『ゼロの書』OPを歌うたぴみるが涙ながらに語る、夢を叶える術

「ワナビー」という言葉がある。英語の「wanna be」から来ている言葉で、漠然と何者かになりたがる人のことを揶揄する時に使われる言葉だ。しかしながら、何かになりたいと思うこと、つまり夢を持つことは、本来、とても尊いことではなかっただろうか。

なぜ、「ワナビー」などという言葉が生まれるのかと言えば、きっと夢や憧れが、時として「他人の人生」を生きることに直結してしまうからなのだろう。勘違いしてはいけないのは、私たちは何にだってなれるが、同時に、自分自身にしかなれない、ということだ。夢とは、どこまでも「自分の人生」の問題なのだ。

今年の4月より放送されているアニメ『ゼロから始める魔法の書』のオープニングテーマ“発見者はワタシ”を歌う新人アニソンシンガー・たぴみるは、強く「自分の人生」を歩む女性だ。大好物のタピオカミルクティーを略したというちょっと気の抜けたアーティスト名や、その華奢で愛らしい容姿とは裏腹に、彼女は常に自分自身に向き合いながら、今の自分以上の自分を目指す、そんな確かな眼差しと歩調を持っている。

遂に掴んだ「プロのアニソンシンガー」という夢。彼女のここに至るまでの道のりをじっくりと訊いた。「自分がわからない」と繰り返し話すたぴみるとの会話は、夢も矛盾も悩みも、全てを抱えた全身全霊の「人」が目の前にいる――そんなダイレクトな実感に満ちた体験だった。

アニソンは、普段とはまた違った思い出が、曲にギュッと詰まっていく。

―たぴみるさんは、これまで「プロのアニソンシンガーになる」という夢を抱えながら、ネット配信などを通して活動されてきたんですよね。つまり、今回のメジャーデビューは、夢をひとつ叶えた、ということで。

たぴみる:そうですね。本当に急に決まったデビューなので、まだ、あまり実感はないんですけど(笑)。

たぴみる
たぴみる

―アニソンって、アニメ作品ありきのものだから、人によっては一般的なポップスとは別物として位置付ける人もいると思うんです。そういう人たちに対して、アニソンのよさを説明するとしたら、どうしますか?

たぴみる:アニソンって、曲に思い出ができるんですよ。たとえば、ZONEさんの“secret base ~君がくれたもの~”を聴いたら、アニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の最後の場面を思い出して泣きそうになったり。

J-POPでも、その人の聴いている光景が思い出になるとは思うんですけど、アニソンのよさは、普段とはまた違った思い出が、曲にギュッと詰まっていくことだと思います。

―たぴみるさんが歌うアニソンも、そうあってほしい?

たぴみる:うん、そうですね。聴いてくれた人の人生の思い出が残る曲を作っていきたいです。たとえば、“発見者はワタシ”を聴いた時、「『ゼロから始める魔法の書』の、あのシーンがよかった」とか、思い出してくれたり。誰かの頭の端っこの記憶として残っていけたらいいなって思います。

―そもそも、たぴみるさんがアニソンにコミットし始めたのはいつ頃なんですか?

たぴみる:中学生の頃、『初音ミク -Project DIVA-』っていうゲームをきっかけに、ボーカロイドとかオタク方面の曲をYouTubeやニコニコ動画で漁って聴くようになったんです。そうすると、周りにもそういったカルチャーが好きな友達が増えていって。

友達がカラオケで歌っていて「かっこいい!」って思った曲があって、それが『マクロスF(フロンティア)』というアニメの“ライオン”だったんです。それをきっかけに、アニメも見るようになりました。

本当は目立ちたいけど、恥ずかしいし自信もない、そういう自分を、歌っている間は忘れられる。

―それまでも、たぴみるさんにとって「歌う」という行為は自然なことだったんですか?

たぴみる:幼少期の頃から歌うことは大好きでした。テレビでCMが流れると、すぐに歌って踊り出す子だったらしいです。ただ、子どもの頃からずっと、好きなのは寂しい曲で。アニソンも、基本的にはエンディング曲が好きなんです。

たぴみる

―でも、今回の“発見者はワタシ”はオープニングですよね。

たぴみる:そうなんですよ。今は自信を持って歌えていますが、最初は「こんなに明るい曲を私が歌っていいのか?」っていう葛藤もあって……。でも、自分自身のことって、自分が一番わからないですよね。

小学生の頃、地元のカラオケ大会に「出たい!」って言うくせに、歌い終わったら小さい声でボソボソと「ありがとうございました……」って言って去って行ったり、今でも、「喋っている時と歌っている時の顔が違う」ってよく言われます。

―歌うことによって、普段とは別の自分を見出している感覚があるんですかね?

たぴみる:どうだろう……普段の自分は感情表現が下手だな、とは思います。感情はたかぶりやすいんだけど、それを言葉にできない。それもあって、特に中高生の頃は敵を作りやすい性格だったんです。

そんな自分が嫌で、ノートに自分の直すべきところを書き出していた時期もありました。松岡修造さんの本を読んだりもしましたよ(笑)。

―熱いですね(笑)。

たぴみる:子どもの頃から歌が好きだったのも、本当は目立ちたいけど、恥ずかしいし自信もない、そういう自分を、歌っている間は忘れられたからかもしれないです。

たぴみる

―たぴみるさんは、ネット配信を使った活動も積極的にやられてきていますよね。ネットを通して自分の歌声を人に届けることができることは、たぴみるさんにとって重要なことでしたか?

たぴみる:そうですね。高校生の頃から、将来的に歌うことを仕事にしたいと思うようになったんですけど、それとは裏腹に、全く自分に自信がなくて、お客さんの前でライブをすることすら想像がつかなかった。

それで、動画なら気軽にできるんじゃないかと思ったのが、配信を始めたきっかけでした。始めたばかりの頃は、周りにも「歌手になりたい」と思いながら配信している、私と同じような人たちがいっぱいいましたね。

怖くて断ってきたライブの誘いも、「出ます!」って即答するようにしたんです。

―たぴみるさんのように「世に出たい」「世界に発見されたい」と思いながら、ネット配信を通して活動している人たちは多くいると思います。

たぴみる:だけど、周りのやる気がだんだん右肩下がりになっていく感じがあって。周りの人たちが、あんなに「頑張る!」って言いながら作った音楽専用のTwitterアカウントが、いつの間にか全く更新されなくなっている……そういう状況を見た時、「私はこのままでいいのかな?」って思ったんです。

もっと自分のケツを叩かないと、バイトをしながら時間が空いたらニコ生をする、みたいな日々を続けていくだけで終わっちゃうなって。そこから、ネットだけじゃなくて、ライブに出てオーディションを受けるようになりました。

たぴみる

―今まで恐れていた外の世界に出ていく決心がついたんですね。

たぴみる:そうです。たとえば、実際のライブには「10人呼ばなきゃいけない」みたいなノルマがあるじゃないですか。でも、ネットでしか歌っていない自分に、どれだけの人が呼べるのか全くわからない。

配信は、どこの人が見ているのかもわからないし、近くにいたとしても、実際にライブに来てくれるほど私の配信を好きでいてくれているのかと言えば、そこにも自信が持てないし。

―なるほど。

たぴみる:でも、「ライブに出ます!」って言ってしまえば、きっと頑張って練習も呼び込みもするだろうと思って、怖くて断ってきたライブの誘いも、「出ます!」って即答するようにしたんです。言ったあとで「言っちゃった! やばい!」ってなるんですけど(笑)、頑張って練習して、放送で告知して。

そうしていたら、初めてライブに出た時、思ったよりも人が来てくれたんです。そこから、「私、自分で自分のケツを叩けばいけるぞ!」って思い始めました。

目標って高すぎると怯みますよね。上ばかりを見過ぎて、足元を見ていない人もたくさんいると思う。

―たぴみるさんは、同じ夢を持っていたはずなのに、いつの間にかいなくなってしまった人たちと自分の違いって、どこにあったんだと思いますか?

たぴみる:そうですね……たとえば、悔しいことがあったとするじゃないですか。自分が下に見られていると思ったり、プライドが許さない出来事が起こったり。私は、その時に「絶対に見返してやる!」って思う気持ちを全部バネにしてきた感覚があります。

たぴみる

―憧れていた人や、こういうところにいきたいという目標はありましたか?

たぴみる:私が「こうなりたい」と思う人は、すでにメジャーデビューしていたり、配信のコミュニティー人数が半端なかったり、住む世界が違う人たちばかりです。supercellさん(コンポーザーのryoを中心としたクリエイター集団)、やなぎなぎさん(シンガーソングライター)とか。

私は、なぜか上ばかり見てしまうんですよね。アニソンでなくても、『Mステ』みたいな番組に出ている人たちを見ると、「すごい! かっこいい! あそこにいきたい!」って思う。私、本当に貪欲なんですよ。

―うん、素晴らしいことだと思います。

たぴみる:何でもやりたいし、何でも欲しがっちゃう……今までずっと、夢がなかった時期がないんですよ。常に何かしら、「あれやりたい、これやりたい」って思っている子どもでした。

「歌手になりたい」の前は「声優さんになりたい」っていう時期もあったし、「美味しいものを食べたい!」っていう理由で、食レポをするキャスターが夢だった時期もあるし(笑)。

―(笑)。この記事を読む人で、「何かになりたい」と思っているけど、その夢がどこか漠然としてしまっている人に対して、言葉をかけるとしたら、どんな言葉をかけますか?

たぴみる:自分が「この人、かっこいいな」と思う、その人のいいところを自分も得たいと思えばいいんじゃないかな。「あの人すごいな。かっこいいな」で終わらせない。

自分もそうなるために、たとえば今日は1個いいことをしてみようっていうスタンスで、ちょっとずつやっていけばいいと思います。なりたいものが漠然としている人は、「憧れ」だけで終わっているんじゃないかと思うんです。

たぴみる

―なるほど。

たぴみる:そもそも、目標って高すぎると怯みますよね。上ばかりを見過ぎて、足元を見ていない人もたくさんいると思う。私は、ライブやオーディションに出始めた頃に、自分がそれまで上ばかり見過ぎていたことに気がついたんです。本当は、今できることがあるのに。

だから、そこからは目標を分割して、「まずはここから達成しよう」っていう計画表を紙に書くようになりました。今やるべきことを紙に書くと、心の中を整理して落ち着かせることができる。でも、計画は紙に書いたら大体、捨てちゃいます。

―計画表を見ずに捨てることも、工程として大事なことなんですか?

たぴみる:あくまでも「書くこと」で整理されるので、そのあとはなんとなくでいいんです。たとえば、「○○歳まで挑戦して、ダメだったら辞める」って決め込んでいる子がいっぱいいるけど、私はそうやってガッツリ決めちゃうのが嫌で。

「これ!」って決めたルールではなく、ちょっとフワフワしたルールしか、自分のなかには作らない。そこから先はイメージで動きます。ダメだったら、その時に考えればいいし。

たぴみる

―「なんとなく」で動けることって、すごく地に足の着いたことなのかもしれないですね。そして、たぴみるさんにとってプロのシンガーになることは、決して漠然とした夢物語ではなかった。

たぴみる:そうですね。やっぱり、「普通の仕事に就かないのか?」とか、「どこの大学に行くんだ?」とか、親からはすごく言われてきたんですけど、大学に行って、そのまま社会人になって……っていう未来を想像しようとしても、自分には見えなかったんです。

その代わり、ライブをやっていたから、プロのシンガーになるビジョンはすごく具体的に見えていた。それもあって、この道を諦めることは考えていなかったです。「プロになるっしょ」って感じでした(笑)。

―周りの人の意見よりも、自分のなかにある確かさを信じて生きてきたんですね。

たぴみる:うん、そうですね。

「しんどい」と言ってしまったら負けな気がする。

―今までシンガーを目指して活動してきたなかで、キツかった瞬間ってありますか?

たぴみる:一番キツかったのは、月1回のオーディションライブに出ていた頃ですね。毎月審査されて数字に出る、ランキングされる……そのプレッシャーがすごくて。

いくら体調に気を遣っても、オーディションの1週間前からどうしても体調を崩してしまうんですよ。それくらいしんどかったです。で、終わったらケロッと治るっていう。

たぴみる

―数字を突きつけられ、他の人と天秤にかけられる。「社会とはそういうものだ」と言ってしまうこともできるけど、でもやっぱり、キツいですよね。

たぴみる:そうなんですよね。でも、「しんどい」と言ってしまったら負けな気がする。周りには、そのしんどさに耐え切れずに辞めていく人たちもいっぱいいたけど、「この先、絶対にもっとキツいことがいっぱいあるから、ここで辞めたらプロにはなれないな」と思って、「やります!」って言って。言ったらもう、やらなきゃいけなくて……。自分で自分のケツを叩き続けて、ヘロヘロになっていましたね……。あの時が一番ヤバかったかもしれない。

―一番しんどかった時期のたぴみるさんにとって、癒しや居場所を与えてくれるものはあったんですか?

たぴみる:当時は、ひたすらアニメを見てほっこりしていました。ちょうどその時に、『マクロスΔ(デルタ)』を観て、「頑張ろう」って思っていて。……思い出したら涙出てきた……どうしよう、止まんない。

―ティッシュを用意してもらいましょうか。

たぴみる:(涙を流しながら)いつも、真顔で涙がポロポロ出てきて。制御できなくなるんです。

―溜め込んでいるものが多いんですかね?

たぴみる:う~ん……自分ではわらかないんですよ。

―そっかぁ。たぴみるさんにとって、『マクロスΔ』のよさはどこにあるんですか?

たぴみる:『マクロスΔ』は、主人公の田舎っぺの女の子が、「歌手になりたい!」っていう熱い気持ちを持って実家から飛び出すんです。「歌が好きです! だから頑張ります!」っていう主人公の姿を見ていたら、自分の置かれている状況がどうでもよくなって「私も頑張ろう」って思えました。

―なるほど。

たぴみる:(涙を拭きながら)あぁ~……どうしよう。あんまり泣きたくないんですよね。恥ずかしい。普段は感情を出せないタイプなのに、こういう時は泣いちゃったりして。自分で自分がよくわからないんです。

たぴみる

―今日の話のなかで、たぴみるさんは度々、「自分がわからない」とおっしゃいますよね。でも、そんな自分の「わからなさ」に向き合い続けられることが、たぴみるさんの強さなんじゃないかと思いました。

たぴみる:そうですね……私が所属している事務所COMPLExxxには、「エモカワイイ」っていう概念があって。女の子特有の矛盾したごちゃごちゃした感情、病んでいる部分も出していいんだよ、ありのままでいいんだよっていう意味なんですけど。

―まさに、たぴみるさんそのものですね。「エモカワイイ」。

たぴみる:最近の子たちって、SNSでも言いたいこと書けなかったりするじゃないですか。みんな、Twitterのアカウントを3つくらい作っていたりする。言いたいことを言ってもすぐに曝されるし、SNSですら「人前では絶対に元気でいなければいけない」っていう風潮があると思うんです。

でも、人間なんだから、時には病んだっていいし、落ち込んだっていいし、「ありのままでいいじゃん」っていうことを発信していけたらいいなって、すごく思っています。

リリース情報
たぴみる
『発見者はワタシ』(CD)

2017年5月24日(水)発売
価格:1,404円(税込)
LACM-14608

1. 発見者はワタシ
2. こころスタート!
3. 心情コンプレックス
4. 発見者はワタシ(Instrumental)
5. こころスタート!(Instrumental)
6. 心情コンプレックス(Instrumental)

プロフィール
たぴみる
たぴみる

12月25日生まれ。タピオカミルクティーが大好きだから、なまえは『たぴみる』。軽音楽部でバンドを結成。ニコニコ動画やLINE LIVEなどネット配信で歌い手として活動しながら、ソロでアニソン歌手を目指す。2016年には、「LINE LIVE OF THE YEAR 2016」を獲得。現在も雑談、カラオケ、イベントなど、多様な内容の生配信を行っている。



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