藤巻亮太、迷いを捨て、レミオロメンの楽曲も歌うことで示したソロ3年目の気概

曲が作れなかった2年間から抜け出し、遂に開催されたバンドライブ

5月13日にミニアルバム『旅立ちの日』をリリースした藤巻亮太が、その翌日からスタートさせた東名阪ツアー『藤巻亮太 TOUR 2015「旅立ちの日」』。アコースティックや弾き語りのライブは行っていたものの、バンドセットでのライブは約2年ぶりということもあって、大きな注目を集めていた。

『藤巻亮太 TOUR 2015「旅立ちの日」』 撮影:関山一也
『藤巻亮太 TOUR 2015「旅立ちの日」』 撮影:関山一也

レミオロメン活動休止後、すぐにソロ活動をスタートさせたものの、初のソロアルバム『オオカミ青年』(2012年)をリリースしてツアーを行ってからは、想いが成就し次に何を歌うべきかを悩んでいたため、約2年の空白期間を過ごしていた。インタビューなどでも語っているように、『旅立ちの日』は、自身のソロ活動をリスタートさせるべく生み出された1枚だ。『オオカミ青年』のように衝動に突き動かされる形で何かを表現するのではなく、自分自身の内面や自分が置かれている状況を見渡しながら、今の自分に何が表現できるのかを真摯に考え、1曲1曲丁寧に作られたという本作。「バンドサウンドの中でやってみることで、歌と言葉がまた違う響きを持つんじゃないかと思っている」。そう本人は語っていたけれど、果たしてどうだったのだろうか。

『藤巻亮太 TOUR 2015「旅立ちの日」』 撮影:関山一也
撮影:関山一也

太陽が昇って行く様子を歌うことで表した、藤巻にとっての「旅立ち」

設楽博臣(Gt)、御供信弘(Ba)、山本健太(Key / ex.オトナモード)、伊藤大地(Dr / SAKEROCK)をバックに従えた、5人編成でステージに登場した藤巻。赤いライトに照らし出されながら、静かにエレキギターを爪弾き、そして彼は歌い始めた。のっけからシリアスな楽曲を、重厚なバンドサウンドに乗せて歌い上げる。しかし、冒頭4曲を終えた後、観客に向けて語り始めた彼の口調は思いのほかリラックスしたものだった。「今回は『旅立ちの日』のツアーなので、明るく行きたいと思います!」。藤巻曰く、今回のセットリストは、「太陽が昇って行くようなイメージ」で組まれたものであるという。なるほど、冒頭の重厚感は、「夜明け」を表現していたようだ。

その言葉通り、ライブが進むにつれて、太陽が昇るがごとく、次第に軽やかで抜けの良い楽曲が続々と披露されてゆく。それにしても、彼の伸びやかな歌声が持つパワーは、やはりすごいものがある。バンドサウンドであろうとも揺らぐことなく、会場の隅々まで、真っすぐに響き渡るボーカル。中盤、そんな彼の歌を活かすべく、音源とはまた違う、柔らかなバンドアレンジが施されたミドルチューンの“春の嵐”(『旅立ちの日』収録曲)が鳴らされる。“名もなき道”や“旅立ちの日”といった最新曲を歌う彼は、いつにも増して楽しそうだった。MCで、「みなさん楽しんでいただけているでしょうか? 僕がいちばん楽しんでるかもしれない(笑)」と思わず言ってしまうほど、バンドサウンドを鳴らしながら、ホールを満たす大勢の観客を前に歌う彼の姿は明るかった。

『藤巻亮太 TOUR 2015「旅立ちの日」』 撮影:関山一也
撮影:関山一也

レミオロメンの楽曲も歌うことを決めた、心境の変化とは?

この2年の中で、彼は一体何を手放し、何を抱えることを決めたのだろうか。恐らく、手放したのは「迷い」だ。そして、抱えながら歩むことに決めたのは、彼の言葉を借りるなら「魂のふるさと」。すなわち、レミオロメンの存在だ。実際、この日のセットリストには、レミオロメンの楽曲が、いくつかそっと忍ばされていた。『旅立ちの日』収録の6曲はもちろん、『オオカミ青年』に収録されていた楽曲、この2年の間に生み出され、場合によってはアコースティックライブなどで披露されていた未発表曲、そしてレミオロメン時代の楽曲。この日披露された楽曲は、時代区分で言えば、相当広範なものとなっていた。それらを何ひとつ捨てることなく、そのすべてを抱えながら、とにかく彼は前に進むことを決めたのだ。そして、「迷い」を捨てたその歌声は、どこまでも伸びやかで力強く、聴く者の心を一瞬で捉えて離さない、大きな魅力を打ち放っていた。

その多幸感に浸りながら、思わず「藤巻亮太が帰って来た!」と口走りそうにもなったけど、それはちょっと違うのだろう。確かに、バンドを従えてステージという表舞台に「帰って来た」のは間違いない。しかし、今回のミニアルバムとツアーが『旅立ちの日』と名づけられているように、彼はここからまた、どこかへと旅立とうとしているのだ。余計なものを手放し、大事なものを両手に抱えながら。その行き先は、まだわからない。しかし、1つ言えるのは、今度の旅は、自分の内にこもったものではなく、リスナーやファンを巻きこんだ形のものになるだろうということだ。この日のライブを観て、改めてそう感じた。


イベント情報
『藤巻亮太 TOUR 2015「旅立ちの日」』

2015年5月15日(金)
会場:東京都 中野サンプラザホール

『藤巻亮太 TOUR 2015「旅立ちの日」』

2015年5月28日(木)
会場:大阪府 なんばHatch

リリース情報
藤巻亮太
『旅立ちの日』初回限定盤(CD)

2015年5月13日(水)発売
価格:2,600円(税込)
VIZL-844

1. 旅立ちの日
2. ゆらせ
3. 春の嵐
4. 指先
5. born
6. 名もなき道
※藤巻亮太自身が撮り下ろした写真集付

藤巻亮太
『旅立ちの日』通常盤(CD)

2015年5月13日(水)発売
価格:2,200円(税込)
VICL-64444

1. 旅立ちの日
2. ゆらせ
3. 春の嵐
4. 指先
5. born
6. 名もなき道

プロフィール
藤巻亮太
藤巻亮太 (ふじまき りょうた)

1981年1月28日、埼玉県生まれ。2000年に自身が中心となりインストゥルメンタルバンドSAKEROCKを結成。2003年に舞台『ニンゲン御破産』(作・演出:松尾スズキ)への参加をきっかけに大人計画事務所に所属。2010年に1stアルバム『ばかのうた』、2011年に2ndアルバム『エピソード』(第4回CDショップ大賞準大賞)を発表。2013年5月発売の3rdアルバム『Stranger』はオリコンウィークリーチャート2位を記録した。最新作として、2015年3月25日に初の横浜アリーナ単独公演、2日間を収録したBlu-ray&DVD『ツービート IN 横浜アリーナ』をリリース。またテレビブロスで連載中の細野晴臣との対談『地平線の相談』が2015年3月28日に書籍化された。音楽家・俳優・文筆家として、幅広く活躍中。



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