[ALEXANDROS]川上洋平が語る。人間は死にゆく、だから今を踊る

[ALEXANDROS]の新曲“あまりにも素敵な夜だから”は、軽快なファンクポップサウンドに乗せて、日々「解放」を求めて心を彷徨わせる主人公の心情を描く1曲だ。過ちと不安は尽きず、圧しかかってくる過去は重く、未来なんて見えない。それでも、この曲の主人公は自らをがんじがらめにするあらゆる重圧から解き放たれる夜を、その「今」という瞬間を求めて、踊る。踊り続ける。ポップな曲だが、決して楽天的なわけではない。その快楽性の裏側に生活のリアルや痛みを刻んでいるからこそ、ドラマチックに、ロマンチックに響く1曲だ。

もはやこの国のロックバンドの「王者」としての風格も漂わせる[ALEXANDROS]だが、その威風堂々とした佇まいとは裏腹に、生まれてくる曲は、その音楽が届く場所にいるどこかの誰かの心に生まれる小さな叫びを、繊細なざわめきを、丁寧にすくい上げ、受け止めるような柔らかさと滑らかさを持っている。このインタビューでは、“あまりにも素敵な夜だから”が生まれた背景から、川上洋平のソングライティングやライブパフォーマンスにおける姿勢を覗いた。

1日1日、1曲1曲……そこにある「今」という瞬間を恐れることなく楽しみたい。

―新曲“あまりにも素敵な夜だから”のようなファンクサウンドって、ポップスとしては王道感がありますけど、[ALEXANDROS]の曲としては、新鮮な印象もあります。[ALEXANDROS]は、これまでもいろんな音楽的側面を見せてきた、いわばカメレオン的なバンドだと思うんですけど、“あまりにも素敵な夜だから”には「オルタナティブなバンドが王道をやる」という面での新鮮味があるというか。

川上:なるほど。でも、『EXIST!』(2016年)に入っている“Aoyama”や“Feel Like”でも、こういうファンクな曲は作っていたし、もっと遡ると“Thunder”っていう曲が、最初にこういう音楽性を試みた曲だったんですよね。ただ、こういう方向性の曲たちは、これまではアルバム曲やB面のほうで試してきたサウンドだったのも確かで。“あまりにも素敵な夜だから”は、ここで1度自分たちのこういう側面を、いわばバンドのA面に持ってきたいっていうのがアティテュード的にもあったんですよ。

のボーカル、ギター。2007年に本格始動し、2015年よりユニバーサルミュージックとグローバル契約を結ぶ。2016年11月、6枚目のフルアルバム『EXIST!』で、オリコンウィークリーチャートで初登場1位を獲得。2018年8月には自身初となるZOZOマリンスタジアムでのワンマンライブを成功させ、11月には7枚目となるアルバム『Sleepless in Brooklyn』をリリース。2019年に入ってからは、『Pray』『月色ホライズン』『月色ホライズン(chill out ver.)』『あまりにも素敵な夜だから』を配信リリースしている。" zoom="https://former-cdn.cinra.net/uploads/img/interview/201910-alexandros_nktkk-photo1_full.jpg" caption="川上洋平(かわかみ ようへい)
[ALEXANDROS]のボーカル、ギター。2007年に本格始動し、2015年よりユニバーサルミュージックとグローバル契約を結ぶ。2016年11月、6枚目のフルアルバム『EXIST!』で、オリコンウィークリーチャートで初登場1位を獲得。2018年8月には自身初となるZOZOマリンスタジアムでのワンマンライブを成功させ、11月には7枚目となるアルバム『Sleepless in Brooklyn』をリリース。2019年に入ってからは、『Pray』『月色ホライズン』『月色ホライズン(chill out ver.)』『あまりにも素敵な夜だから』を配信リリースしている。"]
[ALEXANDROS]“Thunder”を聴く(Apple Musicはこちら

―その「アティテュード」を、具体的に伺いたいです。

川上:バンドを長く続けていくうえで一番大切なのって「流動的であること」だと思うんですよね。僕らは来年でデビュー10周年なんですけど、さっき言っていただいたように、本当にカメレオン的にいろんなことをやってきたバンドだし、これからも、そのとき自分たちが「好きだ」と思ったチャンネルに合わせてやっていきたい。そのとき自分たちが好きなものを自由に吸収して消化して、曲に取り入れていく。[ALEXANDROS]は、そういうことを我慢しないでやっていきたいバンドなんです。

―うん、わかります。

川上:曲作りは、「嘘をつかないこと」がすごく大切で。「これがウケたから、これをやろう」とか、「この曲によってお客さんが増えたから、こういう曲をやろう」で曲を作っていくと、嘘になってしまうんですよね。それを身をもって経験したことが、この9年の間に何回かあったんです。そのたびに、曲に嘘が入り込んでくることが一番良くないと、僕は思ったので。

そもそも僕らはいろんな音楽が好きだし、単純に飽き性だし。新しいものに興味を持ったら、それを次の日のスタジオで「こんな曲やってみよう」っていうことをアマチュア時代からやってきたんです。そういうスタンスで今でも続けているから、それができないとバンドを続けることが窮屈になってくる。僕らのそういうスタンスは、ファンの皆さんには伝わっていると思うし、僕ら自身、もう周りになにを言われても気にならなくなった。それが自分たちの「アティテュード」ですね。

―“あまりにも素敵な夜だから”の歌詞は、窮屈で悩みや不安に満ちた日常から主人公が解放される、「今」という瞬間の刹那的な輝きを描いているようにも思えたんですけど、それもまさに、「流動的であること」につながるのかなと思いました。

川上:そうですね。今年出した“月色ホライズン”っていう曲の歌詞にも、<今をただ生きていく>っていうフレーズがあるんですけど、僕ももういい歳で、将来のことも見えてきてて。20代の頃とは違って、自分の寿命みたいなものをぼんやりとだけど実感するようになってきたんですよ。

同曲はアクエリアスのTVCMソングにも起用された。

―川上さんが寿命について考えられるというのは、意外です。

川上:考えますよ(笑)。特に、いまの時代のミュージシャンはライブがすごく重要じゃないですか。だから、ライブがいつまでできるのか、ライブを長くやっていくにはどうすればいいのか……なんてことはすごく考えます。そういうことを考えること自体は、「今を生きる」っていうことと矛盾するかもしれない。でも、考えれば考えるほど、1日1日、1曲1曲……そこにある「今」という瞬間を恐れることなく楽しみたいと思うようになってきたんです。

今、自分のなかで起こったことをそのまま出していきたいし、それができる時代でもある。なにをやるにしても、「今こういう曲を作っていても、出すのは来年だから、こういう流れを考えよう」みたいなことでは、もう自分たちはやっていけないんですよね。

ずっとどこかで「試行錯誤」を、歌詞のテーマにしたいなと思っていた。

―“Thunder”から始まって、今回の“あまりにも素敵な夜だから”にもつながっていくようなダンサブルなサウンドって、川上さんのリスナー体験のなかでは、どのように昇華されてきたものなのでしょう?

川上:僕自身としては、いま「シティポップ」と言われているものより、マイケル・ジャクソンやチャカ・カーンのような存在からの影響が強くて。それこそマイケル・ジャクソンって、僕らの世代にとっては『とんねるずのみなさんのおかげです。』でもタカさん(石橋貴明)ノリさん(木梨憲武)が取り入れていたし(笑)、「洋楽を聴く」っていうよりも普通に根付いていたもので。当時、うちの兄貴はGuns N' RosesみたいなUSロックに傾倒していたので、僕がマイケル・ジャクソンを聴いていると怒られたんですけど(笑)。僕は兄と10歳以上歳が離れていたから、USロックもポップスも分け隔てなく聴けたんですよね。

―なるほど。

川上:そういうところから始まって、僕の青春時代はOasisのようなブリットポップ(1990年代、ロンドンやマンチェスターといったイギリスの都市部を中心に起こったポップミュージックのムーブメント)が真ん中にあった。だけど、自分で曲を作り始めてみると、そういうブリットポップバンドっぽいビート感が、案外、自分にはハマらないっていうことに気づいたんですよ。自分で曲を作って自分で歌うとなると、言葉の子音の部分がバシッとリズムにハマっていないと気持ちよくない。

でもOasisは、いい意味でそこがぼんやりしているじゃないですか。そういうことに、自分でアウトプットを始めたときに気づいていったんですよね。で、自分が気持ちいいと思えるところを探っていったら、根っこにはマイケル・ジャクソンの存在があるんだなって気づいて。

―幼い頃から根付いてきたリズム感、という感じなんですね。

川上:そう。だから僕らの曲作りって、基本的にドラムから作るんですよ。この曲も踊りながら作ってましたから。

―歌詞については、どのようにして生まれてきたのでしょうか。今回はNHKのドラマ(『ミス・ジコチョー~天才・天ノ教授の調査ファイル~』)の主題歌ですよね。

川上:今回、ドラマの台本はしっかり読んだんです。これまでタイアップで書き下ろす場合は、物語そのままになってしまわないように、あまり台本を読み過ぎないようにしていたんですけど、今回はどんどん読み進めてしまって。

このドラマは「失敗学」っていうものをテーマにしているんです。失敗を恐れて、一番いい正解を導き出そうとしすぎて、なにかを躊躇ってしまったり、延期してしまうのは勿体ない……そういうことが、台本を読んでいくなかで伝わってきたんですよね。それに自分としても、ずっとどこかで「試行錯誤」を、歌詞のテーマにしたいなと思っていたんです。歌詞のなかに<Shakedown 1994>っていう部分があるんですけど、これは、The Smashing Pumpkins(アメリカのロックバンド。1990年代のオルタナティブロックを代表するバンドの1つ)の“1979”の<Shakedown 1979>っていう歌い出しからきていて。

―そうなんですね。“LAST MINUTE”の歌詞にも<潰れたパンプキン聴きながら>とありましたよね。

川上:“1979”を初めて聴いて、「Shakedown」っていう単語を調べたとき、「試行錯誤」っていう意味があるんだっていうことを知って。ビリー・コーガン(The Smashing Pumpkinsのボーカル、ギター)がどういう意味でこの言葉を使ったのかは謎ですけど、いつか使いたい単語だったんですよね。

……でも、その一方で今回歌詞はかなり苦労したんですよ。まず、「あまりにも素敵な夜だから」っていう一文が最初から頭のなかにあって。仮歌をメンバーに聴かせるときも、他は英語で適当に歌ったんですけど、<あまりにも素敵な夜だから>っていう部分だけはバシッとハマっていたんです。じゃあ、「あまりにも素敵な夜だから」、なんなんだろう? っていうことを考えていきました。これで薄っぺらい歌詞になってしまったら、ただのシティミュージックになってしまう。自分が言いたいことと、脚本を全話読んで感じたことをちゃんと昇華しなきゃなと思ったら、めちゃくちゃ時間がかかって……結局、締め切りには間に合わず(笑)。

―ははは(笑)。

川上:なので、この歌詞は書いているときの自分の心境そのままっていう感じもあるんです。この曲の歌詞自体、1度書いては次の日には「やっぱり違う!」と思って書き直して……って試行錯誤を繰り返していたので。

「最近、こんな服を着たいんだよなぁ」っていうラフな感覚で、音楽も作っていきたい。

―川上さんの歌詞は、自分自身のリアルな視点が出ているような感じもするし、架空の主人公を立てて、物語を描いているようなときもあるし……不思議な質感のある歌詞だと思うんです。“あまりにも素敵な夜だから”も、「ドラマの台本を参考にして書いている」という軸がありつつも、ご自身の実体験も込められているし、川上さんの思春期性や音楽家としてのルーツも垣間見える。根本的な質問なんですけど、川上さんは、どういった形で歌詞を書くのが得意だと思われますか?

川上:なんとなく他人事のように書き始めるんですけど、それが段々と自分のことになっていく歌詞が多いような気がします。誰かに向けたメッセージというよりは、自分から自分に向けたメッセージっていう側面が強いですし、そういう言葉が、一番歌っていて気持ちいいんです。

もちろん、今回の“あまりにも素敵な夜だから”も、100パーセント自分のことではなくて。自分としては、まずはなんとなく女性目線で書き始めたものではあるんですけど、段々と自分に重なっていって、2番のあたりからは、性別もよくわからなくなってくるんです。

―確かに、そういう感じがします。

川上:もしかすると歌詞が、一番「流動的」になる部分かもしれないです。僕の歌詞は、「私」っていう主語を使ったと思ったら、次の瞬間には「僕」っていう主語になったりするんですけど、日常生活ってそういうものだと思うんですよね。時と場合に応じて、「自分」も変わっていくものじゃないですか。

歌詞でも、「私」って言うと、なにかを宣言しているような力強さが出るけど、「僕」って言うと、もっとパーソナルな、なよっとした自分が出てくる。それは一見バラバラな状態でも、1人の人間から出てくるものとして成り立つと思うんです。全部を綺麗に揃えるよりも、何故、そこでは「私」であるのか、なんでここでは「僕」なのか……そこにちゃんと脈絡があれば、それでいいと思うんですよね。

―確かに、そのとき立っている場所や、目の前にいる人が誰なのかによって、自分という存在の在り様も変わってきますもんね。どんな場所でもずっと同じ態度をとり続けるよりも、柔軟に変わっていく方が、人間としては自然だと思います。

川上:自分の歌詞はSNSで想いを綴っているような雰囲気のものでありたいし、もっと言うと、普通に日常を暮らしている感覚のままで、アーティストでありたいと思うんです。「[ALEXANDROS]はこうでなければいけない!」と決め込むんじゃなくて、「最近、こんな服を着たいんだよなぁ」っていうラフな感覚で、音楽も作っていきたい。そうあるためには、どんな場所に行っても戻ってくることのできる「根っこ」があることが大事になってくるんですよね。

―そうですよね。帰る家があるから、旅に出ることができるわけで。

川上:ギターでも、僕は最初から歪んでいるものは選ばないんですよ。大抵はストラトとかジャズマスターを使うんですけど、それは何故かというと、足元をいじればいくらでも歪ませたりできるんだけど、いつでもクリーンに戻れるからなんです。

同じように、僕がタトゥーも入れないしピアスも開けないのは、フラットな状態の身体にいつでも戻れるようにしておきたいから。自分のスタンダードを持ったうえで、いろんなことを遊びたいんですよね。

―川上さんは、パブリックイメージとして「ロックスター」という側面も強い方だと思うんですけど、「クリーン」で「フラット」であるという部分と、「スター」であるという部分が、川上さんの中には絶妙なバランスで存在していますよね。

川上:たしかに、僕が好きだった往年のロックスターっていうのは、ドラッグは当たり前だし、喧嘩もするし女遊びもするし……っていう感じでしたけど、僕はそういうのに憧れるタイプではないので。それは時代がどうこうっていうよりは、自分の性格が大きいのかなって思います。今さら僕が悪ぶり始めるのも、おかしな話ですし(笑)。

―そうですね(笑)。でも、そういう「スター像」というのは、ある種、時代の要請に寄って存在するものでもあると思うんです。そういう意味で、川上さんは今の時代の「ロックスター」というものを、どういう存在だと捉えているのか、伺いたくて。

川上:う~ん……バンドを始めてからも、「どういう人がロックスターなんだろう?」っていうことは常々考えますけど、わからないんですよ。ただ、The 1975やビリー・アイリッシュのような存在を見ていて思うのは、結局は自由気ままにやっている人たちがロックスター然としているのかなっていうことで。昔の人たちにとっては、「自由」であることのアイテムがドラッグだったりしたんだと思うけど、今の人たちもアイテムが違うっていうだけで、根底にあるマインドは変わっていないと思うんですよね。

やりたいことをわがままにやったときに、それが「こだわり」に映る瞬間がアーティストにはあると思うんですけど、そこが商業主義に走らず、他の人にはなにも言わせないものがある人たちが、どんな時代においてもスターなのかなって思う。

―確かに、名前を挙げてくださったThe 1975やビリー・アイリッシュを見ていても思うのは、「この人たちは、心からものを言っているな」っていうことなんですよね。

川上:まだ世界が見ていない、バンドメンバーやスタッフすら見えていない。でも、その人しか見ることができていないものがある……そういう人が強いんだと思います。

生きることって、傷つくことだと思うんですよ。

―[ALEXANDROS]は、今年の夏はアジアツアーも行われていたんですよね。そうした海外のライブを通して感じられてことというのも、やはりありますか?

川上:アジアツアーに行ってわかったのは、日本のオーディエンスはノリ方が割とみんな同じだったりするけど、外国のオーディエンスはノリ方が本当に自由だってこと。それぞれが自分のスペースと動き方を把握したうえで音楽を楽しんでいるんだなって思います。海外では、ルールがあるようでないようなライブ会場でも、荒れ狂ってはいるんだけど、そこにちゃんとした社会性があったりするんですよね。

―なるほど。たしかに、日本のオーディエンスは、ノリ方が結構揃いますよね。

川上:本当に揃うんですよね。しかも、演奏が終わるとみんな一斉にピタッと静かになりますから。あれ、ステージから見ているとなかなか怖くて……1回経験してみた方がいいですよ(笑)。

―そう簡単に経験できるものではないです(笑)。

川上:良くも悪くも、日本って特殊なんですよね。自分も日本人だから余計思うんですけど、みんなが同じノリ方をしているがゆえの窮屈さや自由度のなさもあるけど、だからこそ、1つのショーをお客さんと一緒に作ることはできるっていう良さもあるし。……それに、どれだけ「自由がいい」といっても、日本は統制が取れている国だからこそ、それが1回外れてしまったらときにどうなるのか? っていうのは、怖くもあるじゃないですか。統制が取れていないSNSの世界を覗いてみると、日本人って本当に辛辣だなって思うし。

―たしかに、そうですよね。集団心理が暴走したときの怖さ、というか。

川上:だから難しいんですけど、僕らのライブを観にきてくれたお客さんには、できるだけ自由に、僕が喋っている間にも、喋っていてくれて構わないよって言うようにしています。もし僕が「黙れ」と言っても、喋っていてくれて構わないし、全然、シンガロングしてくれても構わない。「声を出す」って、それだけで空気が変わったりするし、そうすることで、お客さん1人ひとりが気づかなった自分自身に気づけたりするものだと思うので。

―最初にも少し言いましたけど、“あまりにも素敵な夜だから”の歌詞の主人公は、鬱屈とした日常や、そこでまとわりつく不安や苦しみから解放される瞬間を願っている……そんな印象を受けました。だとすると、この主人公が解放される瞬間に、その背後に流れている音楽ってどんなものなんだろう? と思ったんです。この時代を生きる人々の気持ちを解放させる音楽、といいますか……。川上さんはどう思われますか?

川上:いろいろ話しましたけど……それがわかれば、苦労はしないんですよね(笑)。

―そうですね(笑)。

川上:自分の音楽をどんな人が聴くのかなんてわからないし、今の世の中がどんなものを求めているのかなんていうことも、わからないですからね。たとえば“ワタリドリ”があれだけ遠くまで届く曲になった理由も謎ですし。チャートを見ればわかるのかもしれないですけど……でも、やっぱりわからないですよ。だから、自分の作る曲は「叫び」みたいなものになっていくしかないんですよね。

同曲は2019年8月にYouTube上での再生回数が1億回を突破した。

―やはり、川上さんにとって音楽は「叫び」なんですね。

川上:それはそうですね。ただ、なんとなく思うのは、自分はサラリーマンを経験したうえで、バンドでデビューしているので、どうしても「仕事をしている人たち」っていうのは意識しているかもしれない。生きるために金を稼いで、そんな日々のなかで、失敗したり間違えたりしながら、試行錯誤している人たち。「仕事」っていうのは、自分のなかでの大きなテーマなのかもしれないですね。

―それはすごく重要なポイントですね。“あまりにも素敵な夜だから”も、曲は非常にポップだし踊れるけど、歌詞には「生活」や、それに伴う「痛み」がちゃんと刻まれているんですよね。

川上:生きることって、傷つくことだと思うんですよ。人は、どうしたって死にゆくわけですし。でも、そのうえで、どうやって生きようとするのか?「死」へ、どうやって辿り着こうとするのか? ……そういうことを考えたときに、僕はやっぱり、楽しみながら生きたいんですよね。

だから踊りたいし、“あまりにも素敵な夜だから”でも<このまま、踊り果てるよ>って歌いたかったんです。それは、僕自身の人生でもいろいろ経験してきたし、[ALEXANDROS]も、本当にいろんなことがあってここまできたバンドだからこそ、心から言いたかったことだなって思います。

『あまりにも素敵な夜だから』ジャケット画像" zoom="https://former-cdn.cinra.net/uploads/img/interview/201910-alexandros_nktkk-photo12_full.jpg" caption="[ALEXANDROS]『あまりにも素敵な夜だから』ジャケット画像"] [ALEXANDROS]“あまりにも素敵な夜だから”を聴く(Apple Musicはこちら

リリース情報
[ALEXANDROS]
『あまりにも素敵な夜だから』

2019年10月30日(水)配信

[ALEXANDROS]
『Pray』

2019年5月13日(月)配信

[ALEXANDROS]
『月色ホライズン』

2019年7月5日(金)配信

[ALEXANDROS]
『月色ホライズン(chill out ver.)』

2019年8月1日(木)配信

プロフィール
川上洋平 (かわかみ ようへい)

2007年に本格始動した[ALEXANDROS]のボーカル、ギター。2015年よりユニバーサルミュージックとグローバル契約を結ぶ。2016年11月、6枚目のフルアルバム『EXIST!』で、オリコンウィークリーチャートで初登場1位を獲得。2018年8月には自身初となるZOZOマリンスタジアムでのワンマンライブを成功させ、11月には7枚目となるアルバム『Sleepless in Brooklyn』をリリース。2019年に入ってからは、『Pray』『月色ホライズン』『月色ホライズン(chill out ver.)』『あまりにも素敵な夜だから』を配信リリースしている。



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