フォーリミ・GENの本音。自らの手で時代を作るための葛藤と原点

04 Limited Sazabysのニューシングル『SEED』が、なんと「缶」の形態でリリースされた。中には音源と映像のダウンロードパスのほか、トートバッグ、クローバーの種、ジグソーパズルなどが封入されている。ストリーミングサービス台頭以降、音源がモノとして必要とされなくなった時代ならではの「開ける楽しみ」の提案。そして「音楽と生活の接続」への視座がここにはパンパンに詰まっていて、CDが完全に過去のフォーマットになったからこその自由なアートピースに、驚きとワクワクを覚えた人もすでに多くいることと思う。

一方、肝心の音楽のほうはというと、ひたすらフォーリミ節の王道を塗り替えんとする直球3連打である。メロディックパンクを背骨にして、オルタナティブロック台頭以降のギターロックも食い、ラップミュージックまでを消化した歌を聴かせる。そんな「フォーリミ節」のストロングポイントをよりシンプルに聴かせる正面突破だ。さらに、この4人だからこその青春感と誰もが童心に還れる遊び場感は変わらぬまま、重みを増したリズムと大らかな展開がバンドの状況に見合ったスケール感も響かせている。いわば本質と成熟の両方が聴こえてくるのが今作の音楽的な肝であり、今のフォーリミのステップを克明に表すポイントだ。

憧れ続けたHi-STANDARDや『AIR JAM』とも対峙し、2010年代の音楽を次々に食らった上で、メロディックパンクバンドとしての原風景を一直線に鳴らした。そうして次々と憧憬を超ていった先に見据えているものとは、なんなのか。ここまでに果たせたこと、果たせなかったこととはなんなのか。缶でのリリースが表すように、人のライフスタイルとカルチャーにまで攻め込もうとする意志。缶に宿した想いから今の迷い。さらにはフォーリミの歌の核心にある「少年性との対話」にまで踏み込んで、全部を赤裸々に聞いた。もっと好き放題に、もっと素直に。もっと自由に行け、フォーリミ。

作品をゲットした後も育てていける楽しみを作って、生活の中に入り込める音楽の在り方を提案したかった。

―『SEED』というシングルが、「缶」という形態でリリースされました。いきなりですが、これはどんな意志を込めてのものなんですか。

GEN:お菓子の「チョコボール」で、金のエンゼルや銀のエンゼルを集めるとおもちゃの缶詰がもらえたの覚えてます?

―あー、「キョロちゃん缶」だ。

GEN:そうそう(笑)。あの缶詰がもらえた時って嬉しいし、「中身はなんだろう」っていうワクワクがあったじゃないですか。僕自身もリスナーもストリーミングサービス中心の環境になった今、シングルをリリースするにあたって、僕らがCDの封を切る時に感じてたあのドキドキを今の人たちに伝えたくても無理があるなって思ったんですね。

その中でどうしたらワクワクを感じてもらえるかなって考えて、缶でリリースしたいと思ったんです。それに、僕自身もデザインの可愛い缶をとっておいてペン入れにして使ってたりするので、モノとしても人の生活に入り込めるんじゃないかなと思ったんですよね。

GEN
04 Limited Sazabys(ふぉー りみてっど さざびーず)
GEN(Vo,Ba)、HIROKAZ(Gt)、RYU-TA(Gt,Cho)、KOUHEI(Dr,Cho)による4ピースロックバンド。2008年、名古屋にて結成。2015年4月に1stフルアルバム『CAVU』でメジャーデビューし、2016年にはバンド主催の野外フェス『YON FES 2016』を地元・愛知県で初開催。2018年には結成10周年を迎え、東名阪アリーナツアーを行なった。同年10月10日には3rdフルアルバム『SOIL』を発表し、2019年9月4日にシングル『SEED』を缶の形態でリリースした。9月29日にはさいたまスーパーアリーナでの単独公演『YON EXPO』を控える。

―缶の中には、音源と映像のダウンロードパス、トートバッグ、ステッカー、ジグソーパズル。そして「四つ葉のクローバーの種」が入ってる。こうして音楽を音楽以外のものと紐づけて、フォーリミの音楽を人の生活に接続させようとする意図は、今のフォーリミがどういう時期にいると思ったからなんですか。

GEN:それこそ今回は『SEED』っていうタイトルですけど、クローバーの種を入れたのも、作品をゲットした時がピークになるんじゃなくて、「その先があるもの」にしたかったからで。育てていく楽しみや、花が咲いた時の嬉しさ。ワクワクのさらに先を作って、生活の中に入り込めるような音楽の在り方を提案したかったんですよ。

たとえば僕が中学生くらいの時は1枚アルバムを買ったらそれを一生聴いてたんです。ピンとこない作品も、「3,000円の元をとらなきゃ」っていう気持ちでとにかく聴いて、それで好きな音楽の幅も広がっていった。だけど今は1,000円前後で聴き放題の時代で。噛めば噛むほど出てくる味に気づく前にスキップされちゃうことが多いじゃないですか。だから、自分の中で音楽を育てるのと同じように、種を育てる楽しみがあったらいいと思ったんです。種を育てながら、僕らの作品も人の生活の中に長く存在できるようにしたかったんですよね。

―CDっていうフォーマットが過去のものになったからこそアートピースとしての可能性を広げられるのは、音楽に紐づくカルチャーを伝えていくという意味でも素晴らしいことですし。

GEN:そう思います。やっぱり、こうして生活に寄り添える形にして残すのが、結果的に音楽として長く楽しんでもらえることに繋がると思ったんですよ。その人の生活の情景もくっつけて音楽を聴いてもらえると思うので。

―先ほどもストリーミングサービスの話が出ましたけど、曲のスタートから30秒以内にスキップされる率が話題になったり、それに伴って歌始まりの曲がより一層増えたり。ソングライティングも時代に沿って変化してきたって話してくれるアーティストも多いんですね。

GEN:ああ、そうですよね。

―でもフォーリミの場合は、ストリーミングサービスの台頭を横目に見ながら缶という形で間口を作りつつ、実際の音楽の中身はとことん正面突破のメロディックパンク3連打じゃないですか。ご自身では、音楽的にどういう作品になったと捉えられてますか。

GEN:ほんとにそうで、曲に関しては1音目から「フォーリミだな!」っていう感じですよね(笑)。今回は3曲ともタイアップがついてるんですけど、お話をくれたのが、これまでの04 Limited Sazabysをちゃんと知ってくれた上で「フォーリミが好きです」って言ってくれる人たちで。だからこそ奇を衒うことなく、真っ向からフォーリミらしいものを作ろうと思ったんですよね。だから、今はまだ『SOIL』の延長戦上にいるっていう感じだと思います。

04 Limited Sazabys『SOIL』を聴く(Apple Musicはこちら

―『SOIL』のリリースから約1年が経った今、改めてあのアルバムと今の04 Limited Sazabysをどう位置付けられてます?

GEN:ライブハウスで活動してきたバンドとして、そして、これからもライブハウスで活動していくバンドとしてぴったりなアルバムが『SOIL』だったと思います。メロディックパンクに憧れて出てきた自分たちが、いろんな音楽を吸収した上で、メロディックパンクから始まった自分たちの原風景をちゃんと入れられたというか。

それにアリーナツアーまでやれたことでむしろ、やっぱり自分たちは人の顔が全部見える場所(ライブハウス)でやっていきたいバンドなんだって明確になってるのが今なんですよ。そこが自分たちらしくて潔い部分として出たし、だからこそメロディックパンクのアルバムになったと思うんですよね。

「憧れを追いかける」「どこかを目指す」というより、音としても存在としても自分たちを確立する時期に入ったんだなって。

―その一方で、フォーリミの活動スケールやライブの規模もどんどん大きくなっていく。9月29日にも、さいたまスーパーアリーナで『YON EXPO』という史上最大規模の単独公演がある。『SOIL』を経た今は、バンドのステップとしてどういう時期なんだと思ってます?

GEN:正直、そこが自分でも定まりきってなくて。去年アリーナツアーを回ってみて「ここは僕たちの主戦場じゃない」っていうことがわかった後にライブハウスツアーを回ってみて。そこでも思ったんですけど、やっぱり自分の中で「もっとデカいところでやりたい」っていう気持ちは特にないんですよ。

―ないんだ。

GEN:そう、ないんですよ。武道館もアリーナもできたし、『YON FES』も毎年やれてる。で、そこまで叶えてみて、今は「これをカッコいいカルチャーにして、どれだけ長くみんなと遊べるか」っていうフェーズに入ってる感じがしていて。「次はここに向かってる」っていうのが、単純にライブの規模云々ではなくなってきたんですよ。

GEN:会いたかった先輩にも会えたし、ハイスタと2マンもできて、『AIR JAM』にも出られた。そうなった時に、「憧れの存在を追いかける」とか「どこかを目指す」というより、音としても存在としても自分たちを確立する時期に入ったんだなって。フェスシーンとか、2010年代に盛り上がったバンドの1組とかじゃなくて、ちゃんと独立したい。だからこそ目標が具体的に描きにくいのが今なんだろうなって。

―率直に言うと、自分たちの目標には絶対的に勝てたけど、時代はまだひっくり返せてないですよね。

GEN:そうなんですよ。自分が憧れた『AIR JAM』みたいに、自分たちだけのカルチャーを作りたいって今もずっと思ってるんですよ。「フェスシーン」と呼ばれる場所で勝ち上がってきた自覚もあるけど、それが本当の意味で「勝ち」だったかというとそうじゃない。だって「フェスシーン」と言っても、それは僕たちが作ったものじゃないから。今のところ何も確立できた実感はないっていうのが正直なところなんです。

たとえばハイスタがPIZZA OF DEATHを作って、『AIR JAM』をやって、時代そのものになったこと。そういうことを僕らもやりたいからこそ、追いかけて憧れるだけじゃなくて、自分たちだけの方法や発想で何かを作り出さなくちゃいけない。『AIR JAM』でもライブができて、憧れに追いつけたと思ったけど……でもそれは、自分たち自身で作れたって言えるものが僕らにはまだないんだなって実感する機会でもあったんですよ。

やっぱり、自分たちのリアルを表現できる場所やカルチャーを作るっていうのが、「確立する」っていうことだと思うから。

―フォーリミって、歌自体をリズムとして機能させたり、ソリッドなだけじゃないデザイン性を曲にもたせたり、アートの分野を飲み込んだりしながらメロディックパンクの型を刷新してきたバンドだと思うんですね。でも、そのインパクトを超えたところでの勝負が始まったのが今ですよね。

GEN:やっぱり『YON FES』以外は全部、僕らの作ったものではないんですよ。なんなら『YON FES』も、言ってしまえばハイスタや10-FEETが作ってきたものを咀嚼して、そこで自分たちの色をどう出せるかっていう考え方だったので。もちろん自分たち発信で作ったのが『YON FES』だけど、火種がある状態で、その火を大きくしただけな気がしていて。だけどそれだけじゃなくて、この世代として提案できるもの、人のライフスタイルにまで侵食するには何が必要だろうって考えたのが『SEED』だったんだと思います。

―たとえば『AIR JAM』は、そこになかった遊び場を自発的に作ろうという意志がストリートカルチャーの根本と結びついて、マイノリティパワーがコアのコアまで行くことで爆発した。『京都大作戦』はよりローカルに特化して、ライブハウスのような遊び場や、生きてきた場所を誇れるためのものになった。だからこそGENくんも、自分の世代の行動原理として「缶」を通して新しい提案をしようとしたっていう。

GEN:そうですね。だからこそ、音楽的にはどんどんシンプルになってきたと思うんです。新しい提案があったりタイアップがついたりしてる作品だからこそ、中身は直球勝負というか。だって、もし「タイアップを使ってお茶の間を侵略しよう」っていうバンドだったら、もっと着飾って背伸びするタイミングだと思うんですよ。

でも僕は、そうやって着飾ってもバンドを楽しめなくなるってわかってるんです。加工した瞬間に自分たちじゃなくなっちゃう気がするし、リアルじゃなくなった瞬間に、僕がやりたかったロックバンドとは違うことになるんです。やっぱり自分たちのリアルを表現できる場所やカルチャーを作りたいっていうのが、「確立する」っていうことだと思うんですよ。そういう気持ちが、そのまま今回の曲のシンプルさと素直さに出た気がしますね。

今度は、ここまで得てきたものを一度捨てたい気持ちが生まれてるんです。

―やっぱりリアルっていうのは自分の中で大事だし、鎧を纏うんじゃなくて脱ぐためにロックバンドはあるんですか。

GEN:そうですね。リアルであることはめちゃくちゃ大事です。

―たとえば“Puzzle”は非常に大きな8ビートですし、サビでリズムを落とす展開も相まって、グッとスケール感を増した曲だと思うんですね。その中で<今を取り戻せ><何処にあるリアル>と歌われていて。このスケール感の中でも、より一層自分を鼓舞して、原点に向き合う歌になっているのが面白いと思ったんです。自分では、どういうものが表れてきた歌だと思います?

GEN:今は加工されたものばかり増えているように見えるけど、やっぱり生々しいものじゃないと、人の心にドキドキや衝動を生めないと思うんですよ。それはサウンドやライブに限らず、タイアップに関しても、ちゃんと人と人で繋がったものじゃないと心が動かない。“Puzzle”は『ガンダムブレイカーモバイル』のテーマソングですけど、その話をくれた方は、元々LD&K(04 Limited Sazabysが初期に所属していたレーベル)にいたんですね。そこからの繋がりで僕らにタイアップのお話をくれて。

そういう繋がりでいただけたお話だからこそ、タイアップの作品にも感情移入できたり、寄り沿おうと思えたりするわけで。だから今回は、言われたようにサビのリズムで悩んだんです。サビで一気にドコドコ行きそうな展開だけど、『ガンダム』の宇宙的な世界観に合うような広いイメージがあったから。それでサビのリズムが今までにない感じになったと思うんですけど。

―フォーリミらしい青春性はフレーズやメロディから感じる一方、ここで選ばれているビート感やリズムには成熟も同時に感じられるんですよね。そのあたり、自分の変化についてはどう思います?

GEN:最初はサビのリズムがハーフだったんですよ。でも、「これは今までもやってきたな」と思ったんです。それでリズムを落とそうと思って。

そういう選択をできたのは、確かに変化してきたところなのかもしれない。なんかこう……前までは、歌のエネルギーは「届きたい」とか「掴みたい」っていうのがほとんどだったと思うんですよ。

3rdアルバム『SOIL』収録(2018年)

―そうですよね。

GEN:だけど今は、人には届いている手応えもあるし、一旦は目標にしてきた場所にも行けた。そうなると、今度はここまで得てきたものを一度捨てたい気持ちが生まれてきていて。知識とか、小手先の技術とか、手に入れたものを。

―音楽的にも精神的にも一度脱いで身軽になりたいっていう。

GEN:そうそう。<今を取り戻せ>っていうのは、そういうことだと思うんですよ。初心とか、無邪気な初期衝動とか。それを取り戻したいっていう気持ちで。だけど、その時の年齢やその時の状況に戻るのは現実的に無理なこともわかってる。だから、もう捨てていくしかない気がしていて。

―さっきの話で言うと、素っ裸になった自分が一番リアルだっていう話ですよね。

GEN:嘘をつかないでいい、取り繕って疲れる必要がない――そういうリアルさを求めるからバンドをやってきたんですよね。だから、一度いろんなものを捨てたいなあって。そういう願いが出てきちゃってるのが“Puzzle”だなあって思います。

04 Limited Sazabys“Puzzle”を聴く(Apple Musicはこちら

―ただ、敢えてこういう聞き方をしますけど、タイアップは便利なものだっていう発想もあるじゃないですか。

GEN:わかります。逃げにもなるし、変わることへの言い訳もできるっていうか。

―そうそう、いい悪いの話ではなく、自由に変わっていくことができるっていう話で。実際GENくんはいろんなカルチャーや音楽を消化してきているし、新たなトライもできる。それでもフォーリミが「変わらない」っていう選択をしたのが今回の作品だとも言えるし、その中に青春性だけじゃない重みも生まれている。ここに、フォーリミの本質も、分岐点に対する葛藤も全部がリアルに出ているなあと思ったんですよね。

GEN:でも、ただ新しさを目的にするだけじゃ、気持ちが乗らないんですよね。ちゃんと悩んで、ちゃんと乗り越えてきた道のりも入ったものじゃないと本当の気持ちでは歌えないんです。

自分の心から出た歌を歌いたい……そこにこそ本当の気持ちや熱量が宿ると思うんですよ。それに、今はフェスによってロックバンドが不特定多数に対するサービス業みたいになっちゃったけど、やっぱり自分の本心とかリアルを求めるのが根本だと思うから。

―ヒップホップにロックが負けているって耳にタコができるくらい聞く今ですけど、その状況の要因は、歌の面で言ったらそこにあると思うんですよね。自分が何を伝えたくて、何を思って生きているのかを全力で示す。それが同じ心の形の人に届くっていうのが、歌の根本だと思うし。「みんな」っていう言葉が何を示すのか、その概念もぶっ壊れてるのが今だと思うから。

GEN:ほんと、そうですよね。サービスしたもん勝ちみたいな状況はやっぱり違うと思うんですよ。その点、自分たちはどんなに苦しくても自分の心に向き合って歌ってきた自覚はあるので。それが大事なのは変わらないと思ってます。程よくメロディが切なくて、その上で自分の今をどれだけ素直に歌えるか。それがずっと大事ですね。

―切なさはご自身の中でとても大事なものなんですか。

GEN:すごく大事ですね。僕が好きになるアーティストを思い返してみても、どこかにセンチメントが入っているものが多いんですよ。自分のメロディに対しても、どこかで切なさが欲しいと思ってしまうし。

―それは、切なさが自分のどういう琴線に触れるからなんですか。

GEN:なんだろうな……音楽って、基本的にはひとりで聴くことが多いじゃないですか。そういう時に寄り添える要素が欲しいと思うし、だからこそ「ひとり」が持っている成分としての切なさが入ってくるのは大事だと思う。それに、年々、部屋にひとりで音楽を聴いている人に向けて歌う感覚が強まってるんですよ。ひとりで音楽を聴いて、誰にも邪魔されず想像を広げていた頃の自分に対して歌ってるような。

無根拠に信じるほうが限界がない。子供心のそういう部分に憧れるんですよ。

―たとえば“Montage”を聴いていても、「知識や技術も捨てたい」とおっしゃった通り大人になって賢くなっていく自分との対峙や焦燥が歌になっていると感じたんですね。逆に言うと、ひとりで音楽を聴いていたGEN少年がずっと歌の原風景にいるということですか。

GEN:本当にそうで、僕は自分の中の少年性とか青春性と対話するように曲を書いてきたなって思うんです。ありのままのリアルが大事だっていう話もしたけど、それこそ子供って嘘をつかないし、本当にありのままで目の前の世界に接して、ひとりの部屋でも無限の想像を広げられるじゃないですか。その純粋性に憧れて、それが一番ありのままの「リアル」な姿だと思ってきたんですね。

でも、大人になって知識がついていくにつれて、GEN少年が自分の中からいなくなる怖さも増えてきた気がするんです。背伸びをした瞬間にGEN少年が愛してくれる自分じゃなくなるんじゃないかって……「GEN、賢くなって面白くなくなったな」って言われる気がする。もちろん僕が頑張ってきたことを認めてくれてるだろうし、「ヒーローになれたな」って言ってくれてるところもあると思うけど……その少年の純粋性から離れるのが怖いんですよね。

GEN:やっぱり僕は、子供のほうがアーティストとして優れてるって思っちゃうんですよ。たとえば音楽を聴いたり絵を見たりした時の想像力でいっても、子供の自分だったらもっとすごい想像と創造ができるんだろうなって思うし。

―たとえば知識を根拠にした「こうすれば空を飛べる」より、根拠がなくても「空を飛べる」と信じる力のほうが無限ですからね。

GEN:そうそう! 無根拠に信じるほうが限界がない。子供心のそういう部分に憧れるんですよ。その無垢さをもう一度手に入れたいって思いながら手を伸ばして、でもやっぱり難しいなあっていうのも理解してる。それが今なのかもしれないです。で、これはちょっと違う話かもしれないけど……僕、小さい頃に共感覚があったんですよ。

―ん、共感覚って?

GEN:嗅覚や聴覚や視覚がごっちゃになって、匂いに色がついたり、音に匂いがついたり、ビニール袋のクシャッとした音で体が痒くなったりするようなことを言うみたいなんですけど。小さい頃はそれがあって、自然と違うところに飛んでいけてたんですよね。

でもそれが大人になってから失われていってて。だからこそ僕は、自分の中の少年性とか子供心への憧れが強いと思うんです。知識よりも理論武装よりも先に純粋な感動を表現できる自分でいたいんですよ。それは改めて強く思ってるし、結局は自分の素直さを求めて鳴らしてるんだなっていう原点に戻ろうとしてるというか。

で、「ありのままの自分でいい」っていうのは、今みたいに自分の声を押し殺していたほうが得策だっていう空気がある世の中だからこそ伝えたいことでもあるんですよ。

―それはそのまま04 Limited Sazabysの闘い方であり、パンクに惹かれた原風景にも重なる部分ですか。

GEN:そうですね。04 Limited Sazabysは、パンクを再提示する資格のあるパンクバンドだな、って思うので。こうやって音源を缶で発売するにしても、昔だったら「こじらせてんな」で終わってただろうし(笑)。でも、そういう提案をしてもいいところまでは来られたと思ってるし、そもそもそういう遊び心が許されて、何それって思われることをできるのがロックバンドだと思うんです。そういう意味で、やっぱり04 Limited Sazabysじゃないと出せない青春感があるんだろうなって。それは、自分が大人になればなるほど実感できていることでもありますね。

―そうですよね。そういう核が変わらないままであれば、青春性だけではなく大人になっていくことも音楽としてのストーリーになると思うし、そういう変化を遂げていくことだって全然OKになっていくのがこれからだと思うんですよね。

GEN:そうですよね……。どうしたって大人になっていく自分たちを潔く表現していくことも大事だと思う。今はまだ答えが出ないし迷ってはいるけど――でも、その時を正直に表現できたらいいなって。そう思ってます。

―“Cycle”には<あの躓きも 今じゃ輝きと握手して / ちゃんと 蒔いた種 芽吹いたね>っていうラインがあって。すごく正直に今の迷いも話してもらったけど、それでもやっぱり、悔しさを超えて今があるんだと歌えているところに輝きが宿ってると思うんですよね。

GEN:……そこは、一番恥ずかしい歌詞ですね(笑)。

04 Limited Sazabys“Cycle”を聴く(Apple Musicはこちら

―いや、むちゃくちゃいいですよ、ここ。

GEN:恥ずかしいけど、言われた通りです(笑)。なんとか、少年の頃の自分も認めてくれるんじゃないかって思えるくらいまでは来られた。だからこそ次にどこへ行くのか、っていう気持ちも全部正直に表現できたと思うので。自分たちを肯定する気持ちもあるし、そもそも音楽でご飯が食べられてることだけでも幸せな状況なんですよ。だからこそ、それが当たり前だと思わずにやっていきたいと思ってて。

―人って、満足した瞬間に止まってしまうものですよね。

GEN:そう思います。周りを見ても、「当たり前じゃないんだな」って思わされることが今年はたくさんあったんですよ。wowakaさんが亡くなったり、猪狩さん(HEY-SMITH)も病気になってしまったり。当たり前が続くと思ったら、そうじゃない。だから今に誠実に、全力でやるしかないんです。幸せが何かって考えることもあるけど、自分にしか成し遂げられないことをやり切れた時にそれを感じられるのかなって。そう思ってます。

―そして、9月29日には『YON EXPO』という、史上最大規模でのワンマンライブがあります。先ほどの話で言うと、ライブハウスのバンドが行う特別編と捉えてもいいんですか。

GEN:そうですね。あくまでライブハウスのバンドであることは絶対に変わらないけど、そういう生々しさだけじゃないアートの部分や遊び心も僕らは持っていると思うので、それもお客さんに楽しんでもらえる日になればいいなと。

それに、単純にライブハウスには来られないお客さんも増えてきたんです。手紙をくれる子が7歳だったりとか、僕らと同世代の人も親になっていたりとか……そういう人も来られるような日にしたいと思ったし、それこそ自分たちが親世代になったんだなって実感することが、これからの子供や未来のことを考えるパワーにもなるんですよね。

―カルチャーって、そうやって人から人に繋がるバトンによって形成されていくものですよね。そこに、新しい夢とか未来への視点が生まれていくものというか。

GEN:子供たちに向けてっていうのは、特に大きいんだろうなって。そういう意味での未来への気持ちが生まれてきたからこそ、さいたまスーパーアリーナでやろうと思いましたね。

―フォーリミが明確に次のフェーズに入った時期だと思うし、原風景と変化の間を鳴らしたのが今回の作品だと思うし。だからこそ次のステップとしてどんな日になるのか、ピッタリ密着しようと思ってます。

GEN:了解です。楽しみにしててくださいね!

04 Limited Sazabys『SEED』を聴く(Apple Musicはこちら

リリース情報
04 Limited Sazabys
『SEED』(CD)

2019年9月4日(水)発売
価格:2,376円(税込)
COZA-1574

1. Puzzle
2. Montage
3. Cycle
※ダウンロードカード封入

MOVIE:
『YON FES 2019 live & documentary』
※ダウンロードカード封入

イベント情報
『YON EXPO』

2019年9月29日(日)
会場:埼玉県 さいたまスーパーアリーナ

プロフィール
04 Limited Sazabys (ふぉー りみてっど さざびーず)

GEN(Vo,Ba)、HIROKAZ(Gt)、RYU-TA(Gt,Cho)、KOUHEI(Dr,Cho)による4ピースロックバンド。2008年、名古屋にて結成。2015年4月に1stフルアルバム『CAVU』でメジャーデビューし、2016年にはバンド主催の野外フェス『YON FES 2016』を地元・愛知県で初開催。2018年には結成10周年を迎え、東名阪アリーナツアーを行なった。同年10月10日には3rdフルアルバム『SOIL』を発表し、2019年9月4日にシングル『SEED』を缶の形態でリリースした。9月29日にはさいたまスーパーアリーナでの単独公演『YON EXPO』を控える。



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