レビュー

クラブミュージックシーンから高い評価を受ける歌姫が発表した2枚の意欲作

渡辺裕也
2013/01/11
クラブミュージックシーンから高い評価を受ける歌姫が発表した2枚の意欲作

「Tomomi Ukumori」。この女性シンガーの名前を最初に聞いたのはいつだったろうか。とにかくその入口が「クラブミュージックのシーンで高く評価されている女性ボーカリスト」という触れ込みだったのは確かだ。

実際に、2007年にリリースしたファーストアルバム『INDIGO』で彼女の歌声を聴いたときは、思わずそうした評判に頷かされたものだった。アルゼンチン出身のスターDJであるHernan Cattaneo(エルナン・カターニョ)、あるいは日本国内から海外にも活躍の場を広げるOMBなどをはじめとした、国内外のクリエイター達を集めて制作されたこのアルバムは、プログレッシブハウスを基軸として、緩急をつけた振れ幅の広い楽曲が並んでいたが、そこにスッと溶け込むような甘くメロウな歌声は、フロアで流れたときの手ごたえを存分に感じさせるものだった。

当然の如く、その後の彼女は国内外を問わず様々なアーティストの作品に参加を呼び掛けられるようになった。『INDIGO』以降、その澄んだ歌声によって多くのDJやクリエイター達の心を掴んできたことが、そのまま彼女の実力を裏付けてきたと言えるだろう。一方で、この歌い手にはまだ明らかにされていない資質があるようにも感じていた。彼女の柔らかな声がフロアを揺らすビートに乗せられたときの心地よさは、『INDIGO』以降のキャリアで実証済みだが、そのフロアから離れたときに、この人はどんな歌を聴かせてくれるのだろう、と。語弊がある言い方かもしれないが、もっとわがままになった彼女の歌も聴いてみたいと思ったのだ。

前作からおよそ5年ぶりとなる彼女のセカンドアルバム『Duality』を聴くと、まさにそんな期待が届いたような手ごたえを感じる。これまで彼女と何度もタッグを組んできたSugiurumnを筆頭に、またしても気鋭のクリエイターが楽曲ごとにプロデュースを手掛けているが、その焦点はどれも彼女のボーカリゼーションへと絞られている。柔らかなキックの音に乗せてたゆたうように歌っていたかと思えば、深いアンビエンスのなかに沈み込んでいったり、ビートを抑えてピアノをバックに儚げな声を聴かせてみたりと、とにかく情感が豊か。曲が切り替わるたびに彼女の新たな表情が見えてくるようだ。ダンスミュージックのフィールドからその存在を広めていった彼女の歌声が、実際はポップシーン全体に浸透できるポテンシャルを秘めているものだということを、本作は雄弁に語っている。


それと同時リリースされた『Humble & Radiant』が、また面白い。これは『Duality』の楽曲群のリミックス集で、いわばボーカルアルバムだった『Duality』をフロア対応にしたものだ。多彩なビートが楽しめるのはもちろんだが、全体としてはポスト・ダブステップ以降のダークでミニマルなものが基調となっており、彼女の発信するサウンドがまたアップデートされたことを見事に伝えている。

この2作によって、Tomomi Ukumoriは歌い手としての新たなフェーズに入ったと言ってしまっていいだろう。ここを起点として、その歌声がダンスフロアはもちろん、世界中のベッドルームにも届いていってほしいと思う。

リリース情報

Tomomi Ukumori
『duality』(CD)

2012年11月28日発売
価格:2,415円(税込)
Apt. / NWR-2041

1. Scenario(Prod. by Mathias Frick)
2. Amrita(Prod. by Sugiurumn)
3. Timeless(Prod. by Omb)
4. No One Can Hurt You(Prod. by Sugiurumn)
5. Twilight Song(Prod. by Reiji Kitazato)
6. Knight Without Armor(Prod. by Sugiurumn)
7. 永遠の今(Prod. by DJ Yogurt & Koyas)
8. Hermitage(Prod. by Michael Feihstel)
9. Contact(Prod. by Hiroshi Watanabe)
10. Above The Clouds(Prod. by Reiji Kitazato)

プロフィール

Tomomi Ukumori(Apt.)

ロサンゼルス生まれ。幼少期より両親の影響によりシンディローパーのタイムアフタータイムを聞き、衝撃を受け歌手を目指すようになる。高校の頃よりイタリアオペラを習い始め、エレクトロニックアンビエントバンドや、フルート、チェロなどの大所帯でのライブが好評を博したhanacannaでの活動など、さまざまなジャンルでの音楽を経験する。また自ら作詞作曲も手がける。Hernan Cattaneoなどデビューアルバムとしては異例の豪華アーティストが集結した、1stアルバム「indigo」をリリース。UKの老舗レーベルRenaissanceによるThe Masters SeriesにHernan Cataneoとの共作Cripsisが収録された事や、Tiesto主宰Black Hole Recordingsよりリリースされた、Moonbeamのアルバムに参加するなど、その活動は国内外から熱視線を浴びている。そして2012年、さらにその活動範囲を広げるべく、Hiroshi Watanabe、Sugiurumn、など豪華プロデューサー陣を迎え、2ndアルバム「duality」とリミックス・アルバム「Humble & Radiant」をリリース。

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