デジタルコミュニケーションが社会を変える

『デジタルコミュニケーションが社会を変える』 Vol.5 伊藤直樹(PARTY)インタビュー

デジタルコミュニケーションが社会を変える Vol.5伊藤直樹(PARTY)インタビュー

「マルチロール」「マルチタスク」の人材育成を

―伊藤さんは、この春から京都造形芸術大学情報デザイン学科の教授に就任されたそうですね。

伊藤:これまでも、自分なりにクリエイティブ業界の人材育成について感じることはたくさんあったのですが、ただ外野から遠吠えしているだけでは駄目だと思ったんです。リアルな教育の現場に入って仕組みから変えていきたくて、大学で教えることにしました。

―現在のクリエイティブ教育で改善すべきところはどこだとお考えですか?

伊藤:プログラミングやデザイン、企画などの教育が分断されてしまっていて、フレキシブルに学べないことですね。理系と文系の区分けがそろそろおかしくなってきていると思います。

―色んなことを知っていて、実際にやれる人の方が、アイデアが浮かびやすいんですね。

伊藤:さらに言えば、これからの人材には、「マルチロール」「マルチタスク」な働き方が求められると思っています。「マルチロール」というのは1人で何役もこなすことで、クリエイティブ業界でいえば、プログラミングやデザインなどを熟知している必要があります。「マルチタスク」はプロジェクトを複数リーダー制にして、1人が同時にいくつもの仕事に関わることを指します。これらを達成できたときにはじめて、移り変わりの激しいデジタルクリエイティブ業界を縦横無尽に動き回ることができるんです。

―フレキシブルな教育という意味では、先日ワークショップをやっていただいた、デジタルハリウッドの「本科:デジタルコミュニケーションアーティスト専攻」の理念とリンクする部分もありますね。

デジタルハリウッド×CINRA Presents 『PARTY伊藤直樹氏によるクリエイティブ・ワークショップ』

3月8日に、CINRA.NETとデジタルハリウッドの共同企画として、伊藤氏によるワークショップが開催されました。グループごとにデジタルコミュニケーションについての企画を練り上げる作業を通して、PARTY流のアイデア発想を学び、参加した学生40人全員が満足度を5段階で「5」と評価するほどの盛り上がりを見せました。伊藤氏も「少しだけ肩を押してあげただけで、アイデアが飛躍的に良くなりました」と、次世代の才能に対して手応えを感じていたようです。これまでにも数多くのワークショップを行ってきている伊藤氏ですが、デジタルハリウッドの学生たちはその中でもとても優秀だったそうで、「普段の仕事現場に近いやり取りが出来ました」と仰っていました。

デジタルハリウッド×CINRA Presents 『PARTY伊藤直樹氏によるクリエイティブ・ワークショップ』

伊藤:伝統工芸の職人さんなら1つのことを極めればいいと思いますが、クリエイティブディレクターの仕事はそうはいきませんから、そういった教育が必要だと思いますよ。「マルチロール」「マルチタスク」な働き方を考えた時、個人の中でどれだけの多様性が身に付いているかが重要ですし、今後は間違いなくそうした人材が求められると思います。

―では、そういった幅広い知識を身につけるためには、どのような心構えが必要でしょうか?

伊藤:人って、自分の得意な分野ばかり伸ばそうとしてしまいますよね。でも、例えばプロスポーツ選手の多くは苦手をなくす練習に時間を割くといいます。実は苦手な分野を伸ばすことで、人間は強くなれるものなのですよ。だから僕だって、「マルチロール」になれるよう日々努力していますから。あとは、若いうちにたくさんインプットすることをオススメします。僕はADKにいた頃、日本中の雑誌がほとんど置いてある部屋があって、そこで、ありとあらゆる情報を仕入れていました。女性誌やギャル雑誌もチェックしていましたし、ゴミ箱に捨ててあった雑誌を引っ張りだして読んでました(笑)。20代は、給料のほとんどが書籍代に消えていたといっても過言ではないですよ。

―凄いですね! インターネットがある今の時代では、情報に対して食傷気味になっている若者も多いと思いますが。

伊藤:批評家の東浩紀さんが『思想地図』という雑誌を手掛けていますが、あれは本当に良いネーミングだと思います。僕の経験上、たくさんの情報をインプットすると、ある日突然、世の中を俯瞰して見られるようになるというか、さまざまな事象をマッピングすることができるようになるんです。

―なるほど。それはアイデアを生み出す上でも、非常に重要な能力なのでしょうね。伊藤さんは、クリエイティブ業界の最前線でご活躍なさっていて、更にこれからは教育の現場にも踏み込み、人材を育てていこうと考えていらっしゃいます。そうした中で改めて、日本のデジタルクリエイティブシーンは、今後どのようになるべきだとお考えでしょうか。

伊藤:アメリカと比べて、社会に対する考え方や、デジタルイノベーションに対する知見が遅れてしまっていることを、まずは認識すべきだと思います。もちろん日本の方が進んでいる部分もありますが、ジャンルが専門化し過ぎてそれぞれが交わらなくなってしまっている。PARTYという社名には、そのような現状を変えたいという思いが込められているんです。パーティーでは知らない人同士が出会い、交流して化学反応が起りますよね。日本のクリエイティブシーンで、そういった化学反応がたくさん起こり始めるようになるといいですね。

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『本科 デジタルコミュニケーションアーティスト専攻』(DCA専攻)について

<ソーシャルメディア時代の新たなコミュニケーションと広告を生み出せる次世代デザイナーへ。>

ソーシャルメディアの普及とWeb技術の発展は、あらゆるメディアを旧来の枠から解き放ちました。PC上のWebだけでなく、スマートフォンやARアプリ、映像、デジタルサイネージなど、技術の進歩で生活者の周りには情報があふれ、企業からのメッセージは今までの方法では届かなくなっています。そんな環境の中、広告やCMは、新しいカタチへ生まれ変わろうとしています。「どんな技術を」「どう組み合わせて」生活者との新しいコミュニケーションをデザインするのか、次世代の広告デザイナーには『クロスメディア』で提案する力が求められています。今、国内で最も実践的なコミュニケーションデザインを学ぶコースです。

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目指すゴール

1. 次世代コミュニケーションのクロスメディアデザイナー

Webとグラフィックデザインをベースとして、本格的な映像技術と、スマートフォンアプリやSNS連動企画、プロジェクションマッピングなどに応用できる即戦力デザイナーを目指す。

2. ソーシャルメディアを駆使するクリエイティブディレクター

TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアを活用し、クライアントのニーズに応えられる広告・ブランディングを展開できる即戦力のデザイナー・ディレクターを目指す。

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