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『Reborn-Art Festival 2019』作品ガイド。震災から「8年」を考える

『Reborn-Art Festival 2019』
テキスト
島貫泰介
編集:矢島由佳子(CINRA.NET編集部)
『Reborn-Art Festival 2019』作品ガイド。震災から「8年」を考える

市街地エリア(キュレーター:有馬かおる)

駅前から歩いて行ける「市街地エリア」をキュレーションするのは、アーティストの有馬かおる。石巻市内には漫画家・石ノ森章太郎の記念館やキャラクターのモニュメントがあり、有馬はこのエリアで「マンガとアート」が融合する展示を目指したと語る。そしてもうひとつ心がけたのが、現代美術のメインストリームにはいない若い作家たちの紹介だ。

有馬:前回の『RAF』に作家の1人として参加したあと、私は石巻に移住してアーティストや表現に関心を持つ人が集まる「石巻のキワマリ荘」をオープンしました。今回の展示の中心になっているのは、ここに集まった石巻在住の新進アーティストたち、そして東北から表現を発信している「山形藝術界隈」のメンバーです。特に前者は、まだまだ荒削りなところの多くあるスタートしたばかりの表現者です。しかし、だからこそ石巻に住んでいる人たちが抱いている本当の気持ちを見せてくれると信じて、一緒に展示を作ってきました。

市街地エリアのキュレーター、有馬かおる
市街地エリアのキュレーター、有馬かおる
富松篤『浜とともに』。市街地エリアの「石巻のキマワリ荘」内にて展示されている(撮影:NAKANO Yukihide)
富松篤『浜とともに』。市街地エリアの「石巻のキマワリ荘」内にて展示されている(撮影:NAKANO Yukihide)
是恒さくら『再編「ありふれたくじら:牡鹿半島~太地浦」』。市街地エリアの「山形藝術界隈」内にて展示されている(撮影:NAKANO Yukihide)
是恒さくら『再編「ありふれたくじら:牡鹿半島~太地浦」』。市街地エリアの「山形藝術界隈」内にて展示されている(撮影:NAKANO Yukihide)

会場のひとつ「ART DRUG CENTER」では、Ammy、守章、鹿野颯斗、SoftRib、そして有馬も含めた5人の作家が出品している。有馬以外は石巻出身のアーティストで、震災以前 / 以降の生まれ育った故郷に対する個人的で複雑な気持ちを作品に投影している。

例えば、同センターの1階で文章と写真による展示を行うAmmyは、壁面に書かれたテキストのなかで「本当はこの街があまり好きではない。この街から、震災のことから逃げたい。離れたい。」という心情を吐露している。学校生活におけるスクールカースト。人間関係の近さと狭さがもたらす息苦しさ。10代~20代の多感な心は、大人になれば処理してしまえるようになるこういった苦しみに対して、剥き出しになってしまう。Ammyのテキストは、その切実さを思い出させてくれた。

Ammy『1/143,701』(撮影:NAKANO Yukihide)
Ammy『1/143,701』(撮影:NAKANO Yukihide)

これらの「若い」作品に対する先輩アーティストからの回答として、有馬は約20年前に描いた初期のドローイングなどを用いたインスタレーション『世界はやさしい、だからずっと片思いをしている。』を同じ空間に展示している。性や暴力への情動をそのまま描いた作品の無垢な凶暴さは、何事も炎上しがちな現在のSNS社会からすれば「不謹慎」「危険な奴」と嫌悪されるかもしれない代物だ。だが、自分のなかにある危うさを認め、表現というテーブルの上での対話を試みようとする有馬の愚直で率直な姿勢には、かつては子どもだった大人の1人である著者の心を、深く打つものがあった。震災に限らずやるせないことばかりのこの国で、有馬と若いアーティストたちが交わした、手探りの対話のための場(=キワマリ荘)があることが素直に嬉しい。

有馬かおる『世界はやさしい、だからずっと片思いをしている。』(撮影:NAKANO Yukihide)
有馬かおる『世界はやさしい、だからずっと片思いをしている。』(撮影:NAKANO Yukihide)
有馬かおる『世界はやさしい、だからずっと片思いをしている。』(撮影:NAKANO Yukihide)
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イベント情報

『Reborn-Art Festival 2019』
『Reborn-Art Festival 2019』

2019年8月3日(土)~9月29日(日)
会場:宮城県 牡鹿半島、綱地島、石巻市街地、松島湾

[ART]
参加作家:
島袋道浩
青葉市⼦
石川⻯一
野⼝里佳
吉増剛造
名和晃平
今村源
野村仁
村瀬恭子
WOW
淺井裕介
在本彌⽣+⼩野寺望
坂本⼤三郎+⼤久保裕子
志賀理江子
津田直
堀場由美子
有⾺かおる
Ammy
⼤槌秀樹
鹿野颯⽃
工藤玲那
後藤拓朗
是恒さくら
渋⾕剛史
シマワキユウ
白丸たくト
SoftRib
ちばふみ枝
富松篤
根本裕子
halken LLP
久松知子
古里裕美
ミシオ
守章
⻘木俊直
石巻劇場芸術協会
オザワミカ
たなか亜希夫
八重樫蓮
ヤグチユヅキ
浅野忠信
アラン
石毛健太
伊藤存+⻘木陵子
梅⽥哲也
⼩宮⿇吏奈
ジョン・ルーリー
バリー・マッギー
BIEN
フィリップ・パレノ
真鍋⼤度+神⾕之康研究室
持⽥敦⼦
ロイス・ワインバーガー
⼤崎映晋
ザイ・クーニン
中沢新一
⼭内光枝
アニッシュ・カプーア
草間彌生
久住有生
SIDE CORE
ジェローム・ワーグ
中﨑透
パルコキノシタ
深澤孝史
増田セバスチャン
松岡美緒
村田朋泰

[MUSIC]
『四次元の賢治 -完結編-』
2019年9月22日(日)、23日(月・祝)
会場:宮城県 塩竈市 杉村惇美術館
脚本:中沢新一
原案:宮沢賢治
音楽:小林武史
出演:
満島真之介
Salyu
コムアイ(水曜⽇日のカンパネラ)
ヤマグチヒロコ
ほか
声、歌の出演:
太田光(爆笑問題)
櫻井和寿
青葉市子
安藤裕⼦
細野晴⾂

[FOOD]
参加シェフ:
⽯井真介(シンシア / 東京)
石松一樹(マルタ / 東京)
川手寛康(フロリレージュ / 東京)
⼩林寛司(ヴィラ アイーダ / 和歌⼭)
佐藤剛(ファットリア カワサキ / 宮城)
浜田統之(星のや東京 ダイニング / 東京)
樋口敬洋(サローネ トウキョウ / 東京)
松岡英雄(割烹 まつおか / 京都)
松本圭介(オリーノ / 宮城)
ほか

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