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箭内道彦×小杉幸一 かつての「憧れ」を取り戻す、広告界の戦い

箭内道彦×小杉幸一 かつての「憧れ」を取り戻す、広告界の戦い

パルコ「50年目の、新しいパルコ。」
インタビュー・テキスト
長嶋太陽
撮影:垂水佳菜 編集:中田光貴、久野剛士(CINRA.NET編集部)

やるべきことをやって揶揄されることを怖がっちゃいけない。(箭内)

—「SPECIAL IN YOU.」(2014年からパルコが掲げるコーポレートメッセージ)のキャンペーンは、どのように生まれたんですか?

箭内:「LOVE HUMAN.」(2010年にスタートしたパルコのコーポレートメッセージ)の後継という位置づけでした。パルコさんの広告は、まさに応援なんですよね。「SPECIAL IN YOU.」は、広告を見ている人を肯定しながら追い詰めていく。すごい人を広告に出して、「これを見ているおまえもすごいんだよ」って言われたら、「ヤバい」って思うじゃないですか。

パルコ「君も、特別。セイント・ヴィンセント編」メインビジュアル。世界的な女性シンガーソングライター兼ギタリストのセイント・ヴィンセントを起用した。
パルコ「君も、特別。セイント・ヴィンセント編」メインビジュアル。世界的な女性シンガーソングライター兼ギタリストのセイント・ヴィンセントを起用した。
パルコ「君も、特別。セイント・ヴィンセント編」60秒ムービー

—アメリカのニュース雑誌『TIME』の2006年の「Person of the Year」に「YOU(あなた)」が選ばれたんですよね。パルコのコーポレートメッセージが「HUMAN」から「YOU」へ変わっていったのは、社会の主権が一人ひとりにあるということを象徴しているようにも感じられました。

箭内:すごい(笑)。

—「個人の時代」という話題に関連しますが、SNS時代になって炎上やバズることが広告業界でも話題になっています。これらをどのように捉えていますか?

箭内:炎上は……したくないですよね。しかし、「クレームのこない広告は届いていない広告」という話もあります。誰かを傷つけることは論外ですが、なにか新しいことに挑んだ結果、新しいことを好ましく思わない人から攻撃をうけるとか、やるべきことをやって揶揄されることを怖がっちゃいけない。もちろん広告を作るときは、どういう反響があるか考えながらやりますけど、そこにだけ合わせていくと、やるべきことを見失ってしまう。

デザインもコピーも企画も、炎上に対する予防線をはるのではなく、炎上を超えていくものを作る。企業がメッセージを持つことが増えてきていますが、過去の広告の技術だけで挑んでいくと炎上してしまうケースもある。企業がなにかを言うだけでなく、実際の行動が伴っていることも非常に大事ですね。

—箭内さんは、マスでもなければインターネットでもない、独自のポジションなんだな、と思います。

箭内:そうなんですよ。突き抜けないんです。博報堂で鍛えてもらったことが大きいですね。あそこのクリエティブは、いろんな人が得意な陣地を持っているから、重なってしまうと表に出られないし、自分にそもそもできないことをやろうとしても仕方ないって気づく。

小杉:学校みたいですよね、博報堂は。

箭内:中間テストのように仕事の順位が出るし、誰にカップヌードルの仕事がきた、とかで一喜一憂するしね。

左から:箭内道彦、小杉幸一

2019年、2020年は、なにに憧れてなにを理想とするかが問われはじめると思うんですよ。(箭内)

—今回、おふたりが手がけたパルコ50周年の広告には、どんな意図が込められているんでしょうか?

箭内:「店舗のオープン」という出来事まで含めて広告だと思っていて。だから建て替え工事中の渋谷パルコの写真を使用しています。今年パルコは4施設がオープンするんですけど、そのアンカーが渋谷なんですよ。

「50年目の、新しいパルコ。」ポスタービジュアル
「50年目の、新しいパルコ。」ポスタービジュアル

小杉:今回改めて実感したのですが、箭内さんはとにかくジャッジが早いんです。どんどん作ったものを見てもらって、方向性を合わせていくんですよね。ここで終わり、ではなく動き続けて、完成を目指し続けるというか。

箭内:ジャッジは実際早いし、早くありたい、早く見せようと思っています。じっくり考え過ぎて煮詰めちゃうよりも、寿司をにぎってすぐに食べてもらうみたいなスピード感で、ホヤホヤな状態で作品を出すほうがいいんですよ。

建て替え工事中の新生渋谷パルコの前にて
建て替え工事中の新生渋谷パルコの前にて

—百貨店・ファッションビルの広告の歴史を振り返ると、かつては「憧れ」を作るものでした。そこから、親近感とか共感が重視される時代がきて、パルコはもう一度憧れに戻りながらも、「YOU」で主権を受け手に渡しているように感じます。

箭内:広告は一度「憧れ」じゃなくなったんですよね。機能とか共感ってところに、世の中みんなで逃げていったような気がします。楽だからね、共感は。憧れなければ傷つかないし、夢を持たなければ挫折しない。

だけど2019年、2020年は、なにに憧れてなにを理想とするかが問われはじめると思うんですよ。だから、未知の場所に行こうとしている人を応援したり、自分もついていってみたり、自分は違うところに行ってみたり。これから試される時代になると思います。

—誰もがSNSで好き勝手言える時代だからこそ、ちゃんといい方向に進もうって道しるべになる広告が生まれるのは、素晴らしいことですよね。

箭内:まさに世の中が「パルコはどうするのか、お手並み拝見」と楽しみにしていると思いますよ。50年目になにをするのかって。

左から:箭内道彦、小杉幸一
左から:箭内道彦、小杉幸一
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サイト情報

『パルコ50周年キャンぺーンサイト』
『パルコ50周年キャンぺーンサイト』

2019年1月1日からスタートしたパルコの50周年キャンペーン「50年目の、新しいパルコ。」の特設サイト。同サイトでは、インタビュー企画や謝恩企画など、随時情報が更新される予定。

プロフィール

箭内道彦(やない みちひこ)

クリエイティブディレクター。タワーレコード「NO MUSIC, NO LIFE.」、リクルート「ゼクシィ」等、数々の話題の広告をディレクション。「SPECIAL IN YOU.」「Last Dance_」他、パルコの宣伝クリエイティブを長く手掛けている。「月刊風とロック」発行人、福島県クリエイティブディレクター、渋谷のラジオ理事長、2011年大晦日のNHK紅白歌合戦に出場した猪苗代湖ズのギタリストでもある。東京藝術大学准教授・学長特別補佐。

小杉幸一(こすぎ こういち)

クリエイティブディレクター / アートディレクター。ブランディング、イベントのほか、空間、テクノロジーを使った従来の型にはまらない広告のアートディレクション、アパレルブランドとのコラボレーションなど幅広く活躍。主な仕事に、PARCO「パルコアラ」、福島県「ふくしまプライド。」、資生堂「50 selfies of Lady Gaga」、SUNTORY「特茶」、SUZUKI「HUSTLER」「XBEE」、STARFLYER「輝く人へ、」、ジャニーズ事務所「CI デザイン」、YMO「YMO40」、築地玉寿司「もじにぎり」、B&B「CI デザイン」などがある。主な受賞に、東京ADC賞、カンヌライオン国際広告祭デザイン部門<GOLD>、JAGDA新人賞、JAGDA賞、D&AD、NY ADC、ONE SHOW<GOLD>、ACC賞<GOLD/SILVER>、ギャラクシー賞、ADFES<GRANPRIX>など国内外多数受賞。多摩美術大学非常勤講師

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