2016年4月にシンガポールのアートブックフェス『Singapore Art Book Fair(以下、SABF)』が開催されました。TOKYO ART BOOK FAIRにインスパイアされて始まったこのフェアも今年で3回目。今回はマリーナベイ・サンズ併設のArtScience Museumでアクセスもグッとし易くなりました。そんなSABFを主催するシンガポール独立系書店の雄『Books Actually』のRenéeに、「SABFの現在(いま)を象徴する5冊」をセレクトしてもらいました。
※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。
SABFを主催するシンガポール独立系書店『BooksActually』。2005年のオープン以来、感度の高いセレクションと、書籍関連イベントや、アコースティック演奏会、オールナイト企画など、様々な文学イベントの開催を通じて、移り変わりの激しいシンガポールのカルチャー・シーンの先頭を走り続けているシンガポールの文化アイコン的な書店です。週末ともなればシンガポールの他の場所ではなかなか出会うことのないブック・ワーム達(本の虫)で常に賑わう『Books Actually』(時々可愛い白猫も店内で昼寝しています)。今回、そんな『Books Actually』のショップ・マネージャーであるRenéeと一緒に会場を回りながら「SABFの現在(いま)を象徴する5冊」をセレクトしてもらいました。
![](https://former-cdn.cinra.net/uploads/img/2022/ce8ae9fdfb14ffcebf45ceaaa289dbc9575f9ad21.jpeg)
1. Shibuya is Calling / Samantha Ann Francis
![](https://former-cdn.cinra.net/uploads/img/2022/cc48ce7d20e0e2cc091a7295aa4d2e248a7f1e141.jpeg)
普段はフィルム・フォトグラファーとして雑誌や結婚式といった場で活躍しながら、美術館の企画展に作品が展示されるなどアーティストとしても精力的に活動しているシンガポールのSamantha Ann Francisによる写真と文章による旅行ガイドブック。彼女が旅したアジア各地の街並みや自然が二重露出やピンぼけを駆使して切り取られています。「幻想的で美しいイメージは実際の風景とは随分印象が異なるかもしれないけど、まだ見ぬ旅先のイメージって、きっとこんな風にロマンチックなもののはず」(Renée) 。タイトルの『Shibuya Is Calling』は、本書の着想が東京の渋谷を歩いていた時に湧いてきたからなのだそう。
![](https://former-cdn.cinra.net/uploads/img/2022/2b52bbcff709ae4c1236e596617c57a5d7c9ef4d1.jpeg)
2. 2016 Examination Supplement / Pann Lim from Holly Clap
![](https://former-cdn.cinra.net/uploads/img/2022/f30f445a56a6fca2c51a20b8ef4fb5763b13478e1.jpeg)
Holycrapは父・母・息子・娘の家族4人によるアート・プロジェクト。彼らの代表作であるRubbish Famzineシリーズは、シンガポールのみならず海外からも様々なデザイン賞を受賞しているデザインブックです。今回Renéeが紹介してくれたのは、一家の父であるPannの個人プロジェクト。シンガポールを代表するデザイナーとして各地で講演をしてきた彼が、講演後のQ&Aを一冊にまとめた作品です。「カラフルなパッケージデザインは、シンガポールの学校で使われているテスト用紙のデザインを真似たもの。アーティストやデザイナー志望の学生も含めて、テスト勉強に追われるシンガポールの若者のストレスフルな側面を逆手に取った遊び心のあるデザインが、彼らしい作品です」(Renée)。
![](https://former-cdn.cinra.net/uploads/img/2022/4f7e7447422023a4c375d97084dbf3c00ac5da5d1.jpeg)
3. To You Out There / Clarice Ng
![](https://former-cdn.cinra.net/uploads/img/2022/5b6f3fa6eef0f4b0807c67706347f6e4b14df0b31.jpeg)
続いてはシンガポールの若手イラストレーターClarice Ngのイラストレーション・ブック『To You Out There』。彼女が個人的に経験した他者とのコミュニケーションの難しさから出発して、イラストと物語を通して「自身や他者に寄り添うことが出来たら」、という彼女の想いが形になった一冊です。「彼女が初めて本書の企画をBooks Actuallyに持ち込んだくれたのは3年前かな。彼女がまだ高校生だった時のことです」(Renée)。その後も彼女は試行錯誤を続けて作品の質を高めて、本作品は晴れてBooks Actuallyの自社出版レーベル Math Paper Pressからの出版が決まったとのこと。「SABFのタイミングに合わせて作品のお披露目が出来たのは感慨深いです」(Renée)。
![](https://former-cdn.cinra.net/uploads/img/2022/3c06254aa8f4e38409addd495bed5002554bdc9b1.jpeg)
4. Yesterday’s Today / A Party of Four
![](https://former-cdn.cinra.net/uploads/img/2022/386fb009152942ff8581b026db35e7e8334ffafc1.jpeg)
『Yesterday’s Today 』は、2015年にグラスゴー美術学校Glasgow School of Artsを卒業したばかりのシンガポールの若手クリエイター4名によるプロジェクトの第一弾。普段は別々に活動している4人がお茶をしながら駄弁っていたところから、自然発生的に始まったプロジェクト。今回は「時間」をテーマに4者4様のアプローチで取り組んでいます。
「最終的に一冊にはまとめず、4冊の小冊子を1つにパッケージングにまとめているところも、緩い感じでいい。A Party of Fourのように若いクリエイター達が、気軽に作品を発表して欲しいと願っています。というのも、シンガポールには有力なアート系出版社や小売業者が存在しているので、アーティストが書籍を出版する環境は整っているけど、まだまだ若手の書き手が追いついていない状況。だからSABFは、彼らのように若いクリエイター達の作品をどんどん応援していきたいと思っています」(Renée)。
![](https://former-cdn.cinra.net/uploads/img/2022/5f15293e892c4bd5dcaa27984c5a86a784acb0731.jpeg)
5. PRISMOF / Filmingout
![](https://former-cdn.cinra.net/uploads/img/2022/41a0f4367e432e2a54d7ec8f69c978c7b509b6971.jpeg)
最後は、韓国から出展した映画雑誌『PRISMOF』 。1冊丸々映画1作品を語りつくす映画雑誌です。作品は1つでも作品の受け止め方は人それぞれ。映画の多様性を1つの光源から様々な色彩を生み出すプリズムに例えたコンセプトが秀逸です。「コンセプトはもちろんですが、何といってもデザインがビューティフル。『グランドブタペストホテル』を特集した1号、『エターナルサンシャイン』を特集した2号とも即買いしました」(Renée)。もともと原本はハングル(韓国語)なのですが、今後は海外にも読者を増やしていきたいと考えていた矢先だったそうで、今回のアートブックフェア出展に合わせて英語版を発行したそう。「今回、SABFには韓国の他にも、タイ、インドネシアなどから出展してくれています。今後はアジアのアートブックのプラットフォームになれるようにこれからも継続していきたいです」(Renée)。
![](https://former-cdn.cinra.net/uploads/img/2022/708b8ae35a99f2aa29710cb934114dfc2569d0311.jpeg)
-
Singapore Art Book Fair 2016
時間 : 金曜・土曜: 10:00 ~ 19:00 / 日曜: 10:00 ~ 18:00
住所 : 10 Bayfront Avenue, Level 4, Expression, Curiosity & Inspiration Galleries, Singapore 018956
会場 : ArtScience Museum
入場料 : 無料
お問い合わせ : info@singaporeartbookfair.com
URL : Singapore Art Book Fair 2016
- フィードバック 0
-
新たな発見や感動を得ることはできましたか?
-