映画『片思い世界』広瀬すず、杉咲花、清原果耶インタビュー。三人が築いた尊い関係性【ネタバレあり】

※この記事には、映画『片思い世界』のネタバレを含みます。あらかじめご了承ください。

坂元裕二脚本、土井裕泰監督の映画『片思い世界』が公開中だ。

映画『花束みたいな恋をした』のタッグによる最新作となる同作では、現代の東京の古い一軒家を舞台に、家族でも同級生でもないものの、12年という月日をともに暮らし、とある理由から強い絆で結ばれている美咲、優花、さくらの日常と秘密が描かれる。

今回の記事では、トリプル主演として美咲役を演じる広瀬すず、優花役を演じる杉咲花、さくら役を演じる清原果耶にインタビュー。

坂元裕二による脚本を読んで感じたことや、三人の関係性への想い、作品を通して考えさせられたことなどについて話を聞いた。

『片思い世界』本予告

「存在する」ことに対しての肯定を感じる脚本

─今作は坂元裕二さんによる脚本ですが、初めて読まれたときの感想を教えてください。

広瀬すず(以下、広瀬):意外性のある世界観で、どんな作品になるのか想像がつきませんでした。でも、「坂元ワールド」みたいなものがしっかりあって、想像がたくさんできる脚本だったので、現場に行くのがすごく楽しみでした。

私が演じた美咲はいい意味ですぐ肌に馴染まない役で、現場で二人(清原、杉咲)の演技を受けてからじゃないとふわふわしてしまうような感覚がありました。

杉咲花(以下、杉咲):三人の日常が可愛らしく淡々と描かれていながら、どこか生ぬるい風が吹き続ける怖さのようなものがある脚本だと思いました。

三人の境遇について知ったときには鈍器で殴られるような衝撃がありましたが、根底には「存在する」ことに対しての肯定が描かれている話だと感じて、それをどう演じられるかという緊張が大きかったです。

清原果耶(以下、清原):それぞれのキャラクターに色鮮やかなカラーが割り振られていて、役割も明確で、三人で過ごすことがすごく楽しみになるような脚本だと思いました。

作中では三人の日常が描かれますが、その日常も見る人によっては非日常であるという多面性をうまく表現しないと作品の魅力を伝えきれないと感じていて、緊張感やプレッシャーもありました。

─周りからは「見えていない」という役柄を演じられましたが、普段の演技と比べて意識した部分や違いはありましたか?

広瀬:当たり前に生きているような感覚で演じていたので、特別に意識した部分はないかもしれないです。

三人はいままで通りの暮らしを続けているっていう認識だと思うので、普通に生きたいという想いにフォーカスを当てて演じました。

清原:「見えない」という表面的な部分よりも、それぞれの片思い先があって、願望があって、期待があって、執着があって、という部分が大事だということを強く意識していました。

逆に言えば、表では何不自由なく暮らしているというギャップがあとになって衝撃を与えると思ったので、その「差」みたいなものを、根底で大事にしていたんじゃないかと思います。

撮影を経て三人が感じた変化「世界がユニークに見える」

─強い絆で結ばれた三人の関係性についても、感じたことがあれば教えてください。また、広瀬さんは清原さん、杉咲さんと共演経験があり、杉咲さんと清原さんは初共演ですが、撮影を通して三人の関係にはどんな変化があったでしょうか?

清原:本当は姉妹ではないけど、本当の姉妹のような距離感や愛情の向け方で、客観的に見て尊い関係性だと思いました。主観として見ると、さくらは幸せだと毎日思っているんだろうなと。

大好きな人たちと朝から晩まで一緒に居られることは、さくらにとって毎日テーマパークにいるようなウキウキ感だったんじゃないかな、と思いました。

杉咲:ずっと三人で手を取り合って、共に一歩を踏み出してきた関係性なのではないかなと思います。

広瀬:役を演じている私たち自身も作品の力を借りて、三人で共有できる時間を積極的につくるようになりました。何を提示しても受け入れてくれるのがわかる安心感や信頼感ができたと思います。

清原:すずちゃんとは2〜3年に1回ぐらいのペースで共演していたのですが、対峙するような役でご一緒させていただくことが多かったので、時間よりも密度が濃い関係だったと感じています。

今回は久しぶりの共演ですが浮遊感はなくて、「すずちゃんがそこにいてくれるから、自分はやることをやろう」とシンプルに思えました。すずちゃんはドンと大きく構えてくれるお姉ちゃんのような印象だったので、前からずっと変わりなく、甘えさせてもらっています。

花ちゃんは朝ドラのバトンタッチセレモニーで一度ご一緒したのですが、その際に撮影で困ったことがあったときに相談できるようにと連絡先をくれたんです。なので、初めて会ったときから距離感が遠い人だとは思いませんでした。二人とも共通して、ずっと優しく気にかけてくれています。

杉咲:10代の頃から、すずちゃんは共演やオーディションなど、いろいろな場面でお会いするなかで、羨望や焦燥感にかられた時期もありました。果耶ちゃんとの共演は今回が初めてですが、さまざまな作品を通して刺激をいただいていた方のひとりです。

今作では、そんなふうに尊敬を抱いている二人と共演できる喜びがあった反面、もちろん緊張もありました。だからこそ自分のつたないところや不得意なところもごまかさずに、そのままの自分で立ってみようと。

最初に三人で集まったときには手が震えましたが、みんなでご飯を食べながら、いろいろな話をざっくばらんにすることができて。それぞれが見つめている方向性が遠くないことを感じられて、一気に撮影が楽しみになりました。

役を演じる日々を積み重ねていくうちに、どんどん二人に対して自分の心が解放されていく感覚があって、一緒にいるのが楽で、無理しない関係性になれたと感じています。

─見えない三人を演じるなかで、これまで見えていなかったことに気づくような変化はありましたか?

広瀬:本当に私たちが演じたような世界はあるのかな? と考えるようになりました。壁に向かって猫が急に鳴き始めたときとか(笑)。少し、世界がユニークに見える感覚になったような気がします。

清原:私はこの作品で、日常を過ごすことへのありがたみを感じました。

撮影現場の上を飛行機が通ると、音が撮れなくなるので撮影が止まるんです。そのときにご一緒した俳優さんが「普段は飛行機の音なんてまったく聞こえないのに、なんでこういうときばっかり気になるんだろうね」ってぽつりとつぶやいて。

いまこの時間にも見えていないものが無数にあって、それを少しでも敏感に感じ取れるようになったら、劇中の三人のように違った視点で日常を楽しんだり、人への想いを持ち続けるたりすることができるかもしれないと感じました。

杉咲:私は三人がホラー映画を見ている何気ない日常のシーンがあるのですが、「本当のお化けはこんなじゃない。」と話している部分が印象に残っています。

自分たちが他者をイメージするとき、知らないことのほうがはるかに多いと思いますが、まるでわかっているかのように捉えてしまう瞬間がどこかであると思っていて。だからこそ、映画を見終わって各々の暮らしに戻ったときに、隣にいる人やすれ違った人について、もっとイメージを膨らませてみたい気持ちになるような作品になっていたら嬉しいなと思います。



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