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危機感が磨いた自分らしさ ticklesインタビュー

危機感が磨いた自分らしさ ticklesインタビュー

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:三野新
2013/07/31
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鎌田裕樹による一人電子音楽団=ticklesが、新作『old note & afterward』を発表する。ソロプロジェクトとしては初めての作品となった前作『on an endless railway track』は、ピアノやギターのみにとどまらない様々な楽器や非楽器が使われ、そこに電子音が絡み合う、まさに「楽団」という言葉がぴったりの華やかな作風が持ち味だったが、『old note & afterward』ではそこから一転、シンプルかつミニマルな楽曲が中心の、穏やかな(それでいて、芯の強さを感じさせる)作風へと変化している。果たして、この変化の背景には何があったのか? 取材に臨むにあたって、鎌田に訊きたいのはまさにこの一点だった。

実際に鎌田が何を想って本作を作ったのかはインタビューを読んでもらえればわかると思うが、僕が取材後に思ったのは、ticklesが楽団であることに変わりはなく、ただその意味が変わったのだということだ。これまでの鎌田はMUMやGODSPEED YOU! BLACK EMPERORといった、かつて自分が憧れた大所帯バンドの姿を追いかけ、楽団であろうとしてきた。しかし、気づけば彼の周りには、家族であり、レーベルのスタッフであり、リスナーでありといった、大切な存在が集まってきていた。それはいわば、人生という名の旅を共にする楽団であり、そこで重要なのは、何より彼が彼らしくいることだったのだ。『old note & afterward』という作品は、そんな人生の一場面を切り取った、高純度の作品なのである。

「自分がいつまでもこれを続けられるかわからない」っていう危機感を今回は感じてたんです。

―『old note & afterward』は前作から1年3か月ぶりの新作で、これまでで最も短いスパンでのリリースになりますよね。前作のインタビューで、「やりたかったことを取り戻せた」とおっしゃっていたのをすごく覚えているのですが、リリース以降も高い創作意欲が続いた結果、速いテンポのリリースになったのでしょうか?

鎌田:前作を出した後に、「すぐ次を出さなきゃいけない」と思って、ホントは1月ぐらいに出したかったんです。以前は三人で活動していて、一人でやった最初の作品が前作なのですが、振り返ってみると、三人でやってたticklesをすごく意識してたなって。だから次はticklesというよりも、僕自身の作品を作らなきゃいけないって思ったんです。

―確かに、楽団的なイメージの強かった前作と比べると、今回はシンプルかつミニマルで、「一人感」の強い作品になっていますよね。

鎌田:「僕はただ僕の中のものを表現してるだけ」っていうのを今回出したかったというか。聴いてくれた人が「美しい景色が見える」とか「おとぎ話のようだ」とか、いろんな風に捉えてくれるのはいいんですけど、例えば、「海の近くに住んでるから、海にインスピレーションを受けて作ってる」というわけではなくて、ただ自分をぶつけただけなんですよね。

―鎌田さんのバックグラウンドにはDJの経験があって、自分が聴きたいもの、聴かせたいものを作るんだっていうのが基本にあるわけですもんね。

鎌田裕樹(tickles)
鎌田裕樹(tickles)

鎌田:前回久しぶりにアルバムを作ったときに、「やっぱり楽しいな」っていうのを取り戻せたし、今回も楽しかったんですけど、「自分がいつまでもこれを続けられるかわからない」っていう危機感もあったんです。ただ音楽を作るだけならいくらでも続けられるし、仕事の合間でちょっとずつ作って、曲がたまったらアルバムをリリースするとか、そういうのはできると思うんですけど、今のペースやテンションのまま、音楽のことだけを考える時間を自分の人生の中で確保できるのって、いつまで続くかわからないなって。


―確かに、人生には何が起きるかわからないですからね。その危機感が芽生えたのは、何か理由があったのでしょうか?

鎌田:結婚したことは大きいかもしれないです。誰かに迷惑をかけてまでやろうとは思ってなくて、自立した状態で、きっちり自分で続けたい。そうやって続けていくことが今の目標というか。

―でも、その「危機感」は全然ネガティブなことじゃないですよね。

鎌田:ポジティブに結婚しましたしね(笑)。結婚によって何かが具体的に変わったわけではないし、音楽に対する愛は変わってないんですけど、一人でやるのと家族がいるのではやっぱり違うし、何が大切かということをもう少し深く考えた結果、ちょっと自分が揺れたんだと思うんですよね。だからこそ、今回のアルバムではちゃんと自分を出しておかなきゃって思ったんです。

―『old note & afterward』は、音が削ぎ落とされた分、そこに込められた高い熱量が感じられる作品だと思って。前作は鎌田さんご自身もおっしゃっていたように、MUMやGODSPEED YOU! BLACK EMPERORみたいな、大所帯バンドに通じる雰囲気がありましたけど、今回の作品で僕が連想したのは、砂原良徳さんとかレイハラカミさん、あと今年出た作品だと、カール・ハイドのソロみたいな、やっぱり「一人感」のある作品で。音数を絞った分、その音の精度を上げて、自分の世界を構築している、そういう強さを感じました。

鎌田:ありがとうございます。カール・ハイドはYouTubeで映像があがってる曲しか聴いてないんですけど、やっぱり「ハイセンスだな、この人」って思いましたね。

―でも、さっきもおっしゃっていたように、今回のアルバムは外からの影響を受けて作ったわけではなく、自分の中から出てくるもので作ったわけですよね?

鎌田:そうですね。聴いてる音楽は昔と変わってなくて、悪く言うと進歩してないのかもしれないですけど(笑)。音楽をものすごく掘り下げる時期ってあるじゃないですか? それによってしばらく自分を満足させられるライブラリーができると、新しいものを聴きたければ、自分が作ればいいやって感じになるんですよね。

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イベント情報

『tickles「old note & afterward」Release Tour』

『tickles「old note & afterward」Release Tour in Fujisawa』
2013年8月18日(日)OPEN/START 18:00
会場:神奈川県 江ノ島 OPPA-LA
出演:
tickles
Pepe California
DJ:
SAGARAXX
ABESTREEM
料金:2,000円

『tickles「old note & afterward」Release Tour in Kichijouji ティックルズのキチムでライブ 第2回「夏の終わりに」編』
2013年8月31日(土) 開場 19:00 / 開演 19:30
会場:東京都 吉祥寺 キチム
出演:
tickles
detune.
料金:前売 2,000円 / 当日 2,500円(共にドリンク別)

『Liquid note records × MOTION± presents no.9 & tickles W Release Party』
2013年9月7日(土)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:大阪府 心斎橋 Music Club JANUS
出演:
tickles
no.9 orchestra
料金:前売2,800円 当日3,300円(共にドリンク別)

『club solanin vol.19 presents tickles「old note & afterward」& moshimoss「endless endings」 Wリリース・ライヴ in 名古屋』
2013年9月8日(日) OPEN / START 17:00
会場:愛知県 名古屋 spazio-rita
出演:
tickles
moshimoss
miaou
グッピー研究生
DJ:
I-NiO
sad hyena
VJ:kumakenshiro
料金:前売2,500円 当日3,000円(共にドリンク別)

『tickles「old note & afterward」Release Tour in Hiroshima』
2013年9月21日(土)
会場:広島県 音楽喫茶 ヲルガン座
出演:
tickles
and more
※詳細は後日発表

『tickles「old note & afterward」Release Tour in Himeji』
2013年9月23日(月・祝)OPEN 17:30 / START 18:00
会場:兵庫県 姫路 ハルモニア
出演:
tickles
[.que]
VJ:Kaoru Nishigaki
土井玄臣
料金:前売2,000円 当日2,500円(共にドリンク別)

『I am Robot and Proud「touch/tone」Japan Tour 2013』
2013年9月24日(火)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:京都府 京都 METRO
出演:
I am Robot and Proud(Band Set)
tickles
neue nahel
料金:前売3,000円 当日3,500円(共にドリンク別)

『tickles「old note & afterward」Release Tour in Kanazawa』
2013年10月6日(日)OPEN 19:00 / START 19:30
会場:石川県 金沢 puddle/social
出演:
tickles
Ametsub
NETWORKS
料金:前売2,500円 当日3,000円

『tickles「old note & afterward」 Release Tour Tokyo Final』
2013年10月18日(金)
会場:東京都 青山 CAY
出演:tickles and Special Guests
料金:前売3,000円 当日3,500円(共にドリンク別)

CINRA.STOREで取扱中の商品

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『old note & afterward』 [iPhone5ケース]
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『old note & afterward』 [iPhone5ケース]

価格:3,675円(税込)
青空の中を飛び交う蝶々たち

プロフィール

tickles(てぃっくるず)

湘南在住のアーティスト、鎌田裕樹による電子音楽団tickles(ティックルズ)。エレクトロニクスと生楽器を絶妙なバランスで調和させ、力強さと繊細さを自然体で同居させる。2006年発売の1stアルバム『a cinema for ears』リリース後から続けてきたバルセロナやローマ、韓国などを巡ったライブ・ツアーでは、人力の生演奏を取り入れたスリリングでドラマチックなライ ブ・パフォーマンスで大きな賞賛を得た。2ndアルバム『today the sky is blue and has a spectacular view』(2008年)は自身のレーベル<madagascar(マダガスカル)>よりリリースされ、2011年、<MOTION±>と契約。ピアノ、シンセサイザー、フェンダー・ローズ、ピアニカ、オルガン、鉄琴、オルゴール、ギター、ベースなど、様々な楽器を駆使しながら感情的なメロディーと心地良いリズムを生み出していくスタイルに更なる磨きをかけ、3rdアルバム『on an endless railway track』を2012年4月にリリース。今年7月には4枚目となるニュー・アルバム『old note & afterward』をリリースする。

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