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冲方丁が『攻殻機動隊ARISE』で描いた情報化社会の一歩先

冲方丁が『攻殻機動隊ARISE』で描いた情報化社会の一歩先

インタビュー・テキスト
さやわか
撮影:三野新
2013/06/21

『攻殻機動隊』は日本を代表するアニメとして世界的な人気がある。ポップカルチャーに興味のある人なら、タイトルくらいは聞いたことがあるだろう。士郎正宗の原作漫画は1989年に連載開始し、ハードSF / サイバーパンク的なコアな世界観ながらも圧倒的な人気となった。1995年に劇場アニメ化されてからはさまざまな形でアニメ化され、押井守、神山健治などの監督やProduction I.Gの制作する映像もアニメ界を牽引し続けている。その『攻殻』が、従来のシリーズとは全く違う完全新作『攻殻機動隊ARISE』を、全4話の劇場作品として立ち上げるという。しかも脚本・シリーズ構成は作家の冲方丁、音楽はCORNELIUSこと小山田圭吾という、アニメファンならずとも注目のスタッフが配されているのだ。『攻殻』が見せる新しい世界とは何か。冲方丁に聞いた。

これまでのイメージが強すぎて、新しいことをやらなきゃいけないのに、なかなかやれないんですよね。

―冲方さんといえば近年では映画化もされた『天地明察』などで広い読者に支持されていますが、『マルドゥック・スクランブル』シリーズで日本SFの新時代を切り開いた方でもあります。その冲方さんが『攻殻』に参加するというのは期待が高まりますね。そもそも、どういう経緯で脚本を担当されることになったのですか?

冲方:Production I.Gの石川社長から「ご飯でも食べに行こうよ」って言われて、ふらっと行ったらいきなり大量の資料をどさっと渡されて、「やらないかね」って言われて(笑)。ここで断ると、色んなものがすたるなあというシチュエーションを作られた上で話を振られたんですよ。

―これはやりがいのある作品だと感じたわけですか?

冲方丁
冲方丁 

冲方:そうですね、まず第一に面白いものになりそうだというのが1つ。それに過去の『攻殻』のシリーズに僕も恩恵を受けてきた一人ですので。日本では一時期、たとえば本の帯に「SF」って書くと売れないとか、非常にSFが冷遇されていた時代があったんです。だけどそこにちょうど『攻殻』がバーンと発表されて、僕たち作家のみならず、クリエイターはみんな勇気をもらったんですよね。非常に影響力が強い作品なので、その影響から逃れようとする努力もありつつ、だけどその恩恵も受けつつという感じでした。だから今もう1回アニメのシリーズを再起動するというときに声をかけてもらって、恩返しの気持ちと、挑戦したい気持ちがありまして。

―冲方さんのような今の日本SFの立役者でも、やはり『攻殻機動隊』という作品には強く影響されたんですね。

冲方:そうですね。そもそもこういった世界観の漫画が、『マガジン』(講談社)系の雑誌で連載されたっていうことに感銘を受けましたよね。かつて連載されていた大友克洋『AKIRA』の流れも感じさせますし。

―『AKIRA』もやはり、日本を代表するSF作品であり、ポップカルチャーとして世界的に人気がありますね。

冲方:ただの1ジャンルとしてのSFの面白さだけではなく、「これが日本のコンテンツだ」っていう、キラーコンテンツとしてのSFになってましたよね。日本人は非常にねちっこく、そしてテクノロジーが大好きな国民なので、日本人的な感性がSFとマッチしたときの面白さっていうのはあるんですよ。そういう流れに必死に食らいついていくというか、受け継いでいこうという気持ちがありました。がむしゃらでしたね。

―『攻殻』が日本ならではのアニメというジャンルで人気を拡大していったということにも思うところがありますか?

冲方:原作が発表された時代と、CGやアニメーションの発達が上手く重なったなあと思います。ビジュアルショックが非常に大きかった。

―そんな作品を今回、ご自身でまさに再起動させるにあたって、気負いというかプレッシャーみたいなものはありましたか?

冲方:僕も含めてスタッフ全員が気負っちゃってましたね(笑)。気負ってないのはこれまでのシリーズにずっと関わってきた黄瀬(和哉)総監督ぐらいで(笑)。

―黄瀬さんは気負わないんですか(笑)。

冲方:全く気負わないですね。最初の打ち合わせのときに「どうしましょう?」って言ったら「いや、君の好きなことやればいいよ」って言われて(笑)。黄瀬さんは『攻殻』に関しての経験もありますし、真っ当に作品を作ろうという方ですので。そこは非常に頼もしく、僕もモチベーション的に黄瀬さん寄りになることができましたね。

©士郎正宗・Production I.G/講談社・「攻殻機動隊ARISE」製作委員会
©士郎正宗・Production I.G/講談社・「攻殻機動隊ARISE」製作委員会

―では、新しい『攻殻』のイメージは、すぐにスタッフ全体で共有できたのですか?

冲方:いや、もう最初はてんやわんやで、みんな迷走してましたね(笑)。一応、原作の士郎正宗さんから今回のシリーズを作るにあたっての簡単なプロットや設定集をいただいたんですけど、非常に自由度が高いわけです。「使っても使わなくてもいいよ」というように、何でもできるようにしてくださっていて。でも、そこから新たなシリーズを作ろうというと、過去の『GHOST IN THE SHELL』や『イノセンス』(ともに押井守監督による劇場用アニメ)、あるいは『STAND ALONE COMPLEX』(神山健治監督によるテレビ版に端を発するシリーズ)など、そっちのイメージが強すぎて。新しいことをやらなきゃいけないのに、なかなかやれないんですよね。

―まずは過去の作品に合わせようという意識になってしまうということでしょうか。

冲方:そうすると結局、言ってみれば縮小再生産になっていくんですよね。引き続き同じようなものを作り続けるだけだと、ただ単に『攻殻』というコンテンツの遺産を食いつぶしていくだけになってしまう。だからもっと新しいものにしなきゃいけないということになって、「過去のシリーズで誰もやったことがないところをやろう」という話になっていきました。だから主人公である草薙素子の過去を描く、つまり人間性を描くっていうことになったんです。ちょうど士郎さんからの設定にもその部分はあったんですよ。でもみんな怖くて触らないようにしていたわけです(笑)。草薙素子の出生秘話なんて、うかつに手を出すと大やけどするんじゃないか……みたいな感じで。だけどそうやってみんなが逃げる場所に、突っ込んでいかないといけないということになったんです。

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イベント情報

『攻殻機動隊ARISE border:1 Ghost Pain』

2013年6月22日(土)からTOHOシネマズ 六本木ヒルズ、新宿バルト9ほか全国で公開
総監督:黄瀬和哉
原作:士郎正宗『攻殻機動隊』(講談社)
脚本・シリーズ構成:冲方丁
音楽:CORNELIUS
声の出演:
坂本真綾
塾一久
松田健一郎
新垣樽助
檀臣幸
中國卓郎
上田燿司
沢城みゆき
浅野まゆみ
中井和哉
配給:東宝映像事業部

作品情報

『攻殻機動隊ARISE border:1 Ghost Pain』劇場限定盤(Blu-ray)

2013年6月22日から上映劇場限定販売
価格:8,000円(税込)
※シナリオ付き

『攻殻機動隊ARISE border:1 Ghost Pain』通常盤(Blu-ray)

2013年7月26日発売
価格:7,140円(税込)
BCXA-0739
販売元:バンダイビジュアル
※特典映像付き

『攻殻機動隊ARISE border:1 Ghost Pain』通常盤(DVD)

2013年7月26日発売
価格:6,090円(税込)
BCBA-4521
販売元:バンダイビジュアル
※特典映像付き

プロフィール

冲方丁(うぶかた とう)

SF小説家、脚本家。1996年『黒い季節』で第1回スニーカー大賞金賞受賞。2003年『マルドゥック・スクランブル』で第24回日本SF大賞。2010年『天地明察』で本屋大賞と吉川英治文学新人賞を受賞。作家のみならず、脚本、マンガ原作、ゲームなど活動分野多数。2013年『攻殻機動隊ARISE』では、「オリジナルの物語が書ける脚本家」としてシリーズ構成・脚本を手がける。

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