アナログ盤から見る韓国音楽シーン。『ソウルレコードフェア』レポート

20,000人以上が来場する、韓国最大のアナログレコード関連イベント『ソウルレコードフェア』。9回目を迎えた2019年は11月9日、10日に開催され、国内外から80以上のレコードショップや関連業者、コレクターが出店しました。

会場限定盤や特別ライブ、サイン会などを目当てに、毎年多くの音楽ファンが足を運び盛り上がる同イベント。今年のレポートをお届けしつつ、コアなコレクターからライトな音楽好きまで、さまざまな人が楽しめるフェアの魅力を教えます!

※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。

『ソウルレコードフェア』ってどんなイベント?

2019年の『ソウルレコードフェア』は去年に続いて、旧ソウル駅(1925年竣工)をリノベーションした複合文化施設『文化駅ソウル284』で開催されました。新ソウル駅のすぐ隣とアクセスも良く、建物自体もレトロな外観・内装で人気の観光スポットです。

初回の2011年には2,000人ほどだった参加者は、2018年に20,000人を突破。2019年はまだ公式集計は出ていないものの、去年よりもさらに多くの人々が訪れたといわれています。

入場無料のため、マニアックなレコードコレクターでなくても気軽に訪れられるのも魅力のひとつ。近年は、世界的なアナログレコードブームや韓国内でのレトロブームの影響で、20〜30代の若いお客さんが増えているそうです。

当日は、1階と2階のメインホール、会議室、貴賓室などが、すべてブースで一杯に。韓国のポピュラー音楽から世界のクラシック、ジャズ、ロックまで、あらゆる時代の中古レコード、自主制作のインディーズレコードなど、レアなレコードが並びます。普段より低価格で販売する出店者も多いため、掘り出し物が見つかる可能性も大なのです。

見るだけでも楽しい、レコードやカセット、プレイヤーなどの数々

出店者のカラーもさまざま。韓国を代表するDJクルー・360 SoundsのDJ Someoneと Andowが営むレコードショップ『Welcome Records(ウェルカムレコーズ)』から、韓国伝統音楽を専門とするレコードレーベルAkdangEban(アクダンイバン)、個人で参加した音楽誌『Jazz People』の編集長キム・クァンヒョン、雑貨店『Cosmoswholesale(宇宙万物)』まで、個性豊かなブースが並びます。

不思議な形のレコードのほか、青、赤、半透明などカラフルで可愛いレコードも多く、見ているだけで楽しいです。

レコードのほか、プレーヤーやスピーカーなどの音響機器、またレコードを壁に飾るためのフレイム、関連書籍なども見つかります。

フェアでしか買えない「限定盤」にも注目。過去にはイ・ランやヒョゴなども

なかでもソウルの音楽好きのあいだで毎年話題になるのは、『ソウルレコードフェア』でしか買えない「限定盤レコード」。そして、フェアで初めて世間にお目見えする「初公開盤レコード」。多くの音楽ファンが集まるイベントのため、これに合わせてレコード作品を発売する会社も多いのです。

「限定盤」は、韓国ポピュラー音楽史に残る名作や話題の最新作のなかからセレクトされた数種類が、毎年リリースされます。

これまでも、1970年代の歴史的な女性ソウルファンクグループThe Happy Dollsの雄一のアルバム『Show Album No. 1』から、1990年代以降の韓国インディーズロックシーンに大きな影響を与えたバンド、オンニネ・イバルグァンのデビュー作『비둘기는 하늘의 쥐(ハトは空のネズミ)』まで、価値の高い作品をレコードで再発してきました。

こうした名作はもちろん、シンガーソングライター、イ・ランの『신의 놀이(神様ごっこ)』やインディーズ・バンドHYUKOH(ヒョゴ)の『Panda Bear』、K-POPグループWonder Girlsの『아름다운 그대에게(美しい君に)』、ヒップホップレーベルILLIONAIRE RECORDS(イリネア・レコーズ)の『11:11』など、幅広いアーティストの最新作も過去に限定盤レコードとして発売。毎年、限定盤を求める人々が開場前に詰めかけ長い行列をつくります。

2019年は、5種類の限定盤を販売。なかでも話題になったのは、韓国版シティーポップといわれる二人組バンド・ビックァソグムのアルバムボックスセット。カラフルなパッケージに生まれ変わった4枚のアルバムレコードが入っています。

またSE SO NEON(セソニョン)のメンバーとして知られるSo!YoON!(ファン・ソユン)のソロアルバム『So!YoON!』も注目。2017年にデビューしたSE SO NEONは、Yogee New Waves、CHAIとも共演したことのある、日本でも人気のインディーズバンドです。

一方、「初公開盤」も30以上の作品がリリース。

アジアビートシーンに興味のある方にはおすすめなのが、アジアで活動するビートメイカーたちが参加したコンピレーションアルバム『First class Tape』。日本のBugseed、Ill Sugiなどのほか、韓国や台湾からアーティストが参加しています。

他にも、韓国のグラミー賞といわれる「韓国大衆音楽賞」で2019年に最優秀アルバム賞を受賞したチャン・ピルスンの『soony eight: 소길花』や、韓国初の8角形レコードでリリースされた、ヒップホッププロデューサーNuol(ニュオル)の『Finder』。世界で活躍するクロスオーバーバンドBlack Stringが世界的なジャズレーベル「ACT」からリリースした『Karma』など、韓国ポピュラー音楽の名作ばかりが揃います。

知らなかったアーティストとライブで出会い、サインももらえる

『ソウルレコードフェア』には、買い物以外の楽しいコンテンツも。レコードをリリースしたアーティストの一部がレコ発ライブを行うほか、ライブ後はサイン会を開催する場合もあるんです。

知らなかったアーティストとライブで出会えることこそ、『ソウルレコードフェア』の醍醐味のひとつ。気に入ったらすぐにレコードを買って、サインまでもらえるかもしれません。

ハーモニカ奏者のチョン・ジェドクも、15年前のリリース当時に話題となったデビューアルバム『チョン・ジェドク』のレコード版を、今年のフェアで発売。特別ライブを行い、デビューアルバムの楽曲を久しぶりに披露しました。

また、独特なサイケデリックフォークで2019年の『韓国大衆音楽賞』新人賞を受賞したAIRY(エリ)も、アルバム『SEEDS』のレコード版を本フェアで発売しました。

永遠の思い出になる一枚に出会えるかも?

一日中ディギングしてもしきれないほどのレコードのなかから、レアな一枚を見つけるのはもちろん、楽しみ方はいろいろ。思い出の音楽に再会したり、ジャケットだけに魅かれてアルバムを買ってみたり、ライブで出会ったアーティストにサインをもらってみたり。もしかして、その一枚が永遠の思い出になるかもしれません。

年に一度の『ソウルレコードフェア』で、音楽と音楽好きに囲まれた一日を過ごしてみてはいかがでしょうか。



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