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トクマルシューゴはなぜすごい? 異常なまでの研究心に迫る

トクマルシューゴはなぜすごい? 異常なまでの研究心に迫る

トクマルシューゴ『TOSS』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:永峰拓也 編集:山元翔一

2016年のトクマルシューゴの主だったトピックを振り返ってみると、そこには「人との共同作業」というキーワードが浮かび上がる。1曲聴きの時代に呼応して、曲ごとに異なるアプローチを施したコンセプトソングブック=『TOSS』では、明和電機のオリジナル楽器をフィーチャーしたり、専用のアプリ / ウェブサイトを使ってユーザー参加型の楽曲を制作。また、楳図かずお原作、フィリップ・ドゥクフレ演出のミュージカル『わたしは真悟』や、井の頭公園の100周年を記念した映画『PARKS パークス』(監督・瀬田なつき)の音楽を担当することも大きな話題を呼んだ。

かつてはすべての楽器の演奏、録音からミックスまでを一人で行い、「箱庭的」とも評されたトクマルの世界は、なぜこのように開かれたものへと変わっていったのか? その行動原理に迫ることで見えてきたのは、「すべてがインプットと選択の繰り返し」だと語る、強烈な研究者としての横顔だった。トクマルが「ポップマエストロ」というだけでなく、「マッドサイエンティスト」とも呼ばれる理由が、改めてわかったような気がする。

僕は、「トクマルシューゴ」という人を客観視している部分があるんです。

―様々なアーティストとコラボレーションをした『TOSS』をはじめ、ミュージカルや映画の音楽を担当したりと、今年のトクマルさんは誰かと一緒に作品を作ることに可能性を見出していたような印象があります。

トクマル:いろんな人と一緒にやると、自分一人では生まれない、いろんな発想が生まれるので、それが単純に面白いですね。曲の作り方自体もその感じに近いというか、なにかの楽器で音を鳴らしてみて、その音から着想を得て考えるのが基本なんです。「こんな曲を作ってみたらいいんじゃないか」って。着想のきっかけとなるのは誰かのふとした発言でもいいし、別に人間じゃなくて動物でもいい。きっかけは何でもいいんです。

トクマルシューゴ
トクマルシューゴ

―活動初期はすべてを自分一人で手がけていて、「箱庭的」という表現をされることも多かったと思うのですが、そのころと比べると制作スタイルは大きく変わりましたよね。

トクマル:変えたかったんです。でも、結局その発想を持ち帰って一人で黙々と作業をすること自体は変わらないので、辛さは変わってないというか、むしろより深みにはまっていく一方で(笑)。全部自分で作っていたときは自分から生まれたものだけだったから、最初から「自分の好きなもの」なんですよ。でも、いろんな人が関わると、生まれてきたものの中から音を選ぶ作業があって、「なぜ僕はこの音を選んだのか」って考える作業がひとつ増えるから大変でした。まあ、それが面白いからやっていたんですけど、結果的には自分を見つめ直す作業にもなりましたね。

トクマルシューゴの代表曲のひとつ。2007年リリースの『EXIT』に収録。

―「他人は自分の鏡」とはよく言ったものですよね。過去を振り返って、他の人と作業をする面白さに気づいたきっかけを挙げるとしたら、なにかパッと出てきますか?

トクマル:特にないというか、むしろすべてがそうですね。自分のアルバムを誰かがリリースしてくれるとなった時点で、どこか作品が僕の手を離れたような感覚があって。その時点から僕は、「トクマルシューゴ」という人を客観視している部分があるんです。「トクマルシューゴという人が、こんな人と作業をして、こんな人と対バンをして、こんな影響を受けて、次のアルバムはこうなった」みたいな感じがいつも面白いなって思うんですよ。

トクマルシューゴ

トクマル:だから、何か大きなきっかけがあったわけではなくて、ホントに一つひとつの積み重ね。世の中の変化も含めて、とにかくインプットするのが好きなので、そういう作業の連続です。

―自分を客観視するというのは、昔からそうだったんですか?

トクマル:そうですね。もともといろんなバンドでギターを弾きたいと思っていたし、GELLERS(トクマルがソロ活動以前より取り組んでいたロックバンド)でアルバムが出せたら、それをメインにして、たまにソロをやって、CDを1~2枚出せればいいかなくらいに思ってたんです。それで、実際1~2枚出した時点で、「あっ」と思っちゃって(笑)。

―「もうやりたかったことやっちゃった」と(笑)。

トクマル:そうなんです。なので、そこから先はずっと客観視というか、「この人はどんな曲を作って、どうなっていくんだろう?」って、俯瞰しながら見ている感じなんですよね。

トクマルシューゴ

―「あらゆるものがインプットになる」というお話でしたが、「総合芸術的な視点がある」と言い換えることもできるでしょうか? もちろん、立脚点は音楽にあると思うのですが、それ以外の表現もフラットに捉えているのか、それとも、あくまで音楽は音楽と捉えているのか、いかがでしょうか?

トクマル:うーん……難しいですね(笑)。まず、「現時点で誰も作ってないものを作りたい」っていうと伝わりやすいんですけど、そこまででもなくて、でもインプットが多いせいか、隙間を見つけるのが得意みたいで、どうしてもそういう方向性になってしまうんですよね。

既存の音楽とお仕事でいただくオーダーの間で、逆に「こういう注文はこない」っていうのを自分で考えて作ってみたりするので、それが結果的に総合芸術的なものになってる可能性はあるのかもしれない。でも僕は、ただ音楽をやりたいってだけかな。

―AとBの隙間を狙った表現が、結果的にAとBの両方の要素を含む、重層的な表現になっているっていうことかもしれないですね。

トクマルシューゴ

トクマル:そういう感じが近いのかも。僕は「アート的な音楽をやりたい」とか、イメージ先行で走り出すことはまずないんです。「これを使って、こういうことをやったら、こういう音楽ができるんじゃないか」っていう発想なので、インプットと取捨選択の繰り返しで自分の作品ができていくって感じ。だから、「パッと閃く」みたいな、天才的な発想ってできないんです(笑)。

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リリース情報

トクマルシューゴ『TOSS』初回限定アナザージャケットバージョン
トクマルシューゴ
『TOSS』初回限定アナザージャケットバージョン(CD)

2016年10月19日(水)から一部店舗限定発売
価格:2,808円(税込)
PCD-26066

1. Lift
2. Lita-Ruta
3. Taxi
4. Route
5. Cheese Eye
6. Hikageno
7. Dody
8. Hollow
9. Vektor
10. Migiri
11. Bricolage Music

トクマルシューゴ『TOSS』通常盤
トクマルシューゴ
『TOSS』通常盤(CD)

2016年10月19日(水)発売
価格:2,808円(税込)
PCD-26065

1. Lift
2. Lita-Ruta
3. Taxi
4. Route
5. Cheese Eye
6. Hikageno
7. Dody
8. Hollow
9. Vektor
10. Migiri
11. Bricolage Music
※ポップアップジャケット仕様、初回生産分にダウンロードコード付き「紙ホイッスル」付属

イベント情報

『わたしは真悟』
『わたしは真悟』

脚本:谷賢一
演出・振付:フィリップ・ドゥクフレ
演出協力:白井晃
原作:楳図かずお『わたしは真悟』(小学館)
音楽:トクマルシューゴ、阿部海太郎
出演:
高畑充希
門脇麦
小関裕太
大原櫻子
成河
ほか

プレビュー公演
2016年12月上旬
会場:神奈川県 横浜 KAAT神奈川芸術劇場

東京公演
2017年1月8日(日)~1月26日(木)
会場:東京都 初台 新国立劇場 中劇場

浜松公演
2016年12月9日(金)
会場:静岡県 浜松市浜北文化センター 大ホール

富山公演
2016年12月15日(木)
会場:富山県 富山市芸術文化ホール(オーバード・ホール)

京都公演
2016年12月23日(金)~12月25日(日)
会場:京都府 ロームシアター京都 メインホール

『Shugo Tokumaru“TOSS”release tour 2016 -2017』

2016年12月8日(木)
会場:兵庫県 神戸 月世界

2016年12月9日(金)
会場:京都府 磔磔

2016年12月11日(日)
会場:東京都 渋谷WWW X

2017年1月12日(木)
会場:香川県 高松TOONICE

2017年1月13日(金)
会場:広島県 SECOND CRUTCH

2017年1月14日(土)
会場:福岡県 福岡ROOMS

2017年1月21日(土)
会場:愛知県 名古屋JAMMIN

2017年1月22日(日)
会場:大阪府 梅田SHANGRI-LA

2017年2月3日(金)
会場:山梨県 甲府 桜座

2017年2月4日(土)
会場:長野県 松本ALECX

2017年2月5日(日)
会場:新潟県 GIOIA MIA

2017年2月12日(日)
会場:北海道 札幌 BESSIE HALL

プロフィール

トクマルシューゴ
トクマルシューゴ

ギターと玩具を主軸に無数の楽器を演奏する音楽家。2004年、米NYのインディレーベルより、1stアルバム『Night Piece』をリリース。以降、海外各国でのリリースやライブ活動を精力的に行っている。“Katachi”や“Poker”のMVが海外の様々な賞を受賞。また、フィリップ・ドゥクフレが演出する楳図かずお原作のミュージカル『わたしは真悟』の音楽や、瀬田なつき監督の映画『PARKS パークス』の音楽監修も務める。2016年10月19日、ニューアルバム『TOSS』をリリース。

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シャムキャッツ“Four O'clock Flower”

ただシャムキャッツの四人がフラットに存在して、音楽を鳴らしている。過剰な演出を排し、平熱の映像で、淡々とバンドの姿を切り取ったPVにとにかく痺れる。撮影は写真家の伊丹豪。友情や愛情のような「時が経っても色褪せない想い」を歌ったこの曲に、この映像というのはなんともニクい。(山元)