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東野祥子、白井剛、鈴木ユキオ鼎談 ダンスは世の中を見るための窓

東野祥子、白井剛、鈴木ユキオ鼎談 ダンスは世の中を見るための窓

Tokyo Tokyo FESTIVAL スペシャル 13『DANCE TRUCK TOKYO』
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:前田立 編集:川浦慧(CINRA.NET編集部)

ダンスもアートも世の中を見るための窓だと思っていて、そのきっかけを提供することが自分の役割だと思っている。(白井)

―みなさんはパフォーマーとして『ダンストラック』に参加してきましたが、共同キュレーションというかたちは今回の『DANCE TRUCK TOKYO』が初ですね。

東野:打ち上げ花火的にやって「ハイ、終わり!」ではなく、未来に発展できるようなものにしたいっていうのは話したよね。自分たちよりも若い世代を積極的に紹介していきたいし、今回オープンエントリーのオーディションを開催することにしたのもそれが理由だから。ダンストラックという形式で上演できるものなら、ダンスでも音楽でもなくても構わない。むしろ、わけのわからないものに出会いたいんです。

東野祥子
東野祥子

白井:公演を行う候補地にも出会いを求めていて、「ここにトラックがあったら面白そう」「こんな場所が東京にあったんだ!」なんてところを探してきました。1年間の企画なので、攻めた場所は今後発表されるのですが、僕たちがお客さんに見せたい場所がたくさんあります。

今回は2020年のオリンピック・パラリンピックの時期までの1年間で東京限定で15か所ほどを回ることになる。そうなると、綿密に「東京」って街を知っていく必要も出てくる。街に詳しい専門家に話を聞いてみたりもしていて、たとえば、谷になっている渋谷では、盗賊が谷の上から見張っていて、谷底の道を行き交う商人を追い剥ぎしていたとか。そういう話を聞いて、キュレーションに密かに反映していたりする。

―わりと物騒な場所なんですね、渋谷は(笑)。

白井:東京って、もともとあった文化や歴史をどんどん上書きしていくような土地なんですよ。政変や戦争の残骸の層が、現在の東京とも言える。キュレーションをきっかけにして、東京を見直す機会を得られたのが嬉しいです。

白井剛
白井剛

―鈴木さんはどうでしょう?

鈴木:自分はパフォーマーとしての自己認識が強くて、キュレーションとかディレクション的な視点でダンスを見ることはこれまでほとんどなかったんですね。自分が師事していた室伏鴻さん(日本独自の前衛ダンスである舞踏に取り組んだダンサー・振付家。海外で特に高い評価を受けた。2015年南米公演中のメキシコで客死)が、「たった一人でもその人の人生を決定的に変えるほうがいいんだ。その一人を殺すぐらいの気持ちで踊れ」って言う人だったので、自分も若いころから社会に対して「ぶっ壊してやる!」くらいの気持ちで踊ってきました。

そのマインドはいまも根深くあるんだけれど、同時に市民参加のダンス作品を作っていくなかで、社会ってものとの関わりをあらためて考え直すようになった。その意味で社会=東京と自分の関係が変わっていくのもこれからだと思うんです。

鈴木ユキオ
鈴木ユキオ

―しかし、なにかと安定が求められる時代だからこそ「ぶっ壊してやる!」のマインドも大切では?

鈴木:以前、大学に対する助成金が減り続けているという記事を読んだんですが、そのなかにどれだけお金を使っても、うまくいくのはそのうちの0.003%ぐらいだって言うんですね。しかし、それが大事なんだと。

アーティストがやっていることもこれに似ていて、それぞれが0.003%ぐらいの可能性を信じてやっている気がします。それが社会との接点を生みつつ、また社会を変えていくというか。

―0.003%って聞くとめちゃくちゃ低いと感じます。でも実際のところ、社会に対してコミットしたときに0.003%でも変化を与えることのできる人って稀ですよね。もちろん誰だって社会に関わっているんだけれど、社会を揺るがす変化、ざわっと波立たせられる人はじつは限られている。だから、その0.003%という数字には価値がある気がします。室伏さんなんて、その0.003%の変化を高打率で起こせる人だったと思いますし。

白井:僕はダンスもアートも世の中を見るための窓だと思っていて、そのきっかけを掴むこと、提供することが自分の役割だとどこかで思っているんですね。だから、自分自身の欲求で踊るということがよくわからないんです。

たとえば、以前現代音楽の人と一緒に作品を作ったけれど、けっして現代音楽を特別好きだったわけじゃない。でもそれを調べてみると、面白いことがいろいろ見えてくる。自分以外のもの目や視点を使って世の中を見て、ダンスっていう窓で出力していく。この猛暑ですし、なにかと不安なことも起きていて、みんなオリンピックに不安を感じているんじゃないですか。

左から:鈴木ユキオ、白井剛

―オリンピックの後になにも残らないんじゃないか、むしろますますひどいことになるんじゃないか、とか。リアルに思いますよね。

白井:『DANCE TRUCK TOKYO』も、オリンピックに向けて「Tokyo Tokyo FESTIVAL 企画公募」で選ばれた事業ではあるんだけれど、ダンストラックが街々を移動していくことは、祭りのおみこしのように、日常の淀みがちな空気を変化させるきっかけになればと思っています。そこで生まれたざわざわ感が、次の時代を開いていければ、参加する意味もあると思うんです。

左から:東野祥子、白井剛、鈴木ユキオ
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イベント情報

『DANCE TRUCK TOKYO』
Tokyo Tokyo FESTIVAL スペシャル 13
『DANCE TRUCK TOKYO』

2019年9月5日(木)18時30分~20時30分
会場:東京都 新宿中央公園 水の広場

2019年9月22日(日)18時~19時、20時~21時、
会場:東京都 中央卸売市場 足立市場
※2ステージ入替制

2019年10月12日(土)18時~20時
会場:東京都 狛江 多摩川河川敷

2019年10月26日(土)、27日(日)18時~20時
会場:東京都 渋谷 宇田川町空き地

2019年11月4日(月・休)16時30分~18時
会場:東京都 府中 けやき並木通り

※2020年開催情報は別途発表

主催:東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京
企画・制作:全日本ダンストラック協会
共同制作:NPO法人Offsite Dance Project

出演:
東野祥子
白井剛
鈴木ユキオ
ANTIBODIES Collective
川村美紀子
新人Hソケリッサ!
OrganWorks
白神ももこ
田村興一郎
Aokid
小暮香帆
米澤一平
向雲太郎
Abe“M”ARIA
五十嵐結也
きたまり
メガネ(座)
森下真樹 / 森下スタンド
入手杏奈 / 坂本弘道
Somatic Field Project
鉄割アルバトロスケット
ロクディム
しでかすおともだち
ZVIZMO(伊東篤宏×テンテンコ)
KAMOSU
テニスコーツ
Dill
灰野敬二
山川冬樹
Jon(犬)
森川祐護(Polygon Head)
and more

DANCE TRUCK TOKYO オーディション
2019年9月24日(火)13:00~16:00頃
会場:都内の文化施設内 特設会場(応募受付後に詳細をお知らせします)
募集作品:4tトラックの荷台スペースで上演する10分以内のパフォーマンス(ジャンル不問)
選考:東野祥子、白井剛、鈴木ユキオ
参加費:無料
応募期間:2019年9月1日(日)~10日(火)
申込・問合せ先:NPO法人Offsite Dance Project内「DANCE TRUCK TOKYO オーディション担当」

『Tokyo Tokyo FESTIVAL』とは

オリンピック・パラリンピックが開催される2020年に向けて東京を文化の面から盛り上げるため、多彩な文化プログラムを展開し、芸術文化都市東京の魅力を伝える取組です。

『Tokyo Tokyo FESTIVAL スペシャル13』」とは

斬新で独創的な企画や、より多くの人々が参加できる企画を幅広く募り、『Tokyo Tokyo FESTIVAL』の中核を彩る事業として、東京都及び公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京が実施するものです。国内外から応募のあった2,436件から選定した13の企画を、『Tokyo Tokyo FESTIVAL スペシャル13』と総称し、オリンピック・パラリンピックが開催される2020年に向けて、順次展開していきます。

プロフィール

東野祥子(ひがしの ようこ)

ANTIBODIES Collective 振付家・ダンサー。90年代後半より舞台芸術から音楽シーンにて作品を発表。2000 年~2014年「Dance Company BABY-Q」を主宰。トヨタコレオグラフィーアワード[次代を担う振付家賞](グランプリ)など受賞多数。2015年には「ANTIBODIES Collective」を結成。ジャンルレスなアーティストの集合体として国内外にて活動を展開。2011 年から「全日本ダンストラック協会」の代表を務める。

白井剛(しらい つよし)

振付家・ダンサー。1998年「study of live works 発条ト(ばねと)」、2006年「AbsT」設立。2000年バニョレ国際振付賞など国内外の賞を受賞。様々な対象と響きあう独自の身体性、感性と知性をくすぐる作品性が評され、音楽・美術・文学など他ジャンルとのコラボレーションやワークショップも企画される。

鈴木ユキオ(すずき ゆきお)

振付家・ダンサー。世界40都市を超える地域で活動を展開し、しなやかで繊細に、空間からはみだすような強靭な身体・ダンスは、多くの観客を魅了している。モデル、音楽家との共同制作、子供や障害のある方へのワークショップなど、活動は多岐に渡る。2008年トヨタコレオグラフィーアワード[次代を担う振付家賞]等受賞多数。

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