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チーム・東郷清丸からの「Q」 お金、働き方、芸術と社会について

チーム・東郷清丸からの「Q」 お金、働き方、芸術と社会について

東郷清丸『超ドQ』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:今井駿介 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

とにかくやりとりが楽しくて、アドレナリンが出ちゃってる状態って、もの作りの起点だと思う。(高田)

―ツアーと同時進行で開催されている『Q展』では制作時のLINEのやり取りをそのまま展示していますね。いろんな人が関わることの面白さを体現する展示といえるし、音楽だけにはとどまらない多面的な東郷さんの表現を見せる機会にもなっていますよね。

東郷:そうですね。音楽制作の現場って、偉いプロデューサーがいて、厳しいことを言われるみたいな、漫画のようなイメージを持っている人もいるかなと思っていて。僕らの制作は全然そんな感じじゃないんですけど、それって言葉で説明できないから、やりとりをそのまま見せたかったんですよね。

『Q展』の模様
『Q展』の模様
『Q展』の模様

―それでLINEを流出させたと(笑)。でも、これもさっきの「所属」の話とも通じると思うんですけど、昔は自分たちだけの財産を守ったり隠したりする考え方だったけど、今ってそういうことがどんどんオープンになってきて、むしろ共有することによって、新たな価値を生み出すようになってきている。その意味では、非常に現代的だなと感じます。

後藤:最近プロダクトの写真を撮るときに、その製品ができるまでの写真を求められることが多いんです。制作の裏側まで見せる文化になってきているんですよね。

要は、「その商品が好きだったら、それが作られる工程も好き」なんです。逆に言うと、「この工程が好きだから、この商品が好き」にもなり得る。作り手側も、実はそういう裏側をしっかり見せてもいいと自信を持っているし、『Q展』でやっていることもそれに近い気がして、時代性はあると思いますね。

―高田さんは『Q展』の面白さをどう感じていますか?

高田:僕が見てもらいたいのは、3人の姿勢……って言うとかっこつけた感じになっちゃうけど、こういうノリというか、ラフさを感じてもらえたらなって。とにかくやりとりが楽しくて、アドレナリンが出ちゃってる状態って、もの作りの起点だと思うんですよ。

左から:後藤洋平、東郷清丸、高田唯

東郷:自分の状況が上手く整えられてないからこそ、他人のことが変に気になって、機嫌をとらなきゃとか、余計なことを考えちゃう。でも、僕そういうのって無駄だと思うんです。本当はもっとシンプルなほうがお互いハッピーだし、「できない」とか「やりたくない」っていうことを率直に言える環境のほうがいい。このLINEからはそれを感じるというか、みんな率直だし、オープンだし、それを楽しんでいて、打算がないのがいいなって思いますね。

―ここまでのお客さんのリアクションはいかがですか?

東郷:この『Q展』の企画の一つとして、僕、LINEでお客さんと直接やりとりしているんですけど、「自分もデザインをやってる」っていう人が「展示されてるLINEを見たらすごく風通しがよくて、こうありたいと思った」っていうメッセージをくれたりして。僕のファンの人にももちろんですが、もの作りをしている人ならなにかしらヒットする部分があると思うので、ぜひ見に来てほしいですね。

左から:後藤洋平、東郷清丸、高田唯

みんな漠然と相場感で、「周りがこうだからこのくらい」ってふうにチケット代を決めていている。(東郷)

―10月5日に渋谷WWWで開催されるツアーファイナルは、チケット代が5,000円に設定されています。その理由について、東郷さんご自身がnoteで文章を書かれていますが、改めて、値段を決めた経緯を話していただけますか?

東郷:Allrightの仕事で作家やアーティストに対価として支払われるお金と、僕が音楽の現場で知った予算感にかなり差があったんです。音楽のほうが明らかに安かった。

僕がお世話になっている演奏家の人が、「最近暇だから、バイトしようかな」とか言っているのを聞くと、音楽の能力だけで生活が成り立たないという状況はどういうことだろうと思うんです。もちろん、これは僕が見た景色の話なので、そうじゃないフィールドも当然あると思います。でも、少なくとも僕の周りでは演奏家に十分だと思える金額が支払われていなかったし、それを自分の思いどおりにするためには、まずはチケット代だなと思ったんです。

東郷清丸
note『10/5 「超ドQ」ツアーファイナルへ向けて』を読む(ページを開く

―演者に相応の金額を支払うために、チケット代にメスを入れたと。

東郷:僕も以前はそうだったけど、うっかりしていると、漠然と相場感で、「周りがこうだからこのくらい」っていうふうにチケット代を決めてしまいがちなんですよね。でも僕は、なるべく細部まで自分の血を通したいというか、自分の意思を通しておきたくて。

気持ちとしては、今回お支払することにした金額でも十分じゃないと思っているんですけど、必要なお金を全部計算したうえでチケット代を設定したら、5,000円になったんです。「高い / 安い」っていう感覚じゃなくて、ただ「そうなった」。だから、「音楽業界へのカウンター」とか、そういうことでもないんですよ。

後藤:このチケット代にすることで、お金のことを考えるきっかけになると思うんですよね。お客さんがどんなに拍手をしても、演者側からすれば「拍手だけじゃ飯は食えない」って話で、そこを一度考えるいい機会になるなと。そういうことをお客さんの側にもわかってもらうために、清丸がnoteを使って言葉や数字で示すっていうのは、素晴らしいことだと思う。

後藤洋平

後藤:しかも、清丸くらいのポジションでやるってリアルじゃないですか? ちゃんと大きなレコード会社がついている大御所が言っても響かないと思うけど、自分たちでレーベルをやってる清丸が必要なお金を明示するっていうのは、大事なメッセージだと思います。

高田:僕らが音楽業界について無知だったっていうのも大きいと思うんですよね。その意味では、「知らない」っていうのも悪いことではなくて、それによって「僕たちはこう考える」っていうことを示せる。

知らなくちゃいけないこともいっぱいあるけど、「しかし」っていうことを、清丸を通じて提示するっていうのはいいことだと思う。それに、音楽業界のちょっと淀んだ部分の風通しを少しでもよくする存在になれればいいなっていう願いもあるんですよね。

高田唯

後藤:吉本の問題とも通じるよね。

東郷:日本全体にそういう雰囲気があるんでしょうね。

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イベント情報

東郷清丸
『超ドQ』

2019年8月23日(金)
会場:大阪府 NOON

2019年9月14日(土)
会場:愛知県 名古屋 Live & Lounge Vio

2019年9月15日(日)
会場:京都府 京都 METRO

2019年10月5日(土)
会場:東京都 渋谷 WWW

客演:
河合宏知(Dr)
厚海義朗(Ba)
角銅真実(Perc,Cho)
mei ehara(Vo)
KUDO AIKO(お囃子,Cho)
谷口雄(Key)
あだち麗三郎(Sax,Perc)
三浦千明(Tp)
池田若菜(Fl)
吉田悠樹(二胡)
葛西敏彦(PA)
※渋谷 WWW公演のみ

リリース情報

東郷清丸
『Q曲』(CD)

2019年5月29日(水)発売
価格:2,700円(税込)
ALRM-006

1. 201Q
2. 龍子てんつく
3. アノ世ノ
4. L&V
5. 秋ちゃん
6. シャトー
7. Nepenthes
8. YAKE party No Dance
9. 多摩・リバーサイド・多摩

プロフィール

東郷清丸(とうごう きよまる)

1991年、横浜生まれ。童謡からポップス / ロック / ブラックミュージック / ラップなどの音楽のみに留まらず、人の会話や虫の鳴き声や車のエンジンや換気扇の回る音にいたるまで、耳に入るもの全てに感銘を受けながら音楽表現に取り組むソングライター。2019年5月29日、2ndアルバム『Q曲』をリリース。同年10月5日、渋谷WWWにて『超ドQ』ツアーファイナルを開催する。

高田唯(たかだ ゆい)

グラフィックデザイナー、アートディレクター。株式会社Allright代表。1980年東京生まれ。桑沢デザイン研究所卒業。good design companyを経て、2006年Allright Graphics設立。2007年Allright Printing設立。2017年Allright Music設立。東京造形大学准教授。

後藤洋平(ごとう ようへい)

1986年京都府生まれ。桑沢デザイン研究所卒業後、株式会社Allrightを経てフォトグラファーとして活動を始める。
現在gtPとして写真(Photo)題字(Poetic)プロデュース(Produce)などを行う。

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