大阪・関西万博パビリオン「TECH WORLD」。560台の同期するタブレットで表現された生命の神秘に圧倒

雄大な自然や食など、さまざまな魅力をもつ台湾。

『大阪・関西万博2025』に参加している「TECH WORLD パビリオン」は、そんな魅力を台湾の強みでもある「テクノロジー」を通して体験できる民間パビリオンだ。

560台のタブレットを花に見立てたセクションや、360度のスクリーンや香りを使って自然を体感できるセクションなど、テクノロジーの力で見る人の五感を刺激し、台湾の魅力を伝える展示が盛りだくさんとなっている。

本記事では、来場者が心拍数を計測しながら展示を回ることで、それぞれに合った「旅」を提案してくれる同パビリオンを実際に体験。最新技術と台湾の魅力が融合した展示の様子をレポートする。

明るくきらめく「心の山」へ。TECH WORLD パビリオン

大阪・関西万博会場の東ゲートから入り、西ゲート側に向かって大屋根リングの下を歩くこと約10分。山のように堂々とそびえ立つTECH WORLD パビリオンが現れる。

「心の山」をコンセプトにしたというこのパビリオンの建築は、台湾の雄大な山々からインスピレーションを受けてデザインされたもの。時間帯や光の加減によって多様な表情を見せ、昼間は太陽光を反射して輝き、夜間は建物の内部から光が溢れる。

「世界をつなぎ、より良い未来の暮らしへ」をテーマに掲げるTECH WORLD パビリオン。台湾の先端技術を通して文化や自然の魅力を伝える展示を体験しに行こう。

先端技術で体験する「3つの劇場」と、台湾の多様な魅力

パビリオン内へ入ると、最初にエントランスへ案内される。そこで手渡されるのが、スマートブレスレットだ。これを手首に装着することにより、来場者の館内での体験による心拍数の変化をリアルタイムで計測。ツアーの最後に、その変化に基づいてカスタマイズされた旅を提案してくれるという。

展示は「ライフ」「ネイチャー」「フューチャー」の3つのコンセプトに沿った「劇場」で構成。ガイドが案内するツアー形式でフロアを巡っていく。

560台のタブレットが連動する「ライフ劇場」

最初に足を踏み入れたのは、1階の「ライフ」をコンセプトにした劇場だ。空間の中央には雲に隠れる大樹、足元には群生するようにタブレットが並び、その神秘的な光景に惹き込まれる。

プログラムがスタートすると、徐々に色とりどりの光が点灯。台湾の自然に生きる生命が映し出され、サウンドに呼応するようにタブレットが群舞する。

サウンドは繊細なピアノのメロディからはじまり、映像の展開にともなって徐々に壮大に。台湾固有種の動物の足音や鳴き声、鳥や昆虫が羽ばたく音がリアルに表現される。

特に魅了されたのは、美しく舞う蝶の群れ。台湾は「蝶の王国」と呼ばれるほど多種多様な蝶が生息しているが、実際にこの劇場でも、タイワンキチョウやクロアゲハなど、普段はなかなか見ることができない貴重な蝶が登場するのだという。

五感で感じる没入型空間「ネイチャー劇場」

続いてエレベーターに乗り、4階の「ネイチャー」をコンセプトにした劇場へ移動する。目の前に現れた360度に広がるアーチ型の壁には、一面に雪のように舞う光の粒が映し出されている。

光の粒はやがて山の稜線となり、雄大な山脈と雲海が広がる。

雲海が水平線まで広がり、太陽の光が山のシルエットを鮮明に照らし出す様子は、胸いっぱいに空気を吸い込みたくなるほど清々しい。

物語が進み、景色は雲霧のなかへ。実際の空間にも霧が立ち込め、清涼なヒノキの香りも広がる。心がほぐされるような香りに、より映像の世界に没入していく。

霧を抜けると、夜空の星とともにホタルの光が瞬く山の景色に。この小さな湖は「天使の涙」と呼ばれる嘉明湖をモチーフにしているのだろう。

視点は徐々に大地へと降りていき、茶畑や松林の景色、人々の日常を映し出す。台湾の島の成り立ちや自然と人々の生活との関わりを五感で感じとることができるはずだ。

ラン、ホタル、AIギャラリー。テクノロジーと文化・芸術が融合する展示も

3つの劇場をめぐる途中、「ランの道」「ホタルの道」「故宮AIギャラリー」では、台湾独自の文化、産業、芸術について、最新技術とかけあわせながら紹介されている。

「ランの道」では、優雅な胡蝶蘭の花が来場者を迎えてくれる。日本でも贈答品として人気がある胡蝶蘭だが、実は世界に出回る蘭の約3分の1が台湾産なのだという。

さらに進んでいくと、黄緑色の小さな光が明滅する「ホタルの道」が現れる。台湾には多くのホタルが生息しており、春から夏にかけてのシーズンは鑑賞ツアーもあるほど。

「ホタルの道」を抜けると、続いて3階の「故宮AIギャラリー」が出現。「都市の絵巻:時代を超えた風景」と題されたAIギャラリーだ。

ここではテクノロジーと芸術が融合した不思議な世界を体感することができる。

アートディスプレイで表示されている絵画は、原画の筆づかいや細部まで忠実に再現されている。

台湾の現代美術作品が展示されているほか、AI技術による描画スタイルの学習とインタラクティブなセンシング技術を組み合わせた作品も披露されている。

テクノロジーの力で人と人をつなぐ「フューチャー劇場」

最後に訪れたのは、2階にある「フューチャー」がコンセプトの劇場。導入部分では、ガイドから「私たちは1日にどれくらいICチップを使っていると思いますか?」という問いかけが。考えたこともなかったが、その数はなんと4,000個以上もあるそうだ。

台湾は、特に先進半導体チップの生産において世界シェア1位であり、半導体業界において世界的にも重要な役割を担っている。

さらに奥へと進むと、その技術をインタラクティブに体験できる巨大スクリーンの前へとたどり着く。

手をかざし、ゆっくりと大きく動かすと、画面に表示されたたくさんのモザイクが消え、徐々に未来の街の景色が現れてくる。ここから始まるのが、生成AIを活用した映像だ。

舞台は2060年の未来。ICチップが自然災害などさまざまな問題の解決に寄与し、社会の発展を支えるというストーリー展開となっている。

映像が終わると、ガイドからは半導体チップの力で人と人をつなぎ、より良い未来へ向かって歩みつづけるという想いが語られた。

心拍数データで「ときめく旅」を提案

3つの劇場での体験を終えると現れたのは、たくさんのディスプレイ。

最初に身につけたスマートブレスレットを読み込み部にかざすと、展示をめぐる旅の体験のなかで心拍数がどう変化したかを記録したデータが読み取られ、来場者の心がときめいた瞬間を計測。そこから適した台湾旅行のプランを提案してくれる。

出口では、来場者にTECH WORLD パビリオンの限定プレゼントが渡される。パビリオンに確実に入場したい場合は、事前予約をしていこう。

「世界をつなぎ、より良い未来の暮らしへ」

4月22日に行われた開館式では、玉山デジタルテック株式会社の名誉会長・黄志芳氏がスピーチ。パビリオンにかける想いが語られた。

「当館は人と自然の共生、社会との共生を理念としています。万博の大屋根のように、わたしたちはみんな、一つ屋根の下にいます。よりよい未来を目指す旅のなかで、美しい自然と文化を世界に共有し、技術を分かち合う。そんな価値観のもと、世界とともに歩んでいきたい。ぜひTECH WORLD パビリオンで、その魅力を体感してください。みなさんと一緒に美しい未来を築いていけることを願っています」

最先端技術と豊かな自然・文化とが融合し、台湾の魅力を新たな視点で感じることができるTECH WORLD パビリオン。五感をフル活用することで、いままでにない感動を味わえるのではないだろうか。



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