盛り上がるダンス文化 バブリーダンスの生みの親・akaneと考える

YouTubeやTikTokなどの動画共有サービスが浸透するなかで、中高生を発信源とするさまざまなダンス動画のブームが巻き起こっている。その一方で、AKB48“恋するフォーチュンクッキー”を筆頭に、振り付けが話題を集めることで特定の楽曲がヒットに結びつくケースも増えている。そうしたブームに呼応するかのように高校ダンス部の数も全国的に急増中。そのきっかけのひとつとなったのが、荻野目洋子“ダンシング・ヒーロー (Eat You Up)”に合わせて、登美丘高校ダンス部の部員たちが凄まじいダンスを披露した「バブリーダンス」だ。

その仕掛け人であり、同校ダンス部のコーチを務めるakaneが振り付けを担当したのが、今回公開されたオレオ『パンダンス』。登美丘高校ダンス部のOGも参加したこの動画は、冒頭こそ幼児番組のように平和な光景が映し出されるものの、中盤から怒涛のダンスタイムに突入するハイテンションのダンスムービーである。『パンダンス』はどのようにして生まれるに至ったのか、その背景にあるものを考察したい。

恋ダンス、PPAP、U.S.A.……ダンス動画によるヒットの方程式

ここ数年、特徴的なダンスが話題を集めることによって、大きなヒットへと結びつくケースが数多く見られる。たとえば、無数の「踊ってみた」動画を生み出し、社会現象を巻き起こしたAKB48“恋するフォーチュンクッキー”や星野源“恋”、ピコ太郎“ペンパイナッポーアッポーペン”。昨年を代表するヒット曲となったDA PUMP“U.S.A.”もそのひとつと捉えることができるだろう。

AKB48“恋するフォーチュンクッキー”(2013年)

星野源“恋”(2016年)

もちろん、特定の楽曲が振り付けとともに広く浸透していくケースは近年に始まったことではない。しかし、近年ではYouTubeやTikTok、MixChannelが定着したことにより、ダンス動画の持つ拡散力に注目が集まっている。ダンスと動画を使い、いかにバズを起こすことができるか。ヒットを生み出す方法論のひとつとして、ダンスという行為そのものがより重要視されているのだ。

ピコ太郎“ペンパイナッポーアッポーペン”(2016年)

DA PUMP / U.S.A.(2018年)

そうしたヒット曲を支えているのは、ダンスに対して馴染みのある若い世代。とりわけ物心ついたころからYouTubeでさまざまな動画に触れてきた中高生たちだ。2012年からは学習指導要領の改訂により、中学校の保健体育で現代的なリズムダンスが必修になったこともあって、中高生がダンスに触れる機会も増えた。

そうした環境の変化もあって高校のダンス部は大きな盛り上がりを見せており、ダンス部の数自体、全国的に増加傾向にある。強豪校の活動がメディアで取り上げられる機会も増えており、ダンス部はさまざまな部活のなかでも花形となっているようだ。

登美丘高校ダンス部コーチ、akaneの振り付けの魅力は「らしさの裏切り」と「ストイックなダンスの追求」

今回のダンスムービーの振り付けを担当したのは、ダンスカンパニー「アカネキカク」を主宰し、大阪府立登美丘高校ダンス部のコーチとしても知られる、振付師のakaneだ。

akane(あかね)
ダンスカンパニー「アカネキカク」主宰。大阪府立登美丘高校ダンス部コーチとして、数々の大会で優勝に導く。荻野目洋子の代表曲“ダンシング・ヒーロー”で振付した「バブリーダンス」を2017年9月に配信し、7000万回の再生を越えた。日本を代表する振付師。

荻野目洋子“ダンシング・ヒーロー(Eat You Up)”に合わせて、高校ダンス部の部員たちがハイテンションのダンスを披露する、バブリーダンスの仕掛け人として知られるakane。彼女もまた、もともとは登美丘高校ダンス部の出身だ。近年の高校ダンス部の変化について、彼女はこう分析する。

akane:ダンス部の数自体、本当に増えたなと感じます。私が高校生だった時代とは比べものにならないくらい。

今の高校生は、授業の必須科目にダンスが加わったので、20代以上の世代よりもダンスというものをもっと身近に感じているんだと思います。だからこそ、ダンスを見るだけではなく、自分でもやってみたいと思うようになっているんじゃないでしょうか。

akaneがコーチを務める登美丘高校ダンス部は、高校ダンスの全国大会で優勝を飾るなど、バブリーダンス以前から高校ダンス屈指の強豪校として知られてきた。

登美丘高校ダンス部の特徴は、どこか懐かしい1980~90年代テイストのダンス。バブリーダンスでは、1980年代を代表するヒット曲“ダンシング・ヒーロー (Eat You Up)”が用いられていたわけだが、「大阪のおばちゃん」をテーマとする2016年度の作品では、ディスコクラシックであるABBA“Gimme! Gimme! Gimme! (A Man After Midnight)”を使用。昨年末はT.M.Revolution“HOT LIMIT”をモチーフとした「踊ってみた」動画をYouTubeにアップし、現在までに600万回以上が再生されている。

そうした1980~90年代テイストを取り入れている理由として、akaneは以下のように話す。

akane:単純に、私がその年代の楽曲がとても好きで魅力的だからです。ファッションなどもとても好きで日々研究しています。

akaneが登美丘高校ダンス部にもたらした振り付けは、いわゆる「高校生らしいダンス」とは大きく異なる。むしろ高校生に対して世間が一方的に付与しかねない「高校生らしさ」というイメージを裏切ることで、イメージに囚われることのない彼女たちの身体性を浮かび上がらせようとしているとも言えるだろう。

また、そうした作品は過剰なメイクやファッション、はたまた同一のキャラクターを増殖させることなどによって「笑える」要素を生み出してはいる。しかし、決してただのお笑い動画に終わらせないという気迫のようなものがすべての作品には込められている。

筆者は登美丘高校ダンス部の練習に取材でお邪魔したことがあるが、一瞬の気の緩みさえ許されない緊張感溢れる練習風景は、プロフェッショナルでストイックなダンスカンパニーそのものだった。そうしたハードな練習を通じ、彼女たちはダンス作品としてのクオリティーをキープしている。

「らしさの裏切り」と「ストイックなダンスの追求」、その2点は今回のダンスムービーにも通じるものと言えるだろう。

『パンダンス』の「クスッ」という笑いとダンスそのものが持つ「ゾクッ」という格好よさの狭間で光る、akaneらしさ。

「らしさの裏切り」と「ストイックなダンスの追求」、このポイントを踏まえながら、改めてオレオパンダのダンスムービーを見てみよう。

うたのおねえさん的な女性による「ねえみんな、一緒に遊ぼう!」という掛け声とともに、オレオパンダのもとに駆け寄る数組の親子。母親を演じるのは、登美丘高校ダンス部のOGを含む「アカネキカクダンサー」である。やる気のない表情で身体を動かす子供たちの姿は、子供番組の典型的なイメージを模倣したものだ。

だが、このダンスムービーの見所は、中盤から突然親子のスイッチが入り、激しく踊り始める瞬間にある。のんびりと笹の葉を食んでいたオレオパンダまでもが立ち上がると、周囲の子供たちと同様のダイナミックかつハイテンションのダンスを披露するのだ。

オレオ『パンダンス』より。画角や画質も1980~90年代を意識したものになっている

オレオパンダは、前半で見せていた「パンダらしい動き」を前振りとしながら、後半においてその「らしさ」という鎧を脱ぎ捨ててしまう。パンダを模倣する前半に対し、中盤から後半にかけてオレオパンダそのものへと進化を果たす。特定のイメージを裏切っていくところに面白さを生み出していく、akaneならではの振り付けとも言える。彼女自身、オレオパンダの振り付けについて、以下のように語っている。

akane:オレオパンダは人間と違って腕と足が短く、いかに動きを大きく見せられるか試行錯誤しました。この動きはどうかな? といろいろ試し、今回の動きになりました。

また、前半の牧歌的ムードから一変、楽曲も1990年代のユーロビートやハードトランス的なダンストラックへと突入。どことなく既視感のあるダンスを確信犯的に用いながら、「クスッ」という笑いとダンスそのものが持つ「ゾクッ」という格好よさの狭間にダンス領域を見い出そうとする。そのあたりもakaneの本領発揮といったところだろう。子供たちのハイテンションぶりと鬼気迫る表情には、やはり強烈な迫力がある。

オレオ『パンダンス』より

akane:1980~90年代の映像をイメージしていると、監督から聞いていたので、同じ時期に流行っていた振り付けも入れ込んで、そのイメージをさらにダンスで盛り上げられるように振り付けしました。

前半はみんなが真似をしやすく、昔の子供番組でよく踊っていそうな振り付けのパロディー。「きゅんきゅん」「えーんえーん」など、できるだけ歌詞に合わせたものを意識していました。後半はみんなが驚くスピード感を意識しました。振り付けは、1990年代のキッズダンサーがよくやっていたイメ-ジですね。私も3歳からダンスを習っていたので、「こんな振り付け習ったなあ」と思い出しながら振り付けをしました。

全国的に見ても関西はストリートダンスの強豪チームがひしめき合い、高校ダンスの名門校も多いと言う。大阪で育ったakaneはそうしたなかで幼少時代からダンスに親しみ、ストリートダンスにも触れながら自身のダンス道を突き進んできた。このダンスムービーでは、彼女がこれまで体験してきたダンス文化が3分強の動画のなかに詰め込まれているわけだ。

また先述したように、本作にはバブリーダンスなどを共に作り上げてきた登美丘高校ダンス部のOGも参加している。akaneの意図を理解する教え子たちの参加により、ダンス作品としてのクオリティーも一段と増した。

akaneは今回のオレオパンダのみならず、近年数多くのCMの振り付けを担当している。2018年にはハリウッド映画『グレイテスト・ショーマン』のPR大使としてPVの振り付けを担ったほか、韓国のTVCMの振り付けも務めるなど、ますます活動のフィールドを広げている。

akane:今回はキッズダンサーとオレオパンダ、大人のコラボレーションダンスということで、とても楽しい挑戦をさせていただきました。振付師としてこのような企画にもどんどん挑戦していきたいです。

上記のように話すakaneは、今後どのような作品を残してくれるのだろうか。

イベント情報
『オレオ いっしょにあそぼ キャンペーン』

日時:2019年6月8日(土)
(雨天時は、6月9日(日))
場所:大阪府 新世界公園本通商店会

イベント当日までの間で、オレオパンダの動画や写真など「#オレオパンダ」付きでSNSに投稿してくれた方には、イベント当日先着限定500名に大人気パンダオレオポップをプレゼント! オレオパンダに触ったり、一緒に写真を撮ったり、皆さん是非オレオパンダに会いに来てください。

※ご自身のSNSアカウントに「#オレオパンダ」を含む投稿がアップされた状態の携帯画面を、当日会場にてサンプリング運営スタッフにお見せください。
※上記イベントは、天災地変および天候不順など、やむ終えない事情により、日程や内容を予告なく変更・中止させて頂く場合がございます。予めご了承ください。

プロフィール
akane (あかね)

ダンスカンパニー「アカネキカク」主宰。大阪府立登美丘高校ダンス部コーチとして、数々の大会で優勝に導く。荻野目洋子の代表曲“ダンシング・ヒーロー”で振付した「バブリーダンス」を2017年9月に配信し、7000万回の再生を越えた。日本を代表する振付師。



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