フェルメール入門書『なるほどフェルメール』が河出文庫から刊行。現存する全35作品をフルカラー収載

書籍『なるほどフェルメール』が河出文庫から6月8日に刊行された。

8月21日~9月27日に大阪中之島美術館で開催される『フェルメール《真珠の耳飾りの少女》展』。17世紀のオランダが生んだ巨匠フェルメールの代表作のひとつである『真珠の耳飾りの少女』が14年ぶりに来日する。

同書には、現存するフェルメールの作品35点をカラーで収載。『牛乳を注ぐ女』『ワイングラス』『恋文』など名画の秘密を解説する。なぜ私たちはこの画家に惹かれるのか、作品の凄みや画面に隠されたトリック、数々の盗難や修復に翻弄された受難の歴史が明かされる。

監修は成城大学名誉教授、広島県立美術館長の千足伸行。装丁はこやまたかこ。

【「はじめに」より】
オランダと聞いて思い浮かぶのは風車、チューリップ、土産物として人気の高いデルフト焼、それに歴史的な関わりでいえば長崎の出島、つまり、鎖国時代に唯一出入りを許された国としてのオランダあたりであろうか。
それまではスペイン(ハプスブルク家)の支配下にあったオランダが、長く苦しい闘いを経て国際的に正式に独立を勝ち得たのが1648年、三代将軍・徳川家光の時代である。
世界初の株式会社といわれる東インド会社を設立して世界に雄飛し、今日でいうGDP(国内総生産)でも、おそらくヨーロッパでナンバーワンの地位を築いたオランダの栄光を今に伝えるのが17世紀のオランダ絵画であり、この黄金時代の頂点に君臨していたのがレンブラントである。
一にレンブラント、二にレンブラント、三、四がなくて五にレンブラントという時代が長く続いたが、風向きが変わったのが19世紀の半ばである。地元のオランダではなく、フランスのある有能な美術批評家、目利きがフェルメールの生涯と作品を丹念に跡づけて、彼の本来の姿を明らかにしたのである。以来、レンブラント独走の時代は終わり、フェルメールは今やレンブラントと双璧をなす画家として世界中の注目を集めている。
フェルメールが43年の生涯に残した作品はわずか35点前後、失われた作品を考慮しても50点を超えるかどうか、といったところである。彼が青と黄色を愛した画家であることは(まだ彼が今のように注目されていなかった時代に)ゴッホがすでに気づいていたが、ひと口に青といっても、《牛乳を注ぐ女》における青と、《真珠の耳飾りの少女》のターバンの青との微妙な違いは、フェルメールならではである。
フェルメールはまた「光の画家」ともいわれるが、彼が描いたのは、しばしばいわれるような、フランス印象派のまばゆい戸外の光ではなく、といって、バロック好みの明暗の強烈なコントラストの利いた光でもなく、曇りガラスで濾過されたような穏やかな、ほとんど熱を感じさせない光である。フェルメールのどの作品についても感じられる静謐な心和む世界は、こうしたオランダ特有の「北の光」に負う部分も少なくないのである。

なるほどフェルメール :千足 伸行|河出書房新社


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