色んなことを諦めてきた aoki laskaインタビュー

aoki laskaという名前を頻繁に目にするようになったのは、2011年の後半からだろうか。「& records初の日本人女性シンガーソングライター」として、folk squatの平松泰二をプロデュースに迎えたミニアルバム『about me』でデビューをしたのが12月のこと。それからというもの、FM局でのヘビーローテーション、『ARABAKI ROCK FEST』への出演などが続き、今ではテレビのCMソングを歌うまでに、aoki laskaの名前は大きく広がっている。しかし、瞬く間に階段を駆け上がったかのように見える彼女には、ここに至るまでの長い長い助走があった。たくさんの挫折を経て、頑なにこだわり続けた「私」という殻を捨て去り、誰かと一緒に作品を作り上げる喜びを手にしたことで、彼女の才能は遂に花開いたのだ。前作に続いて、平松をプロデュースに迎えた初のフルアルバムのタイトルは『it's you』。これは、「私」が「あなた」を見つけるまでの物語。

子供の頃はわりとイケイケで、「私何でもできる」って思ってたんですけど…挫折してぐれましたね(笑)。

―小さい頃から作曲をされていたそうですね。

aoki:4歳からピアノを始めて、小学校の1年でYAMAHAの作曲コースに入ったんです。

―小1から作曲って、かなり早熟ですね。

aoki:当時のことはあんまりよく覚えてないんですけど、クラシックバレエもやったりとか、習い事をして忙しいのが好きな子だったみたいですね(笑)。

―それはご両親も、良く出来た自慢の子どもだったでしょうね(笑)。

aoki:子どもの頃は結構自信があって、「私何でもできる」って思ってたんですけど…音楽もバレエも挫折して、それからぐれましたね(笑)。ボーイフレンドができて、放課後遊ぶようになっちゃって、お母さんに怒られる、みたいな(笑)。

aoki laska
aoki laska

―どうして挫折しちゃったんですか?

aoki:バレエは4歳から高3までやっていて、その道でやっていきたいと思うくらいかなり本気だったんです。でもバレエは、体型とか骨格とか、生まれ持ったもので決まっちゃう部分があって、諦めざるを得なかったというか、そこで自分の限界を知って。

―そうだったんですか。じゃあ、音楽の方は?

aoki:音楽はもっと早くて、小6まででした。作曲コースに行き始める前までは、周りから「すごいね」って言われてたのに、そのコースは周りの子たちのレベルが高くて、すぐに落ちこぼれちゃったんです。そこで変なコンプレックスができちゃって、「私は作曲できないんだ」って思ってました。

―コースの内容的に、「私がやりたいのはこういうことじゃない」って思ったとかではなく?

aoki:ではないですね。「私は二流なんだ」って思ってました。だから、歌を作り始めたのは18歳からで、それまではどうやったらいいかわからないし、バンドを組みたいわけでもない、学校で軽音に入るのもダサいと思って、ずっと悶々としてたんです。

音楽がやりたいと思って、大学は2年でやめちゃったんです。それで、音楽をやるために友達の家に居候させてもらってたんですけど、実際は遊んでばっかりで…。

―じゃあ、曲を作り始めるのは大学に行ってからだったんですか?

aoki:そうですね。歌うことは好きだったから、大学に行って、学校とは別にボイストレーニングに通い始めたんです。そのとき先生に、「既存にある曲をメロディだけ変えてこい」って言われて、メロディ作りをやってみたんです。それでようやく、作曲コースのコンプレックスから抜け出し始めて。

―なるほど。ボイトレに行くくらい音楽が好きだったら、大学も音大に行っていたんですか?

aoki:いや、大学は文化女子大に行って洋服の勉強をしてたんですけど、やっぱり音楽がやりたいと思って、大学は2年でやめちゃったんです。それで、音楽をやるために実家には戻らないで、友達の家に居候させてもらってたんですけど、実際は遊んでばっかりで…。

aoki laska

―なぜ?(笑)

aoki:…なんでやんなかったんでしょうね(笑)。浮ついてたんだと思います。地に足がついてないっていうか、自分が見えてないというか。友達にも、「音楽やるっていうから居させてあげてるのに、全然やってないじゃん!」って言われてしまって、結局は地元の秋田に帰ったんです。でもやっぱり音楽が諦められなくて、今度は父親が単身赴任しているアメリカに行って、またボイトレを受け始めて。


―かなり迷走していた時期があったんですね…。それでも歌うことを諦めなかったから今があるんだと思いますが、aokiさんのそのすごく特徴的な歌声っていうのは、どうやって生まれてきたんでしょうか?

aoki:やっぱり最初は好きな歌手のモノマネみたいなところから始まってるんですけど、ボイトレでいろんなスタイルの発声を学んで、引き出しが増えたお陰で、少しずつ自分のスタイルができてきたんだと思います。

―ある日突然発見した、という感じではなくて、積み上げていった結果ということですか?

aoki:そうですね。私はもともとR&Bとかが好きで、ああいう縦ノリの音楽がやりたかったんですけど、どうしても自分では作れなくて。そんな風に、色んなことを諦めて、とにかく自分の曲を自分なりに歌おうと思ってやっているうちに、「誰かのマネ」っていう感じがしなくなったんですよね。

音楽から離れて楽しかったら、本当に私はそれでよかったんですよ。でも、楽しくなかったからびっくりして、これはやるしかないなって。

―そうしてアメリカから戻ってきた後、ようやく日本で本格的に音楽活動を始めたんですよね?

aoki:小さな事務所みたいなところに所属して、最初は自分だけで弾き語りライブなんてできないと思っていたから、サポートのギターの人と一緒にライブをやってました。で、それを2年間くらいやって、結局は自分1人でライブをするようになっていって。自分だけでライブができるようになると、ライブハウスとのつながりもできてくるし、だんだん事務所に所属してる意味も無くなってきて、「やめましょう」って。

―日本に帰って来てからも、なかなか日の目が当たることはなかったと。

aoki:それもチョー挫折ですよ。事務所をやめて、ライブは続けてたんですけど、ホントに心が折れて、嫌になって、「何でこんなつらい思いしてやんなきゃいけないんだろう?」って思って。それで音楽を1回やめて、「本当にやりたいことをやろう」と思って大好きな洋服の仕事を始めたんです。

―そっか、音楽をやめたこともあったんですね。

aoki:そう、それで「どんなに生活が楽しくなるだろう」って思いましたよ。でも、全然そんなことなかった。何かが違っていて、ちっとも生きてる実感がわかなかったんです。だから結局また半年ぐらいして、ライブをやり始めたんです。

aoki laska

―やっぱり、音楽からは離れられなかった。

aoki:音楽から離れて楽しかったら、本当に私はそれでよかったんですよ。でも、楽しくなかったからびっくりして、これはやるしかないなって。そうなったらもうどうなってもいいというか、それまでみたいに何かを目指すんじゃなくて、とにかく「やる」ってことだけはスッキリしたんですよね。「見返してやる」とかそういうのもなくなったし、人と比べることもしなくなりましたね。

―その頃に& records周辺の人たちと出会ったんですか?

aoki:いや、そこからさらに2年くらいあって…(笑)。入井さん(元nhhmbase)と出会って、長倉さん(元YOMOYA)たちとデモを作ったりしていく中で、2011年4月にあった& recordsのチャリティライブに「枠が空いてるから出る?」って言われて。それをきっかけにリリースの話につながっていったんです。

―そこでようやく、長い長い助走に終止符が打たれたんですね…。でも、そうしてリリースした『about me』(2011年12月)が、話題になりましたよね。

aoki:リリースしてからまだ半年なんですけど、反動がすごくて、これまでが清算されてるような感じがしますね(笑)。たぶんこの反響が5年前にあったら、ラジオで自分の曲が流れたりしても、「あ、うんうん」って感じだったかもしれないけど、今はひとつひとつのことがホントに嬉しくて、毎回泣いたりしてます(笑)。ホント夢がひとつひとつ叶ってて、フェスに出たい、ライブサーキットに出たい、CINRAに出たいとか…

―そう言ってもらえるとこちらも嬉しいです(笑)。でも、& recordsの人たちとの出会いはホントに大きかったよね。

aoki:ホントそう思います。『about me』も平松泰二さん(& records所属バンドfolk squatのメンバーで、『about me』のプロデューサー)がいなかったら、ああはなってないですから。今までずっと1人でやってきて、わりと頑固で、人の言うことなんて全然聞かない人間だったんですけど(笑)、長倉さんとか泰二さんとやるようになって、ちょっとずつ人の意見を受け入れて、一緒に楽曲をよくしたいと思えるようになったんです。

歌だけは自分で責任を持ってやらないと、「aoki laskaとして出せない」と思って。

―自分の中の頑固な部分と、共同作業として受け入れる部分、そのバランスは新作の『it's you』ではどうだったんですか?

aoki:分かりやすく言うと、歌だけは自分で責任を持っていたいと思っていて、その他の部分に関しては、全てを泰二さんにお任せしている感じです。

―歌はやっぱり、頑固さがぬぐい去れない部分なんですね。

aoki:もちろん泰二さんからもらったアドバイスで引き出された部分もあるんですけど、私は歌を音として捉えてるんじゃなくて、感情として捉えてるから、それは自分にしかわからない領域だと思うんです。だから歌だけは自分で責任を持ってやらないと、「aoki laskaとして出せない」と思って。

―サウンドの部分に関しては、お任せしてしまうことに不安はなかったんですか?

aoki:「違う」と思ったら「違う」って言ったと思うんですけど、それがあんまりないんですよね。それってすごく幸せなことだと思うんですけど。もともとfolk squatの音楽がすごく好きだったから、その人がやってくれるってことのは大きくて、「泰二さんが言うなら面白いかな」って。「明るくしよう」とか言われて、今までだったら「え?」って思ったと思うんですけど、それも「泰二さんが言うなら」っていう。

―それだけの信頼感があるということですよね。folk squatはどんな部分が好きだったんですか?

aoki:ホント理屈じゃなく涙が出るっていうか、心にグンッと来るっていうか。音楽をやってる人って、「このベースのラインがいい!」みたいな感じで細かく音楽を捉える人が多いですけど、私は音楽を個別の楽器ではなくて、ひとつの大きな感情としてしか捉えられなくて。それぐらい、「なんか好き」「なんか嫌い」っていう感じなんですよね。

―小学生とはいえ作曲コースに行ってたり、いろんなボイトレの先生についてたりっていう経歴からすると、もっと理論で考えてそうなイメージがありました。

aoki:逆に、理論コンプレックスみたいのがあるから、そういうのは全部排除して曲を作りたくて。最近までこの曲がメジャーかマイナーかとかも考えてなくて、だから逆に泰二さんみたいな、構築して行ってくれる人と合ってたんだと思います。私がわからないんで(笑)。

aoki laska

自分が思ってることなんて、取るに足らないことなんじゃないかと思ったんですよね。

―じゃあ逆に、泰二さんにお任せした部分で、変えてもらった部分っていうのはあるのですか?

aoki:私にとって曲を書くのは絵を描くのに似てて、例えば、全音だったら原色、半音だったら色が混ざってるとか、絵として見たときに「いらないな」って思うのは抜いてもらいました。ただ、自分が思っていなかった音になって返ってきて、たとえそれが自分の枠からはみ出てても、すごくいいなって思えるようにもなって。前はそういうのもダメだったんですけど、ある時点から、自分が思ってることなんて、取るに足らないことなんじゃないかと思ったんですよね。だから、ホント最後の最後「ここだけは」っていうところしか言ってないんです。

―詞の雰囲気がネガティブなものから明るくなってきてるのも、自身の心境の変化というより、泰二さんの提案があったことが大きいわけですよね?

aoki:そうですね。「ネガティブな歌詞NGね」って言われてたんで(笑)。そんな意見も昔なら絶対聞かなかったと思うけど、folk squatの人が「ポップな、明るいものを書こう」って言ってるのが面白いし、そのサウンドをいちファンとして聴いてみたかったんです。自分も普通に明るくてポップなものも聴くから、そういうところを出せたらなって思いましたし。

―逆に言うと、今までは何で出さなかったんでしょうね?

aoki:変な自分のこだわりが強すぎたんですよね。ライブとかでも、愛想を売るのはダサいと思ってたし。もっとキツイというか、「私!」みたいのが強すぎて。

―『about me』から『it's you』っていうタイトルも、そういう意味でも象徴的ですよね。もちろん、そうなれたのは『about me』での評価があってこそなんでしょうけど。

aoki:はい、それはすごく大きいですね。自信をもらいました。

自分の感情をワーッと出して、見てるお客さんがスッキリするっていう、そんなライブができたら嬉しいですね。

―最後に、ライブについても聞かせてください。今のaokiさんに対する評価っていうのは、音源の良さはもちろん、ライブの良さっていうのも大きなウェイトを占めてると思うんですね。ご自身では自分のライブをどう捉えていますか?

aoki:ライブはやればやるほど課題が出るっていうか、自分の世界観を表現できてるかっていうと、まだもっとできるんじゃないかって思うんです。シンプルに弾き語りでどれだけ世界を表現できるか、そこをもっと骨太にしたいし、そこがこれからにもつながっていく気がしていて。

―自分のライブも、シビアに評価してるんですね。

aoki:(ライブが終わって)「おつかれー!」みたいなタイプに見えるかもしれないですけど(笑)、結構完璧主義者っていうか、演奏してるときから反省会が始まってるときもあって(笑)。だから、自分が納得いかないからもっとやりたいっていうだけなのかもしれないんですけど。

―ちなみに、さっき言った「自分の世界観」って、言葉にすることはできますか?

aoki:ホントにイメージなんですけど、映画を見てるみたいな感覚にしたいっていうか、1曲1曲っていうより、30分なら30分通じて、自分の中で完璧にしたいというか。

―映画を見てる感覚っていうのは、違う世界に連れて行きたい、みたいなことですか?

aoki:そうですね。ちょっと非日常に持って行きたいというか、オレンジ色の光がワーッみたいな、多幸感というか。

―『about me』は特にネガティブな感情を出発点にしてる曲も多かったけど、その曲で多幸感を生み出したいと。

aoki:映画とかで、登場人物が泣き叫んだりするのを見ると、自分を代弁してくれているみたいで、逆にスッキリしたりするんですよね。だから私も、自分の感情をワーッと出して、見てるお客さんがスッキリするっていう、そんなライブができたら嬉しいですね。

イベント情報
viBirth × CINRA presents『exPoP!!!!! volume63』

2012年6月28日(木)
会場:東京都 渋谷 O-nest
出演:
aoki laska
転校生
タラチネ
木下美紗都と象さんズ
and more
料金:無料(2ドリンク別)

『aoki laska 1st full album 「it's you」release tour』

2012年7月5日(木)
会場:京都府 京都 Voxhall
出演:
aoki laska
間瀬聡(カルマセーキ)
foot loose
いちやまりな
ラックラスター
and more
料金:前売2,000円 当日2,500円(共にドリンク別)

『「it's you」発売記念インストアライブ』

2012年7月6日(金)OPEN / START 20:00
会場:大阪府 大阪 FLAKE RECORDS
出演:aoki laska
料金:無料(優先入場券お持ちの方優先)
※優先入場券は『it's you』をFLAKE RECORDSで購入頂いた方に差し上げます
※当日は準備のため18:30に一度お店を閉店します
※優先入場券をお持ちの方から随時入場可能ですので5分前にお越し下さい

リリース情報
aoki laska
『it's you』

2012年6月13日発売
価格:2,400円(税込)
YOUTH-164

1. みてみて
2. 物語
3. kiss me now
4. ひとつになりたい
5. kiseki
6. 耳のない猫
7. 温かいかたまり
8. また明日さよなら
9. backfire(Aimee Mann cover)
10. 流れる

プロフィール
aoki laska

HER SPACE HOLIDAY、I AM ROBOT AND PROUD、+/-{PLUS/MINUS}、nhhmbase、YOMOYAなどのリリースで知られる「& records」初の日本人女性シンガーソングライター。2011年冬にfolk squatの平松泰二がプロデュース、録音、ミックス、マスタリングを手掛け、長倉亮介(ex.YOMOYA)、日下部裕一(4 bonjour's parties)も制作に協力したミニアルバム『about me』をリリース。ピアノもしくはオルガンに、最低限の意匠だけを施したシンプルかつ彩り豊かな音世界と、安藤裕子やクラムボンの原田郁子などにも通じる、個性的かつ滋味溢れる歌が、各所で大きな反響を呼んだ。2012年6月に、同じくfolk squat平松プロデュースによる1stフルアルバム『it's you』リリース。



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