クレジット:©⼠郎正宗・講談社/攻殻機動隊展Ghost and the Shell製作委員会
『攻殻機動隊』(士郎正宗)のアニメ化から30周年を記念して、「TOKYO NODE」(虎ノ門)でシリーズ史上最大規模の展覧会『攻殻機動隊展 Ghost and the Shell』が開催されている。
本展では、1995年の押井守監督による映画『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』を筆頭に、今年放送されるサイエンスSARUによる最新作まで、アニメ全シリーズの制作資料が展示される。その数、1600点以上。セル画や原画、背景美術などの資料と、資料に書き込まれたアニメーターたちのメモや筆跡から、『攻殻機動隊』がどのようにして誕生したのかを感じることができるだろう。
本記事では、展覧会とこのほど開かれた記者発表の様子をお届けする。本展にこめた思いや、「『攻殻』好き」が集結したこだわりの空間、AR技術とプログラミングを活用した体験コンテンツなど、盛りだくさんの展示の一端をお届けしたい。
「かつてのSFが日常になりつつある」。展覧会タイトルにこめた意味
本展のタイトルは、『攻殻機動隊』の初の映像化作品『GHOST IN THE SHELL』を引用し、「IN」を「AND」に変えて名づけられている。その意図について、総合ディレクターを務めた桑名功氏(森ビル株式会社)は、記者発表に登壇し以下のように話した。
桑名:「AND」には、心身二元論を語るのではなく、作品世界と現実の融合という意味を込めました。1989年に士郎正宗氏が描いた2029年の世界は、2026年を迎えたいま、AIやクラウドストレージなど、かつてのSFが日常になりつつあります。
草薙素子が自身の人間性について葛藤するように、テクノロジーが日常化した現代において、私たちが何にゴーストを感じ、何にシェルを感じるのか。来場者にそうした問いを考えながら展示を楽しんでいただきたいと思います。
また、完成したアニメーションと制作途中の原画、その両方を展示することで、人間の手による創作プロセスそのものにも注目してもらいたい。制作過程という「シェル」から生まれる作品の「ゴースト」について、皆さまなりの解釈で鑑賞していただければと考え、このタイトルをつけました。
『攻殻』の情報にダイブして「DIG」する体験
入口となるのは「NODE(思考の結節点)」と名付けられた展示空間だ。ドーム型のギャラリーの壁に、アニメシリーズの全シーンがプロジェクションマッピングによって飛び回るように映しだされている。
また本展開催にあたり、全シーンを検索できる検索エンジンを構築し、ギャラリー内に設置された端末で自分が見たい場面を探すことができるようになっているという。
「NODE(ノード)」は直訳で「節」「節点」「結節点」といった意味で、ITの分野ではネットワークの構成要素のこと。この展示空間は、来場者が『攻殻機動隊』の膨大なネットワークに接続し「思考の結節点」になることを目指しているという。
続くギャラリーBの展示では、1600点以上におよぶアニメ制作資料が、シリーズごとに展示される。桑名氏は、膨大な資料を展示として構築する際に目指したことについて、以下のように語っている。
桑名:1600点の原画を、展覧会のコンセプトに合わせて選び直して展示しています。僕らが今回目指しているのは、この情報の海にみんなダイブして、その情報のなかからみんなが好きな『攻殻機動隊』を探しだすことです。
©1995士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENT
©1995士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENT
「探しだす」体験のために用意されたコンテンツが、2つの「DIG」体験スペースだ。
桑名:一つが「Digital DIG」。アニメーターのデスクトップのフォルダーを、皆さんが自由に見て掘り起こしができるコーナーです。
もう一つが「Analog DIG」。いわゆるレコード屋さんでレコードを「ディグる」ような体験ができるコーナーです。アニメーションのカット袋に入った原画(複製品)を、実際に触って、中に入っている原画を出して探してもらう。そういった体験ができる場所です。
クリエイターを触発してきた『攻殻』だから叶う、コラボレーション
30年の歴史のなかで、多くのクリエイターやアーティストに影響を与え続けてきた『攻殻機動隊』。本作が投げかけてきた問いを、影響を受けたり親和性が高かったりするアーティストが現代の表現として再解釈したコラボレーション作品も展示されている。
『攻殻機動隊』が描いた「光学迷彩」を彷彿とさせる『SCREEN』(ANREALAGE・森永邦彦)や、「身体と道具の境界の揺らぎ」というテーマを自身のポートレートで表現した『you’re mine #000 / #001』『you’re mine #001』(片山真理)、草薙素子をモデルに制作された彫刻『Sexy Robot_The Ghost in the Shell type1』(空山基)などが展示される。
『you’re mine #000 / #001』『you’re mine #001』(片山真理)
『SCREEN』(ANREALAGE・森永邦彦)
空山氏の作品は本展にて世界初公開となる。草薙素子を「未来の身体」として解釈し再構築した一作だ。空山氏とコラボレーションが実現した経緯について、『攻殻機動隊展』製作幹事 / 『攻殻機動隊』講談社プロデューサー・笹大地氏(株式会社講談社ライツ・メディアビジネス局)は以下のように語った。
笹:もともと空山さん作品のフューチャーリスティックな作品性が『攻殻機動隊』と合うと思っていたんですが、じつは原作者である士郎先生と空山さんは往復書簡を送り合うような親交の深い間柄であったことがわかりました。
士郎先生は空山さんに大変なリスペクトを持っておりまして、作品制作のお声がけをさせていただいたところ、空山さんも士郎先生の主要作品を深く愛してくださっていて。その愛を全面に出すかたちで、今回のインパクトある彫刻をつくりあげてもらったという経緯があります。
空山基『Sexy Robot_The Ghost in the Shell type1』©︎Hajime Sorayama. Courtesy of NANZUKA ©︎Shirow Masamune / KODANSHA
タチコマの解説を聞きながら展示を巡ることができる「電脳VISION」
ARグラスを装着し、タチコマによる解説を聞きながら展示を回るこができるコンテンツ「電脳VISION」も用意されている。ARグラスには、「電脳通信」のビジョンが映し出され、展示世界をより深く楽しむことができるだろう。
このARグラスは、最先端の5G通信技術、AR技術、モビリティロボットをかけあわせることで実現したもの。「電脳VISION」統括プロデューサー・砂原哲氏(KDDI株式会社事業創造本部LXビジネス企画部)は体験コンテンツについて以下のように説明した。
砂原:ARグラスはXREAL社の「Air 2 Ultra」というカスタムコンピューティングユニットを使っているんですけども、これを今回は「電脳Vision」と呼んでいます。90分間、簡易的に皆さんが電脳化することができる、そういう体験の設定になっています
「電脳VISION」の最後には、東京都心の高層ビルというロケーションだからこそ実現できたコンテンツが用意されているという。
砂原:一番最後には、草薙素子が夜の東京にダイブする——まさに「ネットの海」にダイブするような映像を用意しました。『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(1995年)のラストシーンを夜景越しに体験いただける、そんなコンテンツです。
放映前のサイエンスSARUによる新作の展示も
ギャラリーBの最後には、今夏に放映が決定しているサイエンスSARUによる新作アニメの制作資料も展示されている。放映前の作品の展示がかなったことについて、笹氏は「サイエンスSARUさんの懐の深さのおかげ」と語る。
本作は、原作漫画に寄せられた絵柄や、これまでアニメ制作を担ってきたProduction I.Gから制作が移ったことなどで注目を集めている。
©2026 Shirow Masamune/KODANSHA/THE GHOST IN THE SHELL COMMITTEE
150種以上のグッズに、又吉直樹や魚豊が登壇するイベントも
本展開催にあたり、150種類以上のグッズが制作された。展覧会オリジナルグッズは100種類以上、コラボレーショングッズも80種以上あるという。
また、期間中には落合陽一や、又吉直樹×魚豊といった文化人ゲストによるトークや、Licaxxx × Mars89による音楽ライブなど、総勢90名以上、合計30回以上のイベントが予定されている。
たくさんの人の『攻殻機動隊』への愛が詰まった本展示は、4月5日まで開かれている。
- イベント情報
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『攻殻機動隊展 Ghost and the Shell』
会場:TOKYO NODE GALLERY A / B / C(虎ノ門ヒルズステーションタワー45F)
会期:1月30日 - 4月5日
©︎士郎正宗・講談社/攻殻機動隊展Ghost and the Shell製作委員会
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