漫画、雑誌、写真集、何でも見つかる日本最大の古本の街・神保町特集

東京駅至近のエリアに約180店舗もの古書店が集まる「本の街」、千代田区・神田神保町。1880年代以降、大手出版社や印刷所のほか、大学などの教育機関が次々に設立され、そこで働く人や学生を見込んで、数多くの書店が出店したことが「本の街」の始まりとされています。 漫画、雑誌、写真集、建築本から浮世絵まで、ここに来れば日本の出版物はすべて揃うといっても過言ではありません。独自のカルチャーと感性を持った古書店が並ぶ街並みはどこかレトロな雰囲気で、ひとたび足を踏み入れると、そこはまるで異世界のよう。ここでは、そんな神保町にある個性的な古書店のなかから、ほかの街では見られないディープな古書店を紹介します。

※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。

日本で唯一の「豆本」専門店『呂古書房』

神保町駅へは、東京駅から地下鉄を乗り継ぎ10分ほどで到着します。

近くには皇居や東京ドームなどの観光名所があるほか、多くの大学が立地する文教地区として、また古書店やスポーツ用品店、登山用品店などの専門店が建ち並ぶ商業地区としても有名で、平日休日問わず、多くの人でにぎわいを見せている街です。

そんな神保町にある古書店でまずご紹介したいのが、神田すずらん通りの東端、靖国通りに面したビルの4階にある『呂古書房(ろこしょぼう)』。愛嬌のある書体で書かれた看板の、「豆本」の文字に思わず足を止めてしまいました。

ここは日本で唯一、手のひらサイズの小さな本である「豆本」を扱う古書店です。「豆本」は、聖書を手軽に持ち歩くために、1500年代にヨーロッパで生まれた数センチサイズの本が発祥で、日本でも江戸時代に同じようなサイズの豆本が広まりました。現在は主に観賞用として注目されていますが、当時は実用目的の小さな「豆本」もつくられていたそうです。

『呂古書房』では、国内の豆本ブームの火付け役となった「ゑぞ豆本」が誕生した1953年以降の豆本を中心に販売。また豆本のほかにも、版画の入った挿画本や、本に貼って持ち主の名前を記す蔵書票など、小さくて愛らしい、思わず手に取りたくなるアイテムが蒐集(しゅうしゅう)されています。

エレベーターから降り扉を開けると、そこはまさに別世界。30㎡ほどのフロアに小さな豆本がところ狭しと並べられています。

オープンは1993年。オーナーは、神保町の古書店に勤めていたころに豆本と出会い、その儚くも美しい姿に惹かれ、独立して豆本専門店をはじめたのだそう。コレクターや豆本ファンの来店が多いですが、インターネットでの販売も行っているため、最近では海外からの来客や問い合わせも増えているのだとか。

「お店にある豆本の数は1万点以上。見ての通り小さなお店ですけど、サイズが小さいのでたくさん置けるんです」

と、店主の西尾さん。小さく愛らしい豆本ですが、びっしりと並ぶその光景は壮観のひと言です。

なかには直径5mmほどの指でつまむのがやっとのもの、三角形のもの、ハードカバー付きのもの、和紙を表紙にしたものなど、一口に豆本と言ってもその種類はさまざま。手に取りまじまじと観察してみると、ただ小さくてかわいいだけでなく、装丁や内容もしっかりしていることがわかります。

「具体的な数値は定められていませんが、日本では一辺が10cm以下のサイズが豆本と言われています。ただ、そう言うと、書籍をただ小さくしただけと思われるかもしれません。でも、そうじゃない。作品の内容に合わせて豆本用に装丁をつくったものもあれば、版画などが入った豪華な豆本もありますよ」

と西尾さん。読んで、見て、触れて楽しい豆本は、作家やつくり手たちの想いが詰まったひとつの「芸術品」なのです。

物語の内容だけでなく、活字や挿絵による世界観、こだわりの装丁といった魅力が凝縮されている豆本。手のひらに乗せるだけで、作者たちの本への愛情と情熱が伝わってくる、芸術品としての豆本。朝10時30分の開店直後からお客さんが絶えないのは、そんな豆本の魅力が私たちの琴線に触れ、生活に、そして人生に彩りを与えてくれるからなのでしょう。

神保町を訪れたら、ぜひ『呂古書房』に足を運んで、かわいい豆本の魅力に触れてみてください。

店舗情報
呂古書房
住所:東京都千代田区神田神保町1-1 倉田ビル4F
電話番号:03-3292-6500
営業時間:10:30〜18:30
定休日:日曜・祝日
URL:http://locoshobou.jimbou.net/

スタイリッシュな建物が目を引く建築書専門店『南洋堂書店』

靖国通りと千代田通りが交わる「駿河台下交差点」付近を歩いていると、ひときわ目を引く大きなガラス窓が。建築書を専門に扱う『南洋堂書店』です。

1980年に竣工したコンクリート造の建物は、2007年に建築家・菊地宏氏の設計により改修工事が行われ、このスタイリッシュな外観に生まれ変わりました。

店内は通りに面した壁面がガラス張りとなっており、たっぷりと差し込む自然光が明るく、温かみのある空間をつくり出しています。通りからもお洒落な店内が見えるため、足を止め、どんなお店なんだろう? と覗き込む通行人も多いのだとか。

1Fと2Fを吹き抜けにすることで、重厚なコンクリート造の外観からは想像もできないほど、軽やかで開放的な雰囲気が演出されています。

階段を上ると、美しいU字型ラインのフロアが現われました。2Fもガラス張りで、棚に並ぶ蔵書が陽光に照らされています。温かみのある木目調の内装、U字型のやわらかな曲線、そして店内にあふれる自然光。それらがひとつになって、やさしい雰囲気を形成しています。

決して広くはないですが、手すりや棚など手が触れるモノに木の素材を使っていたり、細く主張しない照明を備えていたりと、心地よい空間をつくるエッセンスが細部まで行き届いています。

取り扱う建築書は、古書、新書、和書、洋書、雑誌など多種多様。建築に関する本なら新旧、和洋を問わず扱っています。

建築専門書とはいえ、延々と図面ばかりが並ぶわけではありません。図面前スケッチをまとめた本、建築写真家の本、インテリア関連、建築をベースにしたエッセイなど、建築知識のない人が楽しめる本も多数取り揃えています。

お店には学生から、研究者、建築事務所の関係者まで国内の建築好きが入れ替わり立ち替わり訪れるのだとか。あの本が欲しい、と指名買いで来る人が多いため、長居客が少ないのもこの店の特徴だそうです。

「最近は外国からいらっしゃってくれるお客さまも増えています。欧米やアジア、とりわけ台湾のお客さまが多いですね。長年通ってくれている建築好きの学生さんもいますよ」

そう話してくれたのはスタッフの関口さん。最近は台湾の建築が日本人に人気があり、『南洋堂書店』では、台湾在住の日本人が15年かけて撮り下ろした写真を掲載した『台北・歴史建築探訪(著・片倉佳史)』をはじめ、台湾の建築を紹介する本も多数取り扱っているそう。また、日本語が読めない外国人向けに建築の写真集も多く取り扱うようにしているとのこと。

お店の外観や内観を見るだけでも楽しめるので、神保町にお越しの際はぜひ訪れてみてください。

店舗情報
南洋堂書店
住所:東京都千代田区神田神保町1-21
電話番号:03-3291-1338
営業時間:10:30〜18:30
定休日:日曜・祝日
URL:https://www.nanyodo.co.jp/

漫画好きの夢が詰まった漫画専門店『夢野書店』

神保町駅A6出口を出て、靖国通り沿いを歩くこと約30秒。古書店やカレー店、カフェなどが入ったテナントビル、神田古書センターの2Fに店を構える『夢野書店』は、日本の漫画をメインに扱う古書店です。

店内に足を踏み入れると、そこには明るくカラフルな「漫画の世界」が広がっていました。内装のコンセプトは、「昭和の子どもが思い描いていた未来」。

棚にびっしりと陳列された漫画の背表紙やキャラクターグッズ、天井に吊るされたポスターを見ているだけで、子どものようにワクワクドキドキしてきます。

古書店は通路から棚の上にまで本がびっしり置かれ、窮屈な印象のお店が多いですが、『夢野書店』の通路の幅は広く、全体としてはゆったりとしています。ホッとくつろげる空間にするために、あえて余裕のあるレイアウトにしているそうです。

神保町で1979年から営業していた『中野書店』が閉店することになり、お店を引き継ぎ、2015年に『夢野書店』をオープンしたのが、『中野書店』の漫画担当だった店主の西山さん。

店内には1950年代の少年向け漫画雑誌や、単行本、コミック、同人誌など、漫画好き垂涎の「お宝」がズラリと並んでいます。

訪れるのは60代~70代の方が中心で、昔からの常連さんも多いのだとか。

「私よりもずっとキャリアの長いお客さんばかりで、色々なお店を回っていらっしゃる。だから耳寄りな情報を教えてもらうこともあって、いつも楽しくお話を聞かせてもらっています」

と西山さんは笑顔で話します。

最近はインターネットやSNSでお店を見つけてきた10代~30代の若年層や、女性のお客さんも増えていると言います。

「海外からのお客様も多いですね」と西山さん。海外ではテレビアニメから原作を知り、漫画を好きになるケースが多いと言います。

「アジアからのお客様が多く、特に台湾では『手塚治虫』や『SLAM DUNK』などの展覧会が開催されることもあり、日本の“MANGA”人気が高まっていると聞きますよ」

1950年~1960年代の日本の漫画雑誌は月刊誌がほとんどで、毎号ついてくる付録は大きな特徴のひとつでした。

「付録と言っても、“おまけ”ではなく、すべて漫画家の描き下ろし作品なんです。本編からの続編が描かれていることもあって、付録を心待ちにしている読者さんもたくさんいました」

と楽しそうに西山さんは話します。

『夢野書店』ではそんな付録はもちろん、「ソノシート(塩化ビニールなどでつくられた薄手のやわらかいレコード)」という、レコード機でアニメの主題歌などを再生できる付録も多数扱っています。古くて新しい、そんな漫画グッズに出会える資料館として、ぜひ一度立ち寄ってみてください。

店舗情報
夢野書店
住所:東京都千代田区神田神保町2-3 神田古書センター2F
電話番号:03-6256-8993
営業時間:平日10:00〜18:30 / 土日・祝日11:00〜17:30
定休日:毎月第1、3、5日曜
URL:http://www.yumeno-manga.com/

パンフレットから半券チケットまで、映画に関する印刷物が揃う『ヴィンテージ』

最後に紹介するのは、映画好きがつい長居をしてしまうという古書店『ヴィンテージ』。靖国通り沿いにある特徴的な青い看板が目印です(2019年夏に外観改装予定)。1Fは映画・演劇・スポーツ・サブカルチャーを、2Fは芸能やファッションを中心に扱っています。

『ヴィンテージ』の特徴は、なんと言っても日本随一の品揃えを誇るという映画資料。お店の奥へと伸びる細い通路の両側、天井、足元には、映画に関するポスター、雑誌、パンフレット、チラシなどがすき間なく並べられていて、どこを見ても、映画、映画、映画……。

しかしこの膨大な映画資料、無秩序に並べられているわけではなく、出演者や監督、ジャンルなどできちんと整理されていて、そこに分類のノウハウをうかがい知ることができます。

なかでも、日本随一の品揃えと評されるのが映画パンフレット。その数はなんと約2万種類にのぼり、店主の帖佐(ちょうさ)さんいわく、「映画のパンフレットは日本だけの文化で、ほかの国ではお目にかかれない」のだとか。

そのため欧米やアジアをはじめ、海外からのお客さんが多く、「みなさんパンフレットが気になるようで、自国の映画や邦画のパンフレットを購入していく方が多いですね」とのこと。

特にアジアからのお客さんは多いようで、台湾のエドワード・ヤン、香港のウォン・カーウァイ、韓国のキム・ギドグ作品などがお目当てなのだそう。

「アジア圏の方はほぼ間違いなくこの監督たちの作品を求めに来ます。有名な監督なので値段も決して安くはありませんが、それでも買って行かれますね」

邦画については、『君の名は。』の新海誠監督作品や、スタジオジブリの宮崎駿監督作品、黒澤明監督作品の関連出版物が人気という。

映画公開時に販売されるポスターだけでなく、実際に劇場で使用される非売品のポスターも販売されています。ちなみに昔は現在ほどマスメディアが発達していなかったため、ポスターのデザインで映画の人気が左右されることもあったそう。

お店で最も貴重なものを見せてもらえませんか? そうお願いしてみたところ、帖佐さんがお披露目してくれたのは、1962年に公開された三船敏郎主演の黒澤明監督作品、『椿三十郎』の劇場用ポスターでした。販売価格は20万円(税抜)と高額ですが、それだけの価値がある、正真正銘のプレミアアイテムと言えるでしょう。

昔懐かしい映画の、公開当時の半券チケットもまたプレミアムアイテムと言える逸品で、50音順で丁寧にファイリングされて保管されています。

「半券チケットも日本独自のものなので、外国の方にはぜひチェックしてほしいですね」

お店は広くありませんが、1日では見切れないほど品揃えが豊富な『ヴィンテージ』。映画好きにとってはさながら宝の山に見えることでしょう。そしてその「お宝」一つひとつがキレイに梱包されていて、帖佐さんの映画愛が感じられるのもこのお店の魅力。

映画のパンフレットはデータで管理されているので、探し方がわからなくなったときは、ぜひ帖佐さんに話しかけてみてください。お店や映画に関することなら何でも相談に乗ってくれるはずです。

店舗情報
ヴィンテージ
住所:東京都千代田区神田神保町2-5 神保町センタービル1F・2F
電話番号:1F 03-3261-3577 / 2F 03-3261-3633
営業時間:平日・土曜11:00〜19:00 /日曜・祝日12:00〜19:00
定休日:年末年始
URL:http://www.jimboucho-vintage.jp/


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