コラム

金ローで『トイ・ストーリー』1&2放送。「革新的」だけではない歴史的名作

金ローで『トイ・ストーリー』1&2放送。「革新的」だけではない歴史的名作

テキスト
小野寺系
編集:矢澤拓(CINRA.NET編集部)

おもちゃの物語なのに、人間の「死」を連想させる。大人にもためになる人生哲学を、おもちゃを通して伝える

第1作では、後進に反発を抱くウッディの感情と、その克服が中心テーマとなっていた。ここではそれがさらに進んで、いつか持ち主がおもちゃを捨てる日が来ることへの不安が描かれている。人間でいえば、死を連想させる事態である。シリーズはここで、誰もがいつか経験することになる死を暗示することで、おもちゃと人間に共通する、はかない運命を表現したのだ。

©2018 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
©2018 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

死は避けられない。だからこそ、いまを精一杯生き、楽しむことに意味が生まれる。『トイ・ストーリー』シリーズは、第2作にして、すでに人生哲学を語り、大人も参考になるような、生きる指針を示すものになった。ここまで考えて作品をつくるからこそ、ピクサーはCGアニメーション作品を牽引し、席巻する存在でいられるのだ。

第3作でさらに深まる「死」の影。第4作では、「おもちゃは子どものもの」という哲学すら揺るがし、賛否を生み出した

ピクサー作品によって、その可能性を見いだしたディズニーは、自身もまたCGアニメーションへ完全に転向することを宣言。豊富な資金力でピクサーを買収することになる。そしてもう一度ラセターを呼び戻し、ディズニーアニメ作品の制作を統括させることになった。これによってジョン・ラセターは、ディズニー、ピクサー両方のスタジオの、制作における代表となり、『アナと雪の女王』(2013年)をはじめとするディズニー作品や、さらに哲学的な深みを増していく、『トイ・ストーリー』シリーズ第3作、第4作の制作にも関わった。

『トイ・ストーリー3』(2010年)は、より死の影が濃くなり、廃棄されたおもちゃが最後にどうなるのかという、目を覆いたくなるような運命を見せてしまう。そして、日本のファンの間で賛否の分かれた問題作『トイ・ストーリー4』(2019年)では、これまでの共通の価値観だった「おもちゃの幸せ」という概念が揺るがされる。そう、シリーズが大事にしてきたテーマを否定すらしかねないショッキングな展開が描かれてしまうのだ。

『トイ・ストーリー3』予告編

『トイ・ストーリー4』特報

ピクサーでは、スタッフたちの長いディスカッションによって物語の展開を議論するという方法がとられる。そんな、物語への熱い想いを持つスタッフたちが、シリーズを本気で作り続け、おもちゃを通して人生の真実を描きたいと思うからこそ、シリーズの究極といえる第4作で、真に過酷といえる決断を表現したのではないか。CGの進化だけでなく、アニメーションの脚本が、ここまでの領域に突入したことを示す意味でも、『トイ・ストーリー』シリーズは代表的な存在なのだ。

アニメ界を牽引するピクサー。近年話題にもなった社会的な課題も問われるCGアニメーションの世界で、時代を作り続ける

だが、『トイ・ストーリー4』制作途中でラセターは、スタジオのスタッフに対するセクハラ行為が明らかとなり、ディズニー、ピクサーの両方から去ることになった。『トイ・ストーリー』、『トイ・ストーリー2』の監督を務め、数々のピクサー、ディズニー作品を手がけてきたラセターの手腕と功績は疑いようがないが、偉大な存在だからといって、人権を無視した行為が許されるわけはない。その判断もまた、アニメ界を発展させる要因になるはずだ。ラセターは現在、スカイダンス・プロダクションズに移籍。アニメーション制作には引き続き関わっているが、過去のセクハラ行為に対する非難の目に晒され続ける可能性はあるだろう。

ともあれ、『トイ・ストーリー』シリーズは、新作が作られるたび、技術的にも物語としても、飛躍的な進化を遂げてきた、CGアニメーションの歴史そのものだということは事実である。その最初の2作は、いま現在のアニメ界の確立と、進化をともに味わえるものとなっている。そしてそのさらなる進化に至る第3作、ある意味で究極といえる第4作を楽しむためにも、『トイ・ストーリー』、『トイ・ストーリー2』は必見であり、時代を超えて語られていく重要作であることは間違いない。

Page 2
前へ

番組情報

日本テレビ系『金曜ロードSHOW!』

『トイ・ストーリー』
2020年2月28日(金)21:00~

『トイ・ストーリー2』
2020年3月13日(金)21:00~

監督:ジョン・ラセター

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

岩井勇気(ハライチ)『ひねくれとか言われても俺はただ自分が進みたい道を選んでるだけ』

ドリームマッチでの『醤油の魔人 塩の魔人』、ラジオで突如披露した推しキャラケロッピをテーマにしたEDM調楽曲『ダメダメケロッピ』など、音楽的な才能に注目が集まる岩井勇気。今回はミツカン「こなべっち」とタッグを組み、自らがマイクを取ってラップに挑戦。しかもこの動画、岩井がこれまでラジオや書籍の中で言及してきた、珪藻土のバスマットや、海苔、メゾネットタイプの部屋、クラウス・ノミなどのネタが詰まっていて、まさか岩井さんの自宅なのでは……? と隅々まで見てしまう。つぎはぜひ、自作のトラックとリリックによる曲が披露されることを待っています。(川浦)

  1. 荘子itが執筆 『スパイの妻』の「軽さ」が持つ倫理的な意味とは 1

    荘子itが執筆 『スパイの妻』の「軽さ」が持つ倫理的な意味とは

  2. あがた森魚が引退を発表、渋谷CLUB QUATTROで100人限定ワンマンライブ開催 2

    あがた森魚が引退を発表、渋谷CLUB QUATTROで100人限定ワンマンライブ開催

  3. 曽我部恵一と語る、個に還れない時代のリアル 人はなぜ踊るのか? 3

    曽我部恵一と語る、個に還れない時代のリアル 人はなぜ踊るのか?

  4. 山崎賢人&土屋太鳳W主演 Netflix『今際の国のアリス』場面写真公開 4

    山崎賢人&土屋太鳳W主演 Netflix『今際の国のアリス』場面写真公開

  5. 『ハリー・ポッターと賢者の石』初の3D上映が全国の4D劇場82館で実施 5

    『ハリー・ポッターと賢者の石』初の3D上映が全国の4D劇場82館で実施

  6. 星野源、長谷川博己、新田真剣佑、橋本環奈、浜辺美波が先生役 ドコモ新CM 6

    星野源、長谷川博己、新田真剣佑、橋本環奈、浜辺美波が先生役 ドコモ新CM

  7. のん×橋本愛が7年ぶり共演『私をくいとめて』予告編&ビジュアル公開 7

    のん×橋本愛が7年ぶり共演『私をくいとめて』予告編&ビジュアル公開

  8. 表層的なのは嫌。市川渚が重んじる本質と、こだわり抜かれた生活 8

    表層的なのは嫌。市川渚が重んじる本質と、こだわり抜かれた生活

  9. シム・ウンギョンが日本映画に挑戦したわけ。韓国人気女優の素顔 9

    シム・ウンギョンが日本映画に挑戦したわけ。韓国人気女優の素顔

  10. 『アングスト/不安』の怖さ。殺人が論理的答えとして導き出される 10

    『アングスト/不安』の怖さ。殺人が論理的答えとして導き出される