台湾最南端・恒春(こうしゅん)半島で、今も台湾の日常に息づく民謡文化を体験できるイベント『Hengchun Peninsula Folk Month』が10月から、約1か月間にわたって初開催される。
屏東県政府が主催し、台湾の独立系音楽レーベル・Wind Musicが制作する同イベントには、10か国16組のアーティストが集結。日本からは民謡クルセイダーズも出演する。オープニングコンサートをはじめ、民謡コンテストやカンファレンスなど多彩なプログラムを通じて恒春の生きた音楽文化を発信するという。
イベントは10月3日、モンゴルのAltan Uragと、コートジボワール出身の『グラミー賞』受賞歌手Dobet Gnahoréの公演で開幕する。以降、民謡クルセイダーズも出演する音楽フェス『HEAR HERE World Music Festival』、世代を超えたアーティストが集う伝統民謡コンテスト、アーティストや研究者が民謡文化の未来を語り合うカンファレンスなど多彩なプログラムが展開される。
会場となる「恒春文化中心」は、日本の建築家・團紀彦と台湾の建築家・王銘顯が共同設計したランドマーク。湾に停泊する船を思わせる形状に、地域の海洋文化と歴史的遺産へのインスピレーションが込められているという。
恒春文化中心/写真提供:屏東県政府
恒春半島はどんなまちなのか? 即興で紡がれる民謡の魅力
海岸線と自然に囲まれた恒春(こうしゅん)半島は、台湾で大ヒットとした映画『海角七号 君想う、国境の南』(2008年)の舞台としても知られる人気の観光地だ。
長きにわたり多様な文化が交わる場所でもあり、漢民族、客家、パイワン族やアミ族をはじめとする先住民族が世代を超えてともに暮らし、陸と海が織り成す文化的景観を築いてきた。
台湾南部八景の一つとして名高い、関山の夕景。/写真提供:屏東旅遊網
そして、日本に沖縄民謡や津軽民謡といった地域独自の民謡文化があるように、台湾南部にもその土地に根ざした「恒春半島民謡」がある。
月琴(ユエチン)という楽器の伴奏で歌われるこの民謡の大きな特徴は、歌詞が即興で紡がれていくことだ。
世代を超えて受け継がれてきたメロディーにのせて、歌い手はその場にいる人々や風景、自らの感情などから着想を得て、その都度新たな歌詞を即興で紡いでいく。そのため、同じ曲調であっても、歌われるたびに異なる歌が生まれる。
伝説的な民謡歌手、陳達による「思想起」の演奏。
民謡クルセイダーズが出演、『HEAR HERE World Music Festival』から世界に届ける恒春の音
この誇るべき伝統をより多くの人に届けようと、屏東(へいとう)県政府が2018年に立ち上げたのが『HEAR HERE World Music Festival』だ。恒春の歴史ある旧市街を舞台にした音楽フェスティバルで、日本のグッドデザイン賞をはじめ、台湾内外で数々の賞に輝いてきた。2022年には夏川りみが出演し、恒春の音と日本の音が舞台の上でひとつに溶け合う瞬間も生まれている。
屏東県政府は、地元の民謡歌手たちをシカゴ、ニューヨーク、エディンバラ、そして日本各地へと送り出し、恒春半島民謡を世界の舞台へと押し出してきた。
そして今回国際ゲストとして同フェスティバルに招かれるのが、日本各地の民謡を独自のグルーヴで鳴らし続けてきた民謡クルセイダーズだ。
恒春半島民謡と日本の民謡、二つの「生きた民謡」が同じステージに立つ——このイベントでしか見られない邂逅が、10月9日・10日の『HEAR HERE World Music Festival』で実現する。
HEAR HERE World Music Festival 2025の様子/写真提供:屏東県政府
同フェスティバルのキュレーター、于蘇英(ユー・スーイン)は日本のオーディエンスに向けて、下記のようにコメントしている。
「恒春半島の民謡は、台湾において実に唯一無二の、そして重要な位置を占めています。年配の方から子どもたちまで、先生から家庭を守る人たちまで、ここに暮らす人々は皆、この歌を地域の大切な文化の一部として大事にしています。この音楽の町をぜひ訪れ、一生忘れられない音楽の風景と出会ってください」
台湾と日本は、災害支援をはじめとした草の根の交流や、観光・文化を通じた行き来を長年積み重ね、アジアの中でも際立って良好な関係を築いてきた間柄だ。
国の垣根を越えて多彩なアーティストが集う『Hengchun Peninsula Folk Month』は、そうした土台の上に立つプロジェクトとして見ると、より一層味わい深いものに映る。音楽ファンにとっても、日台交流の歴史を知る者にとっても、様々な文化が自然と融合するイベントに参加することは、またとない機会になるはずだ。
2026年の出演アーティストたちの楽曲をまとめたオフィシャルプレイリストも公開中
『Hengchun Peninsula Folk Month』イベント詳細
オープニングコンサート『Folk Fever: West African Rhythm Queen × Mongolian Rock Pioneers』
日程:10月3日(土)
出演時間:14:30〜15:30 Altan Urag(モンゴル)、19:00〜20:00 Dobet Gnahoré(コートジボワール)
会場:恒春文化中心劇場(Hengchun Cultural Center Theater)
料金:前方3列500TWD それ以降の座席300TWD
チケット情報
『HEAR HERE World Music Festival』
日程:10月9日(金)、10日(土)
時間:15:00〜21:40
会場:恒春西門広場
出演:民謡クルセイダーズ(日本)、AfrotroniX(チャド/カナダ)、Guhit Band(フィリピン)、Suming(台湾)、Sauljaljui(台湾)ほか
料金:無料
ワークショップ(無料)
1. 民謡クルセイダーズ(日本):10月9日(金)16:00〜17:00 Unababy Hotel
2. かごしま伝統楽器伝承会(日本):10月10日(土)11:00〜12:10 恒春文化中心(Hengchun Cultural Center - Theater Hall)
『Hengchun Peninsula National Folk Song Competition(伝統民謡コンテスト)』
日程:10月15日(木)〜17日(土)
時間:15:00〜21:00
会場:恒春文化中心(Hengchun Cultural Center)
出演:新進気鋭の若手アーティストから、熟練の名歌手まで、あらゆる世代の演奏者たち
料金:無料
『Folk Song Forum✦Master Dialogues × Local Practices(カンファレンス)』
日程:10月24日(土)、25日(日)
時間:10月24日13:30〜18:00、25日9:00〜15:00
会場:恒春文化中心劇場(Hengchun Cultural Center Theater)
登壇者:台湾伝統音楽の研究において豊富な経験を持つ学者・専門家、地域の民俗伝統の保存と継承に尽力してきた実践者たち
参加方法:要事前登録。詳細は屏南社区大学(Pingnan Community College)のFacebookを確認しよう。
アクセス
高雄国際空港(KHH)からMRTで左営駅へ移動し、9189番の墾丁エクスプレス(Kenting Express)に乗り換え、「恒春バスターミナル(恆春轉運站)」で下車。
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