ハルカミライが手にした本当の強さ。ひたむきさを抱き締める歌

ハルカミライのライブは、涙も拳も大合唱も一気呵成に雪崩れ込んできて、そりゃもうぐっちゃぐちゃである。好き放題にステージを飛び回り、スーパーヒーローよろしく幾度も拳を突き上げては、美しいメロディを大気圏までぶっ飛ばしていく。たとえば昨年12月に幕張メッセで行われた単独公演なんてまさに彼らの真骨頂で、逃げ場一切なしのセンターステージに仁王立ち(あるいはピットに飛び込んで)、真っ向から8,888人の声を喰らいながら、その何倍も大きな歌を放ち続けた。汗まみれで、笑いまみれで、清々しい。ひっどい顔になってもひたすら自分を解放してシンガロングし続け、全員が心を素っ裸にして、正体と真実だけでぶつかり合える歌。それがハルカミライの最高さなのだ。

そんな彼らがただ無軌道なだけで終わらない最大の理由は、何よりもその美しい歌声とメロディによるところが大きいだろう。ゴタゴタ言う前に俺はここだと示すパンクのデッカい歌と、寂しさを滲ませながら「俺を見つけてほしい」と願う切実なメロディ。橋本学の歌の中には、その両方が同時に収まっている。強さと切なさの両翼が、彼の歌とメロディをどこまでも羽ばたかせているんだろう。その歌に乗せて、涙も汗も全部がドーンと打ち上がっていく様に心震えてしょうがないし、どんなに湿っていて仄暗い感情も、どんな過去も、全部持って前へ進もうとする力がガンガン湧いてくるのである。バカみたいな言い方だが、大声で歌うと、ああ生きているって思える。

そしてそのメロディを、より一層人を選ばない楽曲へ昇華させたのが2ndフルアルバム『THE BAND STAR』だ。俺を見ろ! と叫ばれてきた歌は、俺自身が心を開こうとする歌へ。切なさや寂しさを滲ませてきた歌は、人への優しさと寛容さを響かせるものへーー歌に込められる異様な熱量は変わらないまま、しかし歌が大事に包んでいるものが「俺」から「俺と人」へと変貌しているのだ。しなやかさを増したサウンドも幅を広げたメロディもより一層一直線に心へ飛んでゆく、寄り道なしの生き様花火である。その核心を橋本学と徹底的に語り合ったのが下記のインタビュー……なのだが、まずはとにかくこの新作を、どんな今も歯を食いしばって生きていくための存在証明を、聴いてください。それから、大声で歌うように読んでください。

今までは自分の未来、自分の過去――「自分!」っていう部分しか歌ってなかった。ただ、その「自分」っていう縦線だけを強く見せる気持ちが、自分がハマってた型だと思うんです。

ハルカミライ『THE BAND STAR』を聴く(Apple Musicはこちら

―痛快なパンクロックが軸になっているのは変わらずなんですが、だけど曲の端々に変化が多く見られる作品だと感じていて。メロディがポップになり、歌われていることを見ても、歌のガソリンが大きく変化している作品だなと思ったんですけど、学くん自身はどんな手応えを持っているアルバムですか。

橋本:確かに歌のメンタリティが変わって、書ける歌が変わってきた感じがしますね。それによって音楽的にも歌的にもバラエティが広がったアルバムだと思うし、今言ってもらったことと、ほぼ一緒の感覚を俺も持ってますね。

ハルカミライ(はるかみらい)
橋本学(Vo)、関大地(Gt,Cho)、須藤俊(Ba,Cho)、小松謙太(Dr,Cho)によって、2012年に東京・八王子で結成されたロックバンド。2017年2月にTHE NINTH APOLLOから初の全国流通盤『センスオブワンダー』を発売し、2019年1月にはEMI Recordsから1stフルアルバム『永遠の花』をリリース。2019年12月8日には幕張メッセで360°センターステージでの単独公演を開催し、8,888人を動員してソールドアウト。2020年7月8日に2ndフルアルバム『THE BAND STAR』を発表する。

―たとえば“100億年先のずっと先まで”の冒頭とラストに、バンドが一体となって音の壁を立ち上げていくところがあって。それが学くんのメロディをグオオオッと昇らせていく。他の曲も含めて、これまでとは違うアプローチでメロディをドラマ化させる曲が多いですよね。

橋本:そうですね、今までにないことを多くやってると思います。メロディで言っても、上と下をこれまでより広げたんですよ。アレンジやコード感も、メロディと同時に変化してきたと思うし。今までやったことのない要素を全部詰め込んだアルバムだと思います。

―まず、その変化の根底にあったメンタリティの変化とはどんなものだったのか、教えてもらえますか。

橋本:端的に言うと、自分自身から開いていくようになったと思いますね。今までは閉じこもって書いていた歌詞を、外で書くことに挑戦してみたんですよ。喫茶店に行ってみたりとか(笑)。

―ああ、物理的な外っていうこと(笑)。解釈してみると、人がいる場所で歌を作っていったという感覚でもありますか。

橋本:それもあると思いますね。なぜ外に出たかって言うと、『永遠の花』の次をどうしようかって考えた時に、だんだん自分が固定概念や型にハマってきてる気がしたんです。今のままじゃすぐに限界がきてしまう気がして。だから外に出るしかなかったんですよね。

―そんなに限界を感じてたの?

橋本:感じてたっすね。正直に言えば、作る曲にも飽きがきてたんですよ。もちろんパンクも大好きだけど、ただ青春パンクって言われる音楽だけをやっているのも違うんだよな、もっといけるよなっていう感覚があって。そこで鍵になったのが、EMI Records(ハルカミライの所属レーベル)の渡辺さんに「ネガティブな言葉だとしても、みんなでシンガロングしていいじゃん」って言われたことだったんですよ。それで、今までとは違う作り方をしてもいいと思えたんですよね。

ハルカミライ『永遠の花』を聴く(Apple Musicはこちら

―明るさや強さ、豪快な存在証明を打ち上げるシンガロングがハルカミライの音楽的な特徴のひとつになってきましたけど、渡辺さんの言葉によって、歌える感情の幅が増えたっていうこと?

橋本:うん、そういうことだと思いますね。今までは自分の未来、自分の過去――「自分!」っていう部分しか歌ってなかったんですよ。ただ、その「自分」っていう縦線だけを強く見せる気持ちが、自分のハマってた型だと思うんです。でも、自分が見せたいと思う感情以外も歌にしていいんだなと思えて。自分っていう縦軸から逸れることができるようになりましたね。

なんでも受け入れるだけの優しさは信用できなかったんです。だから、単に優しいヤツになりたくなくて、今までいろんなものを意図的に突っぱねてた気がするんですよ。

―自分っていう縦軸から逸れた時に、何と出会えたと思います?

橋本:今さら何をって言われるかもしれないですけど、人を見て感動できるようになりました(笑)。具体的に言えば、“夏のまほろ”なんかは高校球児を見て刺激を受けて書いた曲なんですよ。そういうふうに、自分の外で起こっていることから歌が生まれてくるようになりましたね。

―以前は人を見て感動することがなかったの?(笑)

橋本:これは人を見下すのとは違うんですけど、人を見ても「はいはい」くらいにしか思わなかったです(笑)。だけど人の強さ、優しさやひたむきさに感動できるようになって。それに、人を認識することで感謝みたいな気持ちが自分の中に生まれてきたんですよね。もちろん音楽は自分が好きでやってるんだけど、好きにやっていることだからこそ、信じてくれる人への感謝を実感したというか。それはお客さんに対してだけじゃなくて、事務所の社長とかスタッフに対してもそうで。それは自分が身につけたものとしてデカかったです。

―これは毎回言ってるかもしれないんですけど、学くんは、自分の弱さとか寂しさを自覚するからこそ、何よりも強くありたいというテーマを歌にして、自分に課すところも強かったと思うんです。人への感謝を実感したり人に感動できたりしたことは、自分の何かを赦せることにも繋がりましたか。

橋本:うーん……どうだろう。これもまた感覚的な話かもしれないんですけど、『はじめてのおつかい』を見て衝撃だったんですよ! 子供の姿を見るだけで涙をボロボロ流すようになっちゃって!

―ははははは。高校球児に刺激を受けたという話もそうですけど、人の無垢なひたむきさみたいな部分は、ハルカミライの歌が先天的に持ってたものだとも思うんですよ。その熱さやひたむきさに対して、何より自分自身が優しくなれたっていう話なんですかね。

橋本:……俺、何かを簡単に受け入れたり認めたりすることは、そんなによくないことだと思ってたんですよ。なんでも受け入れてるだけの優しさって信用できないから。だから、単に優しすぎるヤツになりたくなくて、今までいろんなものを意図的に突っぱねてた気がするんですよね。本当の優しさってなんだ、本当に信用できるものってなんだ……そうやって疑うことで、芯のあるものを見極めようとしてきた気がする。やっぱり信用できるのは、ある種の怖さがあった上で優しい人だと思うので。

『センスオブワンダー』(2017年)収録

『星屑の歌』(2017年)収録

―筋が通ってる人こそ一見怖く見えますからね。確固たるものがあるから人に対して愛ある厳しさを持てるっていう言い方もできるかもしれない。

橋本:芯のある人って、人を排除することはないけど決して揺らがないから。で、まさに自分を確立できている人だからこそ、厳しくても愛のある言葉を人に言えたりとかするじゃないですか。そういう人が好きなんです。優しい歌を歌いたいけど、ただ単に優しいだけの人間にはなりたくない、芯のある優しさを見極めたいって思い続けてきたんですよね。

橋本学

俺は、なんでもひとりでやるっていう感じだったんですよ。だけど、ひとりでやろうとするだけじゃ追い込まれる瞬間が出てきてしまって。そこに悩んでた気もするんです。

―それは何より、学くん自身が筋の通った優しさに憧れてきたということですか。もっと言えば、自分を信頼して確立できる何かを探すようにして歌い続けてきたということですか。

橋本:ああ、信用できる人を見極めたいのは、自分もそう在りたいっていうことだと思う。ただ優しいだけじゃ流されていくだけだから。……たとえば高校球児を見て“夏のまほろ”を書いた話で言っても、昔自分が野球をやってた時のことを思い返したんですよ。なのに当時はプロ野球も見なかったし、高校野球すら見てなくて、自分のことしか考えてなかった(笑)。当時は二塁手だったんですけど、それでもマジで人のプレイに興味が持てなかったから。

―連携の多いショートやファーストは困ったでしょうね(笑)。

橋本:ははははは! 元々は兄貴が野球をやってて、兄貴がむちゃくちゃ上手かったんですよ。その弟として野球をやるもどかしさもあって熱心になれなかったんですけど。だからこそ自分は歌を褒められたことが嬉しかったし、俺は音楽を武器にして生きていこうと思ったところはありましたね。

―“夏のまほろ”は何しろメロディの飛翔感が素晴らしいし、今作の肝のひとつだと思うんですけど、<夏の向日葵 向日葵 / 白球がフェンスを越える><PM5:00のサイレンがBGM>というラインには、単に明るいだけじゃなく郷愁やノスタルジーも乗っかっていて。そこが沁みるんですよね。

橋本:“夏のまほろ”を作った当初は、もう野球を辞めてしまった自分、応援してくれていた親、負けてしまったチームを見送ったり励ましたりする気持ち……そういう部分を歌にしたかったんですね。だけど結果的には、当人たちが「俺たちは甲子園に行ったよな」とか「あの時熱狂の中にいたよな」とか、ノスタルジックだとしても、いつの日か思い出してほしいなっていう曲になった気がしますね。

―今悔しいことだってどんな思い出だって未来まで持っていく、全部持って前へ進んでいくという意志はハルカミライの歌にたくさん入ってきたと思うけど、それを人に対してのエールソングにできてますよね。

橋本:うん、そういう意味では、話してきた通り人への視線がちゃんと歌に入ってるんだなって俺も思いますね。

―ただ、<昔に戻れたらどうする? / もう少し甘えた方がよかった / そしたら努力も運も味方についたかもな>というラインからは、学くん自身が「自分はどう生きてきたか」が乗っかっている歌であることも伝わってくるんですね。もっと人に自分を打ち明けてもよかったんだなっていう、自分へのメッセージでもあるというか。自分ではどう思います?

橋本:いやあ……ほんとにそうっす(笑)。野球をやっていた頃の話で言えば、欲しい道具もたくさんあったのに、俺は親に甘えられなくて全部兄貴のお下がりだったんですよ。だけどそこで素直に甘えて「僕はこの道具を使いたい、野球上手くなりたい」って言えてたら、もっと努力できたかもしれないし、もっと光るものが自分に宿っていたかもしれないなって思ったんですよ。

だけど音楽は自分自身で選んだものだと自覚しているから、もっとこうしたいって真っ向から言えるんです。自分のためになるならお金もかけられるし、その覚悟があるから成長できると思うんですよ。だからこそ、もっと昔から人に甘えたり、「自分はこうしたい」って人に素直に言えたりしてたらよかったなあって。

―野球に限らず、まず自分を相手に開くことの話ですよね。

橋本:そうっすね……やっぱり俺は「なんでもひとりでやる」っていう感じだったんですよ。だけどライブをやっていくうちに、ひとりでやろうとするだけじゃ追い込まれる瞬間が出てきてしまって。そこに悩んでた気もするんです。その中でメンバーと話したりスタッフと相談したりして、もっとバンド単位で考えようぜって思えるようになってきた。それは、ここ1、2年の変化だと思うんですけど。

左から:橋本学、関大地

―逆に伺うと、それくらい「俺!」っていう人がバンドを求めるのは、なぜなんだと思います?

橋本:それはやっぱりライブがデカいんだと思いますね。グツグツした熱、ゾワゾワっとくる衝動――それを具現化できるのは、ひとりじゃなくて人とやってるからだと思うんですよ。大声をあげる瞬間、しかもひとりじゃなくて全員で歌う瞬間に、自分ひとりだけじゃ感じられない熱が生まれる。ひとりでなんでもやろうとするんだけど、結局は人と一緒じゃないと生まれない熱があることも知ってきたというか……俺だけでやってるんじゃないっていうことに素直になってきたのかもしれないですね。

―それで言うと、一人ひとりが大声で歌える合唱歌・歌謡曲的なメロディがぶっ飛んでいくのが“優しく飛んでゆけ”だと感じたんですが。<涙の歌>が<魔法の歌>になっていく、弱さや脆さを認めることが、結果として人を抱きしめるものになっていくという、学くんが実感してきた優しさや強さの意味が歌われていると思ったんですが。ご自身ではどう思います?

橋本:この曲はですね……皮肉なんですよね。

―どういう皮肉?

橋本:わざと、誰でも書ける「よくある歌」を書いたんですよ(笑)。アンチテーゼ的にというか――優しいだけの歌なんて誰でも書けるしつまんねえってインタビューで言ってきたと思うんですけど、つまんねえって言ってるだけじゃなくて実際にやってやるよっていうところから作った曲なんですよね。

―でも、むしろハルカミライが元々持っている歌の普遍性が存分に発揮された名曲・名メロディだと思うんですけど。

橋本:そう、そこなんですよ(苦笑)。皮肉で書いたはずが、「めちゃくちゃいい曲だな!」って思っちゃって。逆に言うと、誰でも書けるのにいい曲になったなら、これが広いシーンに飛んでいくために、もっとバンドとしての説得力が必要だなって思ったんです。

左から:小松謙太、須藤俊
昨年12月19日に幕張メッセで開催された単独公演のダイジェスト映像

「誰にでも書ける曲っていうテーマを課したことでむしろ、一番素直な感覚を思い返したことはあったのかもしれない。絶対に振り返るな、って言うだけの自分じゃなくなった気がしてて」

―子供でも歌えそうなシンプルな言葉とメロディだからこそ、そして先ほども話してくれた「優しさとは」という普遍的なテーマを持つ曲だからこそ、バンドの地力と本質が問われるということですか。

橋本:そうですね……これから育っていったり、これから先で合点がいったりする曲なんじゃないかと思ってます。ツアーで曲が育つ、みたいな話じゃなくて、俺たち自身が何年もかけてこの曲を理解していくんだろうなって気がします。

自分で書いてる時は単に皮肉のつもりで全然共感できなかったのに、これが自分なりの歌詞だと思える時がくるんじゃないかっていう、そんなターニングポイントがくる気がするんですよ。これからこの曲に追いつくっていう予感がある。

―強さを示したい気持ちがバコーンとしたパンクロックになって、その根っこにある涙や寂しさが美しいメロディになってきた方だと感じてきて。で、それが渾然一体になって一気に押し寄せてくるからハルカミライの歌は美しいったらありゃしなくて。だからこの“優しく飛んでゆけ”は俄然ハルカミライのど真ん中だと感じるし、むしろその真ん中がより一層人を選ばない形で出てきたとも言えると思うんですよ。

橋本:…………結局、誰かにはなれなかったっすね。どうしたって自分になっちゃったんだろうな。どんだけ皮肉だって言ってもね。こうやって笑って話せてるのも、結局いい曲になっちゃったからだと思うし。そう思えてなかったら、「皮肉で書いた」なんて言い訳にしかならないから(笑)。

―確かに(笑)。それに、誰にでも書ける曲っていうのも悪いことじゃないと思うんですよ。むしろ、その人の一番無垢な部分が出ちゃうテーマだとも思う。

橋本:ああー、誰にでも書ける曲っていうテーマを課したことでむしろ、自分の一番素直な感覚を思い返したことはあったのかもしれない。自分の将来や自分の理想だけを歌うのも悪いことじゃない。でも、「絶対に振り返るな!」って言うだけの自分じゃなくなった気がしてて。“夏のまほろ”で昔のことを思い出したのもそうですけど、振り返った時にそこにいる少年の自分も、間違いなく自分なわけだから。人に興味が出たっていうのも、自分自身に対して寛容になることに繋がるというかーー。

ただ、これはちょっと違う話になるのかもしれないですけど……人を見て感動することが増えたと言っても、やっぱり人と人の関係ってはっきりしなくちゃいけない部分があると思うんです。たとえば仲のいいバンド同士が「俺たちは家族だ」って言ってるところをよく目にするんですよ。でも俺にとっての家族は、父ちゃんと母ちゃんと兄弟と婆ちゃんしかいないんですよ。そうやって人と人の関係を真実通りに認識することが、人との関係を大事にするっていうことだと俺は思ってて。

―人と人の関係を都合のいい言葉にすり替えないことが相手への誠実さになるっていうことですよね。人と自分は違う存在だと認識するから、尊重や尊敬が生まれるものだし。

橋本:そうそう。これは全部に通ずると思うんですけど、事実をちゃんと事実として見ることができないと、俺は信頼できないんですよ。だって、同じバンドだから家族になれるかって言ったら、そんなわけない。だから俺はバンドメンバーを友達と呼ぶし、現実の関係性をちゃんと見るから、その人を信頼できるもんだと思うんです。

何事においても誠実でいようって思うのはしんどいこともあるんですけど、でもそれを自分に課すことで、罪悪感や後ろめたいことをなくして胸を張れるんです。

―<ただ僕は 正体を / 確実を知りたいんだ>と歌われている“PEAK’ED YELLOW”もそうだけど、本当のことだけを見たいっていう気持ちが異様に強いのも、自分の何かを覆すだけの圧倒的な信頼を求めてるっていうことなんですか。

橋本:うーん……たとえばハルカミライのファンの方にも、「俺とあなたは友達じゃないよ」ってちゃんと言えるほうがいいと思っていて。お互いに「違う立場である」っていう認識があるからこそ、ライブでシンガロングして一体になれた時に奇跡を感じられるし、その奇跡みたいな瞬間が見たい。俺とお前は違うって認識するのは寂しいことじゃなくて、「だからこそ素敵じゃん」って言うためのことなんです。それこそが誠実さだと思うし、誠実さが説得力になると思うんですよ。

―人って、お互いに違うからいがみ合うこともあるけど、違うからこそ愛し合うこともできるわけですしね。ライブに限らずすべてにおいて大事な考え方だと思います。

橋本:嘘をついちゃいけない、何事においても誠実でいようと思うのはしんどいこともあるんですけど、でもそれを自分に課すことで、罪悪感や後ろめたいことをなくして胸を張れる。真実にちゃんと向き合うことによって生きやすくなるんですよね。そういう意味での芯をちゃんと持つことが、人への優しさとか器のデカさになっていくと思うので。

―それは、去年12月の幕張メッセ公演を観ていて感動したポイントとまさに同じなんですけど。人って、本当の意味で全部曝け出して汗と必死さでぐっちゃぐちゃになる瞬間に、本当の表情が見えてくるもので。そういう正体だけで向き合えることの気持ちよさと、それを受け入れ合えている温かい瞬間・光景がたくさんあったんですよ。

橋本:人を見て感動することの話にも繋がるんですけど……結局は何事も、自分も人も変わらず生きてるんだよなってところに感動するんでしょうね。で、俺をそういう人間に変えてくれたのも結局は周りの人なんですよね。人のおかげで開けたんです。

『センスオブワンダー』(2017年)収録

『星屑の歌』(2017年)収録

『永遠の花』(2019年)収録

背伸びや誇張って、自己顕示とか偉そうな態度に繋がっちゃうじゃないですか。それが好きじゃないんですよ。そうじゃなくて、どうしようもなく自分自身だって思える瞬間のために俺らはロックバンドをやってる。

―“100億年先のずっと先まで”に<秘密を打ち明けてみた / 君にだけ話してみた / 現実は変わらんけど 体が少し軽いや>というラインがありますけど――弱い部分だろうと自分は自分なんだって思えた瞬間に、強がりだけじゃない、真っ新な強さを手に入れられることもありますよね。

橋本:たとえば“ピンクムーン”に<死なないでね>っていう歌詞がありますけど、最初はメンバーに「この歌詞暗くない?」って言われたんですよ。で、今までだったら「暗くない?」って言われたら歌詞を変えちゃってたんです。

でも今回は、「いやいや暗くないよ!」って言えたんですよ。暗いとかじゃない、自分自身がそのまま出てきたものを信じられるようになったんだなって。そう言える自分だったから作れたアルバムだと思うんですよ。メンバーも「学がそう言うなら、暗くはないんだな」って言ってくれたし、ちゃんと自分で胸張れたなって思います。

―“ピンクムーン”の<君より先に死なないから / 僕より先に死なないでね>って、ものすごいシンプルだけど「愛してる」の表現として最大級だなって感じたし、そこがキラキラしてると思ったんですよ。

橋本:キラキラしてますよね! よかったなあ。言われた通りで、「俺は強い」って示すのが強さだと思ってたけど、強さってそれだけじゃないんですよね。本当に大事な人になら、自分の内側を見せられる。自分に素直になって、大事なものをちゃんと抱き締める――きっと、そういう強さもあるんですよね。

―それがメロディと曲のスケールになってちゃんと表現されている作品だと思います。人への温かい眼差しがそのまま、人の入ってこられる懐の深さになってる。

橋本:嬉しいっす。自分が変わってきたのはもちろんなんですけど、コード感やアレンジに対しての感謝も改めて感じたんですよ。<死なないでね>っていう言葉を温かく聴かせるような、明るいコード感をチョイスしてくれるバンドがいて初めて俺の歌が形を持つし、バランスをとれるんですよね。もしかしたら、自分だけだったら暗い曲になっちゃうかもしれないし。

―そう自覚するからこそ人や仲間が必要なんだっていう人なのかもしれないですね。

橋本:これまでは、ネガな部分や元気じゃない部分を出しちゃダメだっていう縛りが無意識のうちにあったと思うんですよ。でも今は、強さや優しさを歌うために、その裏付けになるネガな部分や弱みもちゃんと書かないと居心地悪くなってきたんでしょうね。強さも弱さも、毒っぽい部分も全部持ち合わせてないと、信用できる歌じゃなくなるんですよ。それこそ真実じゃないから。

―自分が信用できる人、自分が本当に信用できる真実を追い求めることで、自分が信用できる自分になりたいっていうこと?

橋本:そうなんでしょうね。やっぱりそこに辿り着くのは変わらないんだなって思います(笑)。まあ………毒を入れようと思って皮肉で書いても、“優しく飛んでゆけ”みたいにいい曲になっちゃうのが不思議なんですけど(笑)。

―これは何度でも言うけど(笑)、誰でも書ける曲を書こうとした結果、ご自身が最初から持ってるメロディの普遍性とスケールが証明されたっていうことじゃないですか。

橋本:まあ、自分の思っていることは思った以上に人に伝わりづらいんだなって実感してきたところもあるんですよ。それもあって、より一層ポップな作品になったのは事実で。だけど背伸びしたところもなくて。今やれることをバンドとして選んでいくっていうのは一番大事にしてたと思いますね。メンバーの中で「それダサいよ」っていう言葉がよく会話に出るんですよ。で、ダサいっていうのは、やっぱり背伸びすることなんです。自分を誇張したり誤魔化したりすることが一番嫌なので。

―背伸びしたり誇張したりするのは、真実の姿じゃないから?

橋本:そうです。背伸びや誇張って、自己顕示とか偉そうな態度に繋がっちゃうじゃないですか。それが好きじゃないんですよ。そうじゃなくて、どうしようもなく自分自身だって思える瞬間のために俺らはロックバンドをやってるし、やればやるほど素直になっていける気もするんです。

どんなにすごいことを成し遂げてきたとしても、「いやいや、俺なんてそんなことないっすよ」って言える人になりたい。自慢するためじゃなくて自分に向き合った結果として何かを成し遂げるのがカッコいいし、自分の大事な人に対して素直でいることが何よりも大事なんですよね。

―だからこそ、この作品は自分の大事な友達みたいに信頼できる人へ向けているところがあると感じたんですよ。“THE BAND STAR”で<(the)Band Star is my friend>と歌って、ラストに“友達”がくるあたりも含めて。

橋本:……まあ、“THE BAND STAR”の<(the)Band Star is my friend>で始まって“友達”で終わるのは全然俺は意図してなくて、偶然だったんですけどね。

―深読みだった(笑)。

橋本:ははははは。友達っていうものを客観的に見て書いたのが“友達”なんですけど、何度もボツにしながら、今ようやく形にできた曲なんですよ。だから、「人と自分」を見るようになった俺の変化は出てるんだと思います。信頼できてる歌というか……核にハルカミライのメンバーがいて、その周りにスタッフさんやレーベルの人たちがいるのは変わらないんですけど、コアがガチッとしたからこそ、その周りについてくる人の円を広げられるようなアルバムを作れた気がしてて。

だから『THE BAND STAR』っていうのは、俺の友達にとっても、現時点で音楽がそんなに好きじゃない人にとっても、ハルカミライが好きな人にとっても、それぞれにとって光っているものがあればいいなっていう気持ちを込めたんです。俺たち自身がそういう歌になっていけばいいなって。そう思ってますね。

リリース情報
ハルカミライ
『THE BAND STAR』初回盤(CD)

2020年7月8日(水)発売
価格:3,100円(税込)
UPCH-29367

1. THE BAND STAR
2. 夏のまほろ
3. 優しく飛んでゆけ
4. 100億年先のずっと先まで
5. ろくでもねぇ
6. フュージョン
7. PEAK'D YELLOW
8. ピンクムーン
9. ブレーメン
10. 友達

ハルカミライ
『THE BAND STAR』通常盤(CD+DVD)

2020年7月8日(水)発売
価格:4,600円(税込)
UPCH-20553

[CD]
1. THE BAND STAR
2. 夏のまほろ
3. 優しく飛んでゆけ
4. 100億年先のずっと先まで
5. ろくでもねぇ
6. フュージョン
7. PEAK'D YELLOW
8. ピンクムーン
9. ブレーメン
10. 友達

[DVD]
2019年12月8日幕張メッセワンマンライブ『A CRATER』をノーカット収録

プロフィール
ハルカミライ
ハルカミライ

橋本学(Vo)、関大地(Gt,Cho)、須藤俊(Ba,Cho)、小松謙太(Dr,Cho)によって、2012年に東京・八王子で結成されたロックバンド。2017年2月にTHE NINTH APOLLOから初の全国流通盤『センスオブワンダー』を発売し、2019年1月にはEMI Recordsから1stフルアルバム『永遠の花』をリリース。2019年12月8日には幕張メッセで360°センターステージでの単独公演を開催し、8,888人を動員してソールドアウト。2020年7月8日に2ndフルアルバム『THE BAND STAR』を発表する。



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