特集 PR

侵食された日常のうた キリンジインタビュー

侵食された日常のうた キリンジインタビュー

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:柏井万作
2012/06/27

“祈れ呪うな”という何ともインパクト大なタイトルを持ったキリンジの新曲は、「反原発」を声高に叫ぶのではなく、原発を取り巻く社会構造を楽曲として提示することで、意識の喚起を促すかのような1曲。詞曲を手掛けた堀込高樹はこの曲に対し、「自戒も込めた」というコメントも寄せている。キリンジといえば「まず音楽ありき」というイメージが強く、こういった明確なメッセージ性を内包した楽曲には、少なからず驚かされる部分があった。一方、弟の泰行が詞曲を手掛けた“涙にあきたら”も、直接的に震災や原発に言及しているわけではないものの、やはりその影響は避けられなかったと語る。もちろん、届けられた楽曲はどちらもキリンジらしく素晴らしいポップソングである。しかし、その背景には「侵食された日常」があり、その中で表現をすることの難しさを感じる2人がいた。

原発の事故とか地震のこととかが、身の回りに侵食してきてると感じることが多いんですよね。そうなると、そこに触れずに曲を書くのは難しいと思って。(高樹)

―“祈れ呪うな”はタイトルからしてインパクトがあるし、歌詞からは震災と原発事故以降の状況に対するリアクションであることがはっきりと伺えます。率直に、なぜこのような歌詞を書こうと思ったのでしょうか?

高樹:普段詞を書くときは、身の回りのこと――人間関係だったり、風景だったり――そこから何かを拾い上げて膨らませるんですけど、原発の事故とか地震のこととかが、そこに侵食してきてると感じることが多いんですよね。そうなると、そこに触れずに曲を書くのは難しいと思って。僕が読んでる新聞は事故のことをずっと追ってて、わりと毎日そのことを考えざるを得ないようなところもあったから、そのことについて思ったことを歌った方が、自分に対して素直なのかなって。

―普段の生活と原発問題を切り離して考えるわけではなく、普段の生活に原発の問題が入り込んでるという意味で、今までの延長線上にあると言えますか?

高樹:すべては延長線上ですけど、今までだって原発の問題はあって、でもそれを意識してこなかったわけじゃないですか? そこについて、もうちょっと触れたいと思ったんですよね。食べ物を買うにしても、産地とか気になっちゃうでしょ? 小っちゃい子供もいるので、自分の生活と原発がつながってるんだなって、否が応にも実感させられるんですよね。

―小さいお子さんがいらっしゃると気にせざるを得ないですよね。

高樹:あと、あの事故が起こった後に、誰が悪いのか、誰が責任取るのかって話が出たでしょ? 第二次世界大戦もそうだったけど、日本は誰も責任を取らない体質があってよくないって。それもそうなんだけど、でも東電の人を土下座させたらそれで話が済むのかって言ったらそうではなくて、その後ろにもっといろんな問題があるわけでしょ?

堀込高樹
堀込高樹

―もちろん、そうですね。

高樹:自分がそういう歌を作るにあたっては、「原発をやめよう」とか、そういうことを具体的に訴えるんじゃなくて、「今こういうような状況で、こういう関係性がある」とか、「こういう立場の人もいれば、こういう立場の人もいて、にっちもさっちもいかなくなってる」とか、そういうことが歌いたいと思ったんじゃないですかね。

―泰行さんは現在の状況をどう捉えていますか?

泰行:確かに、今言ったような問題が日常的になってきてるから、震災前の日常を描くってことと、今の日常を描くっていうのは、ちょっと違うものになりますよね。何かしらの影響はあるはずだから、それを全く無視したものを作っていいものかどうかっていうような感覚はあります。だから、すごくやりづらいですね。

Page 1
次へ

リリース情報

キリンジ<br>
『祈れ呪うな』
キリンジ
『祈れ呪うな』

2012年5月30日から配信限定リリース

キリンジ<br>
『涙にあきたら』
キリンジ
『涙にあきたら』

2012年6月27日から配信限定リリース

キリンジ
『祈れ呪うな/涙にあきたら』数量限定アナログEP盤(7inch)

2012年7月7日発売
価格:1,470円(税込)
JET SET / 日本コロムビア / JS7S043

プロフィール

キリンジ

1996年10月、実兄弟である堀込泰行(Vo,Gt)堀込高樹(Gt,Vo)の二人でキリンジを結成。98年、メジャーデビュー。卓越した二人のシンガーソングライターを配するグループならではの上品に練り上げられるメロディーとオリジナリティー溢れる詞世界は今やワンアンドオンリーな存在。また、詞曲に留まらず、兄弟ならではのハーモニーと多種多様な音楽的造詣を思わせるサウンド・プロダクションは多くの音楽ファンを魅了し続けている。藤井隆、SMAP、松たか子、坂本真綾など多くのアーティストへの楽曲提供も多数。2012年5月に配信シングル『祈れ呪うな』、6月に『涙にあきたら』をリリース。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

Kitri“細胞のダンス”

ピアノ連弾ユニットKitriによる、大橋トリオプロデュースのメジャーデビューEP『Primo』から“細胞のダンス”のshortMVが公開。暗闇にひっそりと佇むピアノと、それを淡々と演奏する彼女達が作り出す不安定な世界観に徐々に引き込まれていく。跳ねる鍵盤はまさに細胞のダンス。映し出される手元と差し込む光、黒と赤のコントラストが美しい画面から目を離せない。(高橋)

  1. こんまりのNetflix番組がアメリカで話題。こんまりメソッド巡る議論も 1

    こんまりのNetflix番組がアメリカで話題。こんまりメソッド巡る議論も

  2. 野村周平&桜井日奈子がプールでずぶ濡れ 『僕の初恋をキミに捧ぐ』新写真 2

    野村周平&桜井日奈子がプールでずぶ濡れ 『僕の初恋をキミに捧ぐ』新写真

  3. 『サマソニ』ヘッドライナー3組目はThe Chainsmokers、料金は値下げ 3

    『サマソニ』ヘッドライナー3組目はThe Chainsmokers、料金は値下げ

  4. 高杉真宙×竹内愛紗 御曹司と女子高生のラブコメ漫画『高嶺と花』ドラマ化 4

    高杉真宙×竹内愛紗 御曹司と女子高生のラブコメ漫画『高嶺と花』ドラマ化

  5. 『カメラを止めるな!』が『金曜ロードSHOW!』でテレビ初放送 5

    『カメラを止めるな!』が『金曜ロードSHOW!』でテレビ初放送

  6. 宇多田ヒカルのシングル『Face My Fears』本日発売&『初恋』サブスク解禁 6

    宇多田ヒカルのシングル『Face My Fears』本日発売&『初恋』サブスク解禁

  7. King Gnuが泥臭さと共に語る、若者とロックバンドが作る「夢」 7

    King Gnuが泥臭さと共に語る、若者とロックバンドが作る「夢」

  8. ザギトワ&メドベージェワが魔法少女に、『マギレコ』新テレビCM 8

    ザギトワ&メドベージェワが魔法少女に、『マギレコ』新テレビCM

  9. 『ヒグチユウコ展 CIRCUS』 約20年の画業辿る500点超展示 9

    『ヒグチユウコ展 CIRCUS』 約20年の画業辿る500点超展示

  10. 中村佳穂という「歌」の探求者。魂の震えに従う音楽家の半生 10

    中村佳穂という「歌」の探求者。魂の震えに従う音楽家の半生