SUPER BEAVERが表す、人生のすべてをハイライトにする生き方

SUPER BEAVERを語る際に切っても切れないのが、このバンドが「圧倒的な負け」から始まったという事実である。鳴り物入りのメジャーデビューを果たしたものの、結果が伴わない日々の中で心の原風景を失い、当時の彼らは疲弊し切ってしまった。だからこそ彼らは、もう一度自分たちの手と足と心で人と繋がりたいという願いだけを灯台にして、インディーズでの活動を選択した。それが2011年のことだ。

そんな過去を持つからこそ、SUPER BEAVERは「人との出会い」の一つひとつに意味と歓びを見出していったし、徹底的に人を大事にして、人と人がともに笑い合うにはどうしたらいいのかを探求して、歌にしてきた。初めて柳沢亮太と会って話した時のことは今も忘れられないが、2012年に直接連絡を取って「取材をしたい」と切り出した僕に対して、彼は「そう言ったって、メディアの人間は都合よく褒めて都合よく裏切るじゃないか。本当に信じていいのか」と言ったのである。これは牽制でも攻撃でもなんでもなく、ただ純粋に信用し合える人間を求め続ける「切実」の表れなんだと思った。

とにかく、人への誠実さを求めてきたバンドである。言うまでもなく、何もないところから始まったからこそ、人との出会いがエンジンになってきたバンドだからだ。僕らはひとつだなんて頭ごなしに歌わず、一人ひとりがバラバラであるからこそ、重なり合った瞬間にロマンを見られるんだと伝える。わかり合うことが難しくても、それぞれの日々と感情を尊重することはできるんだと血眼で訴える。悔しさや怒りよりも、その大元にある大事なもの・好きなものに目を向けることで、マイナスの感情を希望に転化していけるのだと大きな声を打ち上げる。トレンドには目もくれず、「自分たちを形成した音楽」にも一切嘘をつかず、ギターロックやJ-POPやパンクロックやフォークをごった煮にしてぶっ放す。綺麗事をただの綺麗事にせず、本気の理想として貫いてきた血眼の信念がSUPER BEAVERをSUPER BEAVERたらしめてきたのである。彼らが闊歩するのは、音楽の王道以上に人間の王道なんだと思う。

SUPER BEAVERがメジャーレーベルーーしかも約10年前に所属していたレーベルとの再契約を発表したことは、上記した道のりをそのまま体現したこととイコールだ。「メジャーに行くこと」が重要なのではなく、過去の悔しさを自分たちの強さに変えてきたからこそ、過去を超えていけるのだと。悲しみも、未来の歩き方によって希望に変えていけるのだと。そのことを文字通り生き様として表す姿が輝いていることに心が昂ぶるのである。活動規模にしろ音楽のスケールにしろ、もはや「負けから始まったこと」を語る必要もないところまで駆け上がってきたバンドだが、しかしすべてがドラマティックな線になった今だからこそ、SUPER BEAVERの歩みを語り尽くそうと思った。 さあビーバー、いよいよ行く時だ。行け、行け。

「メジャー再契約」っていうトピックは、メジャーに行くことが大事なんじゃない。過去を超えられるところまできたビーバーのことを歓んでくれる人がいっぱいいて、そこにロマンがあることが嬉しいんだよね。(柳沢)

―『ハイライト / ひとりで生きていたならば』というシングルが出ます。約10年越しでのメジャー再契約、当時と同じレコード会社への復帰というドラマ、そして何より、バンドのど真ん中をドンと表現した楽曲の熱量。いろいろ含めて、この作品論だけで語れる作品じゃないと感じて。SUPER BEAVER(以下、ビーバー)とはどんなバンドなのかをそのまま語り合いたいと思わされました。

渋谷龍太(Vo):ははははは。そうだよね。でも決して何かを狙ったわけじゃなく、今の自分たちを素直に表現した結果として、バンドの新しい分岐点に相応しい作品になったというか。まあ、厳密に言えば分岐点ではあっても新しいことは何もないんだけどね。バンドのスタンスが変わるわけでもないし、今まで繋がってきた人たちとも一緒にやっていくわけだから。

―今おっしゃった通り、今回の曲も決して新しい一面を見せるものではなくて、非常にストレートな疾走感とドラマティックなバラードをドンと置いていくものになっていて。自分たちでは、どんな作品ができたと感じられてますか。

上杉研太(Ba):新しいことをしてないっていうのは、まさにそうだね。でも、その都度最新の自分たちを保存し直してる感覚はあって。何かがレベルアップしていて、何かが深みを増してる。確実に最新の自分たちが表現できてるって思えるかな。

―逆に伺うと、何によってビーバーの音楽は更新されていってると思いますか。

柳沢亮太(Gt):うーん……なんだろうね。2019年はライブを中心にしてたんだけど、その裏側ではずっと制作をしていて。ゴールを設けずに自然なリズムで曲を作ってたんだけど、その中ではリズムが主役の曲もあったし、メロウな曲もあって。だから、今回の作品で言えば決して新しいことをしていないんだけど、バンド全体の音楽面で言えば、間口や選択肢が広がった上で、ストレートなものをピックアップしたっていう感じかな。その基準にはもちろん、メジャー再契約っていうタイミングもあったとは思うんだけど。

に所属。2018年には初の日本武道館公演を開催し、チケットは発売日に即日ソールドアウトを記録。2020年1月には代々木第一体育館でワンマンライブを2days開催し、両日完売。『未来の始めかた』『361°』『愛する』『27』『歓声前夜』などの作品を経て、2020年6月に古巣・Sony Musicより『ハイライト / ひとりで生きていたならば』をリリースする。" zoom="https://former-cdn.cinra.net/uploads/img/interview/202006-superbeaver_yjmdc-photo1_full.jpg" caption="2020年1月に行われた、代々木第一体育館でのライブより(撮影:青木カズロー)
SUPER BEAVER(すーぱー びーばー)
2005年4月、東京都で結成されたロックバンド。2009年6月に、シングル『深呼吸』でメジャーデビュー。2011年よりインディーズでの活動をスタートし、自主レーベル「I×L×P× RECORDS」を立ち上げたのち、shibuya eggman内に発足した[NOiD]に所属。2018年には初の日本武道館公演を開催し、チケットは発売日に即日ソールドアウトを記録。2020年1月には代々木第一体育館でワンマンライブを2days開催し、両日完売。『未来の始めかた』『361°』『愛する』『27』『歓声前夜』などの作品を経て、2020年6月に古巣・Sony Musicより『ハイライト / ひとりで生きていたならば』をリリースする。"]

―2017年の『真ん中のこと』から『歓声前夜』、そして『予感』までのタームはリズムが主役の曲が多くて、より大きな規模でのライブを意識したリズムバリエーションを会得していった時期でしたよね。その上で、特に“ハイライト”では本来のストロングポイントを研ぎ澄ませることができたというのもありますか。

上杉:確かに。バリエーションを増やす時期を経たからこそ出せたストレートパンチな気はする。もっと歌が届くようにリズムを変えてみようとか、ライブの景色をこうしたいからアレンジを変えようとか……そうやって試行錯誤してきたのも、元々ストレートしか打てないバンドだっていう自覚があったからなんだけど。で、当時は意識的にやらないといけなかった技術的な部分が、今ようやく自然と出るようになってきたんだよね。だから、あくまでシンプルな楽曲なんだけど、以前よりもレベルアップしてるんだと思う。

SUPER BEAVER『歓声前夜』(2018年)を聴く(Apple Musicはこちら

―血肉にできた技術やアンサンブルを自然体で表現できてると。

藤原“32才”広明(Dr):具体的に言えば、以前ならクリックに対してオンであろうとしていたところがフリーフォームになってきて。意識して聴いてみると、実はサオ隊(ギターとベース)がちょこっと合ってないところとか、ドラムが微妙にズレてるところもあるの。どういうことかって、少しのズレがあったとしても、それをグルーヴにできるようになったっていうことで。これは、去年あたりから、ぶーやんの歌のリズムがすごく明確になってきたのが大きいと思うんですよ。

藤原“31才”広明(当時)(撮影:日吉“JP”純平)

―元々、歌詞カードを見ないでも言葉が明確に入ってくるのがビーバーの歌の美点でしたけど、歌唱自体が一層丁寧になってきたから、歌に対するバンドが自在になれたっていう話?

藤原:そうそう。去年はプリプロをたくさんやったり、ライブの規模が広がったりして、ぶーやん個人の歌うことに対する努力がこれまで以上にあったからだと思うんだけど。

―去年は特にホールやアリーナでのライブが増えたり、フェスでもメインステージが主戦場になったりしたからこそ、歌を研ぎ澄ませる必要があったということ?

渋谷:そうだね。広い会場でやることも増えたからこそ、そこは意識的だったと思う。

撮影:青木カズロー

バンドでもなんでもそうだけど、個々が好きなことをやれて、お互いに尊重できて心から楽しめていたら、それが本当の「まとまり」になると思うんだよ。(上杉)

藤原:やっぱり歌に対しての「正しいリズム」って、クリックに対してオンであることとは全然違うんだよね。この言葉・この歌に対しては走ったほうがいいのか、溜めたほうがいいのか……言葉とメッセージが第一であるバンドだからこそ、歌に対してリズムのアプローチを変えていくことへの意識はどんどん上がってると思う。

上杉:歌と言葉が軸だっていう意識があるバンドだからこそ、歌が明確になると、それぞれが自由になれるよね。その開放感みたいな部分はサウンドに出てると思う。バンドでもなんでもそうだと思うけど、個々が好きなことをやれてお互いに尊重できて心から楽しめていたら、それが本当の「まとまり」になると思うんだよ。だって、個人が心から好きに生きられたら、わざわざ人にとやかく言うこともなくなると思うから。

―まさに、ビーバーが歌ってきたこととも繋がりますよね。あくまで尊重し合うために、個々が本音の生き方をしたほうがいいっていう。

上杉:そこは通じてるよね、メッセージも考え方も。そういう意味では、今回の作品のストレートさっていうのは、その真ん中を改めて示したと言えるのかもしれないけど。

上杉研太(撮影:日吉“JP”純平)

―そうですよね。10年前にドロップアウトしたレーベルに戻ることは、「メジャーに行くこと」が大事なんじゃなく、悔しい思いをした過去を歓びに変えに行くための選択であり、ロマンだと思ったんです。そのあたりの心持ちとしてはどういうものがありましたか。

柳沢:ああ、そう言われたらまさにだと思う。「メジャー再契約」っていうトピックは、メジャーに行くことが大事なんじゃなくて、ビーバーの歩みとしてのロマンがそこにあったからで。メジャーに行きますってことも、本来はただCDをリリースする場所が変わるだけの話で、ビーバーの曲を聴いているだけの人からしたら、そこまで大差ない出来事だと思うの。それでも、自分のことのように歓んでくれる人がいっぱいいて。で、そのことが俺たちは嬉しいんだよね。

4月8日に公開されたインタビュー映像にて、Sony Musicとの再契約が発表された

その都度噛み締めながら点を打っていくから、進んだ先で全部が線になっていく。その瞬間がハイライトだったと思えるようにするためには、その先に行くことが大事なんだよね。(渋谷)

―自分たちがどうというより、人とともに共有できることが歓びなんだと。

柳沢:そうそう。逆も然りで、これまでに味わってきた悔しさだって、俺たちと同じように悔しいと思ってくれる人たちがいたから悔しかったんだよ。10年前にメジャーから離れて、インディーズに戻って活動してきた中で、メジャーから落ちたバンドが過去を超えるところまで来たことを一緒に歓んでくれる人たちに出会ってきたんだよね。それが俺たちの思う「ロマン」でさ。その人たちと一緒に笑い合うための次のステップとして、メジャーに戻ることが自然な選択肢になったというか。

だから、「メジャーに行くから」っていうこと以上に、バンドの歩み・歴史そのものが曲の中に入ってるとは思う。悔しかったことも、怒りを覚えたことも、今をどう生きるかによって素敵なエネルギーや歓びに変えていけるんだよって。それを体現してきた自負もあるから。

―今がハイライトだっていう意味合いじゃなく、どんな感情も自分のハイライトにしていけるんだよっていう、このバンドの歩みや生き方がまるっと表現されていますよね。

渋谷:“ハイライト”は「メジャーにきました」っていう曲じゃないからね。もちろん、過去にメジャーで負けたことも切り離せないし、その経験が原動力のひとつになってきたのは間違いない。だけど大事なのはメジャーと再契約したことじゃなく、自分たちが体現してこられたことの最新形として「どんな瞬間もハイライトにしていくのは自分自身だ」って歌うことだったんだよね。

渋谷龍太(撮影:日吉“JP”純平)

―日本武道館のライブに密着させてもらった時、「ここが頂点じゃなくてあくまで通過点だって言う人も多いけど、俺はその都度その都度、毎回を到達点だと思いたい」って話してくれたじゃないですか。まさにその姿勢を表している歌だなって改めて思ったんですよ。

渋谷:そうだと思う。“ハイライト”っていう言葉を歌えたのは、言ってくれた通り、これまでの歩みの全部を「通過点」にしなかったからだよね。過去があったからこそ今があるっていうリンクがあって、今から見える未来があって――ただ線を引いた通りに歩いてきたわけじゃなくて、その都度噛み締めながら点を打っていくから、進んだ先で全部が線になっていくものだと思うんだよ。

特に俺らは、そういう歩みを踏んできてるバンドだと自覚してるから。ソニーからメジャーデビューして、そこから落っこちて、インディーズでやってきて、以前のレーベルにもう一度戻る……傍から見れば面白いストーリーだろうし、悔しさを悔しさのままにしてたら面白くないって思い続けてきたバンドだから。今目の前にあることを全力で噛み締めて、悔しい想いもして、人と繋がって。その瞬間がハイライトだったと思えるようにするためには、その先に行くことが大事なんだよね。

―今起こったことをハイライトにしてドラマにするのは未来の生き方次第だっていうことですよね。そういう意味で今回は、ビーバーとはどんなバンドなのかを真っ向から示したり、見つめ直したりするタイミングでもあったと思うんですが。

柳沢:そうだね。だからこそ“ハイライト”っていう言葉が出てきたんだろうし。……やっぱり俺たちは、どんなに細々としたことでも全部がハイライトになるように生きてるんだって思ったんだよね。高校で結成しましたとか、10代限定の大会で優勝してトントン拍子でデビューが決まりましたとか、だけど上手くいかなくて、とか……ぶーやん(渋谷)が言ったように、その瞬間に意味があったと思えるのは、その先を生きようとするからこそだから。

柳沢亮太(撮影:日吉“JP”純平)

悔しさであれ歓びであれ、自分たちのエネルギーになる感情は、常に「人と人」の中にあるんだよなって気づいてきた道のりのような気もするんだよね。(柳沢)

―たとえば最悪だった過去も、未来によって捉え方を変えることができる。未来によって過去を変えることができるというか。<今がもし最後になってしまっても / 構わないなんて / やっぱり思えなくて / これからもずっと続いていくように / その為に僕は / 必死でありたいのさ>という言葉も、その想いから出てきたんですか。

柳沢:これはちょっと違う話になるかもしれないんだけど……「これが最後かもしれない」とか、「今日が最後になってしまっても構わない」っていう考え方は、意気込みとしてはわかるんだけど、本気でそう思えるかどうかって言ったら、ピンとこなくて。

―それはどういう意味で?

柳沢:今ここで燃え尽きてもいいって思うのは、やっぱり何かを繋ぎたいからなんじゃないの? って俺は思っちゃうからさ。もっといい明日を望むからこそ、全力で今日を生きるっていう話のような気がするんだよ。

SUPER BEAVER『未来の始めかた』(2012年)を聴く(Apple Musicはこちら

『27』(2016年)収録

―なるほど。ビーバーがインディーズに戻った最初に放った“星になりゆく人”の時は、このままじゃ死ねないから明日を望むんだっていう歌でしたよね。それが、もっともっと楽しい瞬間を味わいたいから生きるんだっていう歌に変化してきた道のり自体を、ここに感じるんです。

柳沢:全力を尽くす理由の矛先がどんどん変わってくるというか……明日に向けてっていう気持ちは、続ければ続けるほど強くなっていく気がする。楽しいことを諦めたくないというか、明日が来るかはわからないけど明日は来るって信じ切りたいというか。

―敢えて聞きますけど、明日に向かう気持ちが強まっていくのは、どうしてなんですか。

柳沢:楽しいことや嬉しいことを知ってしまったからだと思う。それこそ“星になりゆく人”の話もそうだけど、もし今日が悔しい日だったとしたら、明日が来ないと悔しいまんまになるじゃん。だから自分たちは明日を望み続けたし、常に悔しさを更新することがエネルギーになってて。

やっぱり、人と出会って、力を貸してくれる人がいて、「お前らのことが好きだよ」って言ってくれる人がいて……人と人の出会いの中で、悔しさを超える歓びを知ってきたんだよ。悔しさであれ歓びであれ、自分たちのエネルギーになる感情は、常に「人と人」の中にあるんだよなって気づいてきた道のりのような気もするんだよね。

『歓声前夜』(2018)収録

「みんな」なんて言葉も、一枚引っぺがしてみれば個々でしょ。個人を意識するからこそバラバラな人がクロスする瞬間にロマンを持てるし、その瞬間が素敵だと思えるんだよね。(渋谷)

―それこそ“ひとりで生きていたならば”で歌われているように、ビーバーが人と人の関係性そのものを歌にし続ける理由ですよね。

柳沢:そうだね。根本にあるのはシンプルな話で、悔しい気持ちは悔しいままじゃ面白くないし、楽しくなりたいから俺らは生きてるんだよね。じゃあどうやったら更新できるのかって、それはもう、更新できたと思うまでやり続けるしかないんだけど(笑)。だから明日を求めたいし、求めるなら、いい日になるって信じて生きるしかないじゃん。そういう素晴らしい日に至るまでの感情や物事も、俺らは尊重したいって思うんだよね。だから、怒りも悔しさも全部がハイライトになり得るんだよっていう歌になったんだと思う。

-そうですよね。ただ「前向きであれ」と言うための歌じゃなくて、生きてきた過程を全部掬い上げて持っていくための歌というか。

渋谷:楽しいほうがいいに決まってるし、好きな人と笑い合えるほうがいいに決まってる。その上でわきまえなきゃいけないのは、大事なことは人それぞれで、決して正解はひとつじゃないって理解することでさ。正解を見つけ出そうとか、何が正義かとか、むしろそれとは逆のことを歌ってる気がする。

撮影:青木カズロー

―尊重としての話ですよね。それは今の時代で特に大事なことだと思うし、正しさよりも前に、共有や理解のフェーズをすっ飛ばさないところが、ビーバーの歌の輝きと説得力になってると思うんですよ。

渋谷:世の中の話で言えば、本当にそうだよね。いちいち揚げ足とってこき下ろそうとする人が多いのもさ、結局は「個人」の履き違えだと思うの。揚げ足をとって何かを責めてる時って、その人の正義を体現してると思えちゃうでしょ。で、正義を体現してる気になれれば、気持ちいいし安心できる。でも裏を返してみれば、自分にとって何が大事かを認識できていないことの不安があるから、安心を求めて人を攻撃しちゃう気がするんだよ。

「定義の上だけで言ったら自分は正義なんだから」「個人の意見なんだから」っていう理屈の上で、何をやってもいいと思っちゃってるんだろうけどさ、「自分は自分だ」っていうのを、何をやってもいいことの理由にすり替えちゃうのが一番危険なんだよね。

『歓声前夜』(2018年)収録

―自分は自分だ、あなたはあなただって歌うのは、それぞれに好きな人や大事なものがあるっていうことを理解し合うため。傷つけてもいい理由づけではないと。

渋谷:そうそう。間違っても、正義感とか世直し先生みたいな気持ちで歌ってないから。俺らは独りよがりな正義を押し付け合って誰かを打破するために生きてるんじゃなくて、楽しいほうがいいに決まってるっていう気持ちだけだから。じゃあどうしたらいいのかって、やっぱり大事なのは、原点に戻ることだと思うの。怒りや悲しみだって、大元を辿れば、自分が大事にしているものから生まれてきてるはずじゃん。

―大事なものがあるから怒るし、希望があるから凹むっていう。

渋谷:だったら、FUCKやヘイトをそのまま歌うんじゃなくて、その大元にあるLOVEの部分を歌ったほうが絶対に楽しいよね。その根本に目を向けないと、どんどん自分自身から離れていっちゃう気がするんだよ。当たり前の話になっちゃうけど、嬉しさや楽しさは何かを責めることからは生まれない。自分だけで幸せになれるっていう人だって、人がいなければ自分の感情だって行き場をなくすんだから。その根本を絶対に忘れたくないっていう歌を歌っている気もするんだよ。

『愛する』(2015年)収録

『361°』(2014年)収録

―まずは個々に引き戻すことからしか始まらないですよね、大きな問題も、些細な幸せに笑うことも。

渋谷:個人の中にしかないと思うんだよ、人の心を想像するための土壌って。頭ごなしに「ひとつになろう」なんて、まやかしだから。「みんな」なんて言葉も、一枚引っぺがしてみれば個々でしょ。それに、個人を意識するからこそバラバラな人がクロスする瞬間にロマンを持てるし、素敵だと思えるわけで。それができるから音楽をやってるんだと思うしさ、その素敵なところを見て自分たち自身が感動するためにやってるんだよね。

―あくまで自分のためにやってるっていうこともすっ飛ばさないのは、誠実さとしての話なんですか。

上杉:うーん……純粋に、自分のためにやってるし、その上で人にも楽しんでほしいってことも両方ないと、嘘になるからだと思う。15年やってきて、勢いや青春だけじゃないのは事実だから。

―でも、音楽はどんどん青春感を増してるじゃないですか。

渋谷:はははははは。そうだね。

『27』(2016年)収

撮影:日吉“JP”純平

―具体的に言えば、学校の教科書に載っていてもおかしくない合唱歌的なメロディやシンガロングが増えていくし、音楽的にも、一直線な快感が強まっていく。これはなんなんですか。

渋谷:上杉と逆のように聞こえるかもしれないけど……青春を失くしてないからだと思う。俺個人で言えば、自分はプレイヤー「だけ」でいるつもりがなくて、プレイヤーでもありリスナーでもあり音楽ファンなんだよね。ガキの頃から持ってる音楽への感動は失くせないんだよ。だから、取り組めば取り組むほど無邪気な青春になっていっちゃうのはしょうがない(笑)。

―渋谷くんはスッと言いましたけど、青春であり続けるのが一番難しいことだと思うんですよ。無邪気さや青春を殺さないためには、何が大事なんだと思いますか。

渋谷:もちろん俺個人はフロントマンとしての自覚を強めて実践してきたわけだけど、自分のことを強いエネルギーで考えて責任感を強くしていくと、バンドメンバー個々のことにも目がいくようになるんだよ。あいつも頑張ってるとか、メンバーに負けないようにとか……個々のレベルアップを促すような緊張感もチームの中に生まれてくるし、責任感も尊重も強まっていく。その積み重ねが信頼感になって、どんどん素直に音楽を楽しめるようになっていくんだよね。

『27』(2016年)収録

生き方が先にあったんじゃなくて、音楽を通じて知ってきたことのほうが多い。たとえばの話、出会った人が運命の人かどうかなんて、その時にはわからない。「出会った後にどうするか」によって、その出会いに意味が生まれていくんだよね。(柳沢)

―変な言い方になるけど、責任を果たすことで自由になれるし、心から楽しめるようになるっていうこと?

渋谷:そうそう。人と人っていう部分を音楽にし続けてきたからこそ、メンバー間で求めることもハッキリしてて。言い訳をせず自分に責任を持つことが、結果として自由に繋がるって知ってきたから。自分の生き方がバンドに還元される。それは無理強いし合うものじゃなくて、お互いの生き方の集合体としてバンドを捉えるって話に尽きると思うんだけど。人と人はひとつになれないけど、でも尊重はできるって歌ってきた俺らの意志は、バンドの人間に対しても向いてるんだよね。

―先ほども申し上げましたが、個々に立ち返ることから「尊重」という理想が現実になると思うし、そう考えると、ビーバーの真っ直ぐさは結果として時代へのカウンターでもあり、時代の一番の理想という意味での「ポップ」という概念も体現すると思うんです。今は、慈しみこそがパンクになっていくというか。

柳沢:ビーバーはずっと「ポップミュージック」を掲げてきたけど、「ポップ」っていう概念が「ポピュラー」からきてるのであれば、多くの人が「こうであったらいいな」って思える精神性を、歌うだけじゃなく貫けるかどうかだよね。音楽的にそれを表現している人もいるだろうし、歌詞で表現している人もいるだろうけど、俺らは人間の集合体として、人間同士の関係としてそれを体現できたらいいなって思うの。その「人間同士」の部分を音楽にできるからバンドを続けているんだと思うしさ。

SUPER BEAVER“ILP”を聴く(Apple Musicはこちら) / 『愛する』(2015年)収録。「ILP」とはアイラブポップミュージックの略語で、メジャー離脱後に立ち上げた自主レーベルの名前でもある。

撮影:青木カズロー

―本当にそうですよね。

渋谷:決して、平和主義者でやってるわけじゃないんだよね。悪がなくなれば最高だ、みたいな気持ちとも全然違う。希望や願望っていうのは、マイナスの経験から生まれてくることも多いと理解してるからね。だから「好き」だけじゃなくて、「嫌い」だけじゃなくて、両方を知ることが人の感情を大事にするっていうことだと思ってるんだよ。幸せな瞬間、最高な瞬間と同じくらい、キツかったことや最悪だったことも同じ土俵で大事にしなくちゃいけないんだよね。

たとえば人へのリスペクトや優しさって、想像力の部分によるところが大きいよね。じゃあ人の心を想像するために、まず自分が経験しなくちゃいけない。この人悲しいんだろうなって想像した時に、きっとその根っこにあるのは自分の悲しい体験でさ。感情や人を尊重する歌を歌いたいのも、音楽を通じて、俺らがそうしてきてもらったからなんだよね。お前らのことが好きだよって言ってくれた人がいて、救われたように。お前らの悔しさがわかるよって言ってくれて、心が軽くなったみたいに。

―ありがとうございます。そして、“まわる、まわる”です。前のメジャー時代に出した最後の作品に収録されていた楽曲を再録されています。あの時は希望として歌われていたことが、今の実感になって歌われるようになったんだなと感じました。

渋谷:もうね、今日話したことを抜粋していけば、この歌になっちゃうと思うよ(笑)。

―ははははは!

渋谷:それくらい、この曲通りの歩みだったんだなって思う。なおかつ、メジャー時代最後に出した曲をメジャー再契約のタイミングでもう一度歌うっていうタイミングの面でも、今またやりたいと思った。数年前の僕、数年先の僕、今の僕――それを思い浮かべて歌うだけだった当時に対して、今は実感を伴って振り返ることもできるし、今に対して確信を持てているし、未来に対してワクワクできる気持ちもある。あれから10年経ってから歌う力強さだったり、意味合いだったりをハッキリ出せると思ったんだよね。

代々木第一体育館公演より。“まわる、まわる”のリリックを背負っている場面(撮影:青木カズロー)

柳沢:あの頃は自分たちの願いみたいな歌ではあったけどさ、今は、これは決してSUPER BEAVERだけの歌ではなくなったと思うんだよね。いつだかわからない未来に問うた歌を、「今はこうだよ」っていうふうに歌えて、それぞれの生活に重ねて聴いてもらえたらいいなって思える……それこそロマンがあることだよね。

―過去を回収していく、どんな過去も未来に持っていく、なおかつ、全部を糧にして前を向いて生きていく。ブレなさとバンドのロマンと。その両方を表現している素晴らしい曲だと改めて思います。

柳沢:まあ、見る人が見たら、いちいち考えててめんどくさいバンドだなあって思うのかもしれないけどね(笑)。

―はははははは! 話すたびに生き方の話になりますけど、生き方が音楽になって音楽が明日になっていくバンドなんだと実感させられます。

柳沢:このインタビューもそうだけど、結局、生き方や人生の話になっちゃうからね。

―生き方を貫くだけじゃなく、それらを全部音楽にしたいのはどうしてなんだと思います?

柳沢:きっと、昔は無邪気に音楽が好きなだけだったと思うの。バンドに憧れて、ステージに憧れてただけ。だからむしろ、生き方や人との繋がり、人と出会うことの歓び……それは音楽に通じて知ってきたんだと思う。生き方が先にあったんじゃなくて、音楽が教えてくれたことのほうが多い気がする。

人の話でもそうだと思うの。たとえば出会った人が運命の人かどうかなんて、その時にきっとわからないんだよ。だとすれば、「出会った後にどうするか」によって、その出会いに意味が生まれていくんだよね。そうやって自分たちに起こることをいちいち大事にして、自分の選択に意味を持たせるように未来を望んできたのがSUPER BEAVERなんだと思いますね。

リリース情報
SUPER BEAVER
『ハイライト / ひとりで生きていたならば』初回生産限定盤(2CD)

2020年6月10日(水)発売
価格:1,900円(税込)
SRCL-11496-7

[Disc1]
1. ハイライト
2. ひとりで生きていたならば(映画『水上のフライト』主題歌)
3. まわる、まわる(P&G「ジレットスキンガード」WEBムービーテーマソング)

[Disc2]
1. 東京流星群 (17.04.30 日比谷野外大音楽堂 単独公演)
2. シアワセ (18.04.30 日本武道館 単独公演)
3. 正攻法 (19.12.30 COUNTDOWN JAPAN 19/20 EARTH STAGE)
4. 予感 (20.01.12 国立代々木競技場 第一体育館 単独公演)
5. 秘密 (20.01.12 国立代々木競技場 第一体育館 単独公演)

SUPER BEAVER
『ハイライト / ひとりで生きていたならば』通常盤(CD)

2020年6月10日(水)発売
価格:1,300円(税込)
SRCL-11498

1. ハイライト
2. ひとりで生きていたならば(映画『水上のフライト』主題歌)
3. まわる、まわる(P&G「ジレットスキンガード」WEBムービーテーマソング)

プロフィール
SUPER BEAVER
SUPER BEAVER (すーぱー びーばー)

2005年4月、東京都で結成されたロックバンド。2009年6月に、シングル『深呼吸』でメジャーデビュー。2011年よりインディーズでの活動をスタートし、自主レーベル「I×L×P× RECORDS」を立ち上げたのち、shibuya eggman内に発足した[NOiD]に所属。2018年には初の日本武道館公演を開催し、チケットは発売日に即日ソールドアウトを記録。2020年1月には代々木第一体育館でワンマンライブを2days開催し、両日完売。『未来の始めかた』『361°』『愛する』『27』『歓声前夜』などの作品を経て、2020年6月に古巣・Sony Musicより『ハイライト / ひとりで生きていたならば』をリリースする。

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