1970年代末の東京で生まれたパンクシーン。その熱狂を、脚本・宮藤官九郎×監督・田口トモロヲのタッグで蘇らせた映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』が3月27日に公開となる。
写真家・地引雄一の自伝的エッセイを基にした本作では、セックス・ピストルズに突き動かされたカメラマンの青年ユーイチがパンクバンド・TOKAGEを率いるモモと出会い、「東京ロッカーズ」と呼ばれるムーブメントを巻き起こすさまが描かれる。
ダブル主演を務めるのは、銀杏BOYZの峯田和伸と俳優の若葉竜也だ。
LIZARDやFRICTIONなどモデルとなったミュージシャンの音楽や、既存の価値観に迎合せず、自分たちの表現を模索した彼らの姿勢から何を受け取り、どう作品に昇華したのだろうか。
役や芝居を凌駕したいという気持ちになった台本だった
峯田和伸、若葉竜也
―峯田さんは普段はバンドのフロントマンとして活動していますが、今回はミュージシャンをサポートする側の役柄ですね。
峯田和伸(以下、峯田):最初に監督からお話をもらったとき、「歌えませんよ」って言われて(笑)。
音楽を本業としていない役者の人が歌うのに、僕は歌わないというのは意外でもありましたけど、すごく面白いなとも思いました。
―劇中に少し歌うシーンもありましたね。すごくグッときたシーンでした。
峯田:ライブではなくて、ちょっとだけ、って感じでしたね。
―若葉さんはバンドをやられていた経験があるとのことですが、今回モデルになったLIZARD(リザード)のモモヨさんにどんな印象を持ちましたか?
若葉竜也(以下、若葉):もちろんモモヨさんが役のモチーフにはなっているんですが、「あくまで『ストリート・キングダム』のモモという人物でやってほしい」とは最初に言われていました。ただ、台本を読むと、僕自身が普段から抱えていることだったり、フラストレーションだったり、そういうものが全部整理されて書かれていて。
だから、役やお芝居というところを凌駕したいなという思いはありました。わりと自分の気持ちで喋っている感覚のほうが近いかもしれません。
若葉竜也
パンクが生まれた瞬間を作品にする。音楽をやっている身からすると最高
―東京ロッカーズと呼ばれた当時のバンドと、ご自身はどのような関わりがありましたか? 音楽を聴いて感じたこともお聞きしたいです。
若葉:僕はその年代ではないですが、彼らの存在は知っていて、あらためて聴いてみると全然古いと思わなかったですし、この映画で初めて知る人たちにとってもすごく新鮮に映ると思います。1970年代当時のミュージシャンが作ったものを、いまの世代の人たちがどう受け取って、どんな反応が返ってくるのか楽しみですね。
峯田:彼らの音楽を聴いていたし、レコードも買っていました。地引雄一さんの自伝ももともと好きで読んでいましたし、写真集も持っています。
―そうだったんですね。
峯田:自分もバンドをやっているので、どうしても避けて通れないシーンというか。だから、日本で最初にパンクが鳴った瞬間みたいなものをちゃんと映像にして、作品として残すということは、自分が出る出ないに関わらず、すごいことだと思います。
序盤に、昔の渋谷屋根裏のライブシーンがあります。オールスタンディングじゃなくて椅子があって、お客さんはみんな座って、斜に構えて見ているような感じで。タバコ吸いながら、本を読みながら見ている人もいるなかで、TOKAGEのライブが始まって、ひとりの女性がふらっと立ち上がって変な踊り方をするんです。それをカメラマンのユーイチが目撃する。
パンクが生まれた、最初の1ページみたいな瞬間。それをちゃんと描いてくれる作品なんて、音楽をやっている身からすると最高じゃないかと思います。
峯田和伸
―ライブシーンはとにかく見どころがありましたが、通しで、本当のライブのような感じで撮影されたんですか?
若葉:通しでやっていましたね。もちろん何回か撮影はしたんですけど、頭から最後まで、基本的にはずっと通しでした。
峯田:お客さん役もそうだし、まわりを囲んでいるスタッフやカメラマンとか、僕らも含めて。仕事というより、本当にステージ上のバンドのライブを見ている感じでしたね。
―ライブシーンの音楽は吹き替えではなく、ボーカルの声も含めて、モデルとなった実際のバンドのオリジナル音源を使っています。音楽映画ではめずらしいと思いますが、どう感じましたか。
若葉:もちろんプレッシャーもありましたけど、とにかく聴き込むしかないというか。途中から、自分の耳に入ってきているのが自分の声なのか、モモヨさんの声なのかわからなくなる瞬間があって。不思議な体験でした。
大人に迎合せず自分を貫くということ
―この作品では、自分のスタイルや信念を持つ若手のミュージシャンが、大人に迎合せず、自分たちがやりたいことをやりぬく姿が描かれています。ミュージシャンたちも一枚岩ではなく、それぞれに信念を持っていて。劇中、モモの「売れるために迎合したくない」というセリフもありますが、ミュージシャンたちの姿勢に感じたこともぜひ聞かせてください。
峯田:既存の音楽業界やスタイルに対して、「違うことや新しいことをやるんだ」という気概ですよね。それで売れるか売れないかは関係ないし、将来これで食っていくとかそういうことでもない。とりあえず「あいつらとは違うことをやるんだ」「俺らにしかできないことをやるんだ」という。
実際にやることは大変だったと思うけど、かれらがやったことは40年経ったいまにも受け継がれている気がするんですよね。バンドをやろうと思った自分も、そのスピリットを間接的に受け取っていると思います。
さらにこうやって俳優さんが出て映画化されると広がり方も違う。報われるなという気もします。40年以上経ってから自分たちのやったことが映像化されるなんて、当時の彼らは思っていなかったと思いますし、成功したかどうかは置いておいて、彼らが残したものは受け継がれていると思います。
―そのスピリットを受け継いだ峯田さん自身が、これから音楽をやりたいと思う次世代につないでいきたいものはありますか?
峯田:僕はもう、勝手にやってほしいですね。こういうことをやってほしいとか、何もないです。僕は僕で勝手にやる。それを見た人も、勝手にやってほしい。
―すごく素敵です。若葉さんはどうですか。
若葉:自分が抱えていたものが全部セリフに書いてある感覚だったので、覚えるのもすごく早かったですね。それだけ共鳴したし、当時の人たちもこういう思いを抱えてものを作っていたんだと思うと、心強かったです。
やっぱりこの業界は、まわりから少しはみ出しているような人が多いと思うんです。でも、それでいいし、そこで戦っていることに価値があると肯定してもらえたような気がしました。
受動的になっている時代に、彼らの生き方が響く理由
―いまの時代はSNSを通していろんな情報が入ってきて、みんな同じものを消費しているようなところがあると思います。時代は関係ないかもしれませんが……自分の信念やスタイルを貫いたり、まわりからはみ出したりしづらい社会の空気もあります。それでもはみ出していい、と思えるのはなぜでしょうか?
若葉:情報も、映画も音楽もそうですけれど、いまはあらゆるものがすごく受動的になっていて、勝手に流れてくるものを与えられた情報だけで処理していく、みたいな感じがあると思うんです。
1970年代当時の人たちはチラシを探しに行くとか、自分たちで情報を取りに行っていた。そこは大きく違う気がしていて。自分で情報を取りに行くことはいまもできるのに、いつの間にか受動的になってしまって、「こういうものが流行っている」とか、「こういうものがいいとされている」とか、空気を読むようになってしまっている。
でも、本当は能動的に取りに行ったほうがその過程も含めて体験になるわけだから、絶対にそっちのほうがいいと思うんです。本来あるべき姿というのは、もしかしたら1970年代や80年代にあったのかもしれないなとは思いますね。「はみ出すことが恐ろしい」と思ってしまうのは思い込みかもしれないと思わされたし、自由に生きたらいいのにと思います。いつまで続くかわからないですし。
―「いつまで続くか分からない」というのは、自分の人生が、ということですか。
若葉:それもだし、世界も、地球もそうだと思います。どうせいつまで続くかわからないよ、と思うときはあります。
不自由があるからこそ自由を感じられる
―峯田さんはこれからの人たちに「好きなことをやってほしい」とおっしゃっていましたが、何か伝えたいことなどはありますか。
峯田:やりたいことをやるのは簡単で、大変なのは「やらなくちゃいけないこと」をやることだと思うんです。でも自分は、100%やりたいことだけをやるんじゃなくて、やりたいことのなかに3割くらい「やらなくちゃいけないこと」を入れて、負荷をかけるのがいいと思っていて。その不自由があるからこそ、やりたいことをやる自由を感じられるんじゃないかな、と思うんです。
僕はパンクが好きなんですけど、パンクってどういうことかと自分なりに考えると、不自由な拘束なんですよ。ボンテージパンツもそうですけど、歩きにくいじゃないですか。もっと着やすい服を着ればいいのに、ライダースとか、わざわざガチガチの服を着て、手間をかけて髪型をセットする。パンクって暴力とか反政府とかいろんな側面があると思うんですけど、僕にとっては「不自由」なんです。
ただ、この緩みきっていて自由に泳げる世界のなかに負荷をかけることによって、自由を再認識できる効果があると思っていて。不自由を自分の生活や日常に少し入れることによって、「この世界って当たり前じゃないんだな」と思えるきっかけになるんじゃないかと思うんですよね。
若葉:たしかに、学校とかも校則があったほうが面白いですもんね。不自由だからこそ、外の世界を楽しめるところがある。
峯田:どんどん便利になって自由になっていくけど、そうすると、楽しいことさえも当たり前になっちゃう。だったら、「これはもうやらなくていいかな」とか、「ここはちょっとわざと違うほうに行ってみよう」とか、そういう工夫を自分ですることが、面白さにつながる気がします。
◾️Staff Credit
峯田和伸
ヘアメイク:杉本あゆみ
スタイリスト:入山浩章
若葉竜也
ヘアメイク:FUJIU JIMI
スタイリスト:タケダトシオ(MILD)
◾️撮影協力
新宿LOFT
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