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ノイズの中でどつき合い。京都発・混沌の音楽フェスをレポート

MAZEUM
インタビュー・テキスト
島貫泰介
編集:宮原朋之
ノイズの中でどつき合い。京都発・混沌の音楽フェスをレポート

別の『MAZEUM』会場へ。京都の繁華街を移動する高揚感

全身汗まみれでUrBANGUILDを出ると、京都の街はもうすっかり夜。4つの会場が集中する河原町周辺は、京都の若者や家族づれで賑わう繁華街だ。週末ということもあって食事やデートに向かう人々でごった返しているが、彼ら彼女らの多くは、まさか雑居ビルやお寺さんで、先ほどのような破天荒なパフォーマンスが行われているとは知るよしもないだろう。胸のうちに「俺は知ってるんだぜ……!」という不思議な優越感と高揚を隠しながら、次の会場に足早に向かうこのわずかな時間も、『MAZEUM』ならではの楽しみだ。

すれ違う若者たちが「私は空間現代を聴きにOCTAVEに行ってくる」「俺は極楽寺でマヒトゥ・ザ・ピーポー観てきたところ」なんて会話を街なかで交わしているところに出くわすのが嬉しい。同志よ!

Antibodies Collective(OCTAVEでのパフォーマンスの様子) / photo by Eizaburo Sogo
Antibodies Collective(OCTAVEでのパフォーマンスの様子) / photo by Eizaburo Sogo
空間現代 feat. THE LEFTY(OCTAVEでのパフォーマンスの様子) / photo by Eizaburo Sogo
空間現代 feat. THE LEFTY(OCTAVEでのパフォーマンスの様子) / photo by Eizaburo Sogo
マヒトゥ・ザ・ピーポー(極楽寺でのパフォーマンスの様子) / photo by Eizaburo Sogo
マヒトゥ・ザ・ピーポー(極楽寺でのパフォーマンスの様子) / photo by Eizaburo Sogo

怖がる子供をさらに怖がらせる、チャーミングな瞬間も

次に向かったのは新京極通りにある誓願寺。芸道上達のご利益があることで知られる同寺院に登場するのは、山川冬樹。そしてラッパーの志人とスガダイローのタッグだ。

ロシア連邦トゥバ共和国に伝わる歌唱法ホーメイの使い手であり、自身の心臓の鼓動や骨をパーカッションのように扱う山川は、鳥や狼の鳴き声を模しながら登場し、ゆるやかにパフォーマンスを開始させた。細い体躯に長い黒髪という彼の姿は、もとよりどこか神秘的で秘術的な印象を抱かせるが、誓願寺の御本尊である阿弥陀如来像の前に立つとその異形の美しさはさらに複雑な陰影をまとって見えてくる。

山川冬樹(誓願寺でのパフォーマンスの様子) / photo by Yoshikazu Inoue
山川冬樹(誓願寺でのパフォーマンスの様子) / photo by Yoshikazu Inoue

そのためだろうか、最前列に陣取った小学生くらいの女の子が今にも泣き出しそうな小さな声で「こわい~」と漏らした。すると、山川はすかさず「怖くな~い、おもしろ~い」と低いウィスパーボイスで応える。「それはむしろ怖いのでは(苦笑)」と、筆者だけでなくまわりの観客も思ったはずだが、そんな心温まる(?)やりとりも、『MAZEUM』ならではのひとコマだったかも。

手のひらで自らの頭蓋骨を叩く音を骨伝導マイクで拡張させ、心臓に負荷をかけて鼓動のスピードをコントロールする山川の身体を酷使するパフォーマンスは、いつも「痛み」とそれゆえの愉悦を想起させる。阿弥陀如来が導く極楽浄土の彼岸が交差する、官能的な時間だった。

山川冬樹(誓願寺でのパフォーマンスの様子) / photo by Yoshikazu Inoue
山川冬樹(誓願寺でのパフォーマンスの様子) / photo by Yoshikazu Inoue

ピアノ、語り、唸り声。三者三様の音色が繰り出した複雑なグルーヴ

続いては、志人×スガダイロー。両人名義でのアルバムをリリースするなど、これまでにも何度もコンビを組んできた2人ゆえ、この夜のパフォーマンスも息の合った仕上がり。

志人×スガダイロー(誓願寺でのパフォーマンスの様子) / photo by Yoshikazu Inoue
志人×スガダイロー(誓願寺でのパフォーマンスの様子) / photo by Yoshikazu Inoue

農夫を思わせるボロ姿で現れた志人は、赤とんぼや畑仕事など、自然にまつわる親と子の対話を模したモノローグからスタートし、やがて宇宙観や近年の社会や政治といった大きな主題へと縦横無尽に語りを広げていった。彼のパフォーマンスに対し、スガは即興で応戦。昨晩のミニマルなソロとは違い、ピアノを使って言葉を表現するようなリズミカルな演奏を聴かせた。

近年のラップ、ヒップホップブームにおいて、志人の精神性の強いポエトリーリーディングに「アートっぽい」(この表現はアートに関する執筆をする筆者にとっては、引っかかる部分の多い)印象を持つリスナーも多いようなのだが、語りによって情景を立ち上げることは、口承の芸術・芸能でもあるラップの重要な側面であると思う。

志人×スガダイロー(誓願寺でのパフォーマンスの様子) / photo by Eizaburo Sogo
志人×スガダイロー(誓願寺でのパフォーマンスの様子) / photo by Eizaburo Sogo

後半、山川冬樹が飛び入りでセッションに加わって、三者三様の景色を立ち上げたのも印象的で、ピアノの演奏(スガ)、物語(志人)、唸り声(山川)の音色が、混ざり合ったり、衝突しあったりすることで生じるグルーヴの複雑さを堪能できたのが大きな収穫だった。もちろんそこには、祈りのための読経(=声)の効果を意識して設計されたお寺の本堂の特性も、大きく影響していただろう。

きわめて限定的たが、以上が筆者の見た『MAZEUM』だ。会場を移動する途中で何人かの友人知人と出くわし「マジでGOATやばかった」などの声を聞くと、もっといろいろ見たかったという後悔の念がわきあがってくる。聞くところでは『MAZEUM』は今回だけでは終わらず、京都以外の場所で行うことも構想されているようだ。次の機会には、もっと気力と体力をつけて参加したい。

会場となった深夜のOCTAVE / photo by Eizaburo Sogo
会場となった深夜のOCTAVE / photo by Eizaburo Sogo

MAZE(迷宮)とMUSEUM(美術館 / 博物館)を混ぜ合わせた造語である本イベントタイトルは、あらゆる意味で示唆的だった。カテゴライズ不可能な諸ジャンルの混交に迷い込むだけでなく、路地と突抜が複雑に入り組んだ京都の街を上下左右に往来する移動もまた、迷い子の歩みを想像させる。

アートでも音楽でもパフォーマンスでも、京都には古くから受け継がれてきたアンダーグラウンドの精神が脈々と流れている。その見えない歴史、見えないカルチャーのネットワークをたどる、じつに特別な2日間だった。

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イベント情報

『MAZEUM-メイジアム-』
『MAZEUM-メイジアム-』

2018年11月30日(金)、12月1日(土)
会場:京都府 法然院、METRO、極楽寺、UrBANGUILD、誓願寺、OCTAVE

出演:
DJ NOBU
KILLER-BONG
スガダイロー
Moor Mother
山川冬樹
Goat
空間現代
Sarah Davachi
ZVIZMO (テンテンコ+伊東篤宏) × contact Gonzo
志人(降神)
佐藤薫+EP-4 [fn.ψ]
行松陽介
ENDON
ANTIBODIES Collective
Halptribe
マヒトゥ・ザ・ピーポー
BLACKSMOKERS
ほか

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