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アップリンク×MOOSIC LAB 現代に映画館が必要な理由とは?

アップリンク×MOOSIC LAB 現代に映画館が必要な理由とは?

パルコ「50年目の、新しいパルコ。」
インタビュー・テキスト
宮田文久
撮影:垂水佳菜 編集:中田光貴、久野剛士(CINRA.NET編集部)

2011年頃は、ミュージシャンが絡む企画に関わることが多くて、僕自身もライブハウスに行くことのほうが面白い時期だった。(直井)

—『MOOSIC LAB』のコンセプトである「音楽×映画の祭典」という企画の発想はどこからきたんでしょうか?

直井:2011年頃は、先述の『劇場版 神聖かまってちゃん』を始め、ミュージシャンが絡む企画に関わることが多くて、僕自身もライブハウスに行くことのほうが面白い時期だったんです。当時、大森靖子さんに誘われて行ったどついたるねんのライブで、アイドルのBiSと事故的に出会ってモッシュに巻き込まれたりと、いろんな意味で刺激を受けまくっていました(笑)。

—『MOOSIC LAB』の原点にはライブハウス的なカルチャーの盛り上がりがあった、と。

直井:そうですね。そこから、音楽、映画、演劇などあらゆるカルチャーを「×」で繋いで化学反応を探り続けているといいますか。

—山戸結希監督もそうですし、『MOOSIC LAB』を経た多くの監督が活躍するようにもなっていますよね。『nico』(『MOOSIC LAB』初代グランプリ作品)の今泉力哉監督ですとか。

直井:それは本当に嬉しいことです。最近では『少女邂逅』(2017年)の枝優花監督とか。音楽でいえば大森靖子さん、カネコアヤノさんとか……女優でも森川葵さん、吉岡里帆さん、岸井ゆきのさん、小川紗良さんとかが賞を取っていたり。

当初『MOOSIC LAB』自体は、東日本大震災後の焦燥感のなかで、自分より少し下の世代の監督やミュージシャンたちと「なにか一緒にみんなでやらなければ」という思いだけで立ち上げたものなんです。それが今では、『MOOSIC LAB 2018』の長編部門10本がほぼ全部単独公開される予定だったりと、だいぶ変容してきたと思います。

直井卓俊

『カメ止め』はある意味、社会の縮図を描いていると思うんです。(直井)

—映画界の現状はどう見ていらっしゃいますか。たとえば『カメラを止めるな!』(2017年、上田慎一郎監督)の大ヒットはどうでしょう?

直井:『カメ止め』はある意味、社会の縮図を描いていると思うんです。「テレビの生中継でゾンビ映画をつくれ」という不条理な発注があって、それに対して現場が頑張る。いわば、「あるある」なんですよね。映像の業界内でも共感する人が多かったですし、それは同時に上司に日頃から色々と言われている世のサラリーマンたちの共感も得られたんじゃないですかね。

大阪の劇場で700席が満席になっている場に立ち会ったことがあるんですが、本当に客層が広くて。お年寄りから子どもまでいたんです。お父さんが感動して息子を連れていったという話も聞きましたし。

浅井:ビジネスとしてなぜあそこまで成功したのかはよくわからないと思っていたんだけど、無理難題を押し付けられているサラリーマンといった人たちが、その難題を実行している映画撮影部隊にシンパシーを抱いたわけだ。

直井:前回の箭内さんの対談にもあった「共感」を求める時代の流れって映画界にもあって、『カメ止め』はそこにフィットしたんじゃないですかね(参考記事:箭内道彦×小杉幸一 かつての「憧れ」を取り戻す、広告界の戦い)。インディーズ映画に関わっていると、私小説的でわかりにくいシーンも出てくるわけなんですが、最近はそれを面白がれず、「わからない」だから「つまらない」という感想が多い気がしています。『カメ止め』は痛快なまでの回収構造によって一点の曇りもない気持ち良さをもたらしてくれる。……故に、以前に対談した中森明夫さん(作家、アイドル評論家)が「『カメ止め』には批評の余地がない」と言っていて、まさにそうだな、と。

左から:浅井隆、直井卓俊

—『バーフバリ 王の凱旋』(2017年、S・S・ラージャマウリ監督)の応援上映から『ボヘミアン・ラプソディ』(2018年、ブライアン・シンガー監督)といったライブ体感的なものも含めて、映画館のありようも変わってきていますよね。

浅井:いいことだと思います。だって映画館って、映画を観るだけの場所じゃないんですよ。ライブビューイングだって行われているし、シネコンだったら企業の新入社員用のイベントにも貸し出している。アップリンク吉祥寺のオープニングでも、スクリーン前に演台を組んで落語会をやりましたし、アップリンク渋谷ではライブもパフォーマンスもやっていますから。そもそも、カルチャーの「場」ってそういうことじゃないかな、と思います。

先ほど触れたSPACE PART3だって、アートの展覧会や演劇、ライブに映画もやっていた。同じ渋谷のシードホールも、池袋の西武百貨店にあったスタジオ200もそういう場所だったし、六本木にあったWAVEや、その下にあった映画館シネ・ヴィヴァン・六本木も含めて、1980年代を席巻したセゾン文化の「場」は、そうした多様性の「場」なんですよ。

—むしろそれこそが浅井さんにとってのスタンダードだ、と。

浅井:そうだね。今はインターネットの世界もすごくタコツボ化しているけど、パルコには「ひとつの場でなんでもやる」という遺伝子がある。アップリンク吉祥寺も、最初にすべてを撤去してなにもない状態のときに、なにかイベントができないか、という話が上がったくらいだから。開館までのスケジュール上、実現はできなかったけど。建て替え工事中の渋谷パルコのなかではファッションショーをやっていたでしょう(2017年に『シブカル祭。』のイベントのひとつとして実施した)。

普通の企業だったら、色々とクリアすべき問題があってゴーサインを出せないと思うんですよ。だからこそ他の企業施設にはない遺伝子がパルコには残っているし、そうした文化を浴びてきた僕たちも、それが普通だと思っているのかな。

浅井隆

—1973年に渋谷パルコができて、1974年に浅井さんは寺山修司の劇団『天井桟敷』で舞台監督を務めるようになりましたね。

浅井:さっき言ったような会場や西武劇場(のちのパルコ劇場)で舞台もやったし、寺山の映画の上映もしました。多大な影響を受けてきたから、パルコがセゾングループだった時代の「セゾン文化ラブ」みたいな愛情が強いんですよ。社員じゃないのにパルコの遺伝子を勝手に引き継いじゃっている(笑)。

左から:浅井隆、直井卓俊
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サイト情報

『パルコ50周年キャンぺーンサイト』
『パルコ50周年キャンぺーンサイト』

2019年1月1日からスタートしたパルコの50周年キャンペーン「50年目の、新しいパルコ。」の特設サイト。同サイトでは、インタビュー企画や謝恩企画など、随時情報が更新中。

プロフィール

浅井隆(あさい たかし)

1955年、大阪生まれ。1974年演劇実験室天井桟敷に入団し舞台監督を務める。1987年アップリンクを設立。デレク・ジャーマン監督作品をはじめ、国内外の映画を配給。カンヌ映画祭に出品された黒沢清監督作品『アカルイミライ』などの製作プロデュースを担当。2005年には渋谷区宇田川町に映画館、ギャラリー、カフェレストランが集まるカルチャー・コンプレックス『アップリンク渋谷』をオープン。2011年にカルチャー・マガジン『webDICE』、2016年にはオンライン・シアター『アップリンク・クラウド』をスタート。アレハンドロ・ホドロフスキー監督の2017年公開作品『エンドレス・ポエトリー』では、共同プロデューサーを務める。2018年に5スクリーンのミニシアターシネコン、『アップリンク吉祥寺』をオープン。

直井卓俊(なおい たかとし)

1976年、栃木県生まれ。法政大学卒業後、アップリンク勤務を経て、SPOTTED PRODUCTIONSとして配給、宣伝などを手がける。配給作品に『SR サイタマノラッパー』シリーズ『フラッシュバックメモリーズ3D』『自分の事ばかりで情けなくなるよ』『百円の恋』、企画プロデュース作品に『劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ』『5つ数えれば君の夢』『私たちのハァハァ』『少女邂逅』、気鋭の映画監督×アーティストによる映画祭『MOOSIC LAB』など。6月には初の演劇プロデュース作品『アルプススタンドのはしの方』が浅草九劇で上演される。

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