インタビュー

デヴィッド・バーンが歌い、踊り、語る 『アメリカン・ユートピア』

デヴィッド・バーンが歌い、踊り、語る 『アメリカン・ユートピア』

インタビュー・テキスト
村尾泰郎
リード文・編集:後藤美波(CINRA.NET編集部)

音楽と言葉に身体感覚が加わる。デヴィッド・バーンにとっての、リズムとダンスの重要性

『アメリカン・ユートピア』は普通のロック・コンサートとは少し趣が違っている。まず、バンド形態がユニークで、バーンをサポートするのは2人のダンサーと9人編成のバンド。バンドメンバーの半数以上はパーカッションで、彼らはハーネスで楽器を身体に固定。ギタリストやベーシストは楽器にコードをつけず、全員で様々なフォーメーションを組んでステージ上を動き回る。そんなバンドの演奏スタイルは、ニューオーリンズのセカンドライン(ニューオーリンズの伝統的なブラスバンドパレード)やサンバなど、様々なマーチングバンドからインスパイアされたという。

バーン:大勢の人が同時に叩くドラムのサウンドには特別なフィーリングがある。それをショウに取り入れたいと思ったんだ。それに大勢のミュージシャンが一緒に演奏している姿は、ひとつのコミュニティのようでもあり、そんな彼らがステージを動き回る様子は、すごくエキサイティングだと思ったんだ。

『アメリカン・ユートピア』 ©2020 PM AU FILM, LLC AND RIVER ROAD ENTERTAINMENT, LLC ALL RIGHTS RESERVED
『アメリカン・ユートピア』 ©2020 PM AU FILM, LLC AND RIVER ROAD ENTERTAINMENT, LLC ALL RIGHTS RESERVED
『アメリカン・ユートピア』 ©2020 PM AU FILM, LLC AND RIVER ROAD ENTERTAINMENT, LLC ALL RIGHTS RESERVED

Talking Heads時代から、バーンはアフリカや中南米など様々な国のリズムを積極的に取り入れてきた。『アメリカン・ユートピア』ではリズムが一体感を感じさせ、人と人の絆を象徴する音として力強く鳴り響いている。

さらにそこに高揚感を生み出しているのがダンスだ。バーンとダンサーだけではなく、時にはバンドメンバーもダンスする。モダンダンスのような洗練された、それでいてどこかユーモアを感じさせる振り付けは『ストップ・メイキング・センス』に通じるところもあるが、ダンスはバーンのパフォーマンスの重要な要素だ。

バーン:音楽が何かを伝え、その言葉(歌詞)も何かを伝える。さらにそこにダンスを加えることで、3つの違う観点で観客にメッセージを伝えることができる。それにダンスというのは、見ているだけで身体的な感覚が伝わってくる。ダンサーの動きを観客も感じることができるんだ。

例えばダンサーが空を飛ぶような動きをしたら、観客は自分も飛んでいるような感覚が味わえる。たとえダンサーみたいな身体能力がなかったとしてもね。それがダンスのすごいところだと思う。でも、ダンスがトゥーマッチになると、その共感するフィーリングが感じられなくなってしまう。音楽や言葉と繋がりを持ちながらダンスをする。そのバランスが重要なんだ。

『アメリカン・ユートピア』 ©2020 PM AU FILM, LLC AND RIVER ROAD ENTERTAINMENT, LLC ALL RIGHTS RESERVED
『アメリカン・ユートピア』 ©2020 PM AU FILM, LLC AND RIVER ROAD ENTERTAINMENT, LLC ALL RIGHTS RESERVED

人種差別的暴力の犠牲者たちの名前を叫ぶ。ジャネール・モネイのプロテストソングに、スパイク・リーがオリジナルの演出を加えた

ステージ上をパレードするバンド。そして、ユニークなダンス。そうした様々な動きをスパイク・リーが見事なカメラワークでフォローして、音楽やパフォーマンスが生み出すパワーをスクリーンに記録する。なかでも圧巻は、ジャネール・モネイが人種差別の被害者に捧げたプロテスト・ソング“Hell You Talmbout”をカバーするシーンだ。映画では被害者の遺族が登場するというオリジナルの演出が加えられていて、そこにバーンがスパイクとコラボレートした理由のひとつが垣間見える。

バーン:スパイクが「映画に犠牲者の写真を入れたい」と提案してきた時は、ちょっとヘビーになってしまうかもしれないと一瞬思ったよ。でも、観客は写真を見ることで、亡くなった人のことをリアルに感じることができる。それはとてもパワフルなことだと思ってやることにしたんだ。結果的にとても心を揺さぶるシーンになったと思う。

『アメリカン・ユートピア』 ©2020 PM AU FILM, LLC AND RIVER ROAD ENTERTAINMENT, LLC ALL RIGHTS RESERVED
『アメリカン・ユートピア』 ©2020 PM AU FILM, LLC AND RIVER ROAD ENTERTAINMENT, LLC ALL RIGHTS RESERVED
作中でカバーされるジャネール・モネイ“Hell You Talmbout”。エリック・ガーナー、トレイボン・マーティンをはじめ、警官による暴力など人種差別的暴力の犠牲となったアフリカ系アメリカ人の名前を叫ぶプロテストソング

Page 2
前へ 次へ

作品情報

『アメリカン・ユートピア』

2021年5月28日(金)から全国公開

監督:スパイク・リー
出演:
デヴィッド・バーン
ジャクリーン・アセヴェド
グスタヴォ・ディ・ダルヴァ
ダニエル・フリードマン
クリス・ジャルモ
ティム・ケイパー
テンダイ・クンバ
カール・マンスフィールド
マウロ・レフォスコ
ステファン・サンフアン
アンジー・スワン
ボビー・ウーテン3世
上映時間:107分
配給:パルコ ユニバーサル映画

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

あらかじめ決められた恋人たちへ“日々feat.アフロ”

何かを我慢することに慣れすぎて忘れてしまいそうになっている「感情」を、たった10分でこじ開けてしまう魔法のようなミュージックビデオ。現在地を確かめながらも、徐々に感情を回転させていくアフロの言葉とあら恋の音。人を傷つけるのではなく、慈しみ輝かせるためのエモーションが天井知らずの勢いで駆け上がっていった先に待ち構えている景色が、普段とは違ったものに見える。これが芸術の力だと言わんばかりに、潔く堂々と振り切っていて気持ちがいい。柴田剛監督のもと、タイコウクニヨシの写真と佐伯龍蔵の映像にも注目。(柏井)

  1. THE SPELLBOUNDがライブで示した、2人の新しいロックバンド像 1

    THE SPELLBOUNDがライブで示した、2人の新しいロックバンド像

  2. 中村佳穂が語る『竜とそばかすの姫』 シェアされ伝播する歌の姿 2

    中村佳穂が語る『竜とそばかすの姫』 シェアされ伝播する歌の姿

  3. 『プロミシング・ヤング・ウーマン』が映し出す、「女性の現実」 3

    『プロミシング・ヤング・ウーマン』が映し出す、「女性の現実」

  4. ジム・ジャームッシュ特集が延長上映 『パターソン』マーヴィンTシャツも 4

    ジム・ジャームッシュ特集が延長上映 『パターソン』マーヴィンTシャツも

  5. A_oから青い心を持つ全ての人へ 自由に、自分の力で生きること 5

    A_oから青い心を持つ全ての人へ 自由に、自分の力で生きること

  6. 地下から漏れ出すアカデミックかつ凶暴な音 SMTKが4人全員で語る 6

    地下から漏れ出すアカデミックかつ凶暴な音 SMTKが4人全員で語る

  7. 林遣都×小松菜奈『恋する寄生虫』に井浦新、石橋凌が出演 特報2種到着 7

    林遣都×小松菜奈『恋する寄生虫』に井浦新、石橋凌が出演 特報2種到着

  8. 『暗やみの色』で谷川俊太郎、レイ・ハラカミらは何を見せたのか 8

    『暗やみの色』で谷川俊太郎、レイ・ハラカミらは何を見せたのか

  9. ギャスパー・ノエ×モニカ・ベルッチ『アレックス STRAIGHT CUT』10月公開 9

    ギャスパー・ノエ×モニカ・ベルッチ『アレックス STRAIGHT CUT』10月公開

  10. 『ジョーカー』はなぜ無視できない作品なのか?賛否の議論を考察 10

    『ジョーカー』はなぜ無視できない作品なのか?賛否の議論を考察