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橋本晶子が信じる絵の力。人の意識を遠くへ飛ばす、豊かな世界

橋本晶子が信じる絵の力。人の意識を遠くへ飛ばす、豊かな世界

『shiseido art egg』
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:前田立 編集:川浦慧(CINRA.NET編集部)

今回のテーマは、「ここにいながら遠くを見る」。

―今回の資生堂ギャラリーでの個展は、どんな内容を予定していますか?

橋本:やはり空間のことを扱おうと思っています。ただ、コロナウイルスのことがあって「どうなるかな?」という気持ちもあります。自粛でしばらく資生堂ギャラリーの展示スペースを見れていなかっただけ、自分の妄想が広がりすぎちゃってるんですよね。

―なるほど(笑)。

橋本:図面でどういう配置にしようか、っていうのはいつも事前にかなり検討してるのですが、今回のケースはちょっと特殊でしたよね。展示スペースにはすごく大きな白い壁があったと記憶してるんですけど、本当はもう少し小さかったかも……とか。なので、この取材のあとに確認しにいきます。

展示のテーマとしては「ここにいながら遠くを見る」ってことを体感するための空間、というのが最初にありました。なんとなく中心になるのは、これまでの展示でも使ってきたカーテン、静物の絵、それから「道」の絵です。

―道ですか。

橋本:静物は、ここで観ている人が「ここにいる」ことを補強するものとしてあるのですが、道っていうのは遠くに行くことを示唆させるためのものとして使っています。

というのは、道自体にはそんなに物語ってないんですよね。例えば映画でも、道が出てくるシーンって、次の大きな物語のつなぎになることが多い。オープニングのタイトルバックに道が映っていて、登場人物が電話でもしながら車を運転して、到着したところで物語が始まったりしますよね。

―旅の行程を描くロードムービーではとくにそうですね。

橋本:つまり道自体には何も詰まっていなくて、ここにいる私と遠くを結ぶものなんです。以前、ある喫茶店で素敵なトマトジュースを飲んでいたんです。とても赤くて鮮やかな。そこでふっと壁に視線を移したら、なんてことない道を描いたスケッチ画が飾られていて「これは完璧な構図ですな」としみじみ思いました。トマトジュースを飲んでる私が、道の絵によってどこかに行ける、意識を飛ばせるという感じが。

それまでも展示の小物に電話を使ったりして、遠いところに行くイメージは意識していたんですけど、トマトジュースと道の絵を観て「これだこれだ!」と。

橋本晶子

―実際に、橋本さんは旅をするのがお好きなんですよね。

橋本:旅は好きですね。まぁ、いまの話はネタの種みたいなものなんですけど、案外自分にとって重要なんですよね。

私は、作品を展示することでこの空間を支配したい、自分の言いたいことのほうに鑑賞者を誘導したい、って気持ちはまるでないんです。資生堂ギャラリーは銀座にありますけど、ここに来る人には、街を歩いていたときの気持ちのままに入ってきてもらって、例えば喜んでいたり、あるいは怒っていたりする、自然な感情のままでいられるような空間を作りたいと思っています。

地上から階段で降りていくアプローチがギャラリーにはありますけど、体感センサーで足元の明かりがぽんぽんぽんと点灯するんです。そういう感じが私は好きで、作品を観に来たというよりも、すっと入って来て、回遊して、また出て行く、みたいな経験をイメージして作っています。とはいえ、予約制になるそうなので、ちょっと経験は変わる気もしますけど。

―道の話が出ましたけど、道にもいろいろありますよね。都市の騒がしい道もあれば、田舎の道もあるじゃないですか。

橋本:そういえば私は、自然の道、並木道ばかり描いてますね。なんでだろう。あまり考えたことがなかったです。銀座には自然の並木道がないからでしょうか?

―自然の道って、どこか茫洋とした感じ、匿名的な感じがあります。そこも橋本さんの世界観に合っている気がしました。

橋本:たしかに。匿名性やなんてことのなさは重要かもしれないですね。

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イベント情報

『shiseido art egg 14th』
橋本晶子展

2020年10月30日(金)~11月22日(日)
会場:東京都 資生堂ギャラリー
平日 11:00~19:00 日・祝 11:00~18:00
毎週月曜休(祝日が月曜にあたる場合も休館)
入場無料
事前予約制

作家によるギャラリートーク
橋本晶子展

作家本人が会場で自作について解説するギャラリートークを、各展覧会開始後に資生堂ギャラリーの公式サイトにてオンライン配信いたします。

※ご予約は10月23日(金)から開始となります。

プロフィール

橋本晶子(はしもと あきこ)

1988年東京都生まれ。2015年武蔵野美術大学大学院 造形研究科修士課程 日本画コース修了。東京都在住。主な活動として、『Yesterday's story』Cite internationale des arts(2018年 / パリ)個展、『It' soon.』Little Barrel(2018年 / 東京)個展などがある。

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