BROTHER SUN SISTER MOON 孤児たちが信じた、不確かな希望

大阪を拠点に活動する3ピースバンド、BROTHER SUN SISTER MOON。彼らが7月にリリースした1st EP『Some Same Soul』は、既に海外、特にアジア圏のプレイリストにも多く取上げられるなど、日本国外のリスナーからも注目を集めている。しかし、それは決して驚くべきことではない。この音楽は、言語や国境という壁を一聴して突破しえる魅惑的なフォルムを持っているし、なにより、国や人種を超えた場所で、あらゆる人々の記憶に触れ、イメージを造り出すこと……それが、BROTHER SUNSISTER MOONの3人がその音楽において目指すことであり、彼らが自分たちの音楽を「ポップス」と呼ぶ由縁でもあるのだから。

BROTHER SUN SISTER MOONの音楽――まるで未来から現在を振り返るような、そのどこかSF的でサイケデリックな音楽を構築しているのは、孤児のような音や詩である。それは、記憶の孤児であり、感情の孤児であり、夢想の孤児である。それらはこの世に確かに産み落とされながら、家を持たず、しかし、眼差しを持っている。それらは寄る辺なさをもとに寄り添いながら、断片同士が接合され、美しい音楽を奏で始める。どこか寂しそうで、しかし、温かな音と言葉の連なりがある。今のうちに出会ってほしいバンドだ。この音楽はあなたに発見されることを望んでいるし、また、あなた自身のなかに、この音楽によって発見されるべきなにかが眠っている可能性だってあるのだから。実兄妹を含むメンバー3人に取材した。

自分がひとりで作っても、それは自分が知っている自分に出会うだけ。自分が想像できないところにいきたいんです。(翔兵)

―BROTHER SUN SISTER MOON(以下、BSSM)というバンド名は、恩田陸さんの同名小説から取られたそうですね。

翔兵(Gt&Vo):そうです。本屋さんで背表紙を見つけて、「バンド名これにしよう」と思って。本当にワードだけで決めたっていう感じですね。その頃は、前にやっていたバンドが解散したばかりで。メンバーも決まっていなくて、ひとりでやる可能性もあった頃でしたね。

BROTHER SUN SISTER MOON(ぶらざー さん しすたー むーん)
2017年8月、大阪にて結成。惠翔兵(Gt&Vo)、岡田優佑(Dr)、惠愛由(Ba&Vo)からなるインディペンデントポップバンド。独特のいびつさと普遍的なポップネスが同居する楽曲、毛色の異なるふたりのリードボーカル、自由度の高いサウンドに溶けこむ英詞など、多方面からリスナーの耳をくすぐる。2020年5月、新レーベルBigfish Soundsから『Paranoid』を皮切りにシングル曲の配信リリースを続け、2020年7月29日に1st EP『Some Same Soul』をリリース。

―その時点で、作りたい音楽のイメージはありましたか?

翔兵:今もそうなんですけど、ポップネスをしっかり持ったうえで曲を作ろうと思っていました。前のバンドはTame Impalaみたいなサイケデリックな音像が好きだったので、サウンドから曲を作っていたんです。でも今は構造から曲を作るようになったし、自分のなかからナチュラルに浮かんでくるものをまずは大事にするようになりましたね。

惠翔兵(めぐみ しょうへい)

―では、翔兵さんがいう「ポップネス」というのは、「自分のなかからナチュラルに浮かんでくるもの」と強く結びついている?

翔兵:そうですね、最初に抱いた純粋なイメージがあって、それを曲げたくないなっていう。もちろん、最終的にサウンドで肉付けはするけど、肉付けを取り除いたら、そこにすごく純粋なものがある……そういうのがいいなと思ったんです。

岡田(Dr):バンドで曲を作っていても、表面的な意味での音楽的なポップさというより、もっと根本的な部分での、「自分という人間のポップネスをどう表現するのか?」ということに時間を使っている気がしますね。あと、恵さん(翔兵)は曲ができた直後から「これはこういうPVにしよう」みたいな話をするんですけど、それが面白くて。おじさんが出てきたりするんですけど。直感的なものが映像として出てくるというか。

BROTHER SUN SISTER MOONのデビューシングル『Paranoid』
セルフライナー:バンドで初めて作った曲。3拍子のパートと8ビートのパートがあり、BPMは違うが拍ごとの感覚は同じなのがミソ / 目の前にいる誰かは、自分の想像とはまったく別の誰かかもしれない
BROTHER SUN SISTER MOON『Paranoid』を聴く(Apple Musicはこちら

―曲を作るときは、映像が喚起される場合が多いですか?

翔兵:そうですね。作るだけじゃなくて、聴くときもそうなんですけど、音楽に触れると、自分の頭のなかに映像が同時にイメージされることが多いです。

―翔兵さんが自分のなかから生まれてくる純粋なイメージを捉えたいと思う、その原動力になっているものは、なんなのでしょうか。

翔兵:すべてが新鮮で、すごくピュアに音楽を聴いていた時の体験が大きいんだと思います。英語もわからない小学生の頃なんかは、いろんな想像を張り巡らしながら音楽を聴いていたんで、すごく悲しい曲を聴いても、ハッピーな想像をしながら聴いたりしていて。

翔兵:いまだにそのイメージが残っているからか、当時の自分が聴いていた音楽の歌詞を改めて読んでみても、すごくトンチンカンな感じがしたりするんですよね。でも、それってすごく尊いことやと僕は思っていて。僕、音楽をしっかり聴き始めた頃はThe Beatlesばっかり聴いていたんですけど、その頃、The Beatlesを聴きながら予想外のところから生まれていたイメージは、未だに自分の地盤になっているような気がするんです。

―なるほど。

翔兵:「自分を築いているものって、どういうものなんやろう?」と思ったときに、子供の頃の自分が音楽を通して夢想していたもの、作者の意図とか関係ないところで自分のなかに浮かび上がってきたもの……それが自分にとってオリジナルなもので、大切なものやと思っていて。それって、後天的に変わっていくものではないと思うんですよね。そういうものが、自分の作った音楽からもいっぱい生まれたらいいなと思う。まぁ、自分の音楽を聴いた人がなにを感じるかは確認できないんで、希望でしかないんですけど。でも、いろんな人のなかで、いろんなイメージが沸いてくれることを望みながら、音楽をやりたいんですよね。

―自分の純粋なイメージを大切にしつつも、そこにあるのは、「ある特定のイメージやメッセージを伝えたい」という意志でもないですよね。

翔兵:「このメッセージを伝えたい」とかはないです。特定のところに刺さるように作るんじゃなくて、勝手に想像してほしい。老若男女が聴いて、勝手にハッピーになったり、勝手に悲しんだりしてくれればいい。そうやって作者の意図と全く違うところに進んでいくのが、僕のなかでの音楽の一番好きな形です。

自分の作ったもので、他の人がなにかを感じるっていうのが面白いし、こうやってバンドで音楽を作っているのも、自分ひとりの世界観だけで曲を作ってもつまらないからなんで。自分がひとりで作った曲を聴いて「悲しい気持ちや」と感じたとしても、それは自分が知っている自分に出会っているだけなので、面白くないんです。自分が想像できないところにいきたいんですよね。

フィクションでしか言えないこと、フィクションでしか伝わらない本当のことも絶対にあると思うんです。(愛由)

―岡田さんと愛由さんから見た、バンドの発起人である翔兵さんのイメージとはどういうものですか?

岡田:めっちゃピュアな人だと思うんですよ。僕は部活の後輩にあたるんですけど、もともと「恵さんっていう、素行の面でも、技術的な面でもヤバい人がおる」っていう話は聞いていて。BSSMに誘われたとき、いざそのヤバい人のスタジオに呼ばれたんで、「どうしよう……」みたいな感じやったんですけど(笑)。恵さんは、皮が分厚いんですよね。でも、その皮のなかにすごくピュアなハートがある、というか。そのピュアな部分から曲を作っていこうとしている感じがあるなと思います。

岡田優佑(おかだ ゆうすけ)

―実の妹である愛由さんの、お兄さんに対するイメージはどうですか。

愛由(Ba&Vo):自分の内面にある言語化できないものを曲にしているんだろうな、と思います。でも、ど直球に「俺はこんなことが悲しかったんだ!」と言うわけじゃなくて、自分の真ん中に一番ピュアなものがあったとして、その周りを衛星のようにぐるぐると回って軌道を描きながら、中心を見ている、みたいな……そういうふうに、自分の内面や感情との付き合い方をしている感じがします。その距離の取り方は、曲や歌詞にも出ていると思っていて。それはアートとしてかっこいいと思う。私だったら、自分で文章を書いたり、自分で歌う曲を作ったりしても、ど直球に言語化しようとするけど、兄は自分の感情の周りをぐるぐる回りながら、「これは一体なんなんやろう?」と、たしかめ続けている。

岡田:だからこそ、「すごく手間のかかるやり方を選んでいるな」とも思いますよね。制作中に恵さんが「自分の感情と向き合っているな」っていうときは、すごく大変そうやなって思いますから。

―先ほど少し仰っていた、The Beatlesを聴きながら夢想していた頃の翔兵さんのお話を伺いたいです。

翔兵:小4くらいのときに、CDプレイヤーとiPod miniを与えられて、周りのみんながMDを使っていた時代に無敵になって(笑)。それで、お母さんに「TSUTAYAでなんか借りてきて」といって、借りてきてくれたのが、The Beatlesの赤盤と青盤で。QueenとかThe Rolling Stonesもあったんですけど、やっぱりThe Beatlesに一番持っていかれていましたね。子供の頃は空手を習っていたんですけど、空手の行き帰りの自転車でもずっとThe Beatlesを聴いていて。その頃の、「今日、空手道場怖いな~」とか思っている感覚と、The Beatlesをリフレインしていたときの情景のリンクはいまだに残っていて、今でもThe Beatlesを聴くと、空手関連の思い出が想起されたりするんです(笑)。でも、そういうことってありますよね?

―ありますね。

翔兵:音楽を通して、そのときの感覚が残っている、みたいな。ほんまやったら残るはずのないものが、音楽のなかに記録されている感じ……それは、すごく今でもすごく大切にしている部分だと思います。このEPに入っている“I Said”という曲も、そういうことがモチーフになっているような気がしていて。

―『Some Same Soul』というEPのタイトルは、“I Said”の歌詞のフレーズから取られていますよね。

翔兵:そもそも“I Said”は、EPのタイトルにもなっている<Some same soul waiting for>っていう部分が断片的に、メロディと一緒にまず出てきて、そこから連想して膨らませていった曲で。この曲のモチーフは、具体的なことではないんですけど……例えば、自分のなかにある昔の感覚とか、忘れていたことって、それでも記憶として自分のなかに残っているじゃないですか。それが、解き放たれるのを待っているような感覚。それが解放されることに、希望を抱いている……そういうイメージです。自分がかつて抱いたのと同じ感覚、同じ魂、そういうものがどこかに存在していて、自分を待っていてくれるんじゃないか? っていう。それは“I Said”のモチーフということだけじゃなくて、このEPのタイトルとしてもピッタリやなと思ったんですよね。

BROTHER SUN SISTER MOON『Some Same Soul』
“I Said”セルフライナー:低い重心の伴奏を俯瞰したようなボーカルが特徴です。間奏の後の展開は走馬灯のようなイメージで展開しています / 僕たちの感情はどこかに保存されていて、報われなかった、忘れ去られた魂は待ち続けている。いつか誰かに、見つけてもらえるのを
BROTHER SUN SISTER MOON『Some Same Soul』を聴く(Apple Musicはこちら

―それは、先ほどの「ポップネス」の話とどこかつながるような気がしますね。ひとつの音楽を聴いて生まれるイメージは別々のものであっても、「なにかを感じた」という点において、つながりを求めるというか。

翔兵:そうですね。不確定さがあって、それでも合致する瞬間があって、それは美しいはずだっていう希望。言語化できない自分の感覚が、誰かと合致するかもしれない……そこに救いを待っている、というか。

愛由:私の感覚だと、どこかにいる同じ魂を持った人を「求めている」とか、「手を繋ぎたい!」という感じではなくて、同じ魂を持った人が「いる」という希望、「いる」と想像できること……そこで留まっている感じが一貫してあるような感じがします。私にとって“I Said”は、閉ざされたひとりの場所……白い箱みたいな部屋にいるようなイメージがあって。ひとりきりの小さな自分の部屋にじっといながらも、同じ魂を持った人がどこかにいる。「その人と手をつなげそうだ」って、想像できそうな人がどこかにいる……そういう希望がある。そんなイメージがあります。

惠愛由(めぐみ あゆ)

―なるほど。あくまでも、そこにあるのは予感めいたものである。

愛由:私、『千と千尋の神隠し』が好きなんですけど、あの映画って、「記憶」とか「本当の名前」を巡る物語じゃないですか。あれで、千尋に湯婆婆の妹の銭婆が、「忘れてなんかないよ、思い出せないだけだよ」みたいなことをいうシーンがあるんですけど、そのシーンがめっちゃ好きで。「思い出せない記憶」っていう言葉がすごく好きなんですよね。「思い出せないけど、どこかに残っている」ような感覚……。「自分の感情」っていう刹那的なものがあったとして、それが、この世界のどこかに不思議な形で保存されていて、それを「思い出せそうな気がする」。「思い出せた!」じゃなくて、「思い出せそう」くらいの希望に留まっている。でも、その希望だけでいいじゃんっていう……。“I Said”は、そんな感じの、ささやかだけど希望の歌っていう感じがします。

翔兵:でも、言っておきたいのは、これは僕自身の経験やエピソードに基づいているわけではなくて、フィクションなんですよ。だからこそ、そこから想像してくれるっていうことが尊いんですよね。なので、この先も一貫したこの世界感があるかと言うと、また違う形になっていくかもしれない。

愛由:私も、どれだけパーソナルなものが入っていたとしても、これはフィクションやと思う。でも、フィクションでしか言えないこと、フィクションでしか伝わらない本当のことも絶対にあると思うんです。

翔兵:それは、あるね。

愛由:私たちはそれを伝えることを選んだんだなって思う。フィクションの持つ軽やかさ、最後はすべてを受け取り手に委ねられるっていうところが、私たちには合っているんだなって思います。

他人に対しての不確定さ、他人を自分の想像では捉えることができないっていうことが前提に描かれている。(翔兵)

―では、『Some Same Soul』というフィクション集が、この2020年に産み落とされたことの必然性は、自分たちのなかにありますか?

翔兵:このEPに入っている曲は、2020年に書かれた曲がほとんどないんですよ。一番新しく作った“All I Want”だけが今年作った曲で。

BROTHER SUN SISTER MOON『All I Want』
セルフライナー:アンセムのようなコーラスが短い構成に挿入された、ある種いびつなポップス。この中で1番新しい曲で、1番時間を要さなかった / 苦しみは、妄想によって断ち切られる
BROTHER SUN SISTER MOON『All I Want』を聴く(Apple Musicはこちら

愛由:でも、意図しない部分での2020年っぽさはあるかもしれないよね? それは意図して生まれたものではないから、不思議な部分ではあるけど……。

翔兵:そうやね。それこそが、僕が望むことでもあると思う。今の苦しい状況のなかで、ちょっとでも、このフィクションの世界を自分に当てはめてくれる人がいればいいなと思うし。最近、まさにそういうことを感じたんです。ジョン・レノンの“Isolation”という曲があって、直訳したら「隔絶」ですけど、まるで今のために作られたんじゃないか? っていうような曲なんですよ。この5~6月の落ち込んでいるときにその曲を聴いて、すごく感銘を受けたんです。「隔絶」というタイトルやけど、希望を持てるような内容の曲で、詞の内容も曲の展開も、「ジョン・レノン、今作ったやろ?」っていうくらい。自分の曲でも、こういうことが起こればいいなと思う。

―3曲目の“Numb”が象徴的ですけど、ある種の「無感覚」「麻痺した状態」というのが、このEPの曲には通底していますよね。

翔兵:そうですね。“Numb”で歌っていることは、このEPのすべての曲に共通している内容っていう感じがします。このEPの4曲はすべて、他人に対しての不確定さ、他人を自分の想像では捉えることができないっていうことが前提に描かれているような気がするんです。例えば“All I Want”は途中で完全に自分の妄想の世界に入って、そこでハッピーな結末を迎えるんですけど、その前提にはやっぱり、相手のことは不確定でなにもわからない、なにも解決されていないっていう感覚があって。

BROTHER SUN SISTER MOON『Numb』
セルフライナー:サイケポップ。4つのコード、同じ進行で全パート構成されており、ビートで変化させている波のような曲 / 人について深く考えても、結局は無が待っている。無感覚に身を任せよう
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愛由:私は、さっき言った、彼(翔兵)が自分の感情の周りを周りながら真ん中にあるものを見続けているっていう、その距離の取り方が、そういう表現に出ているのかなと思っていて。自分のなかにあるものだとしても、ベリっと剥がしてしまわずに、「なんだ、お前は?」って見続けている。暴きすぎはしない。それは他者へのスタンスでもあるだろうし、自分の感情との付き合い方でもあるだろうし、そういう距離の取り方に、彼の人間としての在り方がすごく出ていると思います。「暴きすぎない」ことは、BSSMにとってすごく大事なことだと思う。全部を暴かない、不透明なものを残しておく。それこそがBSSMのフィクション性かもしれないし、そこで留まれることが重要なんだと思う。

―すべてを暴くことは、恐怖でもある?

翔兵:そうですね。暴いたら、終わっちゃうんで。映画を見たあとに考察サイト見たくないなっていう感じに近いかもしれない。

愛由:そうだね。恐怖感もあるだろうし、私は、一種の「謙虚さ」かな、とも思う。わかった気にならないし、わからないものを「わからないまま」置いておける力って、私はすごく大事だと思うから。そういう思慮深さはあるんじゃないかなと思います。全部、納得しちゃわない感じ。その感じが私は好きですね。

段々、「ここを歩けばええんや」っていうものがバンドとして見えてきたなって。(岡田)

―最初に、翔兵さんは「ひとりでやるかもしれなかった」と言っていましたよね。でも、ひとりの世界で完結してしまうことがイヤで、バンドを求めたと。岡田さんと愛由さんにとっては、今、BSSMはバンドとしてどんな場所になっていますか?

愛由:今、BSSMが作ろうとしている曲は、誰かひとりだけの発想では生まれないんですよね。根本には兄の発想があるんですけど、それだけじゃない、いろんなものが混ざってできていて。だから、新鮮な感じで自分らの曲を眺めている感じなんです。「私らが作った!」というよりは、「こんなのができたんだ」みたいな感じ。

岡田:そうですね。あと、音楽を聴いたり作ったりしていくことに対して大事にしてきた部分がそれぞれの人生においてあると思うんですけど、それが今やっと噛み合ってきた感じがします。最初はいろんな可能性が見えるなかで冒険をしていたけど、段々、「ここを歩けばええんや」っていうものがバンドとして見えてきたなっていう感じがしますね。

翔兵:岡田くんは、出会った頃は真っ白なキャンバスみたいな感じやったけど、最近は「それやんな」っていうところで一緒にニヤっとできているから、いいよね(笑)。

岡田:そうですね(笑)。僕は、中学生の頃に吹奏楽をやっていて、その流れで高校生の頃に友達とバンド組んだりしたんですけど、BSSMに誘われた頃は、まだまだ「ドラムを叩くのが好きな少年」っていう感じで。大学生になって、自分がどういう音楽を作ることができるのか、どういう音楽を聴けば自分の可能性が広がるのかっていうことを考え始めたばかりの頃に、このバンドに誘われたんです。

―ご自身で曲作りもされてきたんですか?

岡田:『大合奏バンドブラザーズ』っていうDSのゲームがあるんですけど、それで曲を作れるんですよ。高校生の頃にそれで作り始めたのが最初だったんですけど、BSSMを始めて、今、どんどんと音楽の深みに両足を突っ込み始めている感じがしますね。

―愛由さんは大学院で文学を学ばれているそうですが、どんな文学がお好きなんですか?

愛由:パーソナルなお話も好きだし、SFも好きだし、エッセイも好きだし、幅広く好きです。強いていうと、修士論文では、ミランダ・ジュライと、カルメン・マリア・マチャドという女性作家を取上げたりしました。そういう、現代アメリカ小説を読みがちですね。

―バンドという表現に対してはどんな想いがありますか?

愛由:私は、兄から「スタジオに入ろう」と誘われて、なんとなく「うん」って答えたところから始まったので、バンドで音楽を作ることの哲学やプライドは、今でもそこまでなくて。私は、とにかく歌が好きなんですよ。歌でなにかをどうにかしたいというよりは、ただ「歌う」ことが好きで、バンドをやるモチベーションの根本も、そこだけなんです。この間、久しぶりにひとりでライブに呼ばれて、ウクレレで配信ライブに出たんですけど、そこで、自分の歌うことの原体験を思い出すような感覚があって。

―原体験ですか。

愛由:私が自分自身を想像するとき、何故かいつも水がセットになって思い浮かぶんです。自分の一番いい状態は、ポカーンと静かに水に浮かんで、脱力した状態で、流れに身を任せながら、ちょっとだけ手足を動かしている……そうすれば、どこにいるのかわからないけど、脱力して、安心しきっていられる、みたいな。この間のライブで、それをめちゃくちゃ感じたんですよね。歌いながら、すごく静かな気持ちになって。「あ~、これこれ」みたいな。歌うとそうなるんやなって、そのときに改めて気づきました。気づいたというか、思い出したというか。

―すごい、面白いお話ですね。

愛由:私は水に浮いているんですよ(笑)。

―安堵や安心がそこにある?

愛由:そう、去年の夏くらいから、「どういうときに自分は安心感を抱くんだろう?」ということを考えていて。「どういう人といたら、どういう場所にいたら、なにをしていたら、私は楽しくて、安心でいられるんだろう?」って。私にとって歌は、それを作ってくれるすごく大きなファクターなんだなと思います。前に、論文を書くのが苦しくて、大学のアメリカ人の先生に「言語化するのがしんどい」っていう話をしたんです。そうしたら、その先生が「『書く』ということは、この滅茶苦茶な世界のカオスのなかに、一瞬の秩序をもたらすものなんだよ」と言ってくれたことがあって。

―なるほど。

愛由:本当に束の間のものであっても、「書く」ことを通して、その瞬間だけに生まれる秩序がある。そのとき、その先生に「『歌う』ということも、あなたの中に束の間、静かな感覚を生まないか?」とも言われたんですよね。まさに、一瞬の秩序みたいなものが生まれる……その感覚を、この間、歌っていて改めて思い出しました。

翔兵:(愛由は)そういう感じやんな。制作面でも、具体的なことは僕と岡田がやることが多くて、愛由は俯瞰しているというか、独立しているんですよね。そういう存在がバンドにいることによって、僕らで凝り固まったしまったものがほぐされることがあって。愛由は、無理して周りに合わせるんじゃなくて、「私はこれ」っていう感じで独立しているのがベストやと思う。

―さすが兄妹というか、翔兵さんと愛由さんのお互いの理解力はすごいですね。

岡田:でも、普段は言い争いもすごいんですよ(笑)。血のつながりがあるからか、遠慮のなさがすごい(笑)。最初は「え、こんな空気になる?」ってビビりましたけど(笑)、今はその遠慮のなさも、バランスがいいなと思います。どれだけ言い合っても、ふたりでいい方を選ぼうとしている感じがするし。

翔兵:やっぱり生まれた頃から知ってるんで(笑)、愛由は「それ、ダサいがな」とか遠慮なく言ってくるんですけど、僕はそれがないと勘違いしてしまうというか。自分ひとりの意見を信じ込み過ぎてしまうと、結局、生まれるものが美しくなくなってしまったり、ほんまだったら届くはずのことに届かない、みたいなことが起こってしまう。でも、BSSMはどんな人にでも聴いてもらいたいし、そこからなにかをイメージしてもらいたいので。そのためにも、僕らは予想外のものを全部受け入れたいし、だからこそ、他の誰かと音楽を作っているんですよね。

リリース情報
BROTHER SUN SISTER MOON
『Some Same Soul』

2020年7月29日(水)配信

1. Paranoid
2. All I Want
3. Numb
4. I Said

BROTHER SUN SISTER MOON
『Some Same Soul』(アナログ 10inch)

2020年10月7日(水)発売
価格:2,200円(税込)
BIGF-0001
※ダウンロードコード封入

1. Paranoid
2. All I Want
3. Numb
4. I Said

イベント情報
『BROTHER SUN SISTER MOON Online Gig for 'Some Same Soul'』

2020年9月4日(金)20:00~
料金:無料(投げ銭有り)
※アーカイブは配信終了日から1週間配信

プロフィール
BROTHER SUN SISTER MOON (ぶらざー さん しすたー むーん)

2017年8月、大阪にて結成。惠翔兵(Gt&Vo)、岡田優佑(Dr)、惠愛由(Ba&Vo)からなるインディペンデントポップバンド。独特のいびつさと普遍的なポップネスが同居する楽曲、毛色の異なるふたりのリードボーカル、自由度の高いサウンドに溶けこむ英詞など、多方面からリスナーの耳をくすぐる。2020年5月、新レーベルBigfish Soundsから『Paranoid』を皮切りにシングル曲の配信リリースを続け、2020年7月29日に1st EP『Some Same Soul』をリリース。



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