V6が26年かけて「完成」させたアイドル像とは? 解散ライブの映像から紐解く

2021年11月1日をもってグループ活動に終止符を打ったアイドルグループ・V6。その解散当日に行なわれたライブを収めたDVD&Blu-ray『LIVE TOUR V6 groove』が、4月13日に発売される。

KOHHや堀込高樹(KIRINJI)、Tempalayなどが楽曲提供した最新オリジナルアルバム『STEP』の収録曲から、“愛なんだ”“WAになっておどろう”“Darling”といった往年のヒット曲まで披露する、メンバー全員40歳オーバーの「大人のアイドル」の姿を見ていると、彼らがグループとして重ねてきた年月の長さと重さを思わされる。ひいては、歳を重ねてもなおアイドルでいつづけるとはいったいどういうことなのだろうかと。

本稿では、『LIVE TOUR V6 groove』でのパフォーマンスについて、ポップミュージックに精通するimdkm氏が、そしてV6のグループとしての歩みについて、自身も長らくV6のファンであったふくだりょうこ氏が綴った。V6は解散じゃなく「完成」する——とは、解散発表からいつしかファンのあいだでささやかれるようになった言葉だが、本映像作品に収められたステージはまさにその言葉どおりのものだった。

『LIVE TOUR V6 groove』ダイジェスト

「いまのV6」になにができるか。真摯に向き合った彼らが解散ライブで見せたもの(imdkm)

2021年11月1日、デビュー記念日をもって解散し、26年間の長きにわたる活動に幕を閉じたV6。その最後の日に行なわれた幕張メッセでのライブを収めたのが映像作品『LIVE TOUR V6 groove』だ。

解散が発表されたのは同年3月のこと。以来、シングル『僕らは まだ / MAGIC CARPET RIDE』や最後のオリジナルアルバム『STEP』、そしてベストアルバム『Very6 BEST』などのリリースを重ねながら、彼らはこの日へと少しずつ着実に歩みを進めてきた。

個人的には、全曲が完全に新曲、メンバー自身によってプロデュースされた『STEP』にKOHHこと千葉雄喜やTempalayらが参加したことに驚いた記憶がある。また、『学校へ行こう!』直撃世代としては、解散発表を受け、テレビ画面の向こう側のV6に思った以上の愛着があることに気づいたりもした。とはいえ、あくまで横目で眺めるばかりで、11月1日のパフォーマンスをリアルタイムで目の当たりにすることはなかったのだけれど。

V6“雨”ミュージックビデオ。作詞作曲を千葉雄喜が担当した楽曲

最後のツアーの最終日。そんな特別な時間が詰まった映像にどう向き合おうか考えあぐねながら再生した『LIVE TOUR V6 groove』は、あえて意識しなければ「解散」の2文字なんて浮かんでこないような前向きさに包まれていた。最後のツアーではあるものの、セットリストの大部分を占めるのは最新作からの選曲。これまでのライブ / コンサートツアーの多くと同様だ。

もちろん、デビュー曲をはじめとした過去の人気楽曲もふんだんに織り込み、26年間の歴史をしっかりとたどり直す豪華な選曲という面も持つ。しかし、あくまでいまの姿を見せ、そして同じ時間をオーディエンスと共有することに重きをおいたパフォーマンスになっていたのではないだろうか。それはある意味で、近年のV6が音楽的にもパフォーマンス的にも「いまのV6」になにができるのか、なにを見せたいのかに自覚的に向き合ってきたことの延長線上にあるだろう。

楽曲のつくりや振りつけの多様さには、四半世紀にわたるV6の足跡が刻み込まれている

“雨”をモノトーンなライティングでじっくりと見せて一気に楽曲の世界に引き込む冒頭から、2曲目の“TL”ではスタイリッシュなダンスを見せたあと、簡単なMCを挟んで“Heart Beat Groovin’”へ。静から動へ鮮やかに移り変わりつつ、続く“太陽のあたる場所”ではトロッコに乗って会場のオーディエンスとぐっと近づいて一体感をつくりだす。

冒頭のこの流れだけでも、「V6ってこんなに表現の幅があるんだ」ということを実感できる。歌唱のブレなさやシャープだけれどしなやかな身のこなしは、軽やかさのなかに26年間ものあいだパフォーマンスを繰り広げてきた風格を感じさせるものだ。

たとえばミドルテンポのスローなファンクナンバー“MAGIC CARPET RIDE”からEDMポップ“blue”へと続く流れは、各々の個性や解釈が動きのなかに滲んでいるようで、緊密なチームワークともまた一味違う全体のハーモニーをつくりだしていた。ボーカルをじっくり聴かせる“Let Me”を挟み、デビュー曲“MUSIC FOR THE PEOPLE”をはじめとした初期のレパートリーを連発するゾーンに突入すると、一転してパフォーマンスはきびきびとした動きでフォーメーションの妙を見せはじめる。楽曲のつくりや振りつけのあいだに感じられる方向性の差異には、四半世紀にわたるV6の足跡が刻み込まれているように思う。

『LIVE TOUR V6 groove』より“雨”“TL”“MUSIC FOR THE PEOPLE”“TAKE ME HIGHER”“Full Circle”

演劇や映画のような見応え。「生身のパフォーマンス」から「つくりこまれた世界」へ

興味深かったのは、“グッドラックベイビー”(20th Century)あたりからだんだんシアトリカルな演出が増えていく後半の流れだ。メンバーたちはハンドマイクをインカムに持ち替えていっそう身軽に動き回り、見ているほうはスペクタクルに導かれるままに、メンバーが表現する世界へどんどん没入させられる。

いわば「生身のパフォーマンス」から「つくりこまれた世界」へと移行していく流れのなかで、映像演出をふくめたステージ上のセットや小道具が効果的に楽曲の世界を視覚化していく。ユーモラスな夜の一場面を描いた“素敵な夜”のパフォーマンスはまるで演劇のようだし、ミュージックビデオのセットをふまえ小道具として椅子を使い、バズビー・バークレー風の俯瞰ショットまでステージ上で再現した“PINEAPPLE”は映像として見応えがある。

V6“PINEAPPLE”ミュージックビデオ

白眉は“家族”のパフォーマンスだろう。白熱灯を思わせる暖かな光をセットのなかに満たしながら、じっくりと一言ひとことを噛みしめるように紡がれる言葉。森田剛がひとり先にセットから歩み出ると、徐々にメンバーが続いていき、ステージ上のかりそめの「家」も解体されてしまう。解散という決断にいたるV6のストーリーを思わせる一連の演出自体も胸を打つけれども、ジェスチャーや視線、そして表情のニュアンスによる繊細な感情の表現が、クローズアップをふくめたたしかなカメラワークで捉えられていることも印象的だった。

俯瞰ショットにせよクローズアップにせよ、こうしたカメラによる表現をさりげなくも大胆に組み込んだ演出とパフォーマンスは、もしかすると2020年の無観客配信ライブ『V6 For the 25th anniversary』の経験が活かされているのかもしれない。会場のオーディエンスとの交流が限られている故にとられた方向性、というか。いずれにせよ、このライブ全体に言えることだが、オーディエンスを楽しませるエンターテイナーとしてのみならず、パフォーマンスを通じて楽曲の世界に引き込む表現者としての力量が発揮された一幕だった。

『V6 For the 25th anniversary』ダイジェスト

本編の最後には、当時CD未収録の新曲を披露。メンバーにもファンにも未来がある

やはり、『LIVE TOUR V6 groove』は「いまのV6」――厳密には、2021年11月、解散を迎えたころのV6――の姿を捉えた映像作品だ。残念ながらそれは「最後のV6」でもあるのだが、たとえ過去を振り返るときにも「いま」と向き合う姿勢を崩さないその姿は清々しい。素顔を見せるようないわゆる「ドキュメント」とは違ったかたちで、表現する者としての志が封じ込められている。

その後、メドレー形式で1990年代から2000年代のヒット曲を一気に振り返る。MCを挟んで披露されたのは、このラストツアーのためにつくられた新曲“目を閉じれば”。大団円ではなく、メンバーにもファンにも未来があると感じさせるような、素晴らしい本編の幕引きだ。

暗転のち、ふたたびステージ上にメンバーたちが登場してからは、V6としてのメンバーとファンとの最後の交流というべき感謝にあふれた時間が過ぎていく。そして、アンコールの“95 groove”をもってV6はステージを後にした。

『LIVE TOUR V6 groove』より“太陽のあたる場所”“over”“Sweet Days”“Believe Your Smile”“Darling”“愛なんだ”

永遠はあるのかもしれない。26年かけて成熟したアイドルグループ・V6(ふくだりょうこ)

1995年11月1日に『MUSIC FOR THE PEOPLE』でCDデビューを果たしたV6。坂本昌行、長野博、井ノ原快彦、森田剛、三宅健、岡田准一の6人からなるV6は、年長組の20th Century(トニセン / 坂本、長野、井ノ原)、年少組のComing Century(カミセン / 森田、三宅、岡田)としても活動していた。

V6“MUSIC FOR THE PEOPLE”ミュージックビデオ

デビュー当初から、当時としては異色のグループ構成だったかもしれない。最年長の坂本は1988年にジャニーズ事務所に入所したが、一時は事務所を辞めてサラリーマンも経験している。その後ジャニーズに復帰し、デビューが叶ったときには24歳。入所から7年が経っていた。一方、最年少の岡田は1995年にバラエティー番組『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』内のコーナー「ジャニーズ予備校」に母親が応募し合格、同年の11月に14歳でCDデビュー。驚きのスピードでデビューを飾った。

三宅、森田は当時のジャニーズJr.のなかではトップの人気を誇っていた。仲の良さも知られ、当初V6への加入が決定していたのは三宅のみだったが、「森田がいないならやらない」と社長に言ったというエピソードもある。

デビューしてからはたびたび、解散説も流れていたように思う。グループを引っ張りつつ、10代の3人に挨拶や礼儀を教えていたという坂本。最年長の坂本と、最年少の岡田は9歳差。ときには、年長組のなかでも森田たちと歳が近い井ノ原がパイプ役になったことも。

どんなグループだって、結成してすぐにすべてがうまくいくはずはない。加えて、年齢差、価値観の違いなど、さまざまな衝突もあったかもしれない。が、年齢と経験を重ね、次第に個人だけではなく、グループとしてもまぁるくなってきたように思う。まさに、カドが取れたような。

個人でもマルチに活躍する彼らが帰る「うち」——それがコンサート

近年は、個人としての活動も目立っていた。坂本は多くのミュージカルのステージに立ち、主演も務める。長野はグルメな一面を活かして番組に出ることも多い。井ノ原はNHKの情報番組『あさイチ』で初代キャスターとして8年間勤め上げた。安定したMC力を武器に、朝の顔として多くの人にあらためて知られることとなった。

岡田は第38回『日本アカデミー賞』では主演・助演のいずれも最優秀賞を受賞。森田は舞台や映画での活躍を広げ、唯一無二の個性的な俳優として存在感を強めている。三宅はV6のなかでは一番マルチに活動し、「アイドル」を貫く。アイドルとしてのV6の要は、この人だったんじゃないだろうか。グループ解散の翌日に開設したInstagramの個人アカウントのプロフィールにも「アイドル」と記されている。

どう見たって全員、忙しい。しかし、ほぼ毎年のように彼らはコンサートツアーで全国を回っていた。さらにはアクロバティックなダンスも多いV6の楽曲。コンサートでの運動量は相当なものだ。きついときもあっただろう。

それでもやるのは「やっぱり自分たちのうちはここなんだな」という想いがあるからこそ。これはデビュー25周年のライブ『V6 For the 25th anniversary』で岡田が語ったことだ。個人の活動を密にやるからこそ実感する、6人でやることの意義。

『V6 For the 25th anniversary』特典映像

コンサートのMCを観ていると、テレビなどのメディアで観ている彼らとは少し異なる印象に気づく。

例えば、岡田はいまやジャニーズ事務所のみならず、多くの後輩俳優から尊敬される存在だ。歴史や読書が好きで、格闘技は師範級、ストイック。バラエティー番組などではおちゃめな一面も見せるが、しっかり者のイメージが強い。が、V6ではあくまで末っ子。メンバーのことが大好きで、てらいなくそのことを伝える。

グループになると、それぞれの素が現れる。クールに見える森田も冗談を言い、はしゃぐ。そんなメンバーたちを見守る親のような坂本と長野。グループのことを「帰る場所」という人は多いだろう。が、V6にとってはまさに「うち」。コンサートは彼らにとっての、「帰る家」だったのではないだろうか。

それぞれ個性を発揮し、さまざまなジャンルで第一線を走りながらも、彼らはV6に戻ってきたら、俳優でもMCでもなく、まぎれもなく「アイドル・V6」だった。

コンサートのMCでカメラについて語る岡田。グループ活動の終了が決まってから約2年にわたり岡田が撮影してきたメンバーの姿は、写真集『Guys 俺たち』としてまとめられ、発売された

「アイドル」であり続けるための努力。変わること・変わらないことの両方が求められるなかで

デビューから26年のあいだに、時代も変わり、価値観も変わった。求められるアイドル像も変わった。アイドルというキラキラした表情を持っているからこそ、がっかりさせられるような振舞いに人々は敏感だ。

例えば、V6の人気バラエティー番組『学校へ行こう!』(第一シーズンは1995年から2005年まで放送)。解散間際に放送された『学校へ行こう!2021』のなかで当時のVTRを見て、いまなら大炎上してしまいそうな企画も少なくないな、と感じた。が、現在の彼らはより、誰かを傷つけてしまう可能性がある表現に敏感になったように思う。それはほかの現場での積み重ねにもよるものだろうし、グループや事務所内だけではなく、きちんと外にも視線が向いている証ではないだろうか。

また、「アイドル」が求められる技術も年々高くなっている。歌唱力やダンスのパフォーマンス力の向上に加え、トーク力や演技力、アドリブ力も求められる。そんななかでむしろ、V6のメンバーはアイドルに求められるものを底上げしたうちの1組と言っても過言ではない。歳を重ね、結婚もして、活動するフィールドを広げてきた。

こうしたアップデートを重ねながらも、彼らはファンの前ではデビュー当時の「アイドル・V6」であり続けてくれた。変わらないパフォーマンスを見せ、ステージ上ではしゃぎ、笑い、ファンの夢をステージ上で守り続けた。

『LIVE TOUR V6 groove』では、V6はもちろん、カミセン、トニセンの懐かしい曲も見せてくれた。当時の彼らの姿がフラッシュバックして、自分の思い出と重なった。ときめきとワクワクを与えてくれた、当時のそのままの姿であり続けるために彼らが重ねてきた努力を感じて涙があふれた。

コンサート、最後のMCで、メンバーは誰も涙をこぼさなかった。そしてステージを去ったあとのスクリーン上には、ファンに向けたこんなメッセージを残している。

「僕らは26年間幸せでした。あなたが結んでくれたこの手は、いつも心に繋いでおきます」
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彼らの幸せと、6人の絆が続くことを願うファンに対し、彼らは最後の最後、こうして未来に続く「約束」をしてくれた。終わりじゃない、と思えた。

V6に解散の話が持ち上がったきっかけは、森田から「ジャニーズ事務所を離れて役者としてチャレンジしたい」という言葉があったことだという。ジャニーズのなかには、メンバーの「脱退」というかたちをとり、デビュー当初と人数を変えながら活動を続けるグループも多い。それぞれの選択に間違いはない。続けるも、休むも、解散も。

V6は、解散を選んだ。はじまるときも6人、終わるときも6人で。ずっと同じかたちを保ったまま、V6はステージを去った。

ベストアルバム『Very6 BEST』に収録された“Full Circle”のミュージックビデオ。曲名は「一周して元の場所に戻る」という意味を持つ英熟語

2022/4/13 公開時、一部誤記がありました。訂正してお詫びいたします。

作品情報
V6
『LIVE TOUR V6 groove』 DVD / Blu-ray 通常盤


発売日:2022年4月13日(水)
価格:5,800円(税別)
AVBD-27538~9(DVD)
AVXD-27540~1(Blu-ray)
プロフィール
imdkm

ブロガー。1989年生まれ。いち音楽ファンとして、山形の片隅で音楽について調べたり、考えたりすることで生きている。

ふくだりょうこ

大阪府出身。大学卒業後、ゲームシナリオの執筆を中心にフリーライターとして活動。たれ耳のうさぎと暮らしている。お酒と読書、音楽とドラマが好き。



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