Mayaと菅野よう子が名曲“Blue”に込めた、夢と自由への思い。HondaのCMでコラボした2人にインタビュー

Hondaの新テレビCMに抜擢され、アニメ『カウボーイビバップ』の最終話ED曲“Blue”を伸びやかに歌い上げた新人アーティストのMaya。去年3月にTikTokに投稿した弾き語り動画が380万回再生超え(※2024年4月時点)を記録するなど世間の注目を集めているが、米国在住の高校生であるほかは、謎に包まれた存在だ。

23年ぶりに再定義された、Hondaのグローバルブランドスローガン「The Power of Dreams How we move you.」が目指すものを具体化したという今回のCM。“Blue”を作編曲した作曲家の菅野よう子が、25年ぶりに新バージョンをプロデュースしたことでも話題になった。

魂の自由を歌った“Blue”と菅野よう子、そしてこれから世界に翔び立とうとしているMaya。夢の力を掲げるHondaのCM上で実現したコラボレーションで、Mayaはどんな夢を抱いたのか? “Blue”にはどんな共感があったのか? 菅野はどんな思いで編曲にのぞみ、Mayaと向き合ったのか? メールインタビューを通して、2人に聞いた。

Mayaって何者? 米国での忙しい高校生活と、青天の霹靂だったCM抜擢

ー米国在住の理由は? いつからお住まいですか。どんな日常を過ごしていますか。

Maya:高校留学のためアメリカに住んでいます。毎日とても忙しいです。放課後は季節ごとに選択するスポーツ、ダンスや演劇などの部活やコミュニティサービス(※)に費やします。音楽はお昼休みや授業の合間、お休みの日に時間をつくり、取り組んでいます。

※ボランティア活動など、街や地域で何かを手伝うこと。

ーTikTokなどSNSに動画を上げ始めたのはなぜですか。

Maya:ほんの少しの衝動であげたものが最初でした。心のどこかで、多くの人に私の音楽を聞いてもらいたかったのだと思います。SNSで発信していくなかで、直接ではないけれど世界中の方々に「心動かされた」などの声をいただけることがとても嬉しいです。

ーCM発表のときにコメントで「新しい挑戦と変化の2023年」と寄せられていました。具体的にどういうことでしょうか?

Maya:2023年3月にあげた ”Just The Two of Us”(※)をはじめとした動画をみなさんに気に入っていただけたことにより、今回のCMのお話も含め、たくさんのお声がけをいただきました。

路上ライブやライブハウス、スタジオで歌わせていただいたこの1年を振り返ってみると、初めての経験ばかりで、本当に楽しく音楽の幅を広げることができました。

※グローヴァー・ワシントン・ジュニアの楽曲 ”Just The Two of Us”を弾き語りで歌う動画をTikTokに投稿。2024年3月末時点で380万回以上再生されている。

ー今回CMに抜擢され、生活や気持ちに変化はありましたか?

Maya:家族といつものように年末を過ごしていたところ、突然メールで今回のプロジェクトのお話をいただきまして、それはもうびっくりしました! 特に、そのとき一緒にいた祖父母は1976年の初代アコード(※1)から始まり黄色いビート(※2)など、今に至るまでずっとHonda車を愛用しているんです! 今回のお話に大喜びしていました。

CMが配信された初期の頃は、そのことを知っている学校のお友達がすれ違うたびに「Free〜」と歌ってくる時期がありました(笑)学校の友達や、日本の友達にたくさん祝福していただいて、すごく嬉しかったです。アメリカに住んでいるので、そこまで日常の変化を感じることはありませんが、今までよりもさらに多くの方に歌を聞いてもらえている実感はあります!

※1 1976年に発売された、Hondaを代表する車種。
※2 1991年〜1996年に販売されていたHondaのスポーツカー。

“Blue”は「とても大事な楽曲」。菅野よう子が編曲に込めた思いと、Mayaとの偶然の出会い

ー今回のCMでは、再定義されたHondaのグローバルブランドスローガン「The Power of Dreams How we move you.」を表現されているということですが、セルフカバーのアレンジにはどう反映されたのでしょうか?

菅野よう子(以下、菅野):Hondaは車や乗り物をつくっているのではなく「さまざまな制約から人を解放する、人の能力と可能性を拡張する」と聞いて、目の前に広がりを感じました。25年前、『カウボーイビバップ』では、油やサビの匂いがする機械で宇宙を飛びまわる設定だったので、軋みや少々の暴力性を加えたアレンジをしていましたが、今回のアレンジからはそれらを抜いて、代わりに知性のようなものを加えました。さらに、「How we move you.」というメッセージに込められた能動性、前向きさ、未来に向かう気持ちを、ひとつずつの音に編んでいきました。

菅野:制作にあたってはさまざまな考え方を検討しました。山根麻以さん(※)のすばらしい歌唱そのままの音源を使う、ミックスをやり直す、バックトラックを入れ替える、など。Hondaとして新しいメッセージであること、力強く未来に向かうものであること、創造性と想像力がテーマであることから、新しいアレンジおよび新しい歌い手にする方針を立てました。

TVCMをつくってくださった柳沢監督の映像表現には以前から注目していました。新しい表現をゼロからつくろうとする人であり、そのための手間を惜しまない人だと感じています。音楽が大好きな監督なので、CM企画を初めて聞いたとき、企画内容そのものもですが、企画書には書かれていない繊細な情緒をどんなふうに表現してくれるか、仕上がりがとても楽しみでした。

私にとって“Blue”はとても大事にしている楽曲なので、才能のある方だというだけでは曲を預けることは難しいのですが、柳沢監督が手がけると聞いて、ただただ嬉しかったです。

監督と音楽プロデューサーの冨永さん、Hondaの方たち、広告スタッフの皆さんが今回のCM企画に“Blue”が相応しいと言ってくださったことに、私としてはまったく異論はありませんでした。25年の時間が経って、楽曲に込められたメッセージが新しい解釈を得て現代によみがえることを、とても光栄に思いました。

※『カウボーイビバップ』最終話EDで“Blue”を歌っている。

ーコメントにて“Blue”は魂の自由を歌った曲であると語られていました。あらためて“Blue”に込めた思いを教えてください。また、長い年月を経て“Blue”に向かわれて、どんなことを感じましたか?

菅野:25年も経ったことが信じられないほど、この曲ができたときのことは鮮明に覚えています。自由になりたい。しかし、実際はそうではない。自由になりたい気持ちと、重力に縛られたような気持ちのそのバランスが、当時と今では変わったように感じています。

かつての自分は、一人で頑張って飛ぼうともがいていたと思います。今のほうが、誰かとともに、あるいは誰かの力を借りて飛ぼうというメッセージが、素直に受け取れる感じがしています。

ーMayaさんとの出会いのきっかけは? CM発表時、Mayaさんについて「可能性の塊」とコメントされていましたが、どのような点に可能性を感じましたか?

菅野:Mayaさんを見つけたのは偶然です。音楽制作会社のアシスタントさんが、Mayaさんの存在を教えてくれました。声を聞いた瞬間、この人だと思いました。

どんな人なのか、いくつなのか、どう歌ってくれるのかなどなにも根拠はありませんでしたが、この声で歌ってもらいたいと思いました。この人となら新しい“Blue”を創れる、と思いました。

実際にお会いして感じたのは、すでに偉大な音楽家、表現者であるということです。歌がうまいとか声が良いというのはもちろんですが、そういったことを超えて、存在すべてが音楽でした。

ー録音などでMayaさんの歌声に触れられたと思いますが、印象に残っているエピソードはありますか?

菅野:歌声に「触れる」という書き方はまったくその通りで、Mayaさんの歌は、「触れる」というのが実際に一番近いです。文字通り自由に歌ってもらった“Blue”の録音のあと、勢いあまって、彼女のつくりかけのオリジナル曲で一緒にセッションしたのが楽しかったです。

Mayaと音楽、そして夢。苦しい時に背中を押せるアーティストになりたい

ー菅野よう子さんとはお話しされて、何を感じましたか。

Maya:最初にお会いした時からものすごく気さくに話しかけてくださいました。“Blue”の制作のときは、敏腕プロデューサーのお顔をされていましたが、レコーディングが終わった後に少しセッションをさせていただいた際には、一気にミュージシャンのお顔に変わりました。どんなときもパワフルに、100%で音楽に取り組んでいる菅野さんはとてもかっこいいです。すごく尊敬している方です。

ー「Blue」という楽曲はご存知でしたか。

Maya:もともとは存じ上げていなかったのですが、今回のお話をいただいた後に『カウボーイビバップ』の“Tank!”が採用されているオープニングと“Blue”が流れるエンディングのシーンを拝見しました。“Tank!”が使用されているオープニングはとてもオシャレで、最後の映像で“Blue”が流れてくるシーンは思わず涙が出てきました。

ー自由や夢を歌った楽曲を、Mayaさんの伸びやかな声で歌われているのが印象的です。“Blue”に共感や思い入れなどはありますか?

Maya:自由でいることが難しいこの世の中で、少しでも多くの人々が自由になれますようにと願い、歌いました。山根さんの力強い声がルーツにありながら、たくさんの人の思いが詰まったこの曲を私の声で歌えるのかと不安になった時も実はありました。

ですが、菅野さんがレコーディング中に「自由に歌って」と笑顔で言ってくださり、肩の力を抜いて、誰もいない響くホールにいると想像して、できるだけ遠くに届くように歌いました。

ーMayaさんが実現したい夢はなんでしょうか?

Maya:私の夢は自分の人生が終わってしまう日まで思う存分歌って音楽を愛することです。

音楽には人々を前に進ませてくれる力があると信じています。ジョン・レノンさんとオノ・ヨーコさんが共に制作した“ハッピークリスマス(戦争は終わった)”は私の数多くのインスピレーションの一つとなる作品です。この作品は、音楽の力と音楽がこの世界にもたらした数え切れないほどの幸せの証明だと思っています。20世紀、たくさんの戦争と苦痛を経験した人々にこの曲は「争いをやめてクリスマスやお正月を楽しもうよ」と語りかけています。

私はまだ16年しか生きていませんが、クリスマスが近づくと、毎年この曲を聞いて、読んで、歌って、あらためて影響力のある歌だと思います。このような、人々が苦しい時に背中を押せるような、少し勇気が出るような曲を発信していけるようなアーティストになりたいです。

ーMayaさんにとって音楽はどういう存在ですか。

Maya:大袈裟かもしれませんが、Mayaから音楽をとると何も残らないほどに大切な存在です。音楽をすることに生きがいを感じていますし、本当に音楽がある毎日が幸せで楽しくてしょうがないです。

最近の出来事ですが、心が弱っているときに、人前で思いっきり歌って初めて自分の感情を表に出すことができたんです。あまり人前で泣いたり、感情を表したりするのが得意ではありませんが、歌は私の表現の仕方であって、自分ですら気づかない奥に秘めている感情を今までも出していたんだと思います。ですから、音楽は私にとってかけがえのない存在であって、きっとなければつらいときも乗り越えられなかったと思います。

サイト情報
2001年から、グローバルブランドスローガンとして「The Power of Dreams」というメッセージを広く国内外に向けて発信してきたHonda。2023年4月、23年ぶりに再定義し、「How we move you.」を副文に加えた。日本語訳は「夢の力で、あなたを動かす」。Hondaの原動力であるひとりひとりの夢を実現する力が、人と、人の心を動かすことを示している。1月29日から放映されている新グローバル企業CM「MOVE篇」は、このスローガンが目指すものを具現化し、広く国内外に発信する目的で制作されたものだ。

「もっと遠くへ行きたい、もっと速く移動したい、空を飛びたい…」という人の“Move”に対する根源的な欲求とそれを動かす力を表現するために、エンドカット以外のCM本編映像の中には敢えてモビリティそのものを登場させず、走ったり跳んだりする人の姿や、表情・感情が中心に描かれている。さまざまな制約から解き放たれた人の身体や心が解放される様を描いた本CMは、放映開始以降楽曲の「Blue」とともに大きな話題を呼んだ。
リリース情報
菅野よう子
『Blue feat. Maya』


2024年3月28日(木)配信リリース
Composed and Arranged by : 菅野よう子
Lyrics : Tim Jensen
©Bandai Namco Music Live Inc.
プロフィール
Maya (まや)

現在、米国在住の高校生。アコギ弾き語りによるカヴァー動画をTikTokに投稿しながら活動中。2023年3月TikTok(@little_red1211)に投稿したグローヴァー・ワシントン・ジュニアの“Just the Two of Us”弾き語り動画をきっかけに世界中から注目を集める。これまでに380万回再生を記録。12.5万人以上のフォロワーを有する。力強く、伸びやかな歌声が音楽プロデューサー・菅野よう子の目に留まり、HondaのグローバルCMへの起用が決まる。

菅野よう子 (かんの・ようこ)

作編曲家、音楽プロデューサー。SMAP、今井美樹、小泉今日子、Crystal Kay、坂本真綾といったアーティスト達への楽曲提供/プロデュースワークをも手がけ、CM音楽の分野では98年「ビタミンウォーター」で三木鶏郎広告音楽賞を受賞。第13回日本ゴールドディスク大賞を受賞した『カウボーイビバップ』をはじめ、『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』『創聖のアクエリオン』『マクロスF』などのアニメーションから、東日本大震災復興支援ソング「花は咲く」、NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」の音楽担当、「天皇陛下御即位をお祝いする国民祭典」の祝賀式典にて奉祝曲『Ray of Water』の作編曲・指揮、直近作は、Netfixシリーズ「舞妓さんちのまかないさん」、同「COWBOY BEBOP」など活動の場は多岐にわたる。



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