降谷建志×クリエイティブレーベルnor 神秘的な演出ライブで魅了

緊張感と興奮に包まれた、降谷建志とクリエイター集団・norのコラボライブ

ミュージシャンとクリエイターのコラボレーションによるライブイベント『SOUND & VISION X』が本格始動。その第1弾となる、降谷建志とクリエイティブレーベル「nor」のコラボライブが、3月25日に開催された。

降谷建志バンド
降谷建志バンド

まず、この日の出演者を説明すると、降谷建志は、言わずと知れた日本を代表するミクスチャーロックバンド・Dragon Ashのフロントマン。そして、降谷とともに音と映像の異空間を作り上げるのは、建築家、エンジニア、デザイナーなど、様々なバックグラウンドを持つクリエイターたちによって2017年に創設されたnor。空間設計やインスタレーションなど、テクノロジーを駆使しながらアート領域を開拓する、気鋭のクリエイター集団だ。

左から:降谷建志、nor(福地諒、板垣和宏、松山周平、中根智史)
左から:降谷建志、nor(福地諒、板垣和宏、松山周平、中根智史)

事前に募集された500名のオーディエンスが集った会場。普段、降谷が立つステージと比べると格段に小さなキャパシティーで、新曲披露も事前アナウンスされていた貴重なソロセット。そして、フロア前方の天井から吊り下げられた大きな球体がただならぬ空気を放ち、「なにが起こるのかわからない」という緊張感と興奮が、開演前から会場を覆う。

 

球体を駆使した神秘的な映像演出で拡張される、降谷建志の音世界

開演時間の18時、司会者の挨拶が終わると、降谷と彼のバックを支えるバンドメンバーがステージに登場。メンバーは、ギターにPABLO(Pay money To my Pain、POLPO)、ベースに武史(山嵐、OZROSAURUS)、キーボードに渡辺シュンスケ(Schroeder-Headz)、そして、ドラムには桜井誠(Dragon Ash)。

会場が暗転すると、ステージの背後だけでなくフロアの側面まで覆う巨大なバックスクリーン、そして頭上の球体には、水彩の抽象画のような淡い色彩の揺れ動く映像が映し出され、そこには大きく「KENJI FURUYA」と「nor」の文字が。映像が映し出された瞬間、その繊細かつ神秘的な美しさに、会場からはどよめきが起こる。

降谷建志バンド

ライブが始まる。1曲目は“Colors”。この色彩に包まれた空間で、最初に打ち立てられるに相応しい1曲目だ。躍動感のあるトライバルビート、降谷のかき鳴らすアコギのダイレクトな温かみのある音……Dragon Ashとは一味違う、「強さ」を「穏やかさ」や「優しさ」で包みながら提示するような心地よい音像が会場を満たす。2曲目“Good Shepherd”では、ワルツのリズムと雄大なメロディーが絡み合う、その優雅な響きに合わせて、バックスクリーンに映し出される映像も姿を変えていく。

降谷建志バンド

そこに映し出されたのは、数え切れないほど多くの球体。大草原や遥かな山々、荒涼とした砂漠、異国の街並みなど、様々な「ここではないどこか」の景色が映された球体たちが、音に反応するようにスクリーンのなかを自在に飛びまわる。それらは、ときにDNAの二重らせんのような模様を描き、ときにシンプルな円形や四角形へと集約しながら、スクリーンのなかで独特な景色を生み出していく。

降谷建志バンド

降谷建志

広大な世界を旅するような映像演出により、降谷建志の表現者としての本質が描き出された

本公演でnorが掲げたテーマは、「旅」。降谷の音楽から「旅」というモチーフを導き出したnorは、地球から宇宙まで世界中の様々な景色を、連動した球体と周囲のスクリーンに映し出すことで、空間そのものを極彩色に染め上げてみせた。そんな空間で観るライブ……それはまるで、降谷を船長とした飛行船に乗って世界中を旅しているような気分でもあった。

降谷建志バンド

“Swallow Dive”では、スクリーンに大写しにされた大自然の風景が、曲のスケールの大きさをさらに際立たせる。序盤は、その空間の美しさに圧倒されていたオーディエンスからも、ハンドクラップなど、徐々に熱い反応が巻き起こり、「ライブ」ならではの一体感や熱狂も生まれ始める。やはりライブ空間とは、それを「生み出す人」だけではなく、「そこにやってきた人」たちの存在によって新たに定義づけられていくものなのだ。

 

「いつだって世界はキラキラに輝いている――そういう曲です」という降谷の言葉に続いて始まった新曲“Where You Are”は、清廉としたメロディーと覚醒感の溢れるバンドアンサンブルが印象的な1曲。この疾走感、抜けのよさは、1stAlbum『Everything Becomes The Music』の頃とも、そしてDragon Ashとも違ったモードの音楽が、いまの降谷から生まれてきていることを確信させた。

空間全体が真っ赤な照明に照らされ、天井から吊るされた球体が、まるで全てが滅び去った後も世界を孤独に照らし続ける太陽のように見える――そんな幻想的な空間のなかで響いた“Stairway”や、「優しさ」や「強さ」の根底にある「寂しさ」や「悲しさ」を暴き出すような、モノクロームの荒涼とした景色をバックに演奏された“For a Little While”など、降谷建志という表現者の本質が、音と映像の相乗効果で見事に空間全体に立ち上ってくる。

降谷建志バンド

降谷建志

そして、この日披露されたもうひとつの新曲は映画『虹色デイズ』のエンディングテーマでもある“ワンダーラスト”。“Where You Are ”同様、降谷の新しいモードを感じさせる開放感溢れるこの曲の演奏中、バックスクリーンには世界中の様々な景色が前半とは打って変わり、矢継ぎ早に映し出される。

「世界はこんなにも広い!」――そんなシンプルで、だからこそ圧倒的な感動を与える映像を背負って立つ降谷建志。この日、スクリーンに映し出された数々の景色は、「どんなアーティストでも背負えるものではない」と思わせるほどに、広く、深く、大きなものだった。それは、「ミクスチャーロック」という、異文化を結びつけることによって生まれた音楽を出発点に、「バンドとソロ」「音楽家と俳優」、そして今回の「音楽と映像」など、あらゆる垣根を壊し、横断しながら活動を続けてきた「自由」を体現する降谷だからこそ、背負うことができたのだろう。

降谷建志バンド

本編の最後を飾ったのは、人が「迷う」ことを肯定する曲、“One Voice”。「自由」の奥にある「迷い」をしっかりと受け止めるこの曲で本編を終わらせるのはとても降谷らしかったし、さらに演奏を終えるとき、「次はライブハウスで会いましょう!」とオーディエンスに呼びかけたのも、とても降谷らしかった。

降谷建志バンド

アンコールでは「今年は(ソロで)ロックな曲をいっぱい作って、アルバムも出して、ツアーもするから!」と嬉しい発言も。その言葉に続いて演奏されたのは、フェスで出会ったファンの想いに応えるべく生まれたという1曲、“Prom Night”。全てが終わったとき、バックスクリーンには、世界中の旅から今この場所に戻ってきたことを告げる淡い色彩が映し出され、色と色がゆらゆらと混ざり合いながら、ここに集った全ての人々のこの先の旅路の幸せと自由を祈るように発光していた。

 

イベント情報
『SOUND & VISION X ~ 降谷建志 × nor ~』

2018年3月25日(日)
会場:東京都 某所
出演:降谷建志

プロフィール
降谷建志 (ふるや けんじ)

1979年生まれ、東京都出身。1997年にDragon Ashでデビュー。フロントマンとしてバンドを牽引し続ける。プロデュースや客演などさまざまな形態で音楽作品を発表する他、2013年にはNHK大河ドラマ『八重の桜』に俳優として出演。2015年、Dragon Ashの活動と並行する形で自身初のソロプロジェクトをスタートする。

nor (のあ)

建築家、デザイナー、音楽家、エンジニアなど多様なバックグラウンドをもつメンバーによって2017年に発足したクリエイティブレーベル。テクノロジーを活用して、一般化された定義では捕捉しきれない領域へのアプローチを行う。研究で扱われる分野を多くの人が体験できる形に変換し、社会的な価値や可能性をアップデートすることを目的に、空間設計、インスタレーション、プロダクト開発など、手法に縛られない制作活動を行なっている。



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