みょうじなまえの個展『In the Room』が12月6日からHARUKAITO by ISLANDで開催

メイン画像:(C)️みょうじなまえ

みょうじなまえの個展『In the Room』が12月6日から明治神宮前・HARUKAITO by ISLANDで開催される。

1987年に兵庫県に生まれ、2019年に東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻を卒業したみょうじなまえ。『SICF23 EXHIBITION部門』でグランプリを受賞した『You or someone like you』『JEWEL NURSERY』(2020)や『CAF賞2022』金澤韻審査員賞受賞の『人形の家』など、幼少期からの自身の体験をもとに、身体やジェンダーをとりまくナラティブと現代社会のディスコースによる相関関係を照射させる作品を制作してきた。

同展では、かつて自分の部屋に閉じこもる時期を長く経験したという原点に立ち返り、「その部屋」から動線上に広がる世界のさまざまな風景や事象を解体し、積み木のように、自分自身や社会を構成する部品をばらばらにして、ともに組み直す遊びを鑑賞者に促すという。新作も展示される。

【ステートメント】
私の作品には、おもちゃをモチーフに用いているものがとても多い。
家や部屋の中にあるものの形を使った作品も。その理由は、何となく自分でもわかっている。これまでずっと、外の世界よりも、家の中の空間のほうが、私にとっての「リアル」だったからだ。
思春期や青年期の長い間、私は自分の部屋に引きこもって生きていた。
朝、空が青白むころ、息を潜めるように瞼を閉じる――そんな生活を、ずっと続けていた。
それが悲壮な日々だったかと問われれば、実のところ、必ずしもそうではない。
もともと家の中で遊ぶのが好きで、ひとりでいるのも好きだった。
毎日、部屋の中で、浴びるように映画を観て、浴びるように絵を描き、浴びるように音楽を聴いていた。
今思えば、それは静謐で、濃度の高い、豊かな時間でもあった。
けれど同時に、そこで失われていったものもある。
ある精神分析家は著書の中で、「ひきこもりは座敷わらしだと思いなさい」と書いている。少しだけ、その意味がわかる気がする。
ひきこもりの時間と、いわゆる社会生活の時間とでは、その流れ方や密度がまったく異なる。
人の群れの中で生きるための器官を、少しずつ忘れていく一方、特殊な時間が流れる聖域の中で、ある種の神性を帯びていくような感覚。
あの頃の私にとって、世界のあらゆる情報は非現実的で、すべての位相が恐ろしく曖昧だった。
真夜中のテレビから流れるグルメ情報に、ホラーゲームのコマーシャル、子猫の愛らしい姿、世界貿易センタービルの崩落。誰かの欲望に埋もれながら、今にも崩れそうなぼやけた永遠を過ごしていた。
こうして今、私が外の世界に生きているということは、家族のたゆまぬ愛と、様々な幸運が重なった結果でもあるのだけれど、結局のところ、私は自分のつくったものを誰かに見てほしかったのだと思う。
欲望とは、現実世界へと帰還するためのトーテムでもある。
私は恐る恐る部屋のドアを開け、外に出ることをはじめてみた。

みょうじなまえ

みょうじなまえの個展『In the Room』


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