「いまさら始めても遅いのではないか」――そんなささやかな不安が、私たちの足枷になることがある。「なりたい自分を、起動しよう。」をテーマにした本連載に登場するのは、年代もステージも異なる、迷いを抱えながら「新しいこと」を始めた人たち。彼らはなぜ、軽やかに一歩を踏み出せたのか。
第2回は、些細な日常を絶妙に切り取るコント師として注目を集める、お笑いコンビ・かが屋の加賀翔さん。彼には、芸人とは別に、カメラマンとしての顔もある。
芸人の宣材写真やイベントポスターの撮影、写真展の開催、写真集の出版――。もはや趣味や特技の範疇を超え、「プロカメラマン」として第二の肩書きになっている。
いまの仕事を続けながら新しいスキルを身につけることで、できることを増やしていく。その難しさと、だからこそ生まれる「自分らしさ」とは。写真家としての活動に、日本HPのAI PCをはじめとするテクノロジーがどう活きるのかも含めて、じっくりと話を聞いた。
24回払いのローンで始めた「趣味」としてのカメラ
ー加賀さんが「カメラ」を始めたのは、たしか芸人を始めた時期とほぼ同じなんですよね。どのような経緯で写真を撮り始めたのでしょうか?
加賀:20歳の頃、コンビニでバイトをしていたんですが、そこの店長の影響でカメラを始めました。その人はすごく競馬が好きで、誰彼構わずバイトの子を競馬に誘ってたんですよね。で、誘い文句のひとつが「カメラで馬を撮ると楽しいよ」というものだったんです。
あるとき、店長が実際にカメラを持ってきていたので、少し触らせてもらって。そしたら思いのほか楽しかったんです。それで競馬場にもついていくようになって、次第に自分でもカメラを持ちたいと思うようになっていきました。
加賀翔(かが・しょう)。1993年5月16日生まれ。岡山県出身。マセキ芸能社所属。2015年に賀屋壮也とコンビ・かが屋を結成。2019年と2022年に「キングオブコント」決勝進出。カメラマンとしても活動しており、自身が撮影を手掛ける写真集として『まあるいふたり』『芸人地図』を出版している。
加賀さんが撮影した写真たち
ー店長の思う壺ですね。
加賀:本当にそうですよね(笑)。当時はバイトをしながら芸人を目指している状況だったので、金銭的にも厳しかったんですけど、10万円くらいならなんとかできるかなと思ってカメラ屋に行ったんです。
そしたら店員さんに「どうせいつか欲しくなるから、最初から奮発して良いカメラを買ったほうがいい」って力説されて。気づいたら24回払いで50万円のローンを組んでいました。芸人としてはまだコンビを組んですらいない時期だったので、何してるんだって感じですけど。
それからはもう「元を取らなければ」という一心でカメラを続けていました。結果的に、そのカメラは7年くらい使ったので、多分元は取れたと思います。
ー魅力を感じていたとはいえ、いきなり50万円も使うのはすごいですね。当時から、将来的にカメラを仕事にしようと考えていましたか?
加賀:いや、全然思っていませんでした。完全に趣味として買いましたね。でも、なんとなく「自分に合ってるかも」とは思ってました。
僕、中学生くらいまで「将来は物書きになりたい」って漠然と考えていたんです。自分を表現できるのって素敵だなって。ただ、本当に才能がなくて。全然書けなかったし、書きたいことも浮かばなかった。
でもカメラなら表現できるかもって思ったんです。僕、視力がすごく良いんですよ。だから、ほかの人には見えていない景色とか、自分だけの気づきとかがあるかもしれないって思ったのもありますね。
あと、カメラを始めてみて感じたのは、やっぱり「人が笑っている瞬間を残せる」のがいいですよね。芸人なので、人が笑っているところを見たいという気持ちが強いんです。そういう意味では、芸人をやることもカメラをやることも、根っこの部分は思いが同じなのかもしれません。
「悔しさ」を感じて、カメラを猛勉強した
ー「趣味」として始めたカメラが「仕事」になってきたのは、いつ頃からだったんですか?
加賀:カメラを始めてから7、8年くらいは、それほど真剣に勉強することもなく、ただ好きで続けてたって感じだったんです。僕にとっての「癒し」でしたね。
マセキ芸能社に入ってからは、たまに事務所からライブイベントの撮影を頼まれたり、先輩芸人のチラシの写真を撮ったり、ちょくちょくお声がけいただくことはありましたが、それでも「仕事」と言えるほどではなかったと思います。
ーでは、ターニングポイントはどこだったのでしょうか。
加賀:間違いなく『ラヴィット!』の出演です。当時、バラエティ番組にも呼んでもらえるようになってきていたんですが、自分に「キャラ」がないことに悩んでいて。
あるとき先輩から「好きなことをそのまま持ち込んでみれば?」っていうアドバイスをもらったので、『ラヴィット!』に出るときにでっかいレンズをつけたカメラを持っていったんです。そしたら、良い感じにイジってくれて。それからですね、「カメラ」の仕事が増えてきたのは。
ー「キャラづけ」が先だった、ということですか?
加賀:そうですね。「僕はいまこれを頑張っています、こういう人間なんです」ってことを先に言っちゃったことで、勉強しないといけない状況になりました。カメラと真剣に向き合うようになったのは、その頃からです。
ー言ったからにはやらないと、という感じだったんですね。「趣味」から「仕事」に変わっていくなかで、心境の変化はありましたか?
加賀:一番大きいのは「悔しさ」が生まれたことですね。それまではほかの人が撮った写真を見てもなんとも思わなかったのに、その頃から悔しいという感情が出てきたんです。お笑いの賞レースに負けたりすると、芸人として悔しいっていうのと同時に、その大会のポスターを見てさらに悔しくなる。「なんで僕がこの写真を撮れていないんだ」って。
ーカメラマンとしてのプライド、でしょうか?
加賀:そうかもしれない。「芸人でもあるから」というスタンスでカメラをやってるのが、カッコ悪いなって思い始めていました。
そこからは独学で勉強しまくりました。本を読んだり、写真集を集めたり、現場のカメラマンさんに話を聞いたり。ありとあらゆることを試しました。
ーそうしてカメラにのめり込んでいくなかで、本業である「芸人」をおろそかにしてはいけないという葛藤はありませんでしたか?
加賀:ありました。というかいまでもあります。この時間で面白いコントが1本書けるんじゃないか、とか考えちゃいます。
恐ろしいことに逆もあるんです。お笑いをやってるからカメラがおろそかになっているのかも、と思う日もあるんですよ。それこそ死に物狂いでカメラをしている人もいるなかで、失礼だなって。
加賀:でも、2つとも本気でやってるからこその良さもあるんです。芸人だけ、カメラだけの人だと入れない場所があるし、できない仕事がある。2つのボタンを両方押さないと開かないドアがあって、それをたまたま僕が押せるっていう感覚です。
芸人とカメラ。どちらも本気で取り組んだから「自分らしさ」が見つかった
ー芸人だけでなくカメラにも本気で取り組んできた加賀さんだからこそ感じる、複数のことに本気で取り組むことの良さは何だと思いますか?
加賀:お笑い芸人の世界には、本当にすごいと思える人がたくさんいるんです。僕自身もそういう人たちに憧れてこの世界に入ったところはあるんですが、じゃあそういう人たちを自分が超えていけるかというと、少なくとも自分が憧れたときの物差しでは正直もう超えることができないと思うんです。いまの自分と同じくらいの年齢のときにその人はもっと面白かったし、とか考えてしまいますし。
それでも「自分らしくいたい」と考えたときに、満足感を得るためには2つの軸を持っておく必要があるんじゃないかと、僕は思うんです。どっちもやることで、これが自分なんだって思えるというか。一つのことだけだと自分を見つけられないときもあるはずですから。
ーでも、新しく何か別の軸をつくるのは勇気がいりますよね。
加賀:絶望ばっかりだと思いますよ。僕の場合、20代の後半からカメラを本気で勉強しだしたんですけど、10代の天才的なカメラマンとかを見て「なんなん、こいつ」って思っちゃいますし。まあ比較しちゃうとしんどいですよね。
でもそこで「悔しい」って思えることが、一つの才能だと思うんです。努力の一歩目というか。悔しいとか、嫌だとか、恥ずかしいとか、そういうネガティブな感情が生まれるのは、むしろ伸びるための要素だと思うんで、それは大事にしたほうが良いですよね。
「僕が勝てるところは根性」。写真家・加賀翔のAI活用法
ー普段カメラのお仕事をするうえで、AIなど「テクノロジーの恩恵」を感じる瞬間はありますか?
加賀:めちゃくちゃありますね。撮影した写真の編集作業でいうと、僕が何を撮りたかったのかを理解してくれたうえで、これが背景でこれが被写体で、肌のレタッチはこれくらいで、っていうのをAIが提案してくれるわけですから。
昔はこういう作業にすごい時間をかけていたので、本当に助かってます。
ー今回お持ちした「HP OmniBook X Flip 14 AI PC」は、AI機能を内蔵して設計されたAI PCなのですが、触ってみていかがですか?
加賀:まず軽さに驚きました。僕の場合は、365日キャリーケースにカメラやPCを入れて持ち歩いているので、壊れにくくて軽いというのはそれだけで助かります。
それでいて、ローカルでAIが搭載されているわけですよね。自分がどういう画像編集をするのかとかを覚えてくれて、それをスピーディに処理してくれるってなると撮影現場での作業も速くなりそうです。本当に、自分専用にカスタマイズされたPCを持ち歩けるって感じがします。
ー毎日持ち歩いているんですね。
加賀:もう習慣です。ずっと持ち歩いてるから肩とかやばくて。ほぼ毎日湿布貼ってますからね。バカになんないですよ、湿布代も。でも僕が勝てるところって根性だけなんで。AIとかと真逆の話をしちゃってますけど。
「HP OmniBook X Flip 14 AI PC」はタブレッド型になり、指やタッチペンでの直感的な操作も可能。「PCとタブレット、2台持ち運ばなくていいのも良いですね」と加賀さん。写真に写っているトランクは普段から持ち歩いているもの
ーできることをコツコツと、というのもやっぱり大事ですよね。
加賀:だと思いますね。とはいえ、使えるものは使っていったほうがいいとも思います。
例えばAIの使い方として、調べものをするというのもありますが、僕の場合は「覚えておいてもらう」というのも結構多くて。
何月何日に何をしたかとか、あのときのカメラマンの名前が何だったかとか、あの写真展の何が良かったっけとか……。そういうことをラジオの収録前とかにAIに確認したりするんですよね。でも面倒くさくて、よくメモするのを忘れてしまうんです。このPCだとボタンひとつでAIを立ち上げられて、すぐに記録してくれそうですし、そういうのもなくなりそうです。
「根性」は大事ですが、「根性だけでなんとかする」のがいいとは思わないので。
ーAI PCを手がける日本HPでは、「AI PCで自由研究」キャンペーンを実施しています(2026年8月時点)。加賀さんが今後挑戦してみたい「自由研究」を教えてください。
加賀:47都道府県を巡って写真を残すというのをやりたいですね。
僕は飛行機が苦手だったんですけど、去年くらいからやっと乗れるようになってきて。このあいだ行った北海道が、すごく良かったんです。建物の建て方も、空も、空気感も、サイズも普段見ている景色と全然違って。沖縄とかも行ったことないので行ってみたいです。
そういう「夢」も、AIを使えば、具体的にどれくらいの費用がかかって、どれくらいの時間がかかって、っていう「現実的なスケジュール」まで持っていってくれる。そしてAI PCで言うと、ローカルでAIが搭載されていて壊れにくくて軽い。相棒として最高じゃないですか。ほんと、AIネイティブ世代が羨ましいし、腹立たしいですよ(笑)。でもまあそれによって、きっと、新しく面白いものが生まれてくるはずですよね。
- HPについて
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HP Inc.(NYSE: HPQ)は、Future of Workを再定義するグローバルテクノロジーリーダーです。180以上の国と地域で事業を展開し、ビジネス成長とプロフェッショナルとしての充実を支える、革新的でAIを活用したデバイス、ソフトウェア、サービス、サブスクリプションを提供しています。
- HP OmniBook X Flip 14 AI PC
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NPU性能40TOPS以上を誇る次世代AI PC(Copilot+ PC準拠)。仕事だけでなく創作や娯楽まで幅広く使える、公私兼用のプレミアムノートPCです。
タブレットにも変形できるスタイルフリー設計で、シーンを問わず活躍。最新モジュールによるスピードとパワー、直感的な操作性で作業効率を大きく高めます。さらに高品質なオーディオビジュアルを搭載し、休憩時間のエンタメ視聴も快適にサポート。
Copilot+ PC準拠により、コクリエーター、ライブキャプション、リコールといったマイクロソフトの生成AIサービスも利用可能。クリエイティブで自由なライフスタイルを好み、常に高みを目指す人にふさわしい、公私を支える一台です。
- プロフィール
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- 加賀翔 (かが・しょう)
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1993年5月16日生まれ。岡山県出身。マセキ芸能社所属。2015年に賀屋壮也とコンビ・かが屋を結成。2019年と2022年に「キングオブコント」決勝進出。カメラマンとしても活動しており、自身が撮影を手掛ける写真集として『まあるいふたり』『芸人地図』を出版している。
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