レビュー

流行や評判に合わせなくていい。門田匡陽が証明した音楽家のあり方

テキスト
金子厚武
流行や評判に合わせなくていい。門田匡陽が証明した音楽家のあり方

時代に流されなかった門田匡陽は、勝利を手にした

門田匡陽が関わってきたBURGER NUDS、Good Dog Happy Men、Poet-type.Mが一堂に会するイベント『festival M.O.N -美学の勝利-』の最終公演が、10月24日に恵比寿LIQUIDROOMで開催された。『festival M.O.N -美学の勝利-』というタイトルについて門田は以下のように語っている。

僕はとにかく自分に嘘がつけないっていう難儀なところがあって。誰がなんと言おうと、「今これがやりたい」ってなったらそれをやらざるを得ないんですけど、それは僕の周りにいる人間みんなに共通したことだと思うんです。(音楽ナタリー『門田匡陽×伊藤大地対談』)
みんなが未だに音楽をやってて、嫌な顔せず集まれるっていうのは、ある意味自分たちの価値観の勝利だし、そういう生き方の勝利だなって。だからこのイベントは「フェス」ではなくて、「フェスティバル」なんです。ちゃんとお祝いしたいことがある。(CINRA.NET『「共有」するのがそんなに大事? 門田匡陽が語る時代への違和感』)

BUMP OF CHICKENをはじめとした下北系のギターロックバンドが次々とメジャーへ歩みを進める中、個人が主宰するインディーズレーベルに所属したまま、当時は新宿にあったLIQUIDROOMでワンマンをソールドアウトさせるに至ったBURGER NUDS。メジャーレーベル内に設立されたマネージメント事務所に籍を置きながら、アルバム1枚とEP2枚で『the GOLDENBELLCITY』という壮大な物語を綴ったGood Dog Happy Men。共に中高の同級生で結成されたこの2バンドは、「やりたいことをやる」という姿勢を貫き通したバンドであった。

BURGER NUDS 撮影:Coto
BURGER NUDS 撮影:Coto

Good Dog Happy Men 撮影:MASANORI FUJIKAWA
Good Dog Happy Men 撮影:MASANORI FUJIKAWA

そして、この姿勢は今の門田のメインプロジェクトであるPoet-type.Mにももちろん引き継がれている。現在彼が1年間を通して展開しているプロジェクト「A Place, Dark & Dark」とは、全体主義的な空気が覆い、同調圧力がはびこる今の日本を「夜しかない街」に例え、春夏秋冬に合わせてアルバム4部作を発表するというもの。門田は近年のCINRA.NETでの取材において、「共有」ばかりが重視されることに対する違和感や、孤独であることの重要性を繰り返し語っていたが、『festival M.O.N -美学の勝利-』はその精神が15年前から変わらないものだということを、証明するためのイベントだったとも言える。


誇り高きオタク、BURGER NUDS

トップバッターを務めたのは、2004年に解散し、2014年に再結成を果たしたBURGER NUDS。そもそもBURGER NUDSというバンド名は、「ハンバーガー好きのオタク(=NUDS)」を意味し、彼らは様々なジャンルを好む音楽オタクだっただけではなく、アニメやゲームも大好きで、歌詞にはそういった作品からの引用も目立つ。今でこそすっかり市民権を得た「オタク」だが、彼らは当時から周囲の白い目を気にすることなく、自分たちのルールを貫いた、いわば「誇り高きオタク」だったわけだ。門田からMCを振られた内田武瑠(Dr)が突然「あの頃キン肉マンのゲームでどのキャラクター使ってたっけ?」なんて会話を始めたのは、何ともBURGER NUDSらしい一コマだった。

実際のライブに関しては、中盤で再結成後に制作された新曲が3曲披露され、<無駄にはしゃがないで良い 無理に喋らないで良い 嘘を唄わないで良い 誰も頼らないで良い 君は独りで良い>という歌詞がまさに門田の美学を表している“LESSON”をはじめ、今後に期待を抱かせる曲が並んだ。後半は、<退屈だとか 絶望だとか それさえ嘘に思えるだけ>という名フレーズで、「退屈」や「絶望」などの言葉で内省的な世界を歌う「鬱ロック」に自分たちが括られていたことを真っ向から否定する“逆光”、そしてラストはアンセミックな“ミナソコ”で、充実のステージを締めくくった。

BURGER NUDS 撮影:Coto
BURGER NUDS 撮影:Coto

ひとりで音と向き合うライブの楽しみ方を提案するPoet-type.M

右手にランタンを持って登場したPoet-type.M。共有や共感ばかりが強調されるライブのあり方に「NO」を表明し、新曲主体のセットリストで、ライブハウスではなくホールを舞台に開催された今年1月の基調公演『A Place, Dark & Dark -prologue-』と同様に、MCの代わりに曲間にモノローグを挟む形で、物語性の強いステージを展開した。

Poet-type.M 撮影:MASANORI FUJIKAWA
Poet-type.M 撮影:MASANORI FUJIKAWA

2014年の1年をかけて研究したという多彩なシーケンスを走らせ、楢原英介(Gt)、宇野剛史(Ba)、水野雅昭(Dr)という手練れのサポートメンバーがアグレッシブかつ安定感のあるプレイを聴かせる現在のPoet-type.Mは、ライブバンドとしての確かな完成度を誇る。中でもクライマックスだったのが、レコーディングにも参加している伊藤大地(Dr)を迎えて披露された“神の犬(Do Justice To?)”で、この曲のツインドラムは圧巻。そして、ラストはシャッフルビートで現実へと引き戻される“楽園の追放者(Somebody To Love)”。この曲でも、やはり<君は独り 絶対独りで無敵さ>と歌われている。Poet-type.Mが門田の現在地を明確に示すステージを披露したからこそ、このイベントが成立したのだということは強調すべきポイントだろう。

Poet-type.M 撮影:MASANORI FUJIKAWA
Poet-type.M 撮影:MASANORI FUJIKAWA


「祝祭」と呼ぶべき、Good Dog Happy Men

門田、内田、伊藤、そして韮澤雄希(Ba,Cho)という四人が揃った形では約6年半ぶりのライブとなったGood Dog Happy Menのステージは、まさに祝祭。「1950年代にロックが生まれたとしたら、そこから今に至るまでを全部やるバンド」というテーマを掲げ、ルーツミュージックを現代的な視点で鳴らした彼らの楽曲は、2000年代のアメリカにおけるアメリカーナ再興の流れとシンクロしていたが、その流れが日本のインディーシーンにも浸透した今、当時以上に多くの人に受け入れられる音楽性になっていると言ってもいいかもしれない。内田がボーカルをとったカントリー調の“大行進”や、会場中が手拍子に包まれた“そして列車は行く”、スケールの大きな“ユートピア”など、決して古びることのない名曲の数々に、オーディエンスは歓喜の表情を浮かべていた。

そして、こういう言い方は誤解を生むかもしれないが、このステージはやはり同窓会でもあったのだと思う。Good Dog Happy Menでの門田は、Poet-type.Mのときとは別人のようなリラックスした雰囲気で、大阪のライブの後にボーリングに行った話で盛り上がり、アンコールで門田一人が先にステージに出てきて、他の三人がなかなか出てこないなんてやり取りも、まさに高校生のノリ。バンドというのは不思議なもので、そのメンバーが集まっただけで、急に当時に引き戻されてしまう。その意味で、やはりGood Dog Happy Menは、門田にとっての永遠のユートピアなのだ。もちろん、現在はそれぞれの道を歩んでいるわけだが、彼らは一人だけれど一人ではない。そんな印象が強く残った。

Good Dog Happy Men 撮影:MASANORI FUJIKAWA

Good Dog Happy Men 撮影:MASANORI FUJIKAWA

Good Dog Happy Men 撮影:MASANORI FUJIKAWA
Good Dog Happy Men 撮影:MASANORI FUJIKAWA

周りに左右されることのない、あなただけの美学を

アンコールでは「この四人で最初に作った曲」として“黄金の鐘”が披露され、最後は“(Can you feel?) ~Most beautiful in the world~”を演奏。この日の出演者が全員ステージに集合して、『festival M.O.N -美学の勝利-』は大団円を迎えた。

門田は「望む望まないにかかわらず、俺はギターロックの端っこを15年間ずっと歩いてきて、誰もが知ってるヒット曲なんてひとつもない。ただ、自分のやりたいことだけを貫いてきたんです」と語った。おそらく、この日会場を埋めた多くのオーディエンスがこう思ったことだろう。「他の誰が何と言おうと、僕にとっての、私にとってのメインストリームはあなただ」と。最後に一人残って深々とお辞儀をした門田に贈られた、長く、暖かな拍手には、一人ひとりのそんな想いがこもっていたに違いない。

『festival M.O.N -美学の勝利-』出演者 撮影:Coto
『festival M.O.N -美学の勝利-』出演者 撮影:Coto

イベント情報

『festival M.O.N -美学の勝利-』
『festival M.O.N -美学の勝利-』

2015年10月24日(土)
会場:東京都 恵比寿 LIQUIDROOM
出演:
Poet-type.M
BURGER NUDS
Good Dog Happy Men

リリース情報

Poet-type.M『A Place, Dark & Dark-性器を無くしたアンドロイド-』ジャケット
Poet-type.M
『A Place, Dark & Dark-性器を無くしたアンドロイド-』(CD)

2015年10月21日(水)発売
価格:1,620円(税込)
I WILL MUSIC / PtM-1032

1. だが、ワインは赫(Deep Red Wine)
2. あのキラキラした綺麗事を(AGAIN)
3. ある日、街灯の下(Farewell, My Lovely)
4. 双子座のミステリー、孤児のシンパシー(GPS)
5. プリンスとプリンセス(Nursery Rhymes ep4)
6. 性器を無くしたアンドロイド(Dystopia)

プロフィール

門田匡陽
門田匡陽(もんでん まさあき)

1980年東京都生まれ。1999年より3ピースロックバンド「BURGER NUDS」のメンバーとして活動。2004年解散(2014年に再結成)。同年、ファンタジックで独創的な世界観を持つツインドラムの4ピースロックバンド「Good Dog Happy Men」を結成。数々の大型フェスに出演し、多くのファンを魅了させるが2010年にメンバーの脱退を受けて活動休止。2011年、門田匡陽として初のソロアルバム『Nobody Knows My Name』をリリース。その後、ドクターストップにより休養期間に入るが2013年4月1日よりソロ名義を「Poet-type.M」に変更し活動を再開。2015年に入り、音楽で綴る御伽噺「夜しかない街」を考案し、1月31日に独演会『A Place, Dark & Dark - prologue -』にて「夜しかない街」をライブで表現し物語をSTART。そして同コンセプトを反映した4部作となる『A Place, Dark & Dark』を「春夏秋冬」でリリースしていくことを発表。10月21日はその秋盤となる『A Place, Dark & Dark-性器を無くしたアンドロイド-』をリリース。

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