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大友良英が『いだてん』に感じた、今の時代に放送される必然性

大友良英が『いだてん』に感じた、今の時代に放送される必然性

『大河ドラマ「いだてん」オリジナル・サウンドトラック 後編』、『GEKIBAN 2 -大友良英サウンドトラックアーカイブス-』
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:新妻和久 編集:久野剛士(CINRA.NET編集部)

プロパガンダではなく、戦争へのカウンターとして企画された大河ドラマ『いだてん』

―「オリンピック」というテーマから浮かんだアイデアもあったのでしょうか。

大友:これは実現できなかったことですけど、スタジアムに3000人くらい集めて、思い思いの楽器で演奏する、っていうアイデアもありましたよ。というのは、『いだてん』は最初、嘉納治五郎1人だけが「オリンピック!」と大騒ぎするところから始まって、それがだんだん大勢の人に伝播して1964年の東京オリンピックに結実するという話だから。これって音楽でいえばインディーズが大メジャーになっていくようなものだと思いました。

―その意味で、やはりオリンピックって楽しいだけでなく、国民を「動員」していく政治性も強いと思うんです。それをやはり国民的番組である大河ドラマの題材にするというのは、プロパガンダ的な危うさがあるとも思います。

大友:その通りだと思います。そういわれても仕方ない。

大友良英

―ところが以前、宮藤さんがとある雑誌にこのような寄稿をしていて驚きました。

ひょっとして翌'20年の東京オリンピックを盛り上げるために巧みに仕組まれた国家的プロパガンダじゃない? そんな邪推を、この場でハッキリ否定します。そんな大それた企画だったら俺んとこなんかに来るわけないじゃない。

意外かもしれませんが、こちらから持ち込んだ企画なのです。「大河でオリンピックやりたいんですけどー」とお伺いを立てた時の各所の反応は、総じて及び腰だったようです。
(『Number』970号、2019年1月17日発売号に掲載)

大友:ここまでだったとはこの記事が出るまで知らなくて驚きました。ここに出てないことでいうと、ディレクターの井上さんが最初にやりたかったのは、同じ時代の「戦争」を描くことだったんですよ。

―明治以降の近代的な戦争?

大友:もっというと近代、明治維新から現代のあいだのことを描きたかったんだと思います。それで最初戦争をキーワードにしたのかもしれない。でも戦争ってとにかく超悲惨なことしか起こらない。

 

―日本は参戦してませんが、「最初の近代戦」ともいわれる第一次世界大戦は、戦車や毒ガスなどの最新兵器が導入されました。いまだにヨーロッパ人のトラウマになるくらい悲惨な戦死が相次ぎました。

大友:そうですよね。それと戦場シーンを作ろうとすると予算がいくらかかるかわからない。「悲惨」と「予算」なんてダジャレいってる場合じゃないけど(苦笑)。

じゃあ、その逆ってなんだろう、と考えたときにどうも「スポーツだ!」ってなったようなんですよ。さっきいった『トットてれび』も、じつはテレビを通した近代史がテーマなんだけれど、テレビは明治期には発明されてないからちょっと最近すぎる。おそらくいままで大河が描いてきた江戸時代と現在の間はなんだったんだってことをやりたかったのかな。

―明治期も含めた歴史を描きたかった。

大友:そもそも近代オリンピックは戦争に対するカウンターとして作られたという経緯も興味深い。ただ2020年の東京オリンピック前ってこともあって、ただでさえオリンピック関連のものはIOC(国際オリンピック委員会)の許可がいちいち必要ですから、逆に制作サイドは様々な許可関係にかなり苦労しているようでしたよ。

大友良英

―IOCから認められた企業や団体しか宣伝できないんですよね。

大友:だから実際には、仮にプロパガンダにしたかったとしても、させてもらえない(笑)。ただ、IOCの見解としては歴史に忠実であればオリンピックの負の側面を描いてもよい、ということらしくて、そこはさすがヨーロッパは大人だなというか、ね、どっかの国みたいに事実を曲げてまで、歴史を隠したり作り直すことはしない。

―ヨーロッパには、第一次世界大戦と第二次世界大戦の反省がありますからね。

大友:僕もプロパガンダの危うさを感じたから、最初に『いだてん』の企画をもらったときは正直躊躇しました。でも、井上さんからいまいったような経緯を聞いて、面白いって思ったんです。いま、ちょうど最後の10話分に使う劇伴の作曲作業を進めています。詳しい筋はいえませんが、どんどん厳しい話になってくるんです。戦争もあるし、スポーツに対する理想の挫折もあるので。でも前向きなんですよね。素晴らしい台本ですよ。

大友良英
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リリース情報

『大河ドラマ「いだてん」オリジナル・サウンドトラック 後編』(CD)
大友良英
『大河ドラマ「いだてん」オリジナル・サウンドトラック 後編』(CD)

2019年7月24日(水)発売
価格:3,240円(税込)
VICL-65225

1. いだてんメインテーマ 歓声入りVer
2. 金の男
3. 田畑のテーマ
4. 闘う女子
5. 変貌
6. Far East
7. 新世代
8. グロリアス!
9. 孝蔵のブルース
10. 河童のテーマ
11. にらみあい
12. 夢見る人
13. 覚悟のとき
14. Team TABATA
15. 焼け野原
16. 空のうた
17. 勝のテーマ
18. 新富久マラソン
19. 戦争と平和
20. スタディオン
21. ユートピア

『GEKIBAN 2 -大友良英サウンドトラックアーカイブス-』(CD)
大友良英
『GEKIBAN 2 -大友良英サウンドトラックアーカイブス-』(CD)

2019年7月24日(水)発売
価格:3,240円(税込)
VICL-65226

1. 鈴木先生のテーマ
2. 日常のテーマ
3. テーマ・いざ隠岐島へ
4. クライマーズ・ハイ オープニングテーマ
5. しあわせ色写真館
6. アイデン&ティティのテーマ
7. 浄念のテーマ2
8. トットてれび オープニングタイトル
9. トットの行進曲
10. 兵士とハイビスカス
11. 鬼太郎が見た玉砕 エンディングテーマ
12. 撃てない警官
13. スタントウーマンのテーマ
14. 決闘のテーマ
15. 太陽
16. “やっぱり、かえろう”篇
17. 歌おうマーチ
18. バカボンのパパよりバカなパパのテーマ
19. 風花
20. 兵器のある風景
21. 希求2
22. 三里塚に生きる
23. 対立
24. 虎度門 オープニングテーマ
25. 虎度門 エンディングテーマ
26. クライマーズ・ハイ
27. 島のテーマ

プロフィール

大友良英
大友良英(おおとも よしひで)

1959年横浜生れ。十代を福島市で過ごす。常に同時進行かつインディペンデントに即興演奏やノイズ的な作品からポップスに至るまで多種多様な音楽をつくり続け、その活動範囲は世界中におよぶ。映画音楽家としても数多くの映像作品の音楽を手がけ、その数は70作品を超える。近年は「アンサンブルズ」の名のもとさまざまな人たちとのコラボレーションを軸に展示する音楽作品や特殊形態のコンサートを手がけると同時に、障害のある子どもたちとの音楽ワークショップや一般参加型のプロジェクトにも力をいれ、2011年の東日本大震災を受け福島で様々な領域で活動をする人々とともにプロジェクトFUKUSHIMA!を立ち上げるなど、音楽におさまらない活動でも注目される。2012年、プロジェクトFUKUSHIMA ! の活動で芸術選奨文部科学大臣賞芸術振興部門を受賞、2013年には「あまちゃん」の音楽他多岐にわたる活動で東京ドラマアウォード特別賞、レコード大賞作曲賞他数多くの賞を受賞している。

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