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BLUE ENCOUNT×住野よる 今の自分が痛い過去の意味を変える

BLUE ENCOUNT×住野よる 今の自分が痛い過去の意味を変える

BLUE ENCOUNT『ユメミグサ』
インタビュー・テキスト
矢島大地
撮影:新保勇樹 編集:久野剛士(CINRA.NET編集部)

「痛い」って言われる過去も、今の自分を形成しているんですよね。(田邉)

―だからこそ、青春時代に聴いていた音楽を昇華するのではなく、むしろ自分の過去を塗り替えるように今の音楽を食い散らかすソングライティングを身につけてきた、と言えるかもしれないですよね。それは、2010年代ロック全網羅と言えるこれまでの楽曲に表れていると思うし。

田邊:ジャンルなんて関係ない、ルーツがないのがルーツだってインタビューのたびに言ってきましたから(笑)。でも『青くて痛くて脆い』を読んだ時に、どれだけ痛かった自分も全部が自分自身で、他人事じゃないんだよなって思えたんです。消し去りたくなる痛さも自分の中にはあったけど、それこそ住野先生が言ったみたいに、「痛い」って言われる過去も、今の自分を形成しているっていう見方ができた。痛さに向き合うのは本当に食らったけど(笑)。……だって、高校時代の俺は友達にも平気で嘘ついてたんですよ? 「来月メジャーデビューするから!」なんて言って。

―ああ……(苦笑)。

田邊:オリジナル曲のCD-Rをレコード会社に送っただけなのに、そんな嘘ついてたから。それで、俺に嘘をつかれた友達が江口のところに行って「田邊に嘘つかれたんだけど」って言う、みたいな。

江口:でも、俺は同じバンドのメンバーだからなんとも言えないのよ。

江口雄也

住野:それはそうですね(笑)。

田邊:勝算も根拠も自分の軸もないまま、ただ真っ直ぐあろうとすることだけが正義だと思っていた時期があったんですよ。で、『青くて痛くて脆い』の主人公である田端楓を見ていると、まさに昔の自分に重なるところがあって。身に覚えのあることだからチクチクしたんだと思うし、きっと誰にも、自分自身がどうなのかを問わず、勝手な正義を妄信して暴走してしまうところがあるんじゃないかと思ったんですよ。だけど、それでもここまでなんとかやってこられた自分たちだからこそ、そういう痛さや若さを抱きしめてあげられる曲にしたくて。そういう気持ちがあったから、“sakura”の歌詞もアレンジも再構築して、“ユメミグサ”を作れた気がします。

―青春を振り返るよりも、その全部を肯定して持っていこうとする意識というか。

田邊:きっと、そうなんだと思います。それに、この1年でプロデューサーさんについてもらったり、自分たちのこれまでを一度ぶっ壊して新しいトライをしたりっていう過程を踏んできたから表現できた楽曲だと思うんですよ。7年前に作った曲なのに「今じゃないな」って言って温め続けてきたのはどうしてだろうって考えると、もちろんこの曲を形にするスキルが足りなかったことも大きいんだけど、何よりも「あの頃」の自分たちを抱きしめてやれる余裕や、過去に向き合う気持ちが足りなかったんだと思うんです。

住野:それこそ<抱きしめる>っていう歌詞がすごく印象的ですけど……ネタバレになるから詳しくは言えないけど、映画の終わり方としては、お客さんはきっと突き放された感覚になると思うんですよ。その先を想像に任せるというか。でも、「その先」を“ユメミグサ”の内容とメロディが描いてくれてると思ったんですよ。過去の自分の痛さを自分で抱きしめながら、「あなたの人生はここで終わりじゃないでしょ?」ってことを問いかけてくれてると感じたんですよね。楓が幸せになったらいいなっていう希望を残してくれてる。それはまさに、自分が描きたい「物語に書いていることだけがすべてではない」っていう部分に繋がる話で。

『青くて痛くて脆い』 ©2020「青くて痛くて脆い」製作委員会
『青くて痛くて脆い』 ©2020「青くて痛くて脆い」製作委員会

田邊:うわあ、本当に嬉しいです。伝わってよかった……。弱い、若い、青いっていうだけじゃない、その先に向かって変わっていこうとする気持ちが表れているエンディングだから。弱くても、それでも強くなっていけるっていうことを表現できたらいいなと思ったんですよ。

―これまでのブルエンで言えば、田邊くん自身が自分の弱さを乗り越えられるように音楽を作ってきたからこそ、弱者へのエールソングになってきた曲がたくさんあったと思うんです。

田邊:うん、うん。そうですね。

―でも“ユメミグサ”の中には、「俺は弱い」という言い訳がない。そこにブルエン自身の脱皮を感じたんです。

田邊:確かに。でもその部分も、この映画があったからこそだと思うんですよ。過去も含めた自分の全部と向き合う機会をもらったから、自分の全部を他人視しない歌にできた。それは「大人の目線から書いた」っていう感覚でもなくて、純粋に今年33歳の俺として書けたっていう実感があるんです。これまで散々自分の弱さも歌にしてきたし、実際、自分を殴って出てくる言葉を大事にしていた気がするんだけど……だけど、どうしたって戻れない自分の過去を見つめた結果出てきたのは、今ここからどう生きていくのかっていう気持ちでしかなかったんだよね。それに、人間は初心を忘れないことはできるけど、本当の意味で原点に戻ることは現実的にすごく難しいことじゃないですか。

―毎日世界が変わるわけだから、自分も変わっていきますよね。

田邊:そう。だとしたら、あの頃に戻ろうとする歌よりも、今の自分がこれまでの自分を肯定して進んでいく歌を純粋に書きたかったんです。「今ってすごくいいよ。この先捨てたもんじゃないよ」って言いたかったんです。

田邊駿一
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リリース情報

BLUE ENCOUNT
『ユメミグサ』初回生産限定盤(CD+DVD)

2020年9月2日(水)発売
価格:1,950円(税込)
KSCL-3255~3256

[CD]
1. ユメミグサ
2. 1%

[DVD]
2019月11月21日にZepp Tokyoにて行われた<BLUE ENCOUNT TOUR2019「B.E. with YOU>のライブパフォーマンスとツアードキュメンタリーを収録
1. #YOLO
2. HALO
3. 声
4. ポラリス
5. HANDS
6. Making of TOUR2019「B.E. with YOU」

BLUE ENCOUNT
『ユメミグサ』通常盤(CD)

2020年9月2日(水)発売
価格:1,250円(税込)
KSCL-3257

作品情報

『青くて痛くて脆い』
『青くて痛くて脆い』

全国東宝系にて公開中

監督:狩山俊輔
脚本:杉原憲明
原作:住野よる『青くて痛くて脆い』(角川文庫 / KADOKAWA刊)
主題歌:BLUE ENCOUNT“ユメミグサ”
出演:
吉沢亮
杉咲花
岡山天音
松本穂香
清水尋也
森七菜
茅島みずき
光石研
柄本佑
配給:東宝

プロフィール

BLUE ENCOUNT(ぶるー えんかうんと)

田邊駿一(Vo,Gt)、辻村勇太(Ba)、高村佳秀(Dr)、江口雄也(Gt)よる4ピースロックバンド。2004年に活動開始。2014年9月にEP『TIMELESS ROOKIE』でメジャーデビュー。2015年7月に1stフルアルバム『≒』(ニアリーイコール)をリリースし、2016年10月には日本武道館公演を開催。2017年1月には2ndフルアルバム『THE END』を、2018年3月に3rdフルアルバム『VECTOR』をリリース。最新シングルは、2020年9月2日リリースの『ユメミグサ』。

住野よる(すみの よる)

高校時代より執筆活動を開始。小説投稿サイト「小説家になろう」にアップした『君の膵臓がたべたい』(初出時は『君の膵臓を食べたい』)が編集者の目にとまり、2015年6月に同作で作家デビュー。著書に『また、同じ夢を見ていた』『よるのばけもの』『か「」く「」し「」ご「」と「』『青くて痛くて脆い』『麦本三歩の好きなもの』がある。

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