ネット3世代が紡ぐ「新しい物語」 fhanaインタビュー

バンドシーンに属しながらも、いち早くネットでの楽曲発表を行ってきた佐藤純一を中心に、ニコニコ動画でボカロPとしても活動してきたyuxuki waga、ネットレーベルから作品を発表してきたkevin mitsunagaの「ネット3世代」で結成され、後にメインボーカルとしてtowanaが加入する形で4人組のユニットとなったfhana。ネットを通じて知り合い、2.5Dで初めて全員が対面、その後メイド喫茶へ行って、ビジュアルノベル『CLANNAD』の話で意気投合したという、何とも「今っぽい」エピソードを持つ彼ら。『CLANNAD』に通じる泣ける世界観、ピュアなセンチメンタルを核とした楽曲は既に高く評価され、これまでに発表した3枚のシングルはすべてアニメのテーマ曲となり、最新シングル『いつかの、いくつかのきみとのせかい』も、TBSのアニメ『僕らはみんな河合荘』のオープニングテーマに起用されている。

彼らが共通のフェイバリットに挙げるSUPERCARの元メンバーである中村弘二とフルカワミキによるLAMAもそうだが、かつては結び付かなかったであろう面々が、ネットなどの力もあって一堂に会し、新たな価値観を作り上げていくということが、今さまざまな場所で起こりつつある。fhanaもまたメンバーそれぞれが刺激し合い、これからきっと新しい物語を紡いでいくに違いない。インタビュー当日は都合により佐藤の到着が遅れ、前半はyuxuki、kevin、towanaの3人との対話になったのだが、それが結果的に「ネット3世代」であることの面白味を、よりわかりやすく浮かび上がらせることになったと思う。

(佐藤が)今ここにいないと、子供たちが頑張ってるみたいな感覚なんです(笑)(towana)

―fhanaの面白さはまず「ネット3世代」というところだと思うんですけど、違う世代の人たちが一緒に一つのものを作ることについて、自分たちではどう感じていますか?

yuxuki(Gt):やっぱり考え方も違うし、聴く音楽のジャンルも違うし、引っ張ってくるリファレンスも違うので、3世代分かれてるなって感じますね。でもその分毎回曲にいろんな要素が入って、幅が広がるんですよね。

yuxuki waga
yuxuki waga

―三人から見て、佐藤さんとの違いはどんな部分に感じますか?

yuxuki:Skypeで佐藤さんと「こんな音楽いいっすよ」って話をしながら作業してたりするんですけど、しゃべりながら佐藤さんが曲を作って、それを聴かせてもらうと、話の中で出てきた何十ってバンドのエッセンスが全部組み込まれてるんですよ。

kevin(PC,Sampler):佐藤さんはyuxukiさんがお勧めした曲とか、外からの影響を自分の中に取り込んで、ポンって新しいものを出してくるタイプの人だと思います。

―それって、渋谷系を通ってる人ならではの編集感覚なんだろうなあ。

kevin:ああ、そうかもしれないですね。佐藤さん、渋谷系大好きですもんね。

yuxuki:渋谷系の話も微妙に世代が分かれて(笑)、佐藤さんはフリッパーズとかが好きで、僕はCymbalsとかが好きなんですよ。

kevin:それでもって、僕はCORNELIUSにどハマりしてるっていう(笑)。

―その3世代感はわかりやすいね(笑)。towanaさんから見て、佐藤さんとの違いをどんな風に感じますか?

towana(Vo):私たちは自分のことをがむしゃらにやってる感じなんですけど、佐藤さんは俯瞰してるところがあって、曲も作ってるけど、それよりもっと上の視点から、私たちとか、曲を聴いてくれる人たちとか、すべてを見てる感じがします。

kevin:提督ですね(笑)。

towana:だから今ここにいないと、子供たちが頑張ってるみたいな感覚なんです(笑)。

左から:towana、kevin mitsunaga
左から:towana、kevin mitsunaga

作りたい音が全部パソコンで作れることに気づいてから、電子音楽にグイグイ入っていって、一人の世界が楽しくなっていったんです。(kevin)

―kevinくんから見て、yuxukiくんやtowanaさんの世代との差は感じますか?

kevin:いい意味で、そんなには感じないですね。聴いてきた音楽とかで差を感じることはありますけど、普段一緒にいて、「年齢違うからノリ合わない」みたいに感じることは一切ないです。

towana:この三人は年も近いからね。佐藤さんはちょっと上だけど(笑)。

yuxuki:大学4年生と1年生ぐらいな感じ。

kevin:そう、そのぐらいの後輩感です(笑)。

―じゃあ、yuxukiくんやtowanaさんから見たkevinくんはどう?

yuxuki:僕は若いなあと思います。曲の話からプライベートなことまで、いろんな相談を聞いたりもしてるんで(笑)。

kevin:周りに人生の先輩がたくさんいるんで、何でも相談するんです。それこそ、「服買おうと思うんですけど」とかも(笑)。

kevin mitsunaga

towana:基本的に、年上に可愛がられるタイプなんです。

―わかる。まだ会ってから15分ぐらいだけど(笑)。

kevin:高校生ぐらいのときから、基本的に付き合いのある人は年上が多かったんですよね。

―ネットレーベルの世界には、もちろん同世代もいるだろうけど、年上もいっぱいいるだろうしね。

kevin:そうですね。高校生の頃はバンドをやってたんですけど、ライブをやると、大体自分たちが一番若いバンドで、年上の対バンの人たちとご飯行ったりもして。

―基本的に社交性があるんだろうね。逆に言えば、そういう人がバンドからネットに移行していったのがちょっと不思議な気もするけど。

kevin:自分で楽器を弾くことをしばらくやってたんですけど、作りたい音が全部パソコンで作れることに気づいてから、電子音楽にグイグイ入っていって、一人の世界が楽しくなっていったんです。それで、一時期バンドからは遠ざかってたんですけど、3年前ぐらいに今のメンバーと出会って、人とやるのが楽しいって時期にまた突入した感じなんです。

―yuxukiくんはバンドとボカロと、これまでどういう変遷があったの?

yuxuki:もともとバンドしかやってなかったんですけど、たまたまボカロを知って、意外と自分一人で作るのも面白いなと思って。ただそれも結局は、s10rw(ストロウ。yuxukiも中心メンバーになっているインターネット発の総合クリエイティブサークル)の中で切磋琢磨するのが楽しかったんだと思うんです。結局s10rwのメンバーでバンドもやりましたし、根本的にはバンドとか、みんなでやるのが好きなんだと思います。

佐藤さんのシティポップっぽいお洒落なコード進行も、アウトロでyuxukiさんがワウっぽいのを入れてるのも、普通のシューゲにはないなって思って、「オモシロシューゲ」っていうか(笑)。(kevin)

―シングルの2曲目の“ARE YOU SLEEPING?”はkevinくんの作曲で、トラックの面白さと、yuxukiくんのシューゲイズなギターが合わさって、独特な曲になってますよね。

kevin:これは最初から、「シューゲイザーを作ろう」っていう目的の下にスタートした曲なんです。僕が骨格というか、大元を作って、そこにみんなで肉付けしていって。

yuxuki:kevinくんはまったくシューゲイザーサウンドを作ったことないんだけど、「作ってくれ」ってお願いして(笑)。

―それはなぜ?

kevin:僕は今までソロで自分の好きなようにしか曲を作ったことがなかったのですが、アニソンって監督さんのオーダーに応えつつ曲を作らなければいけないので、そういう「お題を受けて曲を作る」ということのある種の訓練も兼ねてですね。僕はギターとか弾けないので、シューゲの感じってイメージできなかったんですけど、ひとまず浮遊感のあるコード進行を心がけて、佐藤さんに添削してもらいつつ作りました。だから、シューゲイザーにしてはちょっとシティポップ感があるというか、お洒落な感じがするのは、佐藤さんがいい塩梅に調整してくれて、yuxukiさんに関しては、もともとシューゲ大好きだから、「お願いします!」って(笑)。そうしたら、イントロのギターの入りからして……。

右:kevin mitsunaga

yuxuki:あれ、みんな笑うんですよ(笑)。あまりにも本気なシューゲギターなんで。やってやったぜ感はありますね(笑)。

―“ARE YOU SLEEPING?”ってタイトルからして、マイブラっぽいもんね。

yuxuki:まあ、ケビンなんで(笑)。

―そっか、ケビン・シールズ(My Bloody Valentineのボーカル、ギター)なんだ!(笑)

kevin:完全に後付けなんですけど(笑)。

―towanaさんはこの曲のボーカルに関してはどんなところがポイントでしたか?

towana:この曲は表題曲に比べればメロディーも難しくないし、歌いやすいキーだったので、いつもよりマイク近めで、リバーブを深めにかける想定で、フワッと歌った感じです。

―サウンドに乗って漂うような感じだよね。

towana:うん、夢の中みたいな。

kevin:佐藤さんのシティポップっぽいお洒落なコード進行も、アウトロでyuxukiさんがワウっぽいのを入れてるのも、普通のシューゲにはないなって思って、「オモシロシューゲ」っていうか(笑)。

towana:オモシロシューゲ! なんかギャルっぽい(笑)。

―(笑)。歌詞に関しては、アニメありきなわけですよね?

yuxuki:表題曲が主人公の男の子の視点で、こっちは律ちゃんって女の子の視点なんですけど、律ちゃんは本の虫で、すごい没入しちゃうんで、「律ちゃん、シューゲだな」って話で(笑)。

―シューゲイズならぬ、ブックゲイズってことだね(笑)。

kevin:律ちゃんは周りの人に話しかけられても全然聞こえないぐらい本に入っちゃう子なんで、その内向的な感じもシューゲに合ってるなって。

yuxuki:林(英樹)さんの歌詞がホントよくて、サビの終わりが<いつかの…>で終わってて、それが表題曲“いつかの、いくつかのきみとのせかい”につながってるんですよね。

towana:この歌詞が来たときは、「にくい! やってくれたなあ!」って思ったよね(笑)。

towana

ネットとフィジカルどっちがメインとかって境がなくなっているのは新鮮だったし、面白いなって思いました。(佐藤)

―(ここで佐藤が到着)最初にネット3世代の話をしてたんですけど、佐藤さんから見て、下の世代との違いは特にどんな部分で感じますか?

佐藤:当たり前ですけど、懐かしいなって思う音楽とか、映画、アニメが違いますよね。自分より明らかに年代が上のアーティストに対しては、素直にファン目線になれますけど、世代の近いアーティストに対しては、ライバル視じゃないけど、もう少し別な思いを抱きますよね。例えば僕からしたら、いわゆる「97年組」って言われるような、SUPERCARとかくるりとかには、「先にやられて悔しい」みたいな感覚はあるけど、yuxukiくんやkevinくんにはそれがない。そういう境目が、当然もっと下だったりしますよね。

左から:佐藤純一、towana
左:佐藤純一

―音楽以外の部分だとどうですか?

佐藤:やっぱりデジタルネイティブだなっていうのは思いますね。IT企業の人とかって、実はそんなにインターネットどっぷりではなかったりするじゃないですか? あくまでビジネス視点でインターネットを見てるから、ホントに普段からインターネットと密着して生活してる人とはまた違うっていう。その点、彼らはやっぱりデジタルだなって(笑)。僕も新しいものは好きなんで、今ネットで盛り上がってることを聞いたり、そういう意味では逆に教えられることも多いですね。

―佐藤さんはかなり昔からネットで楽曲を発表していたし、デジタル化への対応が早かったのは間違いないですよね。

佐藤:ネットも一応95年くらいからやってはいたんですけど、当時はSNSもなかったし、そんなにどっぷりじゃなくて、発展していく過程を外から見ていたので、コミュニケーションの主となる舞台はネット内じゃなくて、フィジカルな世界だったんですよね。それが今、ネットとフィジカルどっちがメインとかって境がなくなっているのは新鮮だったし、面白いなって思いました。

fhanaの物語を紡いでいって、過去の音楽の歴史とか、インターネットの歴史とか、そういうところともつながる流れの先端を作っていきたい。(佐藤)

―そういう変遷を見てきた佐藤さんならではの感覚だと思ったのが、別のインタビューでおっしゃってた「音楽の物語化」の話なんですね。かつて情報の流れが一方通行だった時代は、みんなが同じ感覚を共有しやすかったから、J-POPのアーティストは普通の人々の物語を察知して、それに対して曲を書いていた。でもネットの時代になって、みんなの感覚がバラバラになる中で、アイドルや、ボカロ、『カゲロウプロジェクト』(音楽家・じん(自然の敵P)によるマルチメディアプロジェクト)のような、物語込みのエンターテイメントとしての音楽をアーティスト側から発信する時代になっているという話だったと思うのですが、ではそういう中で、fhanaとしてはどういう活動をしていきたいとお考えでしょうか?

佐藤:そういう時代だとは思ってるんですけど、fhanaとしては何かを依り代にするというよりは、自分たちの物語というか、歴史を作っていきたいと思ってるんです。アニメの主題歌にしても、作品の世界に寄り添うだけでなく、作品自体を包み込むようなもっと大きな世界観の曲を作りたいと心がけています。僕はYMOも好きで、YMOの人たちの流れって、綿々と日本の音楽シーンの中で、大きな川の流れのように続いてるんですよね。なので僕たちも、今この瞬間の盛り上がりだけじゃなくて、もっと20~30年とか、長い歴史の中でfhanaの物語を紡いでいって、過去の音楽の歴史とか、インターネットの歴史とか、もっと大きく言えば文化の先端を作っていきたいと思ってて。それ自体はごく当たり前のことなのかもしれないですけど、そうじゃない時代になってきたことも踏まえた上で、あえて歴史を作っていきたいというか。

佐藤純一

―その意味でも、やっぱりネット3世代っていうのは大きいですよね。個人で言えば、例えば、yuxukiくんはニコ動の物語を体験してきていて、その人がメンバーとしていることによって、それがfhanaの物語の中に含まれるというか。

yuxuki:特に、2009年ぐらいって、wowakaさんとか、古川(本舗)さんとか、ハチさんとかがいて、一緒に盛り上がっていた感があったので、僕はそういう人たちからも影響を受けてますし、そこから今に移っていく感じをずっと見てて、いろいろと感じるところはありますね。

佐藤:その面白い時期に自分も立ち会えたのは、ラッキーだったなって思います。特にボーカロイドは、ひとつのカテゴリではあるけど、音楽ジャンルではないじゃないですか? ボカロの中にはクラブミュージックもあればロックもあって、1つの音楽ジャンルではなく、コミュニケーションや創作のあり方が今までと違ったっていう、そこが面白い部分かなって思います。

原作のキャラクターの気持ちを歌ったものが、図らずもfhana自体の物語を歌っていて、世の中の状況ともうまくつながる、そういう奇跡みたいなものって、狙って起こせるものじゃないと思うんですね。(佐藤)

―では、シングル曲の話に行きましょう。“いつかの、いくつかのきみとのせかい”は、もちろん『僕らはみんな河合荘』の世界観ありきで作られた曲だとは思うんですけど、ただ歌詞に出てくる「セカイ」とか「物語」っていう言葉は、fhana自体のキーワードでもあると思ったんですよね。「物語」はさっき話した通りだし、fhanaが最初に発表した自主制作盤のタイトルは「新世界線」という意味の『New World Line』でしたし。

佐藤:それは面白いというか、むしろ今までの曲の方が歌詞は俯瞰で書いてもらってて、今回はよりキャラクター目線で、この曲で言えば主人公の宇佐目線で書いてもらってるんです。そうやって書いてもらったものが、意外とメタな歌詞になってるってことですよね(笑)。

―“いつかの、いくつかのきみとのせかい”っていうタイトルも、いわゆる「平行世界」のことを指してるんですか?

佐藤:このタイトルは、原作の4巻の表紙のイラストで、ヒロインの律が持ってる本のタイトルなんです。律は本が大好きで、宇佐は律のことが好きなんだけど、律が読んでる本の世界に宇佐はいなくて、「君が読んでる本の世界を僕にも見せてよ」って歌詞になってるんです。

―なるほど、てっきりfhanaの世界観に寄せたのかと思ってました。

佐藤:でも結局いいクリエイティブって、結果的にいろんなものが上手くつながり合うじゃないですか? 原作のキャラクターの気持ちを歌ったものが、図らずもfhana自体の物語を歌っていて、世の中の状況ともうまくつながる、さっき作品自体を包み込むようなもっと大きな世界観の曲を作りたいって話しましたけど、そういう奇跡みたいなものって、なかなか狙って起こせるものじゃないと思うんですね。そういう意味でこの曲は、幸運にも、自分たちのコントロールを超えた、奇跡が起こってる曲なんじゃないかと。

左から:佐藤純一、towana、kevin mitsunaga、yuxuki waga

―うん、見事な結びつきを見せてると思います。

佐藤:昔の大ヒット曲なんかも、自分の経験を歌ったものが、結果的にたくさんの人の共感を得て広がったり、アニメで言えば、『エヴァンゲリオン』とか『涼宮ハルヒの憂鬱』にしても、狙って今の状況を起こしたわけじゃなくて、いろんな偶然や時代の巡りあわせで、奇跡的にいろんなものがつながって、相乗効果で広がったと思うんですよね。初音ミクも当然そうだと思いますし。

―ちなみに、僕ミュージックビデオにもある種の時代性を感じちゃったんですけど、何か狙いってありました?

佐藤:ミュージックビデオに関しては、逆に昔っぽいのを作りたかったんです。今回の曲は今までの曲よりテンポもゆっくりで、スタンダードな曲というか、THE BEATLESとか、小林武史の職人的なポップスとかを意識してて、ビデオは90年代のUKロック、OASISとか、あの時代の雰囲気のものにしようと思ったんです。でも、60~70年代とかは、記号的にそれっぽい映像が作れるんですけど、90年代って中途半端でわかりにくいんですよね(笑)。それで結構苦労しつつ、でも懐かしい雰囲気は出したいなって思ってました。

―僕が思ったのは、まあ共同生活をしてるのは、『僕らはみんな河合荘』から来てるとは思ったんですけど、結果的に『テラスハウス』みたいになってるなって。あの番組って、言ってみれば「物語化」で成功してるタイプの番組だと思うんです。そういう意味で、ちょっとリンクを感じたんですよね。

佐藤:なるほど……まあ、それは考えてなかったんですけど(笑)、そういう解釈もできるっていうのはいいことですよね。やっぱり、人が感動するのって、そこに物語があるからだと思うんですよね。音楽だけを聴いて、「いい曲だ」って感動したとしても、そもそもそういう音楽性、音色、フレージングが好きだっていうのは、そこまでの自分の経験や過程、文脈があるからで、そこは切り離せないと思うんです。だからあのビデオがそういう解釈も出来るのは、fhanaの物語に多面性がある証拠なのかもしれないですね。

これからの時代、機械に頼らない、想像力とか、体の中にある音楽力みたいなものがもっと大事になるのかなって。(佐藤)

―towanaさんは“ARE YOU SLEEPING?”よりも“いつかの、いくつかのきみとのせかい”の方が難しかったとおっしゃってましたが、実際この曲のレコーディングはどうでしたか?

towana:単純にメロディーが難しいっていうのはあるんですけど、2枚目とか3枚目の方が、アニメのオープニングっていうのを狙って作った分、結構不安な気持ちもあったというか、「私で合うかな?」っていうのもあったんですね。でも、今回の曲はすごくfhanaっぽい曲だと思うので、レコーディングは大変でしたけど、「みんなに知ってほしい」っていう気持ちで歌いました。

―ある意味「これがfhanaです」っていうような気持ちがある?

towana:はい、とにかく聴いてほしいし、良さをわかって欲しいし、みんなに伝えたいっていう気持ちでレコーディングをしました。

towana

―さっきの感動と物語は切り離せないっていう話と同様、曲の良さはもちろん、そこに込めた感情っていうのもやっぱり重要で、そういう曲こそが人に届きますよね。

佐藤:気持ちがこもったものじゃないと、伝わらないですよね。それはボーカロイドだってそうですし、そういう意味では、古臭い感じで、熱い想いでやってます(笑)。

kevin:斜に構えて聴いてても、内から湧き出るものにグイッと引っ張られて、それで好きになったアーティストもいっぱいいるんで、そこは今の世代の人も変わらないと思います。

fhana

―みんなが『CLANNAD』を好きだったのも、そういう感情的な部分の共有だったんでしょうしね。

佐藤:あれは……すごいですよね(笑)。

kevin:『CLANNAD』はすごいエネルギッシュに引っ張られますよね(笑)。当時は生き方変わるぐらいの衝撃を受けましたから。

佐藤:僕の曲作りのことでいうと、だんだんラフになってるんですね。前はカッチリ打ち込んで作ってて、FLEETのインタビューでも「デザインをするような感じで作ってます」って言ってたんですけど、最近は弾き語りでパッと作って、メンバーに渡したりもしてて。今回の曲も基本的に鼻歌で作曲してるんです。監督さんに「歩きながら聴いて気持ちいい曲にしてください」ってオファーをもらったので、外を歩きながらリズムやフレーズを考えて、最初にプロデューサーさんに聴かせたときも、タクシーの中で僕が歌って、「いいね、それでいこう」みたいな感じで(笑)。

―すっごいプリミティブですね(笑)。意外でした。

佐藤:今ってパソコンで表面的にクオリティーの高いものが作れるのは当然だから、その水準まで持っていかないと、良さを判断してもらえなかったりするんですよね。判断する側の人も、ちゃんとアレンジされてないといい曲かどうかの判断ができない。でも僕が高校生の頃はカセットMTRとリズムマシンで作ってたし、もっと以前は譜面しかない時代もあったわけですよね。そういう時代に比べると今は、メロディーやコード進行、基本的なリズムからいい曲かどうかを判断する、そういう想像力がなくなってきてるのかなって。だからこれからの時代、そういう表面的な体裁よりも本質を見る力というか、機械に頼らない、想像力とか、体の中にある音楽力みたいなものがもっと大事になるのかなって。いろんな考え方とか曲の作り方とか、どんどん昔気質の人みたいになってるんですけど(笑)。

リリース情報
fhana
『いつかの、いくつかのきみとのせかい』(CD)

2014年4月30日(水)発売
価格:1,404円(税込)
LACM-14228

1. いつかの、いくつかのきみとのせかい
2. ARE YOU SLEEPING?
3. いつかの、いくつかのきみとのせかい(Galileo Galilei "dog bass" Remix)
4. いつかの、いくつかのきみとのせかい - Instrumental -
5. ARE YOU SLEEPING? - Instrumental -

プロフィール
fhana(ふぁな)

“FLEET”としてYouTubeやMySpace時代到来前よりインターネットを拠点に楽曲を発表、メジャーからも音源をリリースしてきた佐藤純一、クリエイティブサークル”s10rw”を立ち上げ、ニコニコ動画ではVOCALOIDをメインボーカルに据えて楽曲を発表しているyuxuki waga、そしてネットレーベルシーンから登場したエレクトロニカユニット”Leggysalad”のkevin mitsunagaという、サウンド・プロデューサー3名で結成。2012年秋には、ゲスト・ボーカルだったtowanaが正式メンバーとして加入し、4人体制へ。2013年夏、TVアニメ「有頂天家族」のED主題歌『ケセラセラ』でメジャーデビュー。2013年秋にはTVアニメ「ぎんぎつね」のOP主題歌『tiny lamp』を、2014年冬にはTVアニメ「ウィッチクラフトワークス」のOP主題歌『divine intervention』を担当。2014年4月30日には、TVアニメ「僕らはみんな河合荘」OP『いつかの、いくつかのきみとのせかい』をリリース。<



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