あくまでポップミュージック EAインタビュー

男女のポップデュオと言うと、女性シンガーと、作編曲などをこなす男性プレイヤーという組み合わせが多いように思うが、ラテン語で「彼女」を意味するEAを名乗るこの2人組は、その一般的な例からはやや外れたところにいる。ビンテージのシンセサイザーやTENORI-ONなどを駆使し、作詞作曲からプログラミングまでをこなすMaika Leboutetを中心に、ギタリストのShinya Saitoがサポートをするという、ちょっと珍しい組み合わせなのだ。デビュー作『METEO』は、ドラマーのあらきゆうこをゲストに迎え、打ち込みと生楽器の融合にチャレンジしつつも、80年代への愛情を基にした「あくまでポップミュージック」という彼女たちの心意気がはっきりと伝わる好盤。結成の経緯から機材に対する偏愛のルーツ、作品作りに対する姿勢の変化まで、2人にじっくりと語ってもらった。

最初は見た目が可愛くて安いっていう理由でシンセサイザーを買ったんですけど、それにはまってからは…1年で10台ぐらい買ったかな。(Maika)

―EAの結成は2009年とのことですが、どのように始まったのですか?

Shinya:バイト先にMaikaが後輩として入ってきたんです。僕は前にやってたバンドを辞めてフラフラしてたときで、「音楽をやってる子が入ってきた」っていうから話してみたら、話が合って。

Maika:私はずっと曲を作りためてたんですけど、ライブをやったことはなくて、「歌手になってデビューしたい」みたいな欲望はあんまりなかったんです。どっちかって言うと、作るのに没頭し続けてて。ただ、せっかく作ったんだから、ライブをして誰かに聴いてもらいたいと思い始めてたときに、バイトの先輩にギタリストがいるということを聞いて、「じゃあ、お願いしようかな」っていう。

左から:Maika Leboutet、Shinya Saito
左から:Maika Leboutet、Shinya Saito

Shinya:80年代っぽいのがやりたいなって、ずっと…20年ぐらい思ってて(笑)、聴かせてもらった音源にはシンセの音がたくさん入ってたんで、「これはいいのが作れそうだな」って思ったんですよね。

Maika:ただ、出会った当初は音楽の趣味とか結構違ってたんです。私はそれまで80sとかあんまり知らなかったんですけど、iTunesの中身を見せ合ったり、「これいいよ」って知らないアーティストを勧め合ったりして、段々やりたいことが一致していって、今の形になったっていう感じです。

―じゃあ、EA以前のお2人のバックグラウンドも聞かせてください。Maikaさんはお父さんがフランス人、お母さんが日本人で、フランスに住んでいたこともあるんですよね?

Maika:はい、結構小さい頃に2〜3年いて、その後日本に帰って、また中学のときに行ってっていうのを繰り返してたんですけど、トータルでは日本の方が長くて、母国語は日本語、フランス語はどっちかっていうと外国語というか。今回“Red block on the hill”をフランス語で歌ってるんですけど、それは坂本龍一さんに曲のデモを聴いていただく機会があって、「これフランス語で歌ってみたら?」って言ってくださって、教授に言われたらやるしかないと(笑)。言語っていうのはひとつの切り口として、いろんな人に聴いてもらうきっけになればと思ってます。

Shinya:日本人以外にも聴いてほしいっていうのはありますね。(フランス語は)ひとつの武器というか特徴だし、シンセの音ともよく合う気がするんですよね。

Shinya SaitoとMaika Leboutet

―音楽を作るようになったきっかけは?

Maika:元々お父さんがクラシック好きで、私も5歳くらいからピアノをやってたんです。でも、中学のときに反抗期で「もうやめる!」ってなったときに、お母さんが「こういうの聴いてみれば?」ってTHE BEATLESのベストを聴かせてくれて、それにすっごいはまって。もう手放せなくなっちゃって、どこに行くにも聴いてて、それが「自分でも作りたい」と思ったきっかけですね。多重録音みたいな機能が付いたキーボードを買って、それを使って作曲っぽいことをやり始めました。

―機材好きもその頃から?

Maika:近所にハードオフがあったのが大きくて(笑)、最初は見た目が可愛くて安いっていう理由でシンセサイザーを買ったんですけど、それにはまってからは…1年で10台ぐらい買ったかな。

―Shinyaさんもギターのエフェクターにはこだわりがある?

Shinya:好きなんですけど、金銭的な問題もあって…それこそハードオフで(笑)。

Maika:でも、オークションとかでも、身を削って買ってるよね? 食費を削ってエフェクター買ったりとかしてますよ(笑)。

2/3ページ:ホントのことを言って真実を作るよりは、上手いこと嘘ついて、そこに乗っかって、膨らませていきたい。(Maika)

(MISSING PERSONSを聴いて)技術を持った人ってマニアックな方向に行きがちだと思うんですけど、結構ポップなのにびっくりした(Shinya)

―ShinyaさんはEA以前からバンドでギターを弾いていたわけですよね?

Shinya:僕らが高校生の頃とかって、ギターヒーローがいたじゃないですか? ポール・ギルバートだったり、イングウェイ(・マルムスティーン)、スティーヴ・ヴァイとか。その頃は「音楽=ギター」みたいな感じで、高校3年間それしか聴いてなかったんじゃないかってぐらいで。ただ、大学に入るとそういうのに飽きちゃって、ジャズ研に入って古いのを聴くようになり、ファンクとかソウルとかも聴いて。そこにも行き詰まりを感じ始めた頃に、80sがすごく好きになったんです。

―具体的にはどのあたりですか?

Shinya:僕元々スティーヴ・ヴァイがすごく好きで、その関連でフランク・ザッパを聴いてたんですけど、そのバンドメンバーがやってたMISSING PERSONSが大きくて。シンセサイザーとエレキギターが両方ガンガン鳴ってて、でもJ-POPに近いぐらいキャッチーなんです。技術を持った人ってマニアックな方向に行きがちだと思うんですけど、結構ポップなのにびっくりしたし、僕ギタリストなんですけど、シンセの音が好きで、そういうのもあって惹かれて。

―もちろん、ShinyaさんはMaikaさんにMISSING PERSONSを聴かせたわけですよね? Maikaさんは初めて聴いたときどう思いました?

Maika:最初は音よりもキャッチーなメロディがスッと入ってきましたね。あの時代って、いい曲のピークだったんじゃないかって思ってて…

―いわゆる、MTVポップの時代だもんね。

Maika:MISSING PERSONSを聴いて、そこから80sのオムニバスとかを聴くようになるんですけど、「80sだからいい」というよりは、人の心をちゃんとつかむメロディとか、起承転結じゃないですけど、わりとストーリー仕立てだったりとか、そういうところに魅力を感じてました。だから、自分で曲を作るときも、まずは骨になる部分、いい詞といい曲がないと、どれだけサウンドで固めても弱いと思うんです。今回“Red block on the hill”とか“ミミズのダンス”とかは特に80s的な要素を取り入れてますけど、かといって『METEO』の全曲がそうではないと思うんで、幅の広さもEAの特徴だと思ってます。

Shinya SaitoとMaika Leboutet

―元々はMaikaさんが1人で打ち込みで作ってて、そこにShinyaさんのギターが入り、アルバムではあらきゆうこさんの生ドラムが入ったわけじゃないですか? 打ち込みに生の楽器が入ることって、最初は抵抗ありませんでしたか?

Maika:実は最初はありました。自分で納得のいく音を追求して作るので、デモの時点で結構完成に近いところまで作っちゃうんですよ。ただ、そこに楽器を入れることで、思ってもみなかったアイデアが生まれたりして、それによって自分ひとりでは成し得なかったところまで行けちゃったりするので、それが人とやる面白さだと思います。今も打ち込みと生楽器の融合具合は模索中ですけど、やっぱり生楽器っていいんですよね。

―逆に、Shinyaさんはバンドから打ち込み主体に変わったわけで、そこの戸惑いはありませんでしたか?

Shinya:僕はバンドをやってたときから結構クリックが好きで、「グルーヴがなくなるから」って嫌がる人も多いんですけど、僕にとっては打ち込みでリズムをバチバチ合わせてやるのが快感なんですよね。だから、むしろ望んでたことで、今はすごくやりやすいです。

ホントのことを言って真実を作るよりは、上手いこと嘘ついて、そこに乗っかって、膨らませていきたい。(Maika)

―EAの音楽にはゲームミュージック的な世界観があるように思っていて、特に“Red block on the hill”は歌詞もMVもその要素が色濃いと思うんですけど、実際にゲームからの影響はありますか?

Maika:この曲を作ったときに、ちょうどファミコンを買ったんですよ(笑)。

―MaikaさんのTwitterの背景がファミコンやってる男の子だった(笑)。

Maika:そうです(笑)。その頃80sのヒットチャートの曲を聴き漁ったり、YouTubeでビデオを見てて、まず80sの曲をカバーしてみようと思って、“コンピューターおばあちゃん”をカバーしようとしたんです。ちょうどそういうテクノポップみたいなのに染まりたかった時期で(笑)。だけど、そのカバーに煮詰まっちゃって、たまたまシンセを弾いてたときに出てきた音が、“Red block on the hill”のイントロの音で。そこでピンと来てできあがった曲なので、歌詞の内容はそのときはまってたテトリスの…

―「Red block」ってそういうことか(笑)。

Maika:<まばたきも忘れて>って歌詞にあるように、画面の中の世界に入り込んじゃうような感覚って、ファミコンがその元祖だと思って、それを曲で表現したいなって。『METEO』の曲って、日常からちょっと違うところに連れて行きたいというか、そういう体験って、音楽でできる最大の要素だと思うんです。

Shinya:新しいシンセサイザーを買ったりして、音色で曲ができること多いよね?

Maika:そう、歌詞とかメロディじゃなくて、サウンドからインスピレーションが出てくるから、そういう非日常的な感覚になるのかも。何て言うか…上手いこと嘘つきたいです(笑)。ホントのことを言って真実を作るよりは、上手いこと嘘ついて、そこに乗っかって、膨らませていきたい。

Shinya:結果それが真実だったかもしれない…みたいなね。

3/3ページ:天候とか自然環境ってどうにもできないことだけど、でもそれって全く人間と無関係なところから来てるのかっていうと、そうじゃないと思うんです。(Maika)

音楽に対する愛情とか、機材に対する偏愛とか(笑)、そういうマニアックなことも要素としてありつつ、意識はポップでいることが重要かなって。(Maika)

―EAの音楽にはポップな要素とマニアックな要素が混在してると思うんですけど、そのバランスに関してはどう考えていますか?

Shinya SaitoとMaika Leboutet

Shinya:CDで聴く分には、マニアックな要素があんまり強くなると、聴きづらいんじゃないかっていうのがあるんですけど、ライブだとそういうのがあった方が…

Maika:ライブは見るものだからね。マニアックな楽器を使ってたり、よくわかんないことやってたらワクワクするし(笑)。EAの曲は確かにどっちにも転べると思うんですけど、マニアックにしようと思えばいくらでもできると思うんです。逆に、ポップにする方がときに難しかったりすると思うんですけど、歌ものをやってる以上、ポップな要素は絶対に必要だと思っています。やっぱり、人に伝わらないと意味がないと思うので、音楽に対する愛情とか、機材に対する偏愛とか(笑)、そういうマニアックなことも要素としてありつつ、意識はポップでいることが重要かなって。

―ボーカルのディレクションで牧村憲一さんが参加されていますが、そのことで意識が変化した部分というとどうですか?

Maika:それこそ「ポップにしたいんだよね?」って再確認させてくれましたね。特に、“Red block on the hill”で2番のサビからコーラスの追っかけが入ってくるんですけど、あれは最初なくて、「お客さんも歌えるような掛け合いのコーラス入れたらどう?」っていう、先生のアイデアを基に作ったんです。

―これまでは自分の中で完結していたものが、いろんな人との出会いによって外を意識するようになった。この変化は大きいだろうね。

Maika:まさに、そうです。結局は人に聴いてもらうのが…ゴールっていうとおかしいですけど、人の耳に入って完成だと思うので、それをレコーディング前まではあんまり意識してなかったかもしれないです。わりと内側に入り込んでいきがちで、「ライブでお客さんが盛り上がるからこのフレーズを入れる」とか、そういうのも新鮮で。

―そのあたり、Shinyaさんは過去のバンド経験からアドバイスできる部分も多かったんじゃないですか?

Shinya:僕は淡々とプレイに集中するタイプで、アクションとかで盛り上げるのは苦手なんです。「音楽で盛り上がってないだろ?」みたいに思っちゃうんで。

Maika:2人ともどっちかっていうと内向的なタイプなんです(笑)。ただ、煽ったり、アクションしたりっていうのも、見に来てくれた人に「楽しかった」って思ってもらいたいから、そのためにはいいと思うんです。感動してもらうには何をしてもいいというか、違う世界を作るために映像を使ってるバンドもたくさんいるし、そういう視覚的な面白さも全然アリだと思いますね。

―人を感動させたいと思うのって、自分がそういう感動を経験したことがあるからこそだと思うんですけど、実際にそういう経験をしたライブというと、何が挙がりますか?

Maika:教授と大貫妙子さんの「UTAU」っていうツアーは、もちろん歌もピアノもすっごいよかったんですけど、音と映像のリンク具合がすごくて、胸をえぐられたっていうか、日常から別世界に連れて行かれちゃった感じはありましたね。

Shinya:僕はshimmyさん(清水ひろたか)にはすごく影響を受けてるんですけど、ニューヨークで見たIF BY YESはもう、ホントにすごかった。アルバムを作ったメンバーと、あとネルス・クラインさんで、全員すごかった。同じ人間とは思えないぐらい…

Maika:七福神みたいだったよね(笑)。

天候とか自然環境ってどうにもできないことだけど、でもそれって全く人間と無関係なところから来てるのかっていうと、そうじゃないと思うんです。(Maika)

―では最後に、EAとしての今後の目標を聞かせてください。

Maika Leboutet

Maika:すっごい大まかな言い方になっちゃうんですけど、環境をよくしたい。環境って言っても幅広くて、地球環境だったり、自分自身の中にも環境があると思うんですけど、やっぱり「上昇させること」に意味があると思うんです。人の心に届けて、結果的にその人を上昇させることができて、それが連鎖すれば地球全体の環境になると思う。つまり、上昇した状態の人間の中から出てくるものが連鎖して、地球ごと、宇宙ごと、環境がよくなってほしいなって。


―『METEO』(フランス語で「天気予報」)っていうタイトルも、そういう考えに関係してる?

Maika:天候とか自然環境ってどうにもできないことだけど、でもそれって全く人間と無関係なところから来てるのかっていうと、そうじゃないと思うんです。宇宙からのメッセージ…とまでは言わないけど、エネルギーを感じ取れるかとか、私なりに自分から出てきたものを寄せ集めて作ったアルバムなんです。

―途中で話してくれた、非現実的な世界を見せるっていうところともつながってきそうですね。

Maika:非現実的な世界って、超現実的な世界でもあると思ってて、普通に暮らしてて直接目に見えないことでも、それって絶対空想ごとじゃないと思うし…もしかしたら、それが見えるようになるっていうことが、目標なのかもしれないです。

リリース情報
EA
『METEO』

2012年5月9日発売
価格:1,500円(税込)
UXCL-48

1. Red block on the hill
2. Pitcha pitcha
3. UCHU
4. ミミズのダンス
5. ひので
6. Red block on the hill(French version)

イベント情報

2012年5月3日(木・祝)
会場:東京都 渋谷O-nest
出演:
おはようメルシー
中田真由美
原名蕗子
163(g)
dulce aereo(空気飴)
今宿えみこ
矢野あいみ
恋のパイナップル
MiyuMiyu
樋口舞
halnote
EA

2012年5月16日(水)OPEN 18:00 / START 18:45
会場:東京都 渋谷Star Lounge
出演:
SPANOVA
EA
nego
センカヲス
ZeZeZaZa
ふくろ

レムチャップMini Albumレコ発企画
『めくる境界線』東京編
2012年5月27日(日)OPEN 17:30 / START 18:00
会場:東京都 下北沢 BASEMENT BAR
出演:
レムチャップ
ベルボーイ
the モラトリアムスパゲッチーズ
EA

LACHIC presents
『SAKAE SP-RING 2012』
2012年6月2日(土)、6月3日(日)OPEN 11:30 / START 12:00
会場:
愛知県(以下同)名古屋CLUB QUATTRO、OZON、HOLIDAY NAGOYA、CLUB Zion、NAGOYA Blue Note、TIGHTROPE、and more
※EAは6月2日(土)に出演

プロフィール
EA

2009年結成、日仏ハーフのMaika Leboutet(マイカ・ルブテ: 全作詞・作曲、programming、Vocal、Synthesyzer、テノリオン、ほか)と、技巧派・音響派ギタリストShinya Saito(シンヤ・サイトウ)による、2人組POP/ELECTRONICA/ALTERNATIVE ユニット。結成以来、ゆったりしたペースながらも、女王蜂、撃鉄、The SALOVERS、住所不定無職、ヘンリーヘンリーズ、THE ラブ人間ら今の時代をリードする新世代アーティストと対バンを重ねる一方、mi-gu(あらきゆうこ+清水“Shimmy”ひろたか)、小山田圭吾、salyu×salyu、高野寛、 Chocolat&Akitoらともステージを共にし、注目を集めていく。2012年5月9日には、遂にEAにとって初の全国流通盤である1st mini album『METEO』がリリースされる。



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ダイバーシティーやインクルージョンという言葉が浸透し、SDGsなど社会課題の解決を目指す取り組みが進む。しかし、個人のちいさな声はどうしても取りこぼされてしまいがちだ。いまこの瞬間も、たくさんの子どもや若者たちが真剣な悩みやコンプレックス、生きづらさを抱えながら、毎日を生きている。

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