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はるまきごはんは宇宙人との遭遇を求める 未知にしか希望がない

はるまきごはんは宇宙人との遭遇を求める 未知にしか希望がない

はるまきごはん『ネオドリームシネマ』
インタビュー・テキスト
沖さやこ
編集:久野剛士(CINRA.NET編集部)

学校でのつらい体験は、僕の根源的な部分なんだと思います。

はるまきごはんが描いた『風のひとやすみ』
はるまきごはんが描いた『風のひとやすみ』

―少年と青年の狭間でもある、20代前半という年齢も関わっていそうですね。

はるまきごはん:今年、東京に出てきて一人暮らしを始めたんですけど、自分の精神や体にかかってるストレスが学生時代より少ないんですよね。高校生の頃は、ただ生きているだけで先生に怒られていたので。先生からしたら僕みたいな人間は、あんまりよろしくないんですよ。いい大学にいって、いい就職をしなさい――そういう社会全体で認識されてる「幸せのテンプレート」って未だにあると思うんですけど、それに否定的だったから。

―ありますね。そのあとは20代後半で結婚して、子どもをもうけて、マイホームを建てて、ローンが終わったころに定年退職して、穏やかな老後を過ごす、という。

はるまきごはん:僕はそのどれもにあまり興味がなかったので、その線路からは絶対に脱出したいとずっと思っていました。

―なるほど。

はるまきごはん:ただ、そういう学校の縛りがあったからこそ、「それをどう回避するか?」みたいな面白さもあったじゃないですか。縛りが全部なくなることがいいこととも一概にはいえない。そういうのを改めて考えてる時期にあるのかもしれないです。

―はるまきさんの楽曲には、学生時代の締めつけられてる感覚が、生々しく出ていますよね。

はるまきごはん:そうなんですよ。学生時代の縛られていた体験が、僕の根源的な部分の一つにあるんだと思います。

―今もその意識にとらわれているところも?

はるまきごはん:いまだに学校に通ってる夢を見ることはあるし……何回も見ますよ、学校の夢って。もう繰り返し繰り返し。小学校から高校1年まで野球をやってたんですけど、週に2~3回野球部の夢を見る。でも当時の僕は1回も「野球やりたい」と思ったことがないんです。

―よく8年続けましたね。

はるまきごはん:「野球部に入らないといけない」っていう強迫観念があって。だから自分自身にも縛られてたんですよね。それこそ今の自分が嫌悪してるような、「幸せのテンプレートに従わないと」とプレッシャーに感じていたんだと思います。「もう意味がないな」「嫌だな」と思ったものはすぐやめちゃえばいいと思うけど、自分の学生時代を思い返すと辞めることも難しいんだなって。だから僕は部活から帰ってきて、自分の心を救うために1日1枚は必ず絵を描いてた。自分の好きな世界を描くことで満足して寝られる、それをやらないと眠れないぐらい、ギリギリの精神状態で成り立ってました。

はるまきごはんが描いた『藍のある星』
はるまきごはんが描いた『藍のある星』

自分がちっぽけな存在であることを感じられると救いになる。

―はるまきごはんさんの表現するものは、失われるもの、消えてしまうものに想いを馳せているものが多いと感じます。「夢」もそうですが、「夜」や「夏」も。

はるまきごはん:確かに幼い頃の純粋さとかは失われるからこそ、美しいとされてますよね。僕はそういうの好きです。夏も短いからこそいい、みたいな。

―永遠ではないことの美しさと名残惜しさの両方を孕んでいると感じました。

はるまきごはん:もともと夏がすごく好きで。特に夕日が沈んだ直後に空が青色になる瞬間の「ブルーモーメント」もすごい好きで。「あ、地球ってちゃんと宇宙の一部なんだ」と感じられるから、自分がちっぽけな存在であることを感じられて救いになる。「10年後にはこんな状況じゃないだろう」というめちゃくちゃ小さい希望だけが残ってて。それだけを信じていましたね。

はるまきごはん“ コバルトメモリーズ”

―はるまきごはんさんの中には、昔の自分もいれば、今の自分や、夢の自分も住んでいるのかなと。なかなか言葉にするには難しい人ですよね。

はるまきごはん:難しいですね。だから作品を作れてると思うんです。たぶん全部言葉で綺麗にいえたら、作品として出す意味はあんまりないと思うんです。言葉にできない状態が正常なんだと思う。言葉にできない部分が多ければ多いほど、誰も予想がつかなかったような作品になるんじゃないかな、みたいな。そういうのは漠然と思ってます。

―表現方法が音楽だけではなく、イラストやアニメと、ひとつに限定しないのも、それが理由ですか?

はるまきごはん:どうなんだろう。自分がたまたまこれが得意だったからかもしれないし。実家がスピーカーで音を出してよかったという環境も影響してると思います。それができなかったら音楽をやってたかわからないし、環境ってすごく大切ですね。東京に住んでみて、東京は音楽活動しやすいなとも思ったし。

―はるまきごはんさんには東京が合ったんでしょうね。

はるまきごはん:僕が音楽や絵をやってなくて、普通に生きていくだけだったら地元の札幌のほうが東京より居心地よかったかもしれないです。でも、東京でイベントをしたり、CDを出したり、同じ活動してる人に会ったりするなら、やっぱり東京に住んでないと大変な部分も多かったので、東京に住むことを選びました。それなのに、僕は人より不健康なんで、生きてもせいぜい50、60歳くらいまでかなって思っていて。

―いやいや(笑)。30年後には医療もだいぶ発達してますよ。

はるまきごはん:僕の作業時間では、年に3~4本ぐらいしかMVを投稿できないんです。となると60歳になるまでの37年があっても、せいぜい150ぐらいしかMVつきの曲を作れない。そう計算すると、すでに最後の作品までカウントダウンが始まっているから、生きているあいだに、ひとつでも多くのものを生み出したいんです。最近、制作の体制が整ったからか、そういう思考になっていて……死ぬことについてめちゃめちゃ考えるんですけど、死ぬって謎すぎませんか?

はるまきごはん“メルティランドナイトメア”

はるまきごはん『SLEEP SHEEP SUNROOM』(2018年)を聴く(Apple Musicはこちら

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イベント情報

はるまきごはん
『ネオドリームシネマ -DAYDREAM story-』

2019年11月23日(土・祝)
会場:東京都 白金高輪 SELENE b2

はるまきごはん
『ネオドリームシネマ -NIGHTMARE story-』

2019年11月24日(日)
会場:東京都 白金高輪 SELENE b2

プロフィール

はるまきごはん
はるまきごはん

2月7日生まれ、北海道札幌市出身のクリエイター、ミュージシャン。音楽、イラスト、アニメーション映像制作をひとりで手掛ける。2016年に投稿したボカロ楽曲「銀河録」から知名度を増し、「メルティランドナイトメア」をはじめ多くの楽曲が人々の心を掴んだ。2019年からはアニメーション制作スタジオ「スタジオごはん」を設立し、楽曲「再会」では自身がボーカルを務めたバージョンとボカロバージョンの2形態のMVを制作するなど、既存の型にはまらない作品を發表し続けている。

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