『この星の光の地図を写す』(リトルモア)など。

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