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小林清乃が関心を持つ、市井の人が残した記録物と世界との関係

小林清乃が関心を持つ、市井の人が残した記録物と世界との関係

Shiseido art egg
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:前田立 編集:川浦慧(CINRA.NET編集部)

「戦争の時代の作品を作っておかなければいけない」という「罪悪感」

『Polyphony 1945』で扱われる戦争の時代は、2014年に発表した『無防備な予感』にも登場している。やはり古書店で見つけた古い写真……軍服を着た男性と、セーラー服姿の女性が寄り添うように横たわり、おそらく軍事教練のために銃を構えている写真を素材にした同作に、小林は自ら想像した2人の対話を加えた。

それは、戦争という「大きな物語」に、ひょっとするとあったかもしれない密やかな物語……2人の関係性が変化していく未来の物語、未来への予感を介入させる試みでもあった。もちろんその「予感」とは、恋愛関係の足音だけではなく、女性や子どもも兵士として動員されるかもしれないという、戦争の新たな局面でもあるのだが。

『無防備な予感』2014 写真、映像
『無防備な予感』2014 写真、映像

―質問なのですが、近作では第二次世界大戦時の写真や手紙を多く素材にしていますね。この時代に特に強い関心があるのはなぜでしょうか?

小林:この時代の人々が共有する「戦争」という物語のスケールはとても大きくて、私が関心を持っているパーソナルな語りとの対比が強く出るからだと思います。それと同時に、私の誕生日が終戦記念日というのも個人的な理由になっていると思います。

小さなころは夏休みを祖父母の家で過ごしていたので、戦争を体験した世代の人たちと過ごすことが多かったんです。誕生日として自分が祝われる日であると同時に、戦争に対する記憶とそこからもたらされる様々な感情も抱く一日でもある。その経験に折り合いをつけるためにも、この時代の作品を作っておかなければいけないという気持ちをずっと持っています。

小林清乃

小林は、この意識を「罪悪感」と呼んだ。遠い場所だけでなく、身近な場所でも起こるさまざまな悲しいことに対して、人は手をさしのべられないことのほうが多い。自分が見て見ぬふりをしてきたもの、見殺しにしてきたものに対する折り合いをつけることが作品を作る意味であり、だからこそ名もない人たちの物語りに耳を傾け、作品にするのだという。

小林:他の人の悲しい記憶や経験に耳を傾けて、互いが互いに悲しみを抱いていることを確認し合う。それは、他人の経験を共有することはやはりできないのだと知ることでもあって、だからこそ聞き続けることが必要になる。これを知ることができたのは、自分にとって微かな癒しでもある気がします。まだうまく言い表せないのですが。

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イベント情報

『shiseido art egg 13th』

小林清乃展
2019年8月2日(金)~8月25日(日)
会場:東京都 資生堂ギャラリー
平日11:00~19:00 日・祝 11:00~18:00
毎週月曜休(祝日が月曜にあたる場合も休館)
入場無料

遠藤薫展
2019年8月30日(金)~9月22日(日)
会場:東京都 資生堂ギャラリー
平日11:00~19:00 日・祝 11:00~18:00
毎週月曜休(祝日が月曜にあたる場合も休館)
入場無料

作家によるギャラリートーク

小林清乃
2019年8月3日(土)14:00~14:30
会場:東京都 資生堂ギャラリー

遠藤薫
2019年8月31日(土)14:00~14:30
会場:東京都 資生堂ギャラリー

※事前申し込み不要。当日開催時間に直接会場にお越しください。
※予告なく、内容が変更になる場合があります。
※やむを得ない理由により、中止する場合があります。
中止については、資生堂ギャラリー公式Twitterにてお知らせします。
※参加費無料

プロフィール

小林清乃(こばやし きよの)

1982年生まれ。日藝映画学科卒。市井の人々が残した記録物から、特に日記や手紙などに書かれた言葉、話された会話に関心を持ち、パーソナルな語りを集め展開していくことで、個人の視点からみた世界と俯瞰的または普遍的な観察点からみた世界との内的関係を探る。2017年、第二次世界大戦中に書かれた手紙の音声化を手掛けたボイスサウンド作品《Polyphony1945》を制作。2018年夏はポートランドのレジデンスプログラムEnd of Summerに参加。

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