ハリウッド5大スタジオの一つ・パラマウントの配信サービスが日本初上陸。『タルサ・キング』レビュー

『ミッション:インポッシブル』や『トップガン』、『トランスフォーマー』シリーズなど数々の人気作・話題作で知られる大手映画スタジオ「パラマウント・ピクチャーズ」のストリーミングサービス「パラマウントプラス」が、日本に初上陸する。

日本ではWOWOWオンデマンドで配信されるが、今回は初上陸を受けて12月1日(金)から待望の配信開始となる『タルサ・キング』を紹介する。

日本上陸した「Paramount+」で『タルサ・キング』が配信開始

ハリソン・フォード、ケビン・コスナー、サム・エリオット。ハリウッドの名優たちをテレビドラマの世界に続々と召喚し、骨太な人間ドラマを描いてきた脚本家テイラー・シェリダンが新たにタッグを組んだのは、『ロッキー』『ランボー』シリーズのシルヴェスター・スタローンだった。

『タルサ・キング』は、スタローンが76歳にして初めてドラマシリーズの主役をつとめ、プロデューサーも兼任したチャレンジングな一作である。演じるのは、25年の刑期を終えて出所したばかりのギャングの幹部、ドワイト・マンフレディ役。これまで正義漢を演じることが多かったスタローンが、本格的に悪の世界に足を踏み入れる。

じつはこの『タルサ・キング』、海外ドラマファンの間では2022年秋の米国リリース時から大きな注目を浴びていたシリーズだ。Paramount Globalのストリーミングサービス「パラマウントプラス(Paramount+)」の日本上陸を受けて、12月1日(金)からWOWOWオンデマンドにて待望の配信開始となる。

パラマウントプラスは、2021年にアメリカでサービスを開始し、現在世界45か国で展開されているストリーミングサービス。加入者数は6100万人を超え、世界的に急成長を遂げている。日本でのサービス開始は、韓国に続いてアジアで2番目となる。

NetflixやAmazon Prime Video、Apple TV+など、すでに日本でサービスを開始しているストリーミングサービスと異なるのは、パラマウントプラスが大手ブランドであるWOWOW、J:COMの2社と提携したことだ。充実のラインナップは「WOWOWオンデマンド」と「J:COM STREAM」でのみ配信され、特にWOWOWオンデマンドでは、12月1日(金)から追加料金なしでParamount+の作品群を楽しむことができる。

サービス情報
WOWOWオンデマンド
WOWOWオンデマンドならParamount+も追加料金なしで見放題!!

ハリウッド5大スタジオのひとつ「パラマウント・ピクチャーズ」とは

Paramount Globalの主要部門であるパラマウント・ピクチャーズは、『ミッション:インポッシブル』や『トップガン』『トランスフォーマー』シリーズなど、数々の人気作・話題作で知られる大手映画スタジオ。

大きな特徴は、通称「ビッグ5」と呼ばれるハリウッド5大スタジオのひとつであること。ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ、ワーナー・ブラザース、ユニバーサル・ピクチャーズ、ソニー・ピクチャーズの4社と並んで映画界を牽引し、「ビッグ5」としては唯一、現在もハリウッドにスタジオを構えている。

1912年の設立以来、パラマウント・ピクチャーズはアメリカの映画スタジオとして史上2番目の歴史を誇る。ハリウッド黄金期には『サンセット大通り』(1950)や『ローマの休日』(1953)、『十戒』(1956)など映画史に残る名作を発表。1970年代には『ゴッドファーザー』『スター・トレック』、1980年代には『インディ・ジョーンズ』『ビバリーヒルズ・コップ』、1990年代には『アダムス・ファミリー』『ミッション:インポッシブル』、2000年代には『アイアンマン』『パラノーマル・アクティビティ』と、誰もが知る人気・長寿シリーズを世に送り出している。

時代を象徴する名作もコンスタントに手がけてきた。たとえば、『48時間』(1982)や『フラッシュダンス』(1983)、『アンタッチャブル』(1987)、『フォレスト・ガンプ 一期一会』(1993)、『プライベート・ライアン』(1998)、『トゥルーマン・ショー』(1998)、『スクール・オブ・ロック』(03)、『ノーカントリー』(2007)、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(2013)、『メッセージ』(2016)のほか、アニメーションでは『シュレック』『カンフー・パンダ』『ヒックとドラゴン』シリーズもパラマウント作品だ。

むろん、ここに挙げたのは膨大なライブラリーのごく一部にすぎない。家族みんなで楽しめるファミリー映画から、映画賞に輝く重厚なドラマ作品やコメディ、マニアの心をつかむSF / ファンタジーなど、幅広い映画製作に長年取り組んできたのがパラマウント・ピクチャーズなのだ。

Paramount+では、そのライブラリーから数々の名作映画が順次配信される。おなじみのシリーズや人気作品をはじめ、『ゴースト/ニューヨークの幻』(1990)や『少林サッカー』(2001)、『ユージュアル・サスペクツ』(1995)、『マイノリティ・リポート』(2002)などが登場。ドラマは『NCIS: ネイビー犯罪捜査班』『CSI: ニューヨーク』『デクスター』『ツイン・ピークス』、アニメは『スポンジ・ボブ』『パウ・パトロール』などのキッズ作品から、あの『サウスパーク』まで登場予定だ。さらにリアリティ・ショーやドキュメンタリーまで、「必ず見たい作品がある」とはまさにこのことである。

Paramount+で日本初公開となる『タルサ・キング』

そんななか、オリジナルのドラマシリーズ『タルサ・キング』はParamount+でも随一の「大人向け作品」と言える。

脚本・製作総指揮のテイラー・シェリダンは、映画『ボーダーライン』シリーズや『ウインド・リバー』(2017)で評価されたスリラー / 犯罪ドラマの俊英。『ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア』(1999~2007)を手がけたテレンス・ウィンターとの共同執筆・共同製作で、シルヴェスター・スタローン主演による「誰も見たことのないギャング劇」を濃密に描き出した。

物語はギャングの重鎮、ドワイト・マンフレディ(スタローン)の出所から始まる。組織のボスとその息子であるチッキーたちを守るため、25年の刑期で一度も口を割らなかったドワイトだったが、彼を待っていたのは残酷な現実だった。妻と離婚し、娘のティナとは疎遠になり、いまや孤独になったドワイトに、組織は「オクラホマ州のタルサに行け」と言い渡したのだ。「競合相手のギャングがいない、稼ぎやすい土地だ。そこで好きに仕事をしていい」と。それは、組織が体よくドワイトをニューヨークから追放する口実だった。

タルサを訪れたドワイトは、空港で拾ったタクシー運転手・タイソンをドライバーとして雇う。大麻を合法的に扱う薬局に行くや、オーナーのボーディを脅し、「店を守る」という名目で売上の20%を納めるよう要求した。2人を仲間に引き入れたドワイトは、自分がリーダーとなる組織を少しずつ構築し、タルサで「ビジネス」を始める。

しかしFBIは、出所したドワイトの動きを警戒していた。政府機関・ATFのエージェントであるステイシーは、偶然出会ったドワイトの人柄に惹かれ、彼を守ろうと立ち回る。一方、病気の父に代わって組織を任されていたチッキーは、ドワイトに手を焼くばかりで、自分の力を示せないことに苛立っていた。さらにタルサでも、地元のバイカー・ギャング「ブラック・マカダム」がドワイトたちの仕事に目をつける。そんななか、ドワイトは、関係を断たれた娘・ティナとの和解を願い……。

本作『タルサ・キング』は全9話構成で、各話40分前後。ドワイトと彼を疎ましく思う組織、ビジネスで衝突するバイカー・ギャングのほか、新たに仲間になる男たちやドワイトの家族など、人々の思惑と陰謀、愛情や友情などがどんどん絡み合ってゆく。

ドラマシリーズだからこそのポイントは、それらをスピーディで緊迫したサスペンスではなく、むしろ人物描写を丁寧に掘り下げ、人間関係をじわじわと煮詰めながら描くところ。シリーズの前半に激しいアクションはほとんどなく、物語はほとんど人物同士の会話だけで進む。蓄積の末に訪れる衝突は、それまでの「溜め」があるだけにより強烈だ。

そんななかで目を引くのは、スタローン演じるドワイトの「時代遅れ」な人物像である。25年ぶりに刑務所を出てきたドワイトは、とても現代にふさわしい価値観を持ち合わせているとは言いがたい。性格は優しいところもあるがワイルドで横暴。交渉は脅迫的で、気に入らないことがあるとすぐに手が出る(そして強い)。

「俺は時代に取り残されて混乱しているんだ」とも口にするが、実際に混乱しているのはむしろ周りにいる比較的若い男たちのほうだ。タイソン役のジェイ・ウィル、ボーディ役のマーティン・スターによるコミカルな演技が、堂々たる存在感を見せつけるスタローンとの化学反応で独特のユーモアをもたらす。

もっとも、ドワイトには歳を重ねたがゆえの悲哀も見て取れる。たとえば、バーで出会った女性といい感じになるものの、自分の年齢を明かすやあっさりと帰られてしまう。疎遠になった娘はコミュニケーションを取りたがらず、ドワイトも自分の思いを率直に語れない。それどころか、良かれと思っての行動が事態の悪化を招くことさえある。その物悲しさと情けなさは、横暴な一面に呆れる視聴者からも同情を誘うことになるだろう。

脚本・製作総指揮のテイラー・シェリダンは、映画『最後の追跡』(2016)やドラマ『イエローストーン』(2018~)、『1883』(2021~22)、『1923』(2022~)などで、いまはほとんどつくられていない西部劇を現代に甦らせ、スリラー映画などにもその精神性を込めてきたつくり手だ。本作も「時代遅れのギャングが町に現れ、大きな騒動を巻き起こす」という物語で、その一面は健在。町はずれの牧場から脱走してきた年老いた白馬に、ドワイトが愛着を感じるエピソードは、まさに彼自身が「老いぼれのカウボーイ」であることを示している。

スタローン演じるドワイトの乱暴さと切なさ、テンポやスペクタクルではなく丁寧な人物描写に重きを置いた作劇と演出、ギャング映画と西部劇を融合させたストーリーテリング。さらには「この国は、いまの世代はどうなっちまったんだ?」という、現在の価値観への痛烈な批判。本作には、ハリウッド映画のメインストリームから失われてしまった――しかし過去には確かに存在した――ものがたっぷりと詰まっている。そしてそれこそが、スタローンにかぎらず、数々の映画スターをテレビシリーズに挑戦させてきたシェリダン作品の魅力であろう。

どこか懐かしく、しっかりと硬派で、噛めば噛むほど味わいが出る。そんな『タルサ・キング』の世界を、心ゆくまで堪能してほしい。

作品情報
『タルサ・キング』
WOWOWオンデマンドにて12月1日(金)より配信開始
サービス情報
WOWOWオンデマンド
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サービス情報
Paramount+ on WOWOWオンデマンド
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