自分の呪縛を解放しようよ。あっこ、YUKARI、みなみのワンライフ

まずはあえてこう書こう。「究極のおてんば娘、YUKARIが引っ掻き回すオルタナパンク! リミエキことLimited Express(has gone?)のニューアルバムが大好評!」と。無条件に「おお~」とアガれる人は、自分の言語感覚を改めて疑ったほうがいいかもしれない。メンバーが入れ替わり表現の仕方も徐々に変わってきたリミエキ、最新作『perfect ME』には初めて歌詞に意味と実感が込められ、YUKARI(Vo)の意識ははっきりと未来に注がれている。

中でも印象的なのは“フォーメーション”という1曲で、8月に行われた同曲のリリースパーティーは、ゲストに招かれたあっこゴリラ、なかむらみなみ(元TENG GANG STARR)がステージに登場し互いに抱き合うスペシャルな一夜になった。出自も世代も違う3人が作るはどんなシスターフッド? それは「何々イズム」で済まされるもの? フィールドの違う表現者同士の見事なフォーメーションをここに再現しよう。

女の子であるがゆえの嫌な思いをいっぱいしてきた。本当にそのことで立ち上がれなくなってる、前に進めなくなってる子を助けてあげたい。(YUKARI)

左から:あっこゴリラ、YUKARI、なかむらみなみ

―『フォーメーション』のリリースパーティー(2019年8月25日に東京・下北沢のTHREEで開催)では、3人がステージで大号泣したと聞きました。

YUKARI:そうそう。あれはヤバかった(笑)。

なかむら:めっちゃ感動した。すっごい解放された気持ちになれた!

あっこゴリラ:気づいたらもう号泣。最後YUKARIさんに抱きついてた。

YUKARI:なんか、自分がすごく我慢してたことをあのとき知ったというか。「頑張ってたんや、自分」って初めて思った。それまで音楽やるのは当たり前やったし、新しいことやるのも当たり前、バンドやってたら周りに男の人が多いのが当然で。いろんなことを肩肘張りながらやってたんやって、自分でも気づいてなかった感情が涙と一緒に溢れてきて。お客さんも含めて「ここにこんな仲間がいた!」と思えたのが大きかったかな。

―この“フォーメーション”は、そもそもビヨンセの“Formation”のアンサーソングとして作られたんですよね。

YUKARI:そう、あの曲はもう「立ち上がれ女の子!」って感じじゃないですか。単純にカッコよかったし、そうだよなと思って。あれからけっこう年数も経つけど、自分の中にずっと引っかかりはあって。ただ、私はずっと抽象的な、あまり意味を持たせない歌詞を書いてたんです。「音楽はちょっとした魔法みたいなもの」って言うことでカッコつけてる自分もいたんだけど、以前自分がライブやってる最中に痴漢に遭ったことがあったんですね。

それで痴漢撲滅のステッカーを作って、いろんなライブハウスに貼ってもらったり、そういう活動も少しずつできるようになって。自分の生活とか社会が音楽にリンクしてきて、歌詞にも自分の思ってることが入ってきた。言いたいことが初めて形になったのがこの曲なんです。時間かけながらやっと外に出てきたメッセージ、みたいな感じ。

―演者に痴漢とか、ありえないくらい腹立たしい話ですけど。それでもこの“フォーメーション”は怒りをぶつける曲ではないですよね。

YUKARI:どっちかというと、前に向かって行こうっていう意識かな。それこそ痴漢に遭ったり、女の子であるがゆえの嫌な思いをいっぱいしてきたから。もちろん年齢も重ねてきたこともあるし、わたし個人としては少々のことではヤラれないんです。だとしたら、本当にそのことで立ち上がれなくなってる、前に進めなくなってる子を助けてあげたい。おこがましいですけど、自分を鼓舞する意味も含めて。

私、今までは「そんなの平気!」って思ってたんですよね。でも自分がやられてみたら……やっぱり平気じゃなくて。それを実感したときに「こんな思いを自分以外にさせたくない」と思って。なんとかしたいと思った、切に。

YUKARI
Limited Express(has gone?)(りみてっど えきすぷれす はず ごーん)
ライブではフロアを駆け回るパフォーマンス、脚立の上で歌わせたら世界一?!Limited Express(has gone?)のボーカル。2003年にジョンゾーンのTZADIKから1stアルバムをリリースしたあと、編成を変えながらも進化し続け、その活動はとどまることがない。フィメールバンド、ニーハオ!!!!でもライブハウスをチアアップし続ける一方、一児の母でもある。2017年、音楽と家族、子育て、仲間たちに焦点をあてたドキュメンタリー映画「MOTHER FUCKER」ではそのパワフルな生活が赤裸々に描かれた。2019年10月にはLimited Express(has gone?)の6枚目のアルバム「perfect ME」がリリースされ、収録曲「フォーメーション」では、女性をエンパワメントする歌詞とそのMVが各所で話題となる。
Limited Express(has gone?)『perfect ME』を聴く(Apple Musicはこちら

―10代で痴漢に遭ったら、ライブハウスに行くのも辛くなりますよね。

YUKARI:なると思う、たぶん。もちろん男性でも痴漢されるし、一概に女性と括りたくはないですけど。でも強い男の人には想像できないような気持ちを女の子は持っていると思う。夜とか、駅から帰る道、ちょっとした距離でもドキドキすることない?「あれ? 私についてきてるわけじゃないよな?」とか。そんなこと思って生活してる男の人、たぶんいないと思うんですよ。そんな気持ちずっと持ち続けなあかんのかな? って。まぁ今変えられることってそんな大したものじゃないかもしれないけど……。

あっこゴリラ:いや、絶対できる! 変えられる。私も自分にかかってる呪縛を取るためにラップをしてるんです。昔の自分に向けて。「これが当たり前だと思ってた」「それによって自分を押し殺してた」みたいなものを取るために。

はみでたってOK! 自分をREPする、自分が自分であること。それが私のフェミニズム。(あっこゴリラ)

YUKARI:まだあると思う? その呪縛。

あっこゴリラ:個人的にはどんどんラクになってきてるけど、まだ全然ある! 無意識下で内面化しちゃってることとか。それに気付いた瞬間にゾッとする。で、曲を作るとめちゃスッキリする。

なかむら:あぁ、それはわかる。誰かひとりを助けるっていうより「自分はこうできるよ!」「こういうことしていいんだよ!」っていう選択肢を見せてるのがお2人だなと思いますし。

あっこゴリラ:自分のためにやってるんだけどね! でも、それによって誰かが「パワーになったよ」って言ってくれた時に「あ、生きてていいんだな」「勇気だして良かった」「ラップやって良かった」って気持ちになる!

あっこゴリラ
ドラマーとしてメジャーデビューを果たし、バンド解散後、ラッパーとしてゼロから下積みを重ねる。2018年に「再」メジャーデビューを飾り、台湾で撮影を敢行した“余裕”など、国内に限らず海外で制作したMVも話題に。さらに、同年12月1stフルアルバム『GRRRLISM』をリリース。ちなみにゴリラの由来はノリ。

―あっこさんが言うように、社会の価値観が変わりだしたのはほんと最近ですよね。「#MeToo」運動とかも含めて、やっと声が上がりだした。

あっこゴリラ:うん……フェミニズムに限らず、自分たちの居場所は自分たちで作ってこうっていう動きはしていきたいと思う。

YUKARI:そう。私はたまたま女性やから、女性の立場が揺らぐようなことに反応しやすいし、声にもしやすいけど。でもジェンダーで考えて女性が弱者やとすれば、弱い者が快適にいられる場所は、たぶんみんなが快適にいられる場所ですよね。そういう場所を作っていきたいと思う。それはフェミニズムとか、そんな大きいことじゃなくて。だけど「それがフェミニズムだね」って言われたら「そう、こういうこと」って思う。「怖くもないし、難しくもない。このパーティー感が私たちのフェミニズム」って感じかなぁ。

―今の会話、まさにフェミニズムという言葉の難しさですよね。イメージが独り歩きして簡単に使えない。みんなが構えるものになってしまっている。

あっこゴリラ:そうだよね。でも本当はすごく身近でラフに向き合えることだと思ってる。はみ出してもOK! 自分をREP(represent)すること、自分が自分であること。それが私のフェミニズムだと思ってる! らしさの呪縛を解放しようとする、この作業に名前をつけるとしたら、それはフェミニズムだし、わかった瞬間はすごく嬉しかったんです。「あぁ、昔からもやもやしてたコレはフェミニズムだったんだ!」って。

だから私はフェミニストを名乗ってるけど、別に正しい立派な人間ってわけじゃないし、ただ素直に思ったことをラップしてるだけ。私は私でいいって思ってる。

YUKARI:確かに。フェミニズムにも私らしさがあっていいよね。だけど、「フェミニストはこうでしょ」って言われることは多いからね。

―あの面倒くささの正体って何でしょうね?

あっこゴリラ:私、フェミニズム関連の本を読むと、「ああ、やっぱそうだよね! このハテナは飲み込まなくていいよね!」って勇気もらって。でも勇気だして言ってみたら「ヒステリー」とか「めんどくさい奴」とカテゴライズされてしまったりすることもある。その怒りってゆうのはみんな何かしらあるんじゃないかな。「だから言えない、この悲しみは」みたいな。こんなに空気が読めない自分は最低だって、昔の自分は思ってた。だから私はそこを肯定したい。

社会ってやっぱり喜怒哀楽NGなんだなって日々感じる。少なくとも喜と楽以外NG。でも、それぞれに喜怒哀楽の隙間にある形容できない感情がたくさんあって、それを出してもOK! って言いたい。そういう装置や場所をガンガン作っていきたいし、そういう人を見るとめっちゃ嬉しくなる。

あっこゴリラ『GRRRLISM』を聴く(Apple Musicはこちら

違うのがダメだと思って隠すから、誰かと比べちゃうんですよ。もう比べる時代は終わったと思う。(あっこゴリラ)

なかむら:今のであっこさんがフェミニズムって言ってる意味がわかりました。私はもともとそういうのを意識することがなくて、でも家がなくて親戚の家に住ませてもらったとき、そのお家の方が「女の子なんだから」って言うんですよ。髪の毛も染めるなとか。私は眉毛がずっとないんですけど、剃るのも「女性としてよくない」って。あとショートパンツもはしたないとか、自分がやること全部否定みたいな。それで「結婚しなきゃいけない」「働くのは後でいいから、まず結婚して子供産むのが役割だ」みたいな。

当時は作詞とかする前だったから、どうしていいかわからなくて。バイト用の黒いヅラ被って、眉毛もちゃんと描いて、ベージュのアイシャドウとか、いわゆる普通の人たちが喜ぶメイクをして。で、うぜぇって思うこと口紅でガーッと身体に書いて、全裸でその人たちの前に出ていったら通報されて一一。

なかむらみなみ<br>天真爛漫な見た目とは裏腹に元ホームレスというハードな経歴を持つフィメールMC。2015年にkamui(3-i)に見出されヒップホップ・ユニット「TENG GANG STARR」を結成。2019年3月に「TENG GANG STARR」は活動を休止するも、ソロ活動に突入するやいなや日本語ラップシーンのエンターテイナー「餓鬼レンジャー」を始め、「Lil'Yukichi」「入江陽」「TREKKIE TRAX CREW」など立て続けて楽曲の客演に迎えられる。そして8月30日には自身初となるソロ名義シングル『Ride』をリリースした。
なかむらみなみ
天真爛漫な見た目とは裏腹に元ホームレスというハードな経歴を持つフィメールMC。2015年にkamui(3-i)に見出されヒップホップ・ユニット「TENG GANG STARR」を結成。2019年3月に「TENG GANG STARR」は活動を休止するも、ソロ活動に突入するやいなや日本語ラップシーンのエンターテイナー「餓鬼レンジャー」を始め、「Lil'Yukichi」「入江陽」「TREKKIE TRAX CREW」など立て続けて楽曲の客演に迎えられる。そして8月30日には自身初となるソロ名義シングル『Ride』をリリースした。

YUKARIあっこゴリラ:はははははははは!

なかむら:その家から出ていくか、寺に入るかっていう選択を迫られたんです。

あっこゴリラ:あはははは。ヤバすぎる!

なかむら:そういうことってフェミニズムに関係あるのかなって。確かに、そんなふうに型にはめられたからあの自分の行動があったんだなって今は思う。そこから詞を書くようになったんですね。でもそれでよかったなって。自分を認めることもできたし、昇華できるようになって。

YUKARI:……今めっちゃ考えてたけど、私、2人ほどはずれ者じゃないかも。

一同:はははははははは!

YUKARI:そこまで「呪縛から解き放たれよう!」とか思ったことないかも。もちろんありますよ?「女の子らしくしなさい」って言われたり、全然やりたくない習い事やらされたり。あと学校があんま好きじゃなかったし、なんとなく勉強して大学行ったもののなんか悶々としてたときに音楽と出会って「私これだったんだ!」って思えたとか。まぁ単純に学校とかが嫌だったんですよね。なのに今、子供できたらまたそこに行かなきゃいけない。あんだけ嫌だったのにまたそこに戻ってきてる。

あっこゴリラ:面白い(笑)。

YUKARI:しかもそこそこ気も遣わなきゃいけなくて。最初は、お母さん同士仲良くしないと、子供がいじめられたらどうしようとか考えたりもして。「共鳴くん(YUKARIの息子)の家はお母さんおかしいから遊びに行っちゃダメ」なんて言われないように、すーごい頑張ってたの。

でも、やっぱどうしても無理で。ただ、うちの息子はけっこうカッコいい奴で、「昼休み何してんの?」って聞いたら「ひとりで彷徨ってる」。最初「友達いないのかな?」って心配したけど、いざ学校で見たらみんなと仲良く遊んでるの。でも自分の時間は自分で過ごしたいっていう感覚をちゃんと持ってる。それ見たときに「あ、大丈夫だ、私この子のお母さんなんだから」と思って、もう周り気にするのを止めたんですよ。そしたらどんだけ楽になったか。

あっこゴリラ:あぁ、いい話。

YUKARI:ツアーのときは一緒に連れて行くから学校お休みすることもあるし、先生もそこは知ってるから、まぁ「変わったお家ですね」ってことではあるんだけど。でも「変わったお家」として見てもらったらすごく楽。私も気にしないし別に周りも気にしない。「あ、そういうことなんだ。別に無理に合わせなくてもいいんだ!」って思ったんですよね。それが私にとって、あっこちゃんの言う「呪縛」を解いたひとつの経験だったかもしれない。

―私も子供がいるんですけど、最初は同じく「他のお母さんと一緒にしなきゃ、話も合わせなきゃ」と思ってたんですね。そしたらどんどん疲れていって。

YUKARI:そう。そうなるよね?

―だけどもう嫌になっちゃって、保護者会でも構わず意見言うようになったら「この人は宇宙人だね」みたいな認識になったんです。

YUKARI:ははは。「そういう人」枠に入れてもらえた(笑)。

―そう(笑)。宇宙人だから感覚は合わせられないけど、でも文章は書けるから書類とかは作れると。それで今PTAやってますけど、得意なことだから全然ストレスもなくて。合わないのが辛いというより、自分を隠してるのが辛かったんだと思うんですね。

あっこゴリラ:あぁ! でもそうだよね。自分を押し殺して、それが誰にも求められていない、何の意味もない、殺すべきもの、って思っちゃうのが辛いんだよね。

YUKARI:私は2回目の学校生活でやっとそれがわかったけど、今学校に行ってる子たち、会社行ってる人たちに「大丈夫だよ?」って、それは言いたいですね。人と比べて一緒の形に入んないといけないと思って、うまくハマってないのを気にして相手に嫉妬したり、攻撃しちゃったりする。でも、そうやって人と比べなくなった自分でよかったなと今は思うから。

あっこゴリラ:違うのがダメだと思って隠すから、誰かと比べちゃうんですよ。もう比べる時代は終わったと思う。みんな傷つきたくないし恥かきたくないのは一緒で、それは日本の国民性だと思うんだけど、でも「恥の基準、そこ?」って思うことが多すぎる。普通っていうのも何なのか全然わかんないし。そこは自分らしく提示していきたい。

YUKARI:そう。これ聞きたかったの。あっこちゃんの“超普通”、めっちゃカッコよくて。あれは「普通って何よ?」ってこと? それとも「普通でいいじゃん!」ってこと?

あっこゴリラ:えーと、全員普通だし、普通なんてどこにもないよって言いたくて。普通っていうワードを超えるってことで「超普通」だし、すべては普通だから「超普通」じゃんっていう、ダブルミーニングもありますね。みなみちゃんも言われるでしょ? 「普通じゃない」って。

なかむら:普通、って言われたことない。

一同:はははははははは!

なかむら:でも自分は自分の普通を生きてきたつもりで、過去のことをドキュメンタリーで書かれたりもしますけど、それも私の日常だったから。言ったら保育園の子とかは「みなみちゃんと遊んじゃダメだよ」って感じになるんですけど、私はこれが普通だから、何がおかしいんだろうなって思ってた。だけど、今こういうふうに生きていけてるから。

闘う必要はないし、バラバラでいいの。でも、あるときにちゃんとフォーメーションを組めるなら素敵だなって。(YUKARI)

―今日の話は全部、それぞれ個人の生き方の話ですよね。団結して闘う女性たち、みたいなイメージとは程遠いもの。

YUKARI:そうですね。フェミニズム的なものを掲げて、いろんなものに対して闘うぞってなると、みんなで集まらなきゃいけない。それはまた違ってくるでしょう。もっと個々が集まれるときに集まって、フラッとパーティーが始まって、みんなそれぞれやってるのを確認してあたりを見回す。まぁそれが“フォーメーション”で歌ってる<ヘブン>のイメージで。それでまた個々に戻っていけたらなぁって。闘う必要はないし、バラバラでいいの。でも、あるときにちゃんとフォーメーションを組めるなら素敵だなって。

―そこには、楽しくやれたらいいという気持ちも入ってますか?

YUKARI:うん。だって、もっと楽しくラフでよくない? 生活のこと、日常のことなんだから。そんな頑張ってちゃ誰も何もできなくなるよ。あとはね、無理しなくていいっていうのも事実だけど、自分がこうなりたいと思う自分になっていくのが最高だと思ってて。自分のダメなとこを認めてあげるのも、もちろん前に進めることだから踏み出す一足にはなるんだけど。でもそこから二足、三足って進んでいくなら、なりたい自分があったほうがいい。

あっこゴリラ:今は「かわいい」の正解もどんどん増えていってるから。それ以外の理想とか絶対的正解みたいなものが、もっと選択肢増えていけばいいな。そしたら人と比べるのもバカらしくなるし。

―女性にまつわる言葉で、もっと多様化していいもの、これがなくなればいいなと思うものはありますか。

あっこゴリラ:いっぱいある。「メンヘラ」とか。「ヒステリー」とか特にそう。

なかむら:「陰キャ」と「陽キャ」も。

あっこゴリラ:嫌だー! 陰と陽なんてみんな両方あるのに!

YUKARI:私はね、ずっとバンドで「おてんば」「じゃじゃ馬」みたいな、もう海外のメディアでも毎回必ず言われたの。「おてんば娘がステージで駆け回る」みたいな。すごく嫌だった。言われ続けると自分でもそっちに寄っていくんですよ。「『おてんば』って代名詞に合わせた感じにならなきゃ」って。やっぱ嫌ですよね、ああいう言葉って。

―みなみちゃんは何かありますか?

なかむら:えっとね、MVのコメントとかに「フェラするときによだれ出そう」ってよく書かれるのが嫌。

―同:はははははははははは!

なかむら:「え、したっけ?」って思う。誰だよ(笑)。

YUKARI:「したっけ?」じゃないよ(笑)。

なかむら:でも私だけじゃなくて、女性が出るMVとか、コメントに必ずありますよね。

YUKARI:絶対あるね。性的に見てる言葉。「エロそう」とか。あとは「ヤレる・ヤレない」も。まずヤらないから(笑)。

なかむら:あと私は自分の歯並びめっちゃ好きなんですけど、「治さないの?」とか言ってくる人たちには「ガソリンありがとうございますっ」って感じ。そんな言葉絶対ないほうがいいと思う。

だって一度きりじゃん? ワンライフ、ワンチャンスじゃん!(あっこゴリラ)

―(CINRA.NET編集部・矢島大地)最後にいいですか。これが「男と女」という対比の話じゃなく、自分として生きていくことの話なのは理解したうえで「男はどうすればいいですか?」と訊きたいです。今、苦しんできた女性が声を上げてることには、間違いなく男側が作り上げた悪しき刷り込みが加担していることもわかっていて。だけど今、そういう従来の価値観はぶっ壊れて、無意識に指針にしていた刷り込みがパツンと切られた感覚があるんですね。

YUKARI:時代とか価値観の狭間ですもんね。その苦しさはわかる。

あっこゴリラ:今は過渡期だからこそ、恥とプライドの置きどころをブラさないでいたい。私が思うのは、無知は一瞬の恥、知らんふりが一生の恥だってことで。恥かくのは一瞬だから。いち人間として素直に向き合って、間違ったと思ったら改める。の繰り返しで日々アップデートしていきたい。あくまでラフに。

YUKARI:そうね。これは女性男性の話だけど、たとえばウチの旦那さんは障がい者の介助の仕事をしてて、私も障がいのある人にどう接すればいいのかわかんなくなるときがあるんですね。言葉をうまく出せない人だと、ついつい介助者のほうを見て話しちゃったり。それと似てる感情だと思う。大事にしたい気持ちはあるけど、下手したら火傷しちゃうかもしれないって怖くなる。

―(CINRA.NET編集部・矢島大地)そうです、そうです。俺もそこで心も体も動きがぎこちなくなる。

YUKARI:私はね、どんどん聞くようにしてます。「これ嫌?」とか「あ、ごめん、今私目を見て話さなかったよね、あなたと話そうとしてたんだよ」とか。あと背が低い相手に「かわいいね」って言っちゃうことがあって、それを相手が気にしてるかもしれない。だとしたら言った後に「あ、気にしてたならごめん。でも私はすごくかわいいと思ったし、それがあなたのアイデンティティだと思ってるよ」っていうことを修正して伝える。だからあっこちゃんと同じだよね。ちゃんと向き合う。ちゃんと聞いて修正する。ゴメンならゴメンでいい。

あっこゴリラ:ウチら世代は価値観を更新していくだけだから。正解なんかないし、だから考えて向き合ってぶつかって失敗したらやり直せばいい! だって一度きりじゃん? ワンライフ、ワンチャンスじゃん!

リリース情報
Limited Express(has gone?)
『perfect ME』(CD)

2019年10月23日(水)発売
価格:2,420円(税込)
ch-166

[CD]
百鬼夜行
フォーメーション
SWEET TALK
散らかる
ディスコミュニケーション
正気に戻る
SAVE MY IDEAL
Useless
LIE DETECTOR says TRUE
ニュードリーム
NO WAY
NOT A FAD

あっこゴリラ
『ミラクルミー E.P.』(CD)

2020年2月12日発売
価格:1,650円(税込)
AICL-3778

イベント情報
Limited Express(has gone?)
『perfect ME』リリースツアー

2019年12月20日(金)
会場:静岡県 Toast Bro

2019年12月21日(土)
会場:大阪府 火影-HOKAGE-

2019年1月19日(日)
会場:東京都 新代田FEVER

2019年2月1日(土)
会場:京都府 Live House nano

2019年2月8日(土)
会場:愛知県 名古屋HUCK FINN

2019年3月7日(土)
会場:三重県 四日市VORTEX

2019年3月8日(日)
会場:島根県 彦根ダンスホール紅花

プロフィール
Limited Express (has gone?)(りみてっど えきすぷれす はずごーん)

2003年、US、ジョン・ゾーンのTZADIKから1st albumをリリースし、世界15カ国以上を飛び回る。その後、高橋健太郎主催のmemory labより2nd album、best albumをリリース。WHY?、NUMBERS、MY DISCOなどの海外バンドともツアーを回るなど、名実共に日本オルタナ・パンク・シーンで活躍するバンドとなる。2枚のアルバムリリースを経て、2014年、これまでベースを弾いていたYUKARIが突然ピンボーカルに。ドラムにもんでんやすのり(ふくろ / GROUNDCOVER.等)、ベースにLessThanTVの谷ぐち順を迎えた編成で活動を始める。フロア駆け回るYUKARIのパフォーマンスと衝動的なバンドサウンドは中毒者続出。2019年8月「フォーメーション」7インチ、10月には新体制2枚目のアルバム「perfect ME」をリリース。

あっこゴリラ

ドラマーとしてメジャーデビューを果たし、バンド解散後、ラッパーとしてゼロから下積みを重ねる。2017年には、日本初のフィメール(女性)のみのMCバトル「CINDERELLA MCBATTLE」で優勝。その後、さまざまなアーティストとのコラボレーションも行う中、同年末、向井太一とのコラボ曲「ゲリラ」がSpotifyのCMに起用される。野生のゴリラに会いにルワンダへと旅をした模様を収めた「Back to the Jungle」、永原真夏と共にベトナムで撮影された「ウルトラジェンダー」、そして2018年に“再”メジャーデビューを飾り、台湾で撮影を敢行した「余裕」など、国内に限らず海外で制作したMVも話題に。さらに、同年12月1stフルアルバム「GRRRLISM」をリリース。女性の無駄毛をテーマにした「エビバディBO」、年齢をテーマにした「グランマ」など、世の中の“普通”を揺るがす楽曲を発表。その他、クリエイターを巻き込んでのGRRRLISM ZINEの発表や、2019年4月からJ-WAVE「SONAR MUSIC」でメインナビゲーターとして様々な発信をするなど、性別・国籍・年齢・業界の壁を超えた表現活動をしている。ちなみにゴリラの由来はノリ。

なかむらみなみ

天真爛漫な見た目とは裏腹に元ホームレスというハードな経歴を持つフィメールMC。2015年にkamui(3-i)に見出されヒップホップ・ユニット「TENG GANG STARR」を結成。2019年3月に「TENG GANG STARR」は活動を休止するも、ソロ活動に突入するやいなや日本語ラップシーンのエンターテイナー「餓鬼レンジャー」を始め、「Lil'Yukichi」「入江陽」「TREKKIE TRAX CREW」など立て続けて楽曲の客演に迎えられる。そして8月30日には自身初となるソロ名義シングル『Ride』をリリースした。



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