ハルカミライ、躍進の理由。ヒーローすら必要ない領域へ行きたい

パンクのデッカい歌と、フォークの美しいメロディ。それを、幾度となく爆発と転調を起こしてごった煮にしながら、どかーんと打ち上げていく楽曲。4人それぞれが思うままに自分を解放し、ぶつかり合ってはグッチャグチャになっていくライブ。ハルカミライを説明するならばそういう言葉になるが、そのど真ん中を担っているのが、圧倒的な「赤レンジャー」としてのヒロイズムと、どこまでも伸びていく美しい歌声の両方を滾らせるボーカルの橋本学だ。

「イェええええい!」の一声でその空気を一変させ、歌声一発で天まで届く存在証明を果たしてしまうボーカリストである。汗でぐちゃぐちゃになりながら、拳を掲げて、とにかく俺がヒーローだと歌を振り絞る。たったそれだけなのに、自分を見つけてほしいと叫び、求める異様な執念に胸を打たれる。個として生きること。大事な人を守れる強さを求めること。そして、一瞬だとしても歌と仲間の中では弱さをひっくり返して行けるんだということ――ロックバンドの根本をど真ん中に叩き込みながら、かつては「青春パンク」と呼ばれた日本人ならではのプロテストソングを歌の力で更新していく存在。そんな次なる主役が、11月13日にリリースしたシングル『PEAK’D YELLOW』を通し、根本と変化と迷いの全てを語った。

散々笑わせて、散々解放した上で本質的なメッセージが刺さる――その両方を表現するっていうのがやりたいし、やってるつもりです。

―動員としてもライブの力としても、そして音楽の素晴らしさにしても、デビューから2年ちょっとでとんでもない速度でスケールを増しているとお見受けしていて。しかも12月8日には幕張メッセで8888人を集めてのワンマンライブもあると。この異様な駆け上がり方は一体なんなんですか。

橋本:いやあ……先輩方がフェスにも呼んでくれて、観てくれる人が増えて。その中で自分たちもバチッとできた。それに尽きる気はしますね。

フェスに限らずどんなライブでも、俺らのことを知らないお客さんだったり、界隈の違う年齢層の人たちの前でやるのが面白いんですよ。「初めまして」のお客さんを一発で持っていけるのが自分たちの強みなのかなっていう気はしてます。

ハルカミライ(はるかみらい)
左から:須藤俊(Ba,Cho)、小松謙太(Dr,Cho)、橋本学(Vo)、関大地(Gt,Cho)
2012年結成。年間150本のライブ活動を行いながらデモ音源を制作し、2017年2月初の全国流通音源『センスオブワンダー』を発売。その後もリリースを重ね、2019年1月、1st フルアルバム『永遠の花』を発売。2月より全国ツアー『天国と地獄』をスタートし、全公演ソールドアウトさせた。12月8日には幕張メッセで360°センターステージ、8,888人動員と、彼らにとって史上最大規模となるワンマンライブの大舞台に立つ。

―実際に、一発で見た人を引きずりあげるライブの力と、ぐちゃぐちゃになりながらも美しいメロディを誇る楽曲の力がものすごいんですけど、ステージの規模も広がる中で、ハルカミライのストロングポイントを客観的に見られるようにはなりましたか。

橋本:言われた通り、俺らって4人全員がぐちゃぐちゃでライブをするし、「なんだこいつら」って、最初は引かれるわけですよ(笑)。でも人の心って不思議なもんで、一見引いたとしても、「なにが起こるんだろう」って面白がるところもあるんでしょうね。こちら側としても、ただ引かれるだけじゃない、人の心自体に語りかけて、その扉をこじ開けるにはどうしたらいいかを大事にしてライブをやっていて。

―ハルカミライとして、人の心のどういう部分に語りかけてると思うんですか?

橋本:俺らがやっているのはパンクロックだとは思いつつ、でも俺はコミックバンドのライブが世界で一番好きなんですね。そういうライブを観てると、「自分にとって大事なことは少しでいいんだよ」っていうメッセージがあると思うし、俺らもそれを伝えたいんです。

ふざけてもいい、ぐちゃぐちゃで自分を解放していい、だけど最後のたった3秒に、「自分にとって本当に大事なことは少しでもいいんだ」って叩き込むような、そういうライブが理想的なんですよ。散々笑わせて、散々解放した上で本質的なメッセージが刺さる――その両方を表現するっていうのがやりたいし、やってるつもりですね。

橋本学(はしもと まなぶ)

―「大事なことは少しでいい」とおっしゃいましたけど、自分が歌にして伝えたい本当に大事なことって、言葉にするとどういうものなんだと思いますか。

橋本:いやあ、そこがまさに今移り変わってきている実感があって――今までは「俺を見ろ!」「理想の自分になるんだ!」っていうことのために歌ってたんです。でも最近は、「人のための歌ってなんだろう?」っていうことを考え始めてもいて。

―それはどうして?

橋本:きっかけはわからないですけど……たとえば、理屈で理解しなくてもいいのがロックなんだ、って言う人もいるし、俺はきっとその豪快さに憧れてきたところがあったんです。説明しないで伝わる潔いものってカッコいいから。

だけど今は、哲学的なところにも近づいてみたくて。なぜ君と俺は友達なのか、なぜ君と俺は恋人なのか、なぜ君と俺は仲間なのか……みたいな。そういう「人と俺」みたいな部分を考え始めた気がするんですよ。

このまんまだといつまでも「意味のないことがロックンロールなんだぜ」っていう自分に甘えてしまいそうな気がした。

―初めて取材した時にも、「自分にとってのロックバンドとは武士道なんです」「俺は赤レンジャーになりたいんです」と話してくれたのを覚えていて。実際、ぐちゃぐちゃになりながら美しいメロディを花火みたいに打ち上げていくライブは、圧倒的なヒーローとしての自分を示すためのものだったと思うし、ロックバンドの一番衝動的な部分を追求するものだったと思うんですね。だけど今言ってくれた話は、その異様な自己証明の裏には、人に見つけてほしい、人に認めてほしいっていう気持ちも強烈にあるということなんですか。

橋本:そうですね……赤レンジャーになりたくて歌うっていう考えに飽きたところもあるんですよ。その話をした『星屑の歌』(2017年)の頃の俺のエネルギーが、噛みすぎたガムみたいに味がしない状態になってて。これ、本当になんなんだろうなって自分でも思うんですけど。

『星屑の歌』収録曲

―この1年の駆け上がり方、ステージの規模の上がり方、認知度も含めて考えると、欲しいと思っていたヒーローの座が近づくにつれ、渇望をガソリンにすることが難しくなってきたということですかね。

橋本:ああー、それはあります! 欲しいものが手に入ってきた、認められてきたっていう実感があるが故に、闘うべき相手がなくなった感覚に陥ったというか。むしろ「俺にはなにもない」くらいに思っちゃう感じなんですよ。ちゃんと乗り超えて勝ち取ってきたはずなのに、それが「退化」みたいな感覚になっちゃってて。

―人間ってどうしても、仮想敵を作ったり、わかりやすい標的を作ったりすることをパワーにするところがある。でも、それをある程度達成してからが、本来的な自分の闘いになっていきますよね。

橋本:ああ……そうなんでしょうね。だから、このまんまだといつまでも「意味のないことがロックンロールなんだぜ」っていう自分に甘えてしまいそうな気がしたんですよ。もっと自分自身の伝えたいことがあるはずだって自覚的になってきたというか。で、それを探してもがいている途中のような気がするんです。

左から:須藤俊、小松謙太、橋本学、関大地

―足りない、認められない、っていうのはわかりやすくエネルギーになりますよね。ただ、それを原動力にするのにも限界があったりする。それで言うと、今もがきながら見つけようとしている新しいエネルギーはどういうポイントになると思います?

橋本:うーん……「弱さ」ですかね。今までは、自分の弱さを曲にしてこなかったし、音楽の中では暗い部分を出さないようにしてドーンとやってきたんですよ。で、それがハルカミライのイメージにもなってきたと思うんですね。それによって自分も強くなれたと思ってたんですけど……やっぱり元々持ってる弱さが出てるよって周囲に教えてもらったんですよね(笑)。

うちのレーベル(EMI Records)の担当の方にも「もっと学の足跡を曲にベタベタつけていったほうがいいよ」って言われて。それで、初めて「自分の弱さからもなにかを見出そう」と思って書いたのが今回の“これさえあればいい”っていう曲なんです。

―今のお話はとても意外で。たとえば“アストロビスタ”や“宇宙飛行士”、それに“星世界航行曲”も、宇宙に歌の視点を置いて「自分はここにいる」「自分を見つけてほしい」っていう歌だと思うんです。そういう寂しさや弱さがあるからこそ大きなシンガロングで打ち上げていこうとするのが、学くんの歌であり、ハルカミライだと思って聴いてきたんですけど。

橋本:それ、自分としてはショックですね(笑)。でも言われた通りだと思います。俺にとってはネガティブな気持ちがない歌のつもりが、メンバーに「それってお前の暗い部分が出てるよね」って言われることもあったり。……それが本質なんだろうな。でも自分では、暗くならないように書いてたつもりだったんですよ。

―暗い曲だって言いたいわけじゃないんですよ。自分の寂しさや弱さからも逃げないで、それを強さに変えていきたいって思うからこそ大声で歌うのがロックやパンクの根本でもあると思うし。だけど、自分を見つけてくれっていう切なさは、フォークソングとしても美しいメロディに宿っていると思うし。その両輪がハルカミライの音楽になってると思うんです。

橋本:そうですね……俺はここにいるんだよ、みたいな気持ちは結局ずっと拭えないし、そういう寂しさとか弱さをひっくり返せるのがロックバンドだとも思うんですよ。

関大地
須藤俊

元々持ってた切なさとかをようやく自覚して、新しい自分に出会って戸惑ってるのが今なのかな。

―そうですよね。その自分の弱さとか寂しさって、どういうところから生まれてきてるんですか。

橋本:やっぱり俺は、人のことを見て「あいつはすごいな、俺は全然ダメだな」って気にしちゃうところが昔からあるんですよ。だから「俺を見てくれ」っていう気持ちを歌にしてきたし、圧倒的なヒーローになりたいって思い続けてきた気もするし。

それが弱さだってどこかでは自覚できてたから曲には出てたのかもしれないけど、表に出すのを我慢してた気はするんです。でも、それが前より我慢弱くなってる気がしていて。

―見て見ぬふりしてきた自分が解き放たれちゃってるというか。

橋本:元々持ってた切なさとかをようやく自覚して、新しい自分に出会って戸惑ってるのが今なのかな。それこそ“これさえあればいい”で歌ってることなんですけど、元々は自分が大事だと思うもののハードルがめちゃくちゃ高い人間だと思うんですよ。この目で見てカッコいいと思うものしか信じてこなかった。でも新しい自分が出てきたことで、昔決めてた自分ルールが崩れてきてる瞬間があって。

1日の終わりに「これは言っちゃダメだったな、ダサかったかもな」みたいな反省をすることが増えてきてるんです。たとえばバンドを始めた頃って、なにがカッコいいとされているものなのかも全然わからなかったんですよ。だから逆に、カッコ悪いと思うものをそぎ落とす作業を最初の1年はずっとやってて。そういう初心にもう一度戻ろうとしてるっていう気もするんです。

小松謙太
橋本学

青春って、今が青春だと思う人こそ触れるべきじゃない言葉だと思ってるんです。

―自分ルールとおっしゃいましたけど、その中にある「カッコいいもの」と「カッコ悪いもの」を言葉にするとどういうものなんですか。

橋本:「カッコつける」のがカッコ悪いことですね。でも、ダサいんだけど素敵なものも確かに存在していて。それらが俺の中にも混在しているんですけど……カッコつけてないものって、一見ダサく見えるけど、だけどそのありのままの姿が根本的な素敵さになるっていうか。たとえばラジオ体操がそれだと思っていて。

―すごい例が出てきた(笑)。その心は?

橋本:動きはダサいのに体によくて、カッコつけてなくて、その上でみんなが知ってる。それってめちゃくちゃすごいなと思うんですよ。小学生の頃はあれだけ嫌だったのに。だけど大人になってみると、あれがすごく素敵なものだったとわかる感じもいいなと思うんです。

左から:須藤俊、小松謙太、橋本学、関大地

―そこには、過ぎ去った青春性っていう素敵さも付随するのかもしれないですけどね。

橋本:そうですよね、大人の目から見た時に「青春だったな」っていう視点もあるし、やっぱりノスタルジーってキラキラするものなので。ただ、俺はその「青春」っていうものもめちゃくちゃ考えちゃうんですよ。で、俺は青春っていう言葉を金輪際使わないようにしようと思ったんです。だって、青春って青春が終わっちゃった人たちが使う言葉じゃないですか。

―青春の最中では自覚できないのが青春ですよね。

橋本:そうなんです。青春って言葉を使った時点でそれが終わったものだと認めてる証拠になるんですよ。だから青春って、今が青春だと思う人こそ触れるべきじゃない言葉だと思ってるんです。

結局俺は臆病だと思うし、だからこそ自分が強くなれるように、まさに戦隊ものみたいにロックバンドを求めるんだと思う。

―青春っていうものをノスタルジーにしたいんじゃなくて、永遠に持っていきたいんだっていう話なのか、現実的に青春時代は終わったんだから離れたいんだっていう話なのか。個人的には、あれだけ汗まみれで爆発し続けるライブをするハルカミライは青春を永遠にしたいバンドなのかと思っていたんですが、ご自身はどう思います?

橋本:うーん……青春という言葉で飾りたくないというか。飾ってる暇があるんだったら、その中身を歌ったほうがいいじゃないですか。他の言葉にしてもそうで、たとえば俺は「愛してる」って歌いたくないんですよ。それよりも、なにをしたら愛してることになるのか、その中身を歌いたい。その実体や濃さがあるものをやりたいんですよね。だって、「愛してる」も「青春」も、誰も本当はわからないじゃないですか。

―それを果たして誰が定義づけられるんだっていう話?

橋本:そう。本当に愛を理解して「愛してる」という言葉を選んでいる歌い手もいるとは思うんです。だけどそれを100人に聴かせたとして、その真意を何人が理解できるのかって話で。だとしたら、もっと紐解いていきたい。それを10年続けた先で、ようやく俺は「愛してる」って歌えるのかもしれないなって思うこともあって。

左から:須藤俊、小松謙太、橋本学、関大地

―たとえば“世界を終わらせて”も、敢えて端的に言えば、「愛してる」と伝える歌だったと思うんですね。だけどそれを表現するために、「俺が君を取り巻く世界のすべてになる」という結論に至ってる。今のお話は、そういう部分に出てますよね。いくら本質的な言葉でも、それだけで本当に表現し切れるのかを疑って、自分の中でどこまでも紐解こうとしていくというか。

橋本:そうですね、いろんなものを疑ってますね。で、それは一生付き合っていくものだと思うんです。信じることに臆病というか。それは悪いことじゃなくて、疑うことで自分を修正できるじゃないですか。バンドも修正できるし、関係も修正できる。メンバーを疑うこともあるけど、それによってよりよい方向に直せるものがたくさんあるから。だから、なんとか自分がダサいものにならないように食い止めたいっていう気持ちが最初からあると思うんですよ。

結局俺は臆病だと思うし、だからこそ自分が強くなれるように、まさに戦隊ものみたいにロックバンドを求めるんだと思います。まあ……まだまだ自分の弱さを自覚したばかりで、それにイライラしちゃうことも最近は多いんですけどね。

―それは先ほどもおっしゃった、自分に対してのイライラ?

橋本:そうですね。自分の中から出てきたものがよくないと、それが一番ムカつくので。メロディ、歌詞、ライブ、セットリスト、MC。で、それが根底にあった上で、自分たちよりいいライブや音楽に相対すると、どうしても比べてしまってさらにイライラするんです。で、結局、嫉妬とか妬みになっていくのが自分自身のダサさだったりもして。

―でもそれを言い換えてみると、やっぱり自分の思う圧倒的な赤レンジャー像だったり、ロックバンドとして突き抜けたヒロイズムだったりを追い求めているっていうことですよね。比較や妬みすらない圧倒的なところに行きたいっていう。

橋本:うわ、確かにそうですね。結局そこに辿り着くのか……(笑)。

橋本学

バンドメンバーがいるから、俺はどんなに切ない歌もバコーンと前向きなものにして打ち上げられるんです。

―自分の思う理想に辿り着きたいっていうのは、昔からの癖みたいなものなんですか。それともきっかけがあるものなんですか。

橋本:ずっと変わらない癖みたいなもんだと思います。小学校の図工の授業でも、上手く描けないだけで泣いてて。有名な人の絵を見たり、綺麗な風景画を見たりして、「こういうふうに描きたいんだ」ってイメージするわけですよ。でも小学生の絵の技術なんてたかが知れてるじゃないですか。なのに、「こういうふうにならない」って言って、提出しなかったりとか。

―たとえば歌を始められたのも、これは自分が一番になれると思えたからだったりするんですか。

橋本:そうですね。昔から家族に歌が上手いねって言われてたのもあって、ボーカルスクールに入ったんですよ。そこでゴスペルに出会ったんですけど、ゴスペルってセンターがわかりやすいじゃないですか。上手い人が、真ん中に立って歌える。その「主役」が自分にとって最高に気持ちよかったんです。

なににおいても不完全なことが人間の美しさなのも知ってるんです。だけど自分は完璧だと思える瞬間をずっと追い求めてきた気もしていて。その揺れを超えていくようにして、バコーンと花火を打ち上げていくライブがしたいんですよね。バンドメンバーがいるから、俺はどんなに切ない歌もバコーンと前向きなものにして打ち上げられるんです。自分1人でやったら、間違いなく切ない歌になるから(笑)。

左から:関大地、橋本学、小松謙太、須藤俊

―学くんがロックバンドやパンクロックに惹かれたのも、今お話いただいたことが大きいんですか。

橋本:そうなのかもしれないですね。なんにせよ、答えなんて出ないってわかっているものでも、考えて追い求めていくところが人間ってカッコいいじゃないですか。だから説明は要らないと思うし、それこそパンクって、とにかく自分自身で考えて強く生きていくための音楽だと思うので。その、ゴタゴタ説明するよりも自分で考えて進んでいく姿に惹かれたと思うんです。「そういう人間になりたい」っていう願いみたいなものだと思うんですけどね。

めっちゃ思ったんですよ、「歯ブラシが2つ並んでる」みたいな言い方はもういいよって。

―そうして自分自身を振り返ったり、弱さを自覚したり、いろんなタイミングの上で今作『PEAK’D YELLOW』を作られたことはよくわかりました。『永遠の花』以降のキックオフでもあると思うし、幕張メッセという大きな舞台を前にしてのストレートパンチでもあると思うんですけど、それ以上にご自身の内面を改めて掘って、ただ圧倒的に突き抜けるしかないんだという答えだけを置いていくような歌になっていると感じました。

橋本:これはちょっと違う話になるかもしれないんですけど……簡単な歌モノとか、それこそ「愛してる」だけの安易なラブソングとか、あるいはただ上手な言い方を狙うだけの歌とか、そういうのは聴き飽きた! っていう感覚が強烈にあって。

そういう「もういい!」っていう気持ちも手伝って、とにかく自分の真実と欲望だけをドーンと歌った曲にしようと思ったんです(笑)。めっちゃ思ったんですよ、「歯ブラシが2つ並んでる」みたいな言い方はもういいよって。

―ははははは! つまり、言い方や言い回しじゃない部分――自分の内面をどれだけ歌に乗せられて言葉にできるのかが歌なんだっていうことですか。

橋本:上手いこと言う合戦みたいな歌が増えて、それが「私たちの気持ちを代弁してくれてる」みたいな感じになっていく――そんな共感はどうでもいいんですよ。それよりも、歌って表現している限りは誰だって唯一無二になりたいわけじゃないですか。代弁よりも、自分を歌うことが大事なんじゃないのかって思うわけです。

左から:関大地、橋本学、小松謙太、須藤俊

―<誰よりも光って見せたら / 消えねえ傷さえ意味を持つんだな>っていうところがパンチラインだと思って。ただひたすらに自分の思う理想像にたどり着けたら、今もがいてることも肯定できる道のりになるんだっていう。まさにハルカミライの今と、学くんの目指すものが端的に表されているラインですよね。

橋本:そう、本当にそうなんですよね。今日話してきたことと矛盾するように聞こえるかもしれないですけど、ヒーローとか赤レンジャーの存在すら必要ない領域まで行きたいんですよ。そのために、自分の中の新しいガソリンを探してる……この“PEAK’D YELLOW”の中ではなにも答えは出てないんですけど、でも、もっともっとあるんじゃねえかって思うので。

―一見ストレートなパンクロックですが、その実は全然一筋縄でいかない曲で。一直線に聴こえるけど、サビで微妙にテンポが落ちていたり。2番でAメロの後にCメロが来て、そこでは<へいへいほー>のシンガロングが飛び出す。ストレートさを意図的にひっくり返して、転覆を繰り返しながら爆発していくというのがこのバンドの音楽の面白さなんですけど、これはご自身のフェチズムなんですか。

橋本:これは(須藤)俊のアレンジの妙ですね(笑)。元々は俺が弾き語りでメンバーに聴かせたんですけど、自分のペースで歌える時はまとまって聴こえたのが、4人で合わせるとなると上手くスムーズなテンポにならなくて。それでアレンジを俊に考えてもらって、各セクションが大きく、一直線に聴こえるような形を探していったという感じですね。

で、今言ってもらったCメロが肝で。<へいへいほー>と言えば北島三郎の“与作”だっていうのを塗り替えたかった(笑)。で、俺らって随所にそういう部分が入ってくるんですよね(笑)。“それいけステアーズ”だったら、桜ソングを塗り替えたかったし。

―“それいけステアーズ”は反骨の歌になってるところが面白かったですよね。桜ソングから連想される「出会いと別れ」的なテーマには沿わず、咲き誇る桜がピンクじゃなくてもそれは綺麗だろうっていう精神性が入っていた。音楽的にも歌の内容的にも一切のセオリーにハマらず、全部に「ひっくり返す」っていう異様な執念が感じられるのが最高だと思うんですよ。

橋本:ほんと、そこはバンドのおかげだと思いますね。俺のメロディも歌も、面白くなるのはバンドがあってこそなので。今は結局自分との闘いだと思うし、なによりも自分自身を強いヒーローにひっくり返したくてロックバンドをやってきたところもあると思うんです。

“これさえあればいい”の通り、自分にとって大事なものだけを持ってステップアップするために、どうしたらいいのか。いろいろ迷ってる時期だけど、それがステップアップのヒントになると思うので。ここでもがき切ってやろうと思います。

左から:関大地、橋本学、小松謙太、須藤俊
リリース情報
ハルカミライ
『PEAK'D YELLOW』(CD)

2019年11月13日(水)発売
価格:1,100円(税込)

1. PEAK'D YELLOW
2. 君と僕にしか出来ない事がある
3. これさえあればいい

プロフィール
ハルカミライ
ハルカミライ (はるかみらい)

橋本学(Vo)、関大地(Gt,Cho)、須藤俊(Ba,Cho)、小松謙太(Dr,Cho)によって、2012年に結成。年間150本のライブ活動を行いながらデモ音源を制作し、2017年2月初の全国流通音源『センスオブワンダー』を発売。その後もリリースを重ね、2019年1月、1stフルアルバム『永遠の花』を発売。2月より全国ツアー『天国と地獄』をスタートし、全公演ソールドアウトさせる。12月8日には幕張メッセで360°センターステージ、8,888人動員と、彼らにとって史上最大規模となるワンマンライブの大舞台に立つ。



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